平等と協力の関係

 平等と協力の関係に関する研究(Hauser et al., 2019)が公表されました。直接互恵性は、反復的な相互作用に基づく協力の進化における効果的な機構です。直接互恵性には、相互作用する個人同士が十分に平等で、協力または裏切りによって各人が同等の結果に直面することが必要とされます。公共財ゲームのような互恵性モデルの大多数ではこれまで、参加者があらゆる面で同様だと仮定されています。しかし、現実の人間集団では、初期保有額(最初に与えられる富の量)および生産性(自らが生み出す富の量)が異なっているように、至る所に不平等が見られ、それが協力および福利を損なっている、と一般には考えられています。

 この研究は、こうしたモデルに修正を加えて、不平等な個人間の直接互恵性を研究するための一般的な枠組みを紹介しています。そのモデルは、不平等の複数の原因を考慮に入れており、初期保有額と生産性および公共財から得られる利得が異なる対象を扱えます。参加者が最初にいくらの金銭を所有しているか、参加者が他者のためにどれほどの利益を生み出せるか、参加者が公共財からどれだけの利益を得られるか、などといったことを考慮に入れたわけです。

 その結果、極端な不平等があれば協力は妨げられるものの、もし参加者の生産性に個人差があり、生産性の高い参加者の方が多額の金銭を得られるようにすれば、協力が生まれる、と見いだされました。この知見は、人間が参加したオンライン行動実験(2人で行なうゲーム)によって裏づけられました。不均一性の原因がうまく調整されていれば、全体の福利が最大限になる、というわけです。対照的に、初期保有額と生産性がうまく調整されていないと、協力は急速に瓦解します。また、全ての参加者が平等な場合には協力が起きない傾向にある、ということも明らかになりました。この研究は、協力を最大化するために必要なのは、異なるタイプの富の不平等の間の微妙なバランスを取ること、たとえば、社会財の生産性の高い者が多額の金銭を得られるようにすることである、との見解を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【社会学】平等は協力の必須条件でないかもしれない

 中程度の富の不平等は、グループ内での協力を生み出す可能性があることが、理論モデルと行動実験の分析によって示唆された。極端な不平等は協力を妨げるが、もし社会的生産性に個人差があるのであれば、協力を優勢にするためには行為者が受け取る金額に多少の不平等を生じさせることが必要な場合があるというのだ。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。

 社会的ジレンマの状況においては、全体の福祉は、全ての個人が協力すれば最大となり、これは個人が繰り返し交流する場合にそうなりやすい。この直接互恵性のコンセプトのモデルの大部分は、協力する意思の有無以外の点で、参加者に差がないことを前提としている。しかし、実生活では、どれだけの資源を受け取れるのか、どれだけ効率的に社会財を生産できるかなどの点で個人差がある。

 今回、Martin Nowakたちの研究グループは、こうしたモデルに修正を加えて、個人間の不平等のさまざまな原因(例えば、参加者が最初にいくらの金銭を所有しているか、参加者が他者のためにどれほどの利益を生み出せるか、参加者が公共財からどれだけの利益を得られるか)を考慮に入れたモデルを設計した。その結果、極端な不平等があれば協力は妨げられるが、もし参加者の生産性に個人差があり、生産性の高い参加者の方が多額の金銭を得られるようにすれば、協力が生まれることが見いだされた。この研究知見は、人間が参加したオンライン行動実験(2人で行うゲーム)によって裏付けられた。

 Nowakたちは、協力を最大化するためには、異なるタイプの富の不平等の間の微妙なバランスを取ること、例えば、社会財の生産性の高い者が多額の金銭を得られるようにすることが必要だと結論している。


社会科学:不平等な人々の間の社会的ジレンマ

社会科学:富のわずかな不平等が役に立つ理由

 公共財ゲームの大多数は、協力あるいは裏切りの傾向を除いて、参加者があらゆる面で同様だと仮定している。しかし、現実では、参加者は初期保有額(最初に与えられる富の量)および生産性(自らが生み出す富の量)が異なっている。M Nowakたちは今回、こうした不平等をモデル化して何が起こるかを調べ、実際の人々を参加させるオンライン実験でそのモデルを検証した。協力は、全ての参加者が平等な場合には起こらない傾向があった。また、参加者が極端に不平等な場合にも、協力が瓦解する傾向があった。全体として、福利に必要なのは、生産性と初期保有額の傾向がそろうといった、わずかな不平等だった。つまり、生産性の高い個人はより多くの報酬を受け取ることが必要なのである。対照的に、初期保有額と生産性がうまく調整されていないと、協力は急速に瓦解する。



参考文献:
Hauser OP. et al.(2019): Social dilemmas among unequals. Nature, 572, 7770, 524–527.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1488-5

この記事へのコメント