大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』全体的な感想

 本作の平均視聴率(関東地区)は大河ドラマ史上最低で、しかもこれまでの平均最低視聴率を大きく下回り、単回での最低視聴率もこれまでの記録を大きく下回ったため、低視聴率という点で面白おかしく騒がれたように思います。率直に言って、本作が広く人気を得られなかったことは否定できないでしょう。本作は朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の制作陣と出演者の(もちろん全員ではないにせよ)再結集といった感があり、大きな話題を呼んだ『あまちゃん』の再来を企図していたのでしょう。それが、視聴率では大惨敗だったわけですから、見通しの甘さを批判されても仕方のないところだとは思います。

 近年の大河ドラマの病巣の一つとして『篤姫』幻想がある、と私は以前から考えています。2008年放送の大河ドラマ『篤姫』は、21世紀の大河ドラマとしては驚異的な視聴率を誇り、NHKにとって、『篤姫』は21世紀の大河ドラマにおける最良の成功例なのでしょう。しかし、その(あくまでも視聴率的な意味での)成功体験に固執した結果が、2011年放送の『江~姫たちの戦国~』と2015年放送の『花燃ゆ』と2018年放送の『西郷どん』の、まず間違いなく制作陣の放送開始前の期待よりもずっと低い視聴率と、何よりも質の面での惨状をもたらした、と私は考えています。本作の視聴率での大惨敗も、大河ドラマではありませんが、『あまちゃん』の成功体験に囚われてしまった結果だと思います。その意味で本作には、成功体験への固執という近年の大河ドラマの問題点が顕著に現れている、と私は考えています。

 ただ、私は視聴率では大惨敗だった本作をひじょうに楽しめました。完走した21世紀の大河ドラマは本作で14本目となりますが、私は本作を2012年放送の『平清盛』に次いで高く評価しています。21世紀の大河ドラマでは、2007年放送の『風林火山』と2016年放送の『真田丸』と2017年放送の『おんな城主 直虎』も楽しめましたが、本作はそれら以上に楽しめました。スポーツ史の観点から近代史を描くという大河ドラマとしては異色の点も、オリンピックの問題点も描かれていたという点も高評価となります。ただ、本作の低視聴率の一因となっただろう落語話の方は、本筋との接続も、物語を落語の視点で展開するという構造も、とても絶賛するほどではなかったかな、とは思います。確かに、主人公2人と落語との関連は上手く設定されていましたが、それが明かされるまで長く、心を大きく動かされるところまではいきませんでした。

 落語話と本筋との接続を絶賛する気にはなれませんでしたが、人物造形の方は本当に上手かったと思います。本作は半世紀以上にわたる期間を描くだけに、登場人物の入れ替わりは激しく、登場回数の少ない人物も多かったのですが、それでも強烈に印象に残る人物は少なくありませんでした。すぐに思いつくだけでも、高橋是清・犬養毅・杉村陽太郎・三遊亭圓生・ヤーコプなどがいます。一方、知名度の高い人物でも織田幹雄や南部忠平のようにほとんどモブキャラだった場合もありますが、マラソンの金栗四三と水泳の田畑政治を主人公としているのですから、有名人でも重要な役割を担わせない、という脚本には問題がなかったと思います。主要人物の一人を演じていた役者の逮捕のため代役が立てられたことと、何よりも記録的な低視聴率のため、本作は大河ドラマ史における黒歴史となり、再放送も難しいかもしれませんが、いつかは再放送されて、新たな視聴者を獲得していってもらいたいものです。

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この記事へのコメント

2020年02月17日 15:57
再視聴予定ですが、第10回までは撮り直しになっているようですから、改めて録画するつもりです。