さまざまな疾患の性差のある脆弱性と関わる補体遺伝子

 さまざまな疾患の性差のある脆弱性と関わる補体遺伝子についての研究(Kamitaki et al., 2020)が公表されました。多くの一般的な疾患では男女で異なる影響が見られますが、その理由は特定されていません。たとえば、原因不明の消耗性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群(SjS)では、男性よりも女性の患者が9倍多いものの、統合失調症では女性よりも男性で頻度や重症度が高い、と明らかになっています。これら3疾患はすべて、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)座位に最も強力で共通する遺伝的関連があり、SLEとSjSに見られる関連は、この座位のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子群の対立遺伝子から生じる、と長らく考えられてきました。また、補体第4成分(C4)遺伝子もMHC座位にあり、統合失調症のリスク上昇に結びつけられています。

 この研究は、C4遺伝子のC4AおよびC4Bの多様性が、C4のありふれた遺伝型を持つ人で、SLEリスクに対しては7倍、SjSリスクに対しては16倍の変動を生じさせ、また、両疾患ではC4BよりもC4Aが強力な疾患防止効果を持つ、と示します。統合失調症のリスクを上昇させる同一の対立遺伝子は、SLEとシェーグレン症候群のリスクを大きく低下させます。これら3疾患すべてにおいて、C4対立遺伝子は女性よりも男性において強力に作用し、男性では、C4AとC4Bのありふれた組み合わせにより、SLEリスクでは14倍、シェーグレン症候群リスクでは31倍、統合失調症リスクでは1.7倍の変動が見られました(女性では、それぞれ6倍、15倍、1.26倍の変動)。

 タンパク質レベルでは、C4とそのエフェクターであるC3の両方が、20~50歳の成人において、女性よりも男性の脳脊髄液や血漿に高レベルで存在しており、これは区別の目安となる疾患への脆弱性の年齢と対応しています。補体のタンパク質レベルの性差は、男性においてC4対立遺伝子の影響がより強力なこと、SLEやSjSでは女性のリスクが高いこと、統合失調症では男性の脆弱性が大きいことの説明に役立つ可能性があります。これらの結果は、補体系がさまざまな疾患への脆弱性に見られる性的二型性の起源として関与していることを示しています。こうした性差の進化的基盤についての解明が今後進むことも期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


遺伝学:補体遺伝子はさまざまな疾患の、性差のある脆弱性に関与する

遺伝学:全身性エリテマトーデスとシェーグレン症候群の性特異的な影響における補体C4の役割

 全身性エリテマトーデス(SLE)とシェーグレン症候群(SjS)は原因不明の消耗性自己免疫疾患である。両疾患のリスクに及ぼす、共通した最大の遺伝的影響は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)座位から生じる。S McCarrollたちは今回、この影響がこれまでに考えられていたHLAの抗原特異的変動から生じるのではなく、補体第4成分(C4)遺伝子のC4AおよびC4Bのコピー数によって、よりよく説明されることを見いだしている。この結果から、SLEとSjSのリスクが、損傷した細胞由来の残屑に含まれる多くの自己抗原候補と免疫系との慢性的で持続的な相互作用から生じることが示唆された。この研究ではまた、C4遺伝子の変動に対する強力な性特異的影響のパターンが特定され、SLEやSjSの他にも、統合失調症と関連することが知られている性差について有力な説明が示されている。



参考文献:
Kamitaki N. et al.(2020): Complement genes contribute sex-biased vulnerability in diverse disorders. Nature, 582, 7813, 577–581.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2277-x

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