ヒヒの意思決定

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヒヒの意思決定に関する研究(Strandburg-Peshkin et al., 2015)が公表されました。日本語の解説記事もあります。これまで、階層が確立された霊長類やオオカミといった動物は、民主主義的プロセスを通して合意に至っているのか、それとも、その決定は支配力のあるリーダーが行なっているのか、という点に関心が寄せられていました。

 この研究は、ケニアのンバラ(Mpala)研究センターで、25頭の野生のアヌビスヒヒに特別設計のグローバル・ポジショニング・システム(GPS)機能の付いたカラーを装着し、1秒ごとにヒヒの居場所を記録し、ヒヒらの互いに連動しあう動きを分析しました。その結果、特定のヒヒらが先導者となっており、先導者であるヒヒらは他のヒヒから離れるように動き始め、他のヒヒに「後を追わせる」、もしくは自分たちが戻ってくるまでその場で「待たせる」、ということが明らかになりました。

 この研究は、ヒヒでは多数のヒヒが先導者となり、先導者らの行き先が特定の方向に一致する時は後を追う傾向が強い、と見出しました。しかし、どこに行くかについて先導者らの意見が分かれている時は決定が遅れます。ヒヒは2つの行き先の角度が90度より大きい場合はそのうちの1つを選択するものの、2頭の先導者がそれぞれに示す方向の角度が90度以下の場合は妥協を図ろうとします。

 これらの知見は、野生のヒヒにおける社会的地位とリーダーシップの間の重要な差異を強調するもので、群れの間で共有される民主主義に基づく意思決定は、高度に階層化された社会的階級を持つ種の間にも広がっていることを示しています。強力で優勢な支配層が存在する種においてさえ、「民主主義」が特定の社会集団の行き先や行動を導く集団行動や集団決定に内在する特性だと考えられる、というわけです。人類にもこうした認知的基盤が備わっている、と考えられます。


参考文献:
Strandburg-Peshkin A. et al.(2015): Shared decision-making drives collective movement in wild baboons. Science, 348, 6241, 1358-1361.
https://doi.org/10.1126/science.aaa5099

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