アハルテケの起源

 トルクメニスタン原産の馬とされるアハルテケの起源について、2020年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)で報告されました(Zhu., 2020)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P319)。この研究は、中華人民共和国新疆(Xinjiang)ウイグル自治区石河子(Shihezi)市十戸窯(Shihuyao)村の墓で発見された、2200年前頃の漢代と1100年前頃の唐代のウマの遺骸のDNAを解析し、6頭の高品質なミトコンドリアゲノムが得られました。

 この6頭の、母系となるミトコンドリアゲノムのハプログループ(mtHg)はBとDに文明されました。ユーラシア他地域の古代および現代の標本との比較により、十戸窯村の墓の唐代の2頭は、アハルテケと母系で直接的に遺伝的関係を有する、と明らかになりました。これは、アハルテケの系統としては既知の最古の個体となります。文献と考古学的証拠から推測されるアハルテケの集団史では、アハルテケの普及において古代のシルクロードが大きな役割を果たした、と明らかになりました。

 これらの知見は、アハルテケのようなウマの家畜化と拡散、ユーラシア東西間の文化的交換、新疆が有する重要な位置といった歴史への新たな洞察を提供します。本報告の提示した事例は文献の残っている時代のことですが、ユーラシア東西間の交流は、草原地帯を中心として文字の開発される前から行なわれていた、と考えられます。さらに、これは現生人類(Homo sapiens)だけではなく、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のような非現生人類ホモ属においても同様だったと考えられ(関連記事)、人類史におけるユーラシア草原地帯の重要性は完新世だけではなく更新世も同様だったようです。


参考文献:
Zhu S.(2020): Molecular archaeological methods to explore the traces of Akhal-Teke in China. The 89th Annual Meeting of the AAPA.