中期ジュラ紀のハラミヤ類の単孔類様の聴覚器

 中期ジュラ紀のハラミヤ類の単孔類様の聴覚器に関する研究(Wang et al., 2021)が公表されました。現生脊椎動物のうち哺乳類は、音波を変換し可聴周波数範囲の拡大(特に高音域)を促進する3つの耳小骨(槌骨と砧骨と鐙骨)の連鎖を有する点で他と区別されます。対照的に、初期の化石哺乳類および近縁動物では、これらと相同の骨は下顎骨との連結を介して咀嚼の機能も果たしていました。近年、保存状態の良好な中生代哺乳類がいくつも発見されたことで、耳小骨の二重の機能(咀嚼と聴覚)から単一の聴覚機能への移行について垣間見る機会が得られています。こうした移行は、哺乳類の進化において少なくとも3回起こったことが、現在広く受け入れられています。この研究は、槌骨と砧骨と外鼓骨(鼓膜を支える骨)が極めて良好に保存された、中期ジュラ紀(1億6000万年前)のハラミヤ類(Vilevolodon diplomylos)のものとされる頭蓋および頭蓋後方の骨格について報告します。

 ハラミヤ類として知られる、きわめて古い絶滅した哺乳類分類群の系統発生学的な位置づけに関しては、これまで2つの相反する見解がありました。議論の中心となってきたのは、哺乳類の進化できわめて重要となる中耳の構造です。一方の見解は、ハラミヤ類の耳小骨が、骨化したメッケル軟骨により歯骨と連結されたままになっていたというもので、これによるとハラミヤ類はきわめて祖先的となります。もう一方の見解は、ハラミヤ類の耳小骨が3つに分かれていたというもので、この解釈ではハラミヤ類は多丘歯類(同じく絶滅した哺乳類分類群で、進化的により派生的)に近縁となります。当ブログではこれまでハラミヤ類について、大いに繁栄した後に絶滅した齧歯類様の多丘歯類に近縁だとか(関連記事)、最古の滑空哺乳類だとか(関連記事)、独特の中耳構造だったとか(関連記事)、ゴンドワナ大陸の分類不明な「hahnodon」類の歯との類似性だとか(関連記事)いった見解について、取り上げてきました。

 この新たなハラミヤ類化石標本を他の中生代哺乳類および現生の哺乳類のものと比較した結果、その下顎には歯骨後方の溝もメッケル溝も見られませんでした。これは、この化石を含む複数の中生代化石、現生の単孔類、および現生の有袋類や有胎盤類の個体発生初期に見られる重なり合った砧槌関節が、耳小骨の二重機能から単一機能への移行において複数の哺乳類分類群で進化した形態である、と提案されます。ハラミヤ類はきわめて祖先的な哺乳類の派生的分類群ではなく、より進化的に進んだ(多丘歯類により近縁の)分類群だった可能性が高い、というわけです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:中期ジュラ紀のハラミヤ類の単孔類様の聴覚器

古生物学:ハラミヤ類の謎が解けた

 ハラミヤ類として知られる、極めて古い絶滅した哺乳類分類群の系統発生学的な位置付けに関しては、これまで2つの相反する見解があった。議論の中心となってきたのは、哺乳類の進化で極めて重要となる中耳の構造である。一方の見解は、ハラミヤ類の耳小骨が、骨化したメッケル軟骨によって歯骨と連結されたままになっていたというもので、これによるとハラミヤ類は極めて原始的ということになる。もう一方の見解は、ハラミヤ類の耳小骨が3つに分かれていたというもので、この解釈ではハラミヤ類は多丘歯類(同じく絶滅した哺乳類分類群で、進化的により派生的)に近縁となる。今回S Biたちは、ハラミヤ類Vilevolodon diplomylosの新たな標本について報告している。この標本は、以前Natureで記載されたホロタイプと同一の場所および地層から発掘されたもので、その下顎には歯骨後方の溝もメッケル溝も見られなかった。これは、Vilevolodonのホロタイプを除く他の全ての真ハラミヤ類で報告されている状態で、このことから、ハラミヤ類が極めて原始的な哺乳類の派生的分類群ではなく、より進化的に進んだ(多丘歯類により近縁の)分類群であったと示唆された。



参考文献:
Wang J. et al.(2021): A monotreme-like auditory apparatus in a Middle Jurassic haramiyidan. Nature, 590, 7845, 279–283.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-03137-z