緑色植物の進化

 緑色植物の進化に関する研究(One Thousand Plant Transcriptomes Initiative., 2019)が公表されました。陸上植物と緑藻類を含む緑色植物門はきわめて多様な約45万~50万種の植物から構成され、陸上生態系および水界生態系で重要な役割を担っています。この研究は、「1000植物トランスクリプトームイニシアチブ(One Thousand Plant Transcriptomes Initiative)」の一環として、緑色植物門・灰色植物門・紅色植物門(紅藻類)を含むアーケプラスチダ(古色素体類)という広義の植物の多様な1124種について、栄養組織のトランスクリプトーム(1細胞中の全mRNAの集合)の塩基配列を解読しました。その結果、緑色植物の進化を調べるための、系統ゲノミクスの強力な枠組みが得られた。

 推測される種間関係の大半は、複数の種系統樹解析およびスーパーマトリックス解析にわたって充分に裏づけられましたが、色素体遺伝子や核遺伝子の系統樹においていくつかの重要な節(ノード)で見られる不一致は、倍数性・急速な種分化期・絶滅などといった植物ゲノム進化の複雑さを浮き彫りにしています。得られた緑色植物の進化史には、祖先的多様性の不完全な選別・倍数化・遺伝子ファミリーの著しい拡大といった事象が散見されます。とくに、遺伝子ファミリーの大幅な拡大は緑色植物、陸上植物と維管束植物の起源に先行して起きたのに対して、全ゲノム重複は顕花植物およびシダ類の進化を通して繰り返し起きていた、と推測されました。高品質の植物ゲノム塩基配列が次々と利用可能になっていることと機能ゲノミクスの進歩により、緑色植物の進化系統樹全体にわたるゲノム進化の研究が可能になりつつある、と本論文は指摘します。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


進化学:1000種の植物のトランスクリプトームと緑色植物の系統ゲノミクス

Cover Story:多様性の根源:トランスクリプトーム解析によって浮き彫りになった緑色植物の進化

 表紙は、ダーウィンが『種の起源』の結びで、種間の複雑な相互作用を表す例えとした用いた「雑踏した堤」の一例である。ここに写っているのは、シダ類のアメリカシラネワラビ(Dryopteris intermedia)、コケ類のウマスギゴケ(Polytrichum commune)、シノブゴケ類の一種Thuidium delicatumの3種で、緑色植物の著しい多様性を構成する50万種近い植物のほんの一部である。今回「1000植物トランスクリプトームイニシアチブ(One Thousand Plant Transcriptomes Initiative)」のJ Leebens-MackとG Wongたちは、緑色植物門(緑藻類や陸上植物を含む)、灰色植物門、紅色植物門(紅藻類)からなる植物の多様性を網羅する、1124種の栄養組織のトランスクリプトームについて報告している。著者たちは、系統ゲノミクスの枠組みを構築し、これを用いて種間関係を推測し、緑色植物の歴史における多様化事象のタイミングの図示を行った。その結果、遺伝子ファミリーの大幅な拡大は緑色植物、陸上植物、維管束植物の起源に先立って起きていた一方で、全ゲノム重複は顕花植物とシダ類の進化を通して繰り返し起きていたと思われることが分かった。



参考文献:
One Thousand Plant Transcriptomes Initiative.(2019): One thousand plant transcriptomes and the phylogenomics of green plants. Nature, 574, 7780, 679–685.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1693-2

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