最終氷期における地球規模の急激な気候変動現象の同時発生

 最終氷期における地球規模の急激な気候変動現象の同時発生に関する研究(Corrick et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。グリーンランドの氷床コアから得られた最終氷期(11万5000~1万1700年前頃)の気候記録により、温暖期と寒冷期を繰り返す急激な気候振動が明らかになっています。こうした振動は、ダンスガード・オシュガー(DO)イベントとも呼ばれており、急速な温暖化の時期へと急激に移行した後、徐々に、そして急激に寒冷期に戻るという特徴があります。

 振動は100年から1000年の単位で準周期的に起きます。最終氷期には北極圏以外でも同様の急激な気候変動現象が発生した、と地球上の遠く離れた場所で得られた数多くの古気候記録によって確認されています。急激な移行の原因となる過程についてはよく分かっていませんが、いくつもの過程が関連していると推測されています。しかし、同程度の精度をもつ正確な古気候の年代測定法がないため、グリーンランドのDOイベントが、他の場所で起きた急激な気候変動と同時期に発生したかどうかを判断するのは困難です。

 この研究は、正確な年代で発表された高精度の洞窟生成物記録を63件収集しました。これらの記録は、北半球の中緯度地方から南半球の亜熱帯地方におよぶ地域の、最終氷期の気候を示します。この研究はこうしたデータセットを用いて、53の大規模および小規模の急激な温暖化現象について発生時期を調べたところ、グリーンランドの氷に記録されていた現象の発生時期は、アジアのモンスーン地域、南アメリカ大陸のモンスーン地域、ヨーロッパの地中海地域で急激な気候変動が発生した時期と同じだった、と明らかになりました。この知見から、北極圏の急激な温暖化現象が地球規模の急激な気候変動を引き起こした、と示唆されます。

 これにより、地球の両半球をまたいで気候現象がほぼ同時に発生するテレコネクション(遠隔地の大気や海洋の変動が結びついて相互に有意な相関関係にある現象、遠隔相関)が明らかになりました。これは、今後世界中で発生すると予測される急激な気候変動を考えるうえで重要です。また、この時期には現生人類(Homo sapiens)の拡散と非現生人類ホモ属(古代型ホモ属)の絶滅という人類史の重要な事象が起きているので、その関連という点でも注目されます。


参考文献:
Corrick EC. et al.(2020): Synchronous timing of abrupt climate changes during the last glacial period. Science, 369, 6506, 963–969.
https://doi.org/10.1126/science.aay5538

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