前期完新世アマゾン地域における作物栽培と景観改変

 前期完新世アマゾン地域における作物栽培と景観改変に関する研究(Lombardo et al., 2020)が報道されました。植物栽培の開始は、人類史における最も重要な文化的移行の一つです。アマゾン川流域南西部は以前、栽培植物と野生近縁種の遺伝的類似性を示す分子マーカーに基づいて、植物の栽培化における初期の中心地だった、と提唱されました。しかし、アマゾン川流域南西部における初期の人類居住の実態や、この地域での植物栽培の歴史はほとんど明らかにされていません。

 この研究は、放射性炭素年代測定法を用いて、植物化石(植物の存在を示す丈夫なケイ酸体、プラント・オパール)を識別しました。その結果、ボリビアのモホス平原において、10250年前頃(以下、すべて較正年代)にカボチャの一種(Cucurbita sp.)が、10350年前頃にキャッサバの一種(Manihot sp.)が、6850年前にトウモロコシ(Zea mays)が栽培されていた、と明らかになりました。これらの植物が栽培されたのは、炭水化物が豊富かつ調理が容易だったから、と推測されています。

 この地域では、10850年前頃から居住者により新たな景観が作り出され始め、それが最終的に、高木がなく季節的に冠水するサバンナに点在する約4700の人工孤立林になった、と示されました。こうした孤立林は、前期完新世には盛り土と耕作が行なわれた森林中の開拓地でした。これらの知見は、モホス平原が初期の植物栽培のホットスポットであったことを裏づけるとともに、人類はアマゾン川流域に到達した時からずっと景観を大きく作り変えてきており、生息地の不均一性や種の保全に永続的な影響を与えてきた、と明らかにしています。

 この研究は、アマゾン川流域南西部が植物栽培の独自に始まった世界でも最初期の地域の一つだったかもしれない、と明らかにしました。また、アマゾン川流域南西部の最初期の住民が、到着からかなり早く植物栽培を始めた可能性も示されました。先コロンブス期のアメリカ大陸は、には広大な「手つかず」の自然が広がっており、先住民は自然と「共生」していた、というような見解を否定する知見が蓄積されつつあり、先コロンブス期アメリカ大陸は大規模に開発されており、その萌芽はすでに前期完新世にあった、と考えるのが妥当と思われます(関連記事)。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


人類学:前期完新世のアマゾン川流域における作物栽培と景観改変

人類学:アマゾン川流域で栽培されていた初期の作物

 ペルーやボリビアといったアマゾン川上流流域で景観が人間活動によって改変されてきたことは、古くから知られている。今回、高木がなく季節的に冠水するサバンナに点在する約4700の人工孤立林の一部について考古学的調査が行われ、そうした状況が印象的な形で示されている。こうした孤立林は、前期完新世には盛り土が行われ耕作が行われた森林中の開拓地であった。U Lombardoたちは、これらの孤立林の一部について炭素年代測定を行い、植物化石(植物の存在を示す丈夫なケイ酸体;プラント・オパール)を探した。その結果、ボリビアのモホス平原では、較正年代で約1万250年前にカボチャ類が、同約1万350年前にキャッサバ類が、同約6850年前にトウモロコシが栽培されていたことが明らかになった。



参考文献:
Lombardo U. et al.(2020): Early Holocene crop cultivation and landscape modification in Amazonia. Nature, 581, 7807, 190–193.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2162-7

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