『卑弥呼』第52話「擁立」

 『ビッグコミックオリジナル』2020年12月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハがナツハに自分の世話を命じ、ナツハが不敵な笑みを浮かべるところで終了しました。今回は、山杜(ヤマト)が暈(クマ)から独立し、筑紫島の諸王との和議交渉が成立して、山社に筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)の諸王と伊岐(イキ、現在の壱岐でしょう)および津島(ツシマ、現在の対馬でしょう)の王も集まり、祝宴が開催されている場面から始まります。百年ぶりの平和ということで、人々は喜んでいるようです。筑紫島の諸王と伊岐および津島の王はヤノハを日見子(ヒミコ)と認め、倭の王として擁立する、と誓います。ヤノハは那(ナ)のトメ将軍に、ミマアキとともに豊秋津島(トヨアキツシマ、本州を指すと思われます)の日下(ヒノモト)の国を探索するよう、命じていましたが、那は韓(カラ、朝鮮半島を指すのでしょう)への航路には通じていても、穴門(アナト、現在の山口県でしょうか)の関(関門海峡でしょうか)を通過する航路をよく知らないため、那のウツヒオ王は都萬(トマ)のタケツヌ王に、舟の貸し出しを依頼していました。

 その頃、ヒルメに依頼された夜萬加(ヤマカ)のシカオという刺客が、鞠智彦(ククチヒコ)とその配下に見つかり、殺されました。鞠智彦たちは荒爪山(アラツメヤマ)のヒルメを訪れ、閼宗(アソ)でヤノハを襲撃するよう、シカオに命じた件でヒルメを問い質します。ヤノハとは密かに和議を結んでいるので、暈に疑いが及ぶのは迷惑だ、と鞠智彦に内情を語られたヒルメは、ヤノハを殺そうとしたのではなく、その化けの皮が剥がそうとする策略だった、と言って鞠智彦に土下座して赦しを乞いますが、鞠智彦はヒルメを殺そうとします。ヤノハは7ヶ国(筑紫島の5ヶ国と伊岐おおよび津島)からに信頼を得て、民からは現人神としてあがめられており、真偽はともかく日見子以外の何者でもなく、ヒルメの策をじっくり聞きたいが時間はない、と言ってヒルメを殺そうとします。そこへ、麓から大勢の邑人と無数のイヌが押し寄せている、との報告が入ります。早急にヒルメを殺して脱出しよう、と鞠智彦の部下は進言しますが、ヒルメは、ヤノハが自滅すれば秘密の和議も必要ないだろう、と鞠智彦に訴えます。自分の策が奏功すればヤノハは神通力を失い、日見子の座より引きずり降ろされるはずだ、とヒルメは鞠智彦に説明します。そうすれば、山社と同盟を結ぶ7ヶ国の王の心は折れ、鞠智彦は労さずして筑紫島を支配できるだろう、というわけです。

 霊霊(ミミ)川(現在の宮崎県を流れる、古戦場で有名な耳川でしょうか)の河口では、眠れないミマアキにトメ将軍が声をかけます。ミマアキは、自分がいない今、ヤノハの警固は大丈夫なのか、心配していました。ヤノハは現人神ゆえに、人には降りかからない禍が襲うのではないか、というわけです。山社での祝宴が終わり、ウツヒオ王を最後に諸国の王は帰国します。朝餉を運んできたナツハを、覚えが早いとヤノハは褒め、ナツハは笑顔を浮かべます。俯いたナツハが、首尾よくいけば1年後、ナツハは民の怒りのなか、八つ裂きにされる、とのヒルメからの指示を思い出し、不敵な笑みを浮かべるところで今回は終了です。


 今回は、ヤノハを追い落とすヒルメの策が少し明かされました。ヒルメの策は、1年をかける長期的なもので、ヤノハの日見子としての権威を失墜させ、首尾よくいけば怒った民に八つ裂きにされる、とのことです。この策がどのようなものなのか、私には予測困難ですが、『三国志』によると、王となってからの卑弥呼(日見子)と会った人はきわめて少ないと見えるので、それと関連しているかもしれません。食事に毒を少量ずつ混ぜたり、犬や狼に襲わせたりするなどして、容貌など外見に現人神とは人々が認めなくなるような変化を生じさせる、というような策が想定されます。しかし、ヤノハはほとんど人前に姿を見せないことで、危機を切り抜けるのかもしれません。また、ナツハはヤノハの弟のチカラオと考えられますが、それが両者の関係にどう影響してくるのか、という点も注目されます。これまで、ヤノハがそれに気づいていることを示唆する描写はありましたが、ナツハの方にはそうした描写が全くないように思います。ナツハは姉の顔を忘れてしまったとも、それとも賊に郷里を襲われて姉と生き別れになったことで姉を恨んでおり、母のように慕うヒルメの策の遂行に躊躇いがまったくない、とも考えられます。もっとも、両者が姉弟とはまだ確定していないので、これは的外れな憶測かもしれません。今後しばらくは、ヤノハとナツハとの関係と、日下へと向かったトメ将軍とミマアキの動向が注目されます。

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