乳幼児死亡率の地理的格差

 乳幼児死亡率の地理的格差に関する研究(Burstein et al., 2019)が公表されました。小児(5歳未満)の死亡は全世界で減少しており、1950年に1960万人だった死亡数が2017年には540万人となり、2017年の小児の死亡の93%は、中低所得国で起きています。国連の持続可能な開発目標(SDG)のターゲット3.2は、予防可能な小児の死亡を2030年までになくすと定めています。この目標を達成する上でかなりの進展がありましたが、地方行政区分レベルでは依然として死亡率にばらつきがあります。

 SDGのターゲット3.2に近づくには、小児の死亡率と傾向を十分に解明する必要があります。この研究は、2000年から2017年までのアフリカ・アジア・中東・北米・中南米・オセアニアの99の中低所得国の5歳未満児の死亡に関する高分解能地図を作製しました。この研究は、国レベルで、調査対象国の小児死亡率が2000年から2017年までに41%減少した、と示しています。2017年の小児の死亡数が最も多かったのはインド・ナイジェリア・パキスタン・コンゴ民主共和国ですが、それぞれの国内で死亡数の分布に偏りがありました。この研究は、地理的格差がなければ、これらの国々で2000年から2017年までに起こった小児の死亡の32%を防げた、と推定しています。さらに、研究対象地域でSDG ターゲット3.2の目標値である少なくとも1000人当たり25人という死亡率を達成していれば、2017年には推定260万人の5歳未満児の死亡を回避できた可能性がある、とこの研究は報告しています。この研究は、5歳未満児の死亡が多い地域群・死亡率削減の進捗のパターン・地理的不均衡の特定を可能にし、全人口の健康状態改善に資する適切な投資および対策に情報をもたらします。

 国連人権高等弁務官で、前チリ大統領であるバチェレ(Michelle Bachelet)氏は、小児の死亡を減らすには、病気の子供が確実に医者に診てもらえるようにすることよりも、広範な努力が必要だと主張しています。バチェレ氏は、死亡に寄与する要因とはけっきょく、病気よりも広範な困難である貧困・無力化・差別・不正の解消に失敗していることで、この研究が提示しているような確かなデータに対しては、政府と社会のあらゆる分野で対策を講じられなければならない、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【健康科学】乳幼児の死亡に関する世界地図が示す地理的格差

 低所得国と中所得国の5歳未満児の死亡率に関する詳細な世界地図が作製され、2000年から2017年までの死者数が1億2300万人と推定されていることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、小児が5歳に満たずに死亡するリスクについて、出生地による格差がどの程度あるのかを調べた。こうした格差の原因を調べることは、全世界の予防可能な小児の死亡をなくすことを目的とした政策や公衆衛生プログラムへの有益な情報提供に資する可能性がある。

 小児の死亡は、全世界で減少しており、1950年に1960万人だった死亡数が、2017年には540万人となり、2017年の小児の死亡の93%は、中低所得国で起こっている。国連の持続可能な開発目標(SDG)のターゲット3.2は、予防可能な小児の死亡を2030年までになくすと定めている。この目標を達成する上でかなりの進展があったが、地方行政区分レベルでは、依然として死亡率にばらつきがある。

 予防可能な小児の死亡をなくすという目標の達成に近づくには、小児の死亡率と傾向を十分に解明する必要がある。この必要性に応えるため、Simon Hayたちの研究グループは、2000年から2017年までのアフリカ、アジア、中東、北米・中南米、オセアニアの99の中低所得国の5歳未満児の死亡に関する高分解能マップを作製した。Hayたちは、国レベルで、調査対象国の小児死亡率が2000年から2017年までに41%減少したことを示している。2017年の小児の死亡数が最も多かったのはインド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国だが、それぞれの国内で死亡数の分布に偏りがあった。Hayたちは、地理的格差がなければ、これらの国々で2000年から2017年までに起こった小児の死亡の約3分の2を防ぐことができたと推定している。さらに、研究対象地域でSDG ターゲット3.2の目標値である少なくとも1000人当たり25人という死亡率を達成していれば、2017年には推定260万人の5歳未満児の死亡を回避できた可能性があるとHayたちは報告している。

 同時掲載のWorld Viewでは、国連人権高等弁務官のMichelle Bachelet(前チリ大統領)が、小児の死亡を減らすには、病気の子どもが確実に医者に診てもらえるようにすることよりも広範な努力が必要だと主張している。Bacheletは、「死亡に寄与する要因とは、結局、病気よりも広範な困難である貧困、無力化、差別、不正の解消に失敗していることなのである。今週号に掲載されるデータのような確かなデータに対しては、政府と社会のあらゆる分野で対策を講じられなければならない」と指摘している。


健康科学:2000~2017年に発生した1億2300万人の新生児死亡、乳児死亡、幼児死亡のマッピング

健康科学:世界の乳幼児死亡の不均衡

 多くの国々で、過去数十年間に乳幼児の生存が国家レベルで改善されてきたが、地域的な進捗には今なお大きなばらつきがある。5歳未満児(乳幼児)の予防可能な死亡を2030年までに国際連合の持続可能な開発目標(ゴール3)のターゲット3.2のとおりに減少させる取り組みに情報をもたらすため、S Hayたちは今回、地球統計学的モデルを用い、99の低中所得国の5歳未満の乳幼児に関して、2000年から2017年までの死亡率および死亡数の高分解能の地図を製作した。それらの地図から、2030年までに乳幼児死亡率を低下させることに向けた進捗の程度には、一部の国では、いまだに大きな地理的不均衡が存在することが明らかになった。死亡率の高い地域、死亡率削減の進捗の代表例、地理的不均衡を特定することにより、研究チームは、究極的にはさらに的を絞った介入および公衆衛生投資に情報をもたらすことになると期待している。



参考文献:
Burstein R. et al.(2019): Mapping 123 million neonatal, infant and child deaths between 2000 and 2017. Nature, 574, 7778, 353–358.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1545-0

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