マラリア媒介蚊の殺虫剤抵抗性機構

 マラリア媒介蚊の殺虫剤抵抗性機構エピに関する研究(Ingham et al., 2020)が公表されました。ピレスロイドを染み込ませた蚊帳は、アフリカでのマラリアに関連する罹患率と死亡率の大幅な低下の原動力となってきました。しかし、蚊帳による強い選択圧は、アフリカのハマダラカ属(Anopheles)個体群においてピレスロイドに対する抵抗性の拡大と上昇を引き起しており、マラリア防除によって得られた利益が無効になる恐れが生じています。この研究は、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)の肢に豊富に存在する化学感覚タンパク質であるSAP(sensory appendage protein)の1つ(SAP2)の発現が、この蚊にピレスロイド抵抗性を付与することを示します。

 SAP2の発現は、殺虫剤抵抗性の個体群で上昇していて、こうした蚊がピレスロイドに接触することでさらに誘導されます。ガンビエハマダラカでSAP2発現を抑制すると死亡率が完全に元に戻りますが、SAP2を過剰発現させると、おそらくSAP2のピレスロイド系殺虫剤への高親和性結合により抵抗性が上昇しました。ゲノム塩基配列解読データのマイニングにより、西アフリカの3ヶ国(カメルーン・ギニア・ブルキナファソ)の蚊個体群ではSAP2座位近傍に選択的一掃がある、と明らかになり、観察されたハプロタイプ関連の一塩基多型の増加は、ブルキナファソで報告されたピレスロイドに対する蚊の抵抗性の上昇を反映しています。この研究により、これまでに報告されていなかった殺虫剤抵抗性機構が明らかになり、この機構はマラリア防除の取り組みにたいへん重要な意味を持つと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


マラリア:SAP2がマラリア媒介蚊をピレスロイドから保護する

マラリア:マラリア媒介蚊における殺虫剤抵抗性機構

 殺虫剤抵抗性の上昇は、マラリア防除における最大の難題の1つである。今回H Ransonたちは、マラリア媒介蚊が持つ殺虫剤抵抗性の新しい機構を報告している。彼らは発現の差異の解析、RNA干渉による遺伝子抑制とトランスジェニックによる過剰発現、殺虫剤への結合試験、集団遺伝学的解析を組み合わせて、化学感覚タンパク質であるSAP2がガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)にピレスロイド抵抗性を付与することを示している。今回の知見は、マラリアを伝播させる蚊個体群の殺虫剤抵抗性に対抗する新しい方法につながる可能性がある。



参考文献:
Ingham VA. et al.(2020): A sensory appendage protein protects malaria vectors from pyrethroids. Nature, 577, 7790, 376–380.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1864-1

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