超長テロメアを持つマウスは代謝老化が少なく寿命が長い

 テロメアの長さと寿命に関する研究(Muñoz-Lorente et al., 2019)が報道されました。テロメアは体内の各細胞の核で染色体の末端を形成しており、その役割は、DNAの遺伝情報の完全性を保護することです。 細胞が分裂するたびに、テロメアは少し短くなるため、老化のおもな特徴の一つは、細胞内の短いテロメアの蓄積です。テロメアの短縮は生物の老化を引き起こし、寿命を縮めます。すでに、テロメア伸長酵素であるテロメラーゼの活性化によるテロメアの短縮を回避することで、二次的な影響なしに寿命を延ばすことが、さまざまな研究ですでに示されています。しかし、これまで、テロメアの長さに関するすべての介入は、何らかの手法により遺伝子の発現を変えることに基づいていました。数年前にはテロメラーゼの合成を促進する遺伝子治療が開発され、癌や加齢に伴う他の病気を発症することなく、24%長く生きるマウスが誕生しました。

 この研究の新規性は、超長テロメアで生まれたマウスに遺伝的変化がなかったことにあります。 2009年には、多能性または完全な生物を生成する能力を与えられた成体からの細胞であるiPS細胞(人工多能性幹細胞)において、特定の回数の分化の後、通常の2倍の長さのテロメアを持つ細胞が獲得されました。同じことは、胚盤胞から除去された後の培養中に、正常な胚細胞でもiPS細胞でも発生する、と確認されました。すでにこの現象の研究における多能性の段階で、テロメラーゼ酵素による伸長を促進するテロメアのクロマチンに特定の生化学的マーク(エピジェネティックマーク)がある、と発見されていました。そのため、培養中の多能性細胞のテロメアは通常の長さの2倍に延長されました。

 問題となったのは、ひじょうに長いテロメアを持つ胚細胞が生きたマウスでも生産されるかどうかでした。数年前にはそれが可能と実証されました。しかし、これらの最初の動物はキメラであり、30%から70%の細胞の一部のみが超長テロメアの胚細胞由来です。そうしたマウスの健康は、正常なテロメアで残りの細胞が適切に機能していることに起因する可能性もあります。この研究では、マウス細胞の100%で超長テロメアを取得できたことが報告されています。これらのマウスは癌が少なく長生きで、脂肪の蓄積が少ないため、通常よりもスリムです。また、コレステロールとLDL(悪玉コレステロール)のレベルが低く、代謝老化が低く、インスリンとグルコースに対する耐性が増加しています。さらに、加齢がより少ないことも明らかになりました。

 これらの結果は、特定の種において通常のテロメアよりも長い細胞は有害ではなく、まったく逆である、と示しています。つまり、寿命が長くなり、代謝年齢が遅くなって、癌が少ない、などの有益な効果があるわけです。より具体的には、ひじょうに長いテロメアを持つマウスの平均寿命は、通常よりも13%長くなっています。テロメアの長さと代謝の間に明確な関係が見つかったのはこの研究が初めてで、観察された代謝の変化も関連しています。インスリンおよびグルコース代謝の遺伝的経路は、加齢に関連して最も重要なものの一つとして特定されています。

 この研究が注目されるのは、生物の遺伝子改変なしに寿命を延ばす道が開かれたためです。多能性期のテロメアの延長を促進するテロメアのクロマチンにおける生化学的変化は後成的で、遺伝子の働きを変更しますが、その本質を変えない化学的アノテーションとして機能します。胚細胞が多能性のままである時間を延長して、より長いテロメアを持ち、癌と肥満から保護され、寿命が長くなると、マウスがより長いテロメアを持ち、長生きするようになります。遺伝子操作なしで老化の遅れた新しいモデルマウスが提示された、というわけです。ヒトではどうなのか、研究の進展が期待されます。


参考文献:
Muñoz-Lorente MA, Cano-Martin AC, and Blasco MA.(2019): Mice with hyper-long telomeres show less metabolic aging and longer lifespans. Nature Communications, 10, 4723.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-12664-x