『卑弥呼』第38話「古の五支族」

 『ビッグコミックオリジナル』2020年5月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハを襲った刺客がクラトに取り押さえられたところで終了しました。今回は、クラトが日見子(ヒミコ)であるヤノハの意図を咄嗟に察し、刺客を殺さずに捕らえた理由を、ミマアキがクラトに尋ねる場面から始まります。クラトは、根っからの策士であるヤノハ(日見子)は刺客が誰に雇われたのか知りたいはずだからだ、と答えます。刺客を雇ったのは、サヌ王(記紀の神武天皇と思われます)が東征のさいに筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)に残した古の支族の末裔ではないか、と疑うミマアキに対してクラトは、サヌ王が東征に出たのは百年以上前だ、その下命を今も後生大事に守る一族がいるとは思えない、と一笑します。クラトは、国境を接する都萬(トマ)の仕業だろう、と推測してみせます。国境を接しているのは穂波(ホミ)も同様ですが、ヤノハの思惑通り進めば、都萬は山社(ヤマト)に包囲される形になるので、穂波維以上に心穏やかではないだろう、というわけです。しかしミマアキは、都萬のタケツヌ王は温和で賢いと評判なので、刺客を野盗だろうか、と疑問を呈します。そこへ、山社の兵士たちが刺客の囚われている獄へと向かいます。兵士に呼ばれた刺客はある邑の長で、今年は川が氾濫し、昨年は旱魃に襲われた、と邑の窮状を訴えます。邑人は飢えているので、新たに建国された山社に税を納められず、自棄になった、と刺客はヤノハに説明します。するとヤノハは刺客に謝罪し、刺客を釈放し、食糧とともに邑へと送り返します。

 穂波では、ヲカ王が身分の高そうなトモを呼び出していました。ヲカ王はトモに、山社への使者派遣の了承を求めます。自分はヲカ王の臣下なので異存はない、とのトモの発言にヲカ王は引っかかりを覚えます。トモは穂波に預けられた古の支族の一人なので、サヌ王の領地である日向(ヒムカ)を侵した日見子(ヤノハ)に悪感情を抱くのは当然だろう、というわけです。すると、トモは、自分の一族がサヌ王の臣下だったのは昔で、今は穂波王家の僕なので、ヲカ王の決断に従うのみだ、と言って平伏し、ヲカ王は満足そうですが、平伏したトモは不敵な笑みを浮かべています。

 刺客は長を務める自分の邑に戻ると、ある男性と接触します。暗殺は失敗し、ともにヤノハ(日見子)を襲撃した従妹は殺された、と報告する刺客を労った男性は、成否に関わらず褒美をやる、と言って猪1頭を与え、刺客は男性に感謝します。この男性の背中には亀の黥が彫られており、男性と刺客とのやり取りをヌカデが草陰から密かに見ていました。トモの配下らしきキモツキは、他の四支族が共にトモと決起するのか、大昔の誓約だけに不安に思っていました。トモ・イム・ヒカネ・アズミ・ワニの五支族はサヌ王に従って東に向かいましたが、五支族の分家は筑紫島に残り、日向を侵す謀反人を監視し、制裁を下すよう、命じられていました。トモは、ここで決起しなければご先祖に顔向けができない、筑紫島に散った他の四支族も必ず日見子(ヤノハ)に対して決起するはず、と断言します。それでもキモツキは、策士の日見子が刺客を派遣したのはトモと気づくことを警戒しています。するとトモは、そのために那から来たある男(島子だったウラと思われます)を都萬に逃がしたのだ、とキモツキに説明します。日見子はウラを敵と誤認し、すぐに犬死にして山社は崩壊するだろう、とトモは自分の計画への自信を打ち明けます。

 自分が長を務める邑に帰った刺客の男性は酒宴を開き、日見子(ヤノハ)様は優しい人で、自分は大きな間違いを犯した、と反省していました。小用に立った邑長は、ヤノハの命を受けたアカメに殺されます。アカメはヤノハからもう一つ命を受けていて、直ちにその場を去ります。日向の霊霊(ミミ)川(現在の宮崎県を流れる、古戦場で有名な耳川でしょうか)河口では、ヤノハがミマト将軍・イクメ・ミマアキ・クラトと共に、ヌカデからの報告を受けていました。邑は穂波より都萬に近いものの、刺客を派遣したのは那出身者だ、とヌカデは報告します。刺客に猪を与えた男の背中には亀の黥が彫られていたことから、刺客を雇ったのは那の島子だったウラだろう、とヤノハたちは納得します。その様子をクラトが不敵に見ているところで、今回は終了です。


 今回は、サヌ王をめぐる謎がまた少し明かされました。サヌ王は東征に従った五支族の分家を九州に残し、それぞれは九州の各地に分散して、日向を侵す者を監視し、制裁を下すよう、命じていました。その五支族のうち一支族が今では穂波に仕えるトモ家で、今後、他の支族の出番もありそうです。クラトもサヌ王の命に従う者の一人ですが、百年以上経過してなお、忠誠を抱かせ続けるサヌ王は、よほど強力な日見彦(ヒミヒコ)で、畏れ敬われたのでしょう。サヌ王の子孫が今どこにいるのか、作中ではまだ明示されていませんが、おそらくは旧国名の大和、さらに絞ると纏向遺跡一帯ではないか、と予想しています。ただ、作中でどのような年代観が採用されているのか不明なので、紀元後207年(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)らしい現時点で、纏向遺跡一帯がどれだけ繁栄しているのか、不明ですが。当分は、トモ以外の古の四支族がどう動くのか、ヤノハと会う予定の暈の鞠智彦(ククチヒコ)、さらにはその上に立つイサオ王はヤノハ、さらには山社とどのような関係を築こうとしているのか、といった話が中心になりそうで、たいへん楽しみです。また、鞠智彦の配下の一員となった、ヤノハの弟のチカラオと思われるナツハがヤノハとどう絡んでくるのかも注目されます。

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