山本博文『歴史をつかむ技法』第4刷

 新潮新書の一冊として、新潮社から2013年11月に刊行されました。第1刷の刊行は2013年10月です。本書は、歴史をどう理解するのか、専門家がその「技法」を一般向けに解説しています。専門家にとっては当然の常識でも、一般層はほとんど知らないというか理解していないことは、歴史学に限らずほとんどの分野で見られます。本書は、専門家がその大きな溝を埋めようとした試みと言えるでしょう。それが成功しているのかとなると、私の見識では判断が難しいのですが、本書からもう一歩先に進むための読書案内がない点は失敗のように思います。

 私も含めて一般層が何気なく使う歴史用語の由来や、そこにどのような問題が潜んでいるのか、といった問題も本書は取り上げていますが、これは一般層が気づきにくいだけに、有益な解説になっていると思います。また、歴史学を裁判に例えているのは、分かりやすくてよいのではないか、と思います。じっさい、歴史学と裁判との間には強い類似性があるのではないか、と非専門家の私も思います。歴史の法則をめぐる本書の解説も、一般層には分かりやすいのではないか、と思います。本書は、偶然に見える個々の歴史的事件にも、それぞれの時代に一貫した動因や要因がある、と指摘します。

 本書はそうした歴史学の基礎的な概念に関する抽象的な解説だけではなく、邪馬台国の頃から日露戦争の頃までの日本史の大きな流れも概説として提示しています。著者の専門は近世史なので、やや分量の多い古代史や中世史に関しては、専門家からは異論があるのではないか、と思います。ただ、高校までの日本史教育の後、とくに日本史を学ばず、関連する本もあまり読んでこなかったものの、日本史には興味があり再度学んでみたい、というような層にはこれでよいのではないか、と思います。たとえば、足利義昭が武田信玄や上杉謙信などを糾合して「信長包囲網」を作った、と本書は述べますが、武田信玄存命の頃は、織田信長と上杉謙信は友好関係にあったと思います。

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