エチオピアの早期現生人類の身体化石

 エチオピアの早期現生人類(Homo sapiens)の身体化石について、2020年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)で報告されました(Brasil., 2020)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P35)。解剖学的現代人の出現は人類進化研究において長く大きな関心を集めてきました。しかし、早期現生人類の形態と進化に関する知識は既知の化石記録に制約されており、現時点では、地理的にも年代的にも化石記録はまばらです。さらに、化石記録は圧倒的に頭蓋と歯が多く、頭蓋より下の身体化石には断片的で遊離した状態のもの多く、現生人類の身体サイズおよび形態進化に関する理解を制約します。こうした制約を考慮すると、早期現生人類の詳細な進化のさらなる理解には、追加の化石、とくに個体の身体化石が必要です。

 エチオピアのミドルアワシュ計画(The Middle Awash project)では、10万年前頃と推定されているハリビー(Halibee)の中期石器時代世紀で、早期現生人類の部分的骨格を発見するという成果が得られています。この個体の骨格のほとんどが保存されており、脊柱の一部、肩帯および腰帯、長骨すべて、手と足のいくつかの化石を含んでいます。同じ堆積層では、7個体分のいくつかの身体化石も発見されています。これらの化石はひじょうに豊富な中期石器時代遺物と関連づけられており、巨大で多様な動物相遺骸群の一部でもあるので、行動的および生態的背景も推測できます。ハリビー化石群は、その年代および地理的位置から、現代人の祖先もしくは密接に関連する集団に位置づけられそうなので、現代人の形態の進化に関する理解に重要です。

 本報告が指摘するように、早期現生人類の形態と進化に関する理解は、化石記録が乏しいために制約されています。その意味で、ハリビー遺跡の10万年前頃の身体化石は、早期現生人類の形態と進化を解明するうえでたいへん重要になりそうですから、大いに注目されます。現生人類の起源に関して、アフリカ単一起源説を前提としつつも、現生人類の派生的な形態学的特徴がアフリカ各地で異なる年代・場所・集団に出現し、比較的孤立していた複数集団間の交雑も含まれる複雑な移住・交流により現生人類が形成された、というような見解が有力になりつつあるように思います(関連記事)。アフリカ全体が現生人類の起源地というわけで、その意味で、アフリカ各地の異なる年代の早期現生人類化石の発見が重要となるでしょう。


参考文献:
Brasil MF.(2020): Early Homo sapiens postcranial fossils from Middle Awash, Ethiopia. The 89th Annual Meeting of the AAPA.