過去500年と比較した現代ヨーロッパの河川洪水頻度(追記有)

 過去500年と比較した現代ヨーロッパの河川洪水頻度に関する研究(Blöschl et al., 2020)が公表されました。最近の気候変動により、河川洪水の頻度と規模が前例のない形で変わりつつある、と懸念されています。歴史研究では、ヨーロッパのさまざまな地域で過去500年間に起きた複数の洪水多発期が特定されています。しかし、既存のデータセットの時間分解能が低く、洪水系列の数が比較的少ないため、長期的な観点からヨーロッパが現在洪水多発期にあるのかどうか、まだ明らかになっていません。

 この研究は、ヨーロッパの主要な地域を全て覆う文書証拠に基づく、高分解能(1年未満)の100以上の歴史的洪水系列から構成される新しいデータベースを用いて、ヨーロッパの最近の数十年間の洪水の発生状況が洪水の歴史と比べてどうなのか、分析しました。その結果、この30年間がヨーロッパにおいて過去500年間で最も洪水の多かった時期で、この期間はその範囲・気温・洪水の季節性の点で他の洪水多発期とは異なっている、と明らかになりました。

 この研究は、9つの洪水多発期とそれらに関連する地域を特定しました。最も洪水の多かった期間は、1560~1580年(ヨーロッパ西部と中央部)、1760~1800年(ヨーロッパの大半)、1840~1870年(ヨーロッパ西部と南部)、1990~2016年(ヨーロッパ西部と中央部)した。ヨーロッパの大半の地域では、以前の洪水多発期は通常より気温の低い時期に生じていましたが、現在の洪水多発期は気温がはるかに高い時期に起きている、と明らかになりました。

 また洪水の季節性も、最近の洪水多発期でより顕著でした。たとえば、ヨーロッパ中央部の以前の洪水は、洪水多発期ではその41%が、洪水の少なかった期間ではその42%が、それぞれ夏季に起こっていたのに対して、最近の洪水多発期では洪水の55%が夏季に起こっていました。現在の洪水多発期の例外的な性質は、関連する物理機構を把握できるプロセスベースの洪水リスク評価ツールと、リスクの最近の変化を組み込める管理戦略を必要としています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


歴史気候学:ヨーロッパの洪水の歴史

歴史気候学:ヨーロッパの河川洪水の異常なパターンの出現

 河川洪水は最も被害の大きい水文災害の1つだが、一貫した観測記録がないために、より遠い過去と比較した最近の洪水活動の状況の理解が一般に妨げられている。今回G Blöschlたちは、過去500年にわたるヨーロッパの大半の洪水の文書記録を収集し、空間的な広がりと強度がそれぞれ異なる、9つの洪水多発期を明らかにしている。現在の洪水多発期は、寒冷な気候ではなく温暖な気候で生じている点で以前の洪水多発期とは異なっており、夏季の洪水が比較的多い。今回の分析は、現在の洪水の特徴が以前の数百年間の洪水とは異なっていることを示している。



参考文献:
Blöschl G. et al.(2020): Current European flood-rich period exceptional compared with past 500 years. Nature, 583, 7817, 560–566.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2478-3


追記(2020年7月27日)
 以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。



環境:最近の数十年間に増加したヨーロッパの洪水

 過去500年間のヨーロッパにおける洪水事象の分析が行われ、ここ30年間がヨーロッパで最も洪水の多い期間だったことを報告する論文が、Nature に掲載される。この論文では、この30年間が、洪水に関連する季節性、被災域、気温の点で過去の洪水事象と異なることが示唆されている。この知見は、洪水リスクの評価と管理戦略の向上に役立つ可能性がある。

 ヨーロッパでは、ここ数十年間に洪水による多額の経済的損失が生じており、以前の研究では、ヨーロッパの一部地域で洪水事象が増加していることが示されている。しかし、現在の傾向は、通常より洪水の発生頻度が高く、規模が大きいと言えるのか、過去の洪水の多かった期間と異なるのかどうかといった点は解明されていない。

 今回、Gunter Bloschlたちの研究チームは、歴史的記録(法定記録、新聞、公的・私的な通信文書)を用いて、1500~2016年にヨーロッパ全土の103の河川で発生した9576件の洪水事象のデータベースを構築し、ヨーロッパの歴史上、一定の時間間隔で洪水が多くなった9つの期間を特定した。これまでに洪水が多かった期間は、その前後の各年よりも低温になる傾向があったが、季節的洪水のリスクは変化しなかった。ところが、今回の研究で直近の洪水の多い時期である1990~2016年を分析したところ、この期間中の気温が、その前後の各年よりもおよそ摂氏1.4度高かったことが分かった。また、この期間中の季節的洪水のリスクが、特に夏季に上昇したことも明らかになった。

 Bloschlたちは、データが2016年までしかないものの、その後も洪水の多い時期が続いていた可能性があると指摘し、こうした変化を説明できる洪水リスク管理・評価ツールの必要性を明確に示している。

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