節足動物の広範にわたる減少

 節足動物の広範にわたる減少に関する研究(Seibold et al., 2019)が公表されました。節足動物種の局地絶滅や節足動物の生物量の激減に関する最近の報告は、土地利用の強化が生物多様性の低下の主要な駆動要因であることを指摘しています。しかし、土地利用強度の勾配全体にわたる節足動物の存在に関する多地点の時系列データで、因果関係を裏づけるものは存在しません。さらに、どの種類の土地利用や節足動物群が影響を受けているのか、観察されている生物量の減少や多様性の低下が互いに関係しているのかどうかは、まだ明らかにされていません。

 この研究は、ドイツの3地域の150の草原調査地および140の森林調査地で2008~2017年に得られた標準化された複数のインベントリーに基づいて、100万を超す節足動物個体(約2700種)に由来するデータを解析しました。その結果、草原および森林の全体的な多様性は経時的に低下しており、全ての地点と地域で種が喪失している、と明らかになりました。調査が毎年行われた草原では、生物量は67%、個体数は78%、種数は34%減少していました。こうした減少は全栄養段階で一貫しており、おもに希少種が影響を受けていましたが、その規模は局地的な土地利用強度とは無関係でした。

 一方で、農地の比率が高い景観の中にある調査地ほど、経時的な減少はより激しいことも明らかになりました。インベントリーの年次データが存在する30の森林調査地では、生物量に41%、種数に36%の減少が見られましたが、個体数は減少していませんでした。これは、3年間隔のデータが存在する全ての森林調査地の解析結果でも同様でした。こうした減少は希少種と個体数の多い種の両方に影響を及ぼしますが、その傾向は栄養段階によって異なっていました。

 これらの知見は、節足動物の生物量・個体数・種数が全ての栄養段階にわたって広範に減少していることを示しています。また、森林の節足動物の減少は、それらの喪失が開けた生息地に限られるものではないことを実証しています。これらの結果は、節足動物の減少の主要な駆動要因がより大きな空間スケールで作用し、(少なくとも草原では)景観レベルで農業と関連していることを示しており、これは、土地利用による悪影響を緩和するには、政策を景観スケールで取り組む必要がある、と示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


保全:草原および森林の節足動物の減少は景観レベルの駆動要因と関連している

保全:節足動物の個体数、生物量、多様性の広範にわたる減少

 数多くの研究で節足動物の個体数や多様性が最近減少していることが報告されているが、そうした研究は分類群や調査地点が限定的なため、得られた知見をどの範囲まで当てはめることができるのかは不明である。今回S Seiboldたちは、約2700種からなる100万を超す節足動物個体に由来するデータを用いて、ドイツの3地域での2008~2017年における節足動物の多様性、生物量、個体数の変化を調べた。これらのデータは、150の草原調査地と140の森林調査地から得られた標準化された複数のインベントリーに基づいている。解析の結果、節足動物の種数はこの期間、全ての調査地で減少していたことが明らかになった。生物量と種数は草原と森林の両方で大幅に減少していたが、個体数は草原でのみ著しい減少が見られた。草原では、こうした減少の規模は周辺地域の耕作可能地の割合に対応しており、これは、少なくとも草原では節足動物の喪失を食い止めるには景観レベルの政策が必要であることを示唆している。



参考文献:
Seibold S. et al.(2019): Arthropod decline in grasslands and forests is associated with landscape-level drivers. Nature, 574, 7780, 671–674.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1684-3

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