顔面形態から推測されるハイデルベルク人の位置づけ

 先月(2019年9月)19日~21日にかけてベルギーのリエージュで開催された人間進化研究ヨーロッパ協会第9回総会で、ホモ属進化史におけるハイデルベルク人(Homo heidelbergensis)の位置づけ現生人類(Homo sapiens)の拡散に関する研究(Arsuaga et al., 2019)が報告されました。この研究の要約はPDFファイルで読めます(P76)。現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)は中期更新世の共通祖先から進化した、と遺伝的データは示唆します。その最終共通祖先として有力なのがハイデルベルク人ですが、異論も少なくはなく(関連記事)、両系統の最終共通祖先の形態はよく分かっていません。

 本論文は、アフリカとユーラシアのホモ属化石および現代人の合計791個体の顔面形態を分析し、この問題を検証しました。多くの化石ホモ属の顔は現代人よりも大きくて頑丈であり、現生人類系統における華奢化を示しますが、ネアンデルタール人系統においても、顔面の華奢化傾向が見られます。本論文は、化石標本には部分的なものも多いため、CTスキャンも用いて欠落データを推定し、分析しました。その結果、現生人類は化石標本でも現代人標本でも、ネアンデルタール人およびハイデルベルク人から明確に区分されました。一方、広義のハイデルベルク人標本はネアンデルタール人と重なります。

 本論文は、相対成長(アロメトリー)が、ハイデルベルク人とスペイン北部の通称「 骨の穴(Sima de los Huesos)洞窟」遺跡の早期ネアンデルタール人と古典的ネアンデルタール人の間の顔面形態の違いを説明する一方で、ハイデルベルク人と化石および現代の現生人類の違いを説明していない、と指摘します。さらに本論文は、広義のホモ・エレクトス(Homo erectus)標本であるアフリカ東部のKNM-ER 3733およびジャワ島のサンギラン17(Sangiran 17)と、ホモ・ハビリス(Homo habilis)標本であるKNM-ER 1813は、顔面サイズの違いを考慮すると、現生人類とクラスター化する、と指摘します。

 そのため本論文は、ハイデルベルク人の顔面形態はネアンデルタール人への派生的進化を示している、と主張します。対照的に現生人類は、より一般的で祖先的な広義のエレクトスの顔面形態の多くの側面を保持しています。本論文は、ネアンデルタール人はおそらくハイデルベルク人から進化し、現生人類はそうではなかった、と推測します。現生人類系統とハイデルベルク人系統が分岐した後、ハイデルベルク人系統で派生的進化が起き、その(一部の?)系統からネアンデルタール人が進化しただろう、というわけです。本論文は、現生人類とネアンデルタール人の最終共通祖先の形態は、ハイデルベルク人とは異なっており、よりエレクトスに類似していたのではないか、と推測しています。


参考文献:
Arsuaga JL, Martinón-Torres M, and Santos E.(2019): Homo heidelbergensis is not your ancestor. The 9th Annual ESHE Meeting.

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