人類進化に関する誤解補足

 昨年(2018年)9月に人類進化についてのよく見かける誤解をまとめましたが(関連記事)、その後、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)に関する誤解(関連記事)と、Y染色体ハプログループ(YHg)に関する誤解(関連記事)を取り上げました。ただ、mtHgとYHgに関する誤解は、さほど浸透していないというか、おそらく声の大きなごく一部の人々が騒いでいるだけのように思います。ネットでは、そうした声の大きな人々の発言が目立ちやすいので、その影響力を過大評価するなど、引きずられようにしないといけない、と自戒しています。

 その他に、7年前に現生人類(Homo sapiens)の起源に関する誤解を取り上げました(関連記事)。おそらく日本では今でも一般的にはあまり知られていないでしょうが、現生人類(Homo sapiens)の起源との関連でマスコミに大きく取り上げられた1980年代後半の現代人のmtDNAに関する研究(Cann et al.,1987)が、その後、試料選択とソフトの使用法の問題を指摘され、1992年までに基本的には否定されたことです(Shreeve.,1996,P98,312-314)。ただ、現代人の最終共通母系祖先が20万年前頃のアフリカにいただろうという当初の結論自体は、その後の研究でも基本的には揺らぎませんでした。

 また、Cann et al.,1987以前には、現生人類アフリカ単一起源説は提唱されていなかった、もしくはほとんど注目されていなかった、というような誤解もありますが(関連記事)、それ以前に形態学的研究からアフリカ単一起源説は提唱されていました(関連記事)。そもそも、現生人類多地域進化説自体も、類似した見解は1970年代以前より存在したとしても、現在認識されているような多地域進化説の成立は1980年代になってからと言うべきで(関連記事)、現生人類アフリカ単一起源説との比較でより歴史が長いとは言えないように思います。また、多地域進化説が成立当初より大きく変容したことも、あまり知られていないように思います(関連記事)。この点を無視して、近年の多地域進化説の「復権」傾向(関連記事)を受け入れてはならないでしょう。なお、多地域進化説の成立過程は、人種問題との関連でも注目されます(関連記事)。


参考文献:
Cann RL. et al.(1987): Mitochondrial DNA and human evolution. Nature, 325, 6099, 31-36.
https://doi.org/10.1038/325031a0

Shreeve J.著(1996)、名谷一郎訳『ネアンデルタールの謎』(角川書店、原書の刊行は1995年)

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