近親交配と健康への影響

 近親交配と健康への影響に関する研究(Yengo et al., 2019)が公表されました。この研究は、イギリスのバイオバンクに登録された456414人の匿名化データを用いて、親子間のような第一度近親者間と、異父(異母)兄弟姉妹間のような第二度近親者間といった、きょくたんな近親交配の存在状況を推定しました。この推定は、ホモ接合連続領域(ROH;両親からそれぞれ受け継いだと考えられる同じ対立遺伝子のそろった状態が連続するゲノム領域)に基づいて行なわれ、これが一定数の健康転帰に関連するかどうか、検討されました。

 この研究は、対象者の中から第一度近親者又は第二度近親者の間に生まれた子であることを示唆する遺伝データの125人を同定しました。また、この研究は、このコホートにおいて、きょくたんな近親交配が、肺機能や視力や認知機能の低下といった健康への悪影響に関連していると明らかにし、以前の研究によって得られた知見の正当性を確認しました。さらに、近親交配によって生まれた子は一般に疾患リスクが高いことも明らかになりました。

 ただ、この研究は、きょくたんな近親交配の事例数が少なく、イギリスのバイオバンクに登録バイアスが働いている可能性が高い(イギリスのバイオバンクの参加者の健康状態と学歴が平均してその他の人々よりも高い)ため、今回のデータの解釈には注意を要する、と指摘しています。この研究は近親交配による適応度低下を改めて示しました。近親交配はネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅要因とも言われていますが、ネアンデルタール人にも近親交配を避けるような認知メカニズムが生得的に備わっており、近親交配は気候変動や現生人類(Homo sapiens)との競合による衰退の結果であって、絶滅の究極要因とは言えないように思います(関連記事)。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝学】近親交配と関連する健康転帰

 近親交配とその健康への影響可能性を分析する研究が行われ、その結果得られた知見を報告する論文が掲載される。

 今回、Loic Yengoたちの研究グループは、英国バイオバンクに登録された45万6414人の匿名化データを用いて、極端な近親交配、つまり第一度近親者間(例:親子間)と第二度近親者間[例:異父(異母)兄弟姉妹間]の交配の存在状況を推定した。この推定は、ホモ接合連続領域(ROH;両親からそれぞれ受け継いだと考えられる同じ対立遺伝子のそろった状態が連続するゲノム領域)に基づいて行われ、これが一定数の健康転帰に関連するかどうかの検討も行われた。

 Yengoたちは、研究対象者の中から第一度近親者又は第二度近親者の間に生まれた子であることを示唆する遺伝データを持つ125人を同定した。また、Yengoたちは、このコホートにおいて、極端な近親交配が健康への悪影響(例えば、肺機能や視力、認知機能の低下)に関連していることを明らかにして、以前の研究によって得られた知見の正当性を確認した。さらに、近親交配によって生まれた子は一般に疾患リスクが高いことも明らかになった。

 Yengoたちは、極端な近親交配の事例数が少なく、英国バイオバンクに登録バイアスが働いている可能性が高い(英国バイオバンクの参加者の健康状態と学歴が平均してその他の人々よりも高い)ため、今回の研究のデータの解釈には注意を要することを指摘している。



参考文献:
Yengo L, Wray NR, and Visscher PM.(2019): Extreme inbreeding in a European ancestry sample from the contemporary UK population. Nature Communications, 10, 3719.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-11724-6

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