過去136万年間の地中海の冬季降水量

 過去136万年間の地中海の冬季降水量に関する研究(Wagner et al., 2019)が公表されました。地中海性気候の特徴は、乾燥した夏季と湿潤な冬季の間の季節的な差違が大きいことです。冬季の降水量の変化は、地域的な社会経済の発展に重要ですが、第四紀の時間スケールで正確にシミュレートして再構築するのは困難です。この一因は、軌道配置、全球の氷床量、大気中の温室効果ガス濃度が異なる複数の氷期–間氷期サイクルにわたる、地域的な水文気候の記録が乏しいことにあります。さらに、変化とその持続性の根底にある機構はまだ調べられていません。

 本論文は、過去136万年にわたる地中海北中部の湿潤な冬季について、地域的な日射の季節による大きな差違と、夏季のアフリカの活発なモンスーンを伴って生じる傾向があった、と示しています。バルカン半島のオフリド湖から得られた今回の代理時系列は、過渡気候モデルによる784000年間のハインドキャスト(再予報)と合わせて、海面水温の上昇は、大陸の氷床量が少なく、大気中の温室効果ガス濃度が高い時期に局所的な低気圧の発達を増幅し、地中海に入る北大西洋低気圧を成長させた、と示唆します。最新の再解析データの比較からは、現在の地中海の降水量の駆動要因と、再構築された降水量の増大の駆動要因がやや類似している、と示されました。これらのデータは、多様な日射極大をカバーしているため、気候モデルの性能を検証する重要な基準となります。地中海の長期の気候変動ということで、人類進化史とも関わってくるだけに、今後の研究の進展が注目されます。


参考文献:
Wagner B. et al.(2019): Mediterranean winter rainfall in phase with African monsoons during the past 1.36 million years. Nature, 573, 7773, 256–260.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1529-0

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