初期中新世のサメ類の大量絶滅

 初期中新世のサメ類の大量絶滅に関する研究(Sibert, and Rubin., 2021)が報道されました。日本語の解説記事もあります。研究データによると、今日のサメ類の多様性はかつてのサメ類の多様性のわずか一部に過ぎません。古代の海洋生態系について分かっていることの大半は、岩石と化石記録から得られたもので、そうした試料は一般的に浅瀬の堆積物に限定されており、それでは海洋全域における海洋種の歴史の一端しか見られません。

 この研究は、地球の深海底堆積物コアの中の小さな化石を用いて、海の最上位捕食者の一つであるサメ類の個体数と多様性の変化について、新たな見解を示しました。この研究は、イクチオリスと呼ばれる堆積物コアの中の微化石(海底に自然堆積したサメなどの硬骨魚の鱗と歯)を用いて、この約4000万年にわたるサメの多様性と個体数の記録を作成しました。その結果、サメ類は1900万年前頃の初期中新世に、個体数は90%以上、形態的多様性は70%以上減少し、記録から消えていなくなったのも同然だった、と明らかになりました。

 不可解なこの絶滅事象は、判明しているどの地球規模の気候事象や陸生生物の大量絶滅とも無関係に起こった、と考えられます。その原因は依然として分かっていませんが、この研究は、この絶滅事象によって外洋性捕食魚類の生態系が根本的に変わり、その結果として大型の回遊性サメ類の存続の下地ができ、現在はそれらが地球の海を支配している、と指摘しています。

 近年の保護活動の向上にも関わらず、大洋性のサメ類を対象にした規制を設ける国はほとんどなく、初期中新世の絶滅事象と現在の人為的ストレスが引き起こすサメ類の減少はひじょうに似ている、と指摘されています。外洋性のサメの群れは1900万年前頃の不可解な絶滅事象から回復することはなく、生き延びたサメ類の生態学的運命は、現在では人間の手中にある、というわけです。


参考文献:
Sibert EC, and Rubin LD.(2021): An early Miocene extinction in pelagic sharks. Science, 372, 6546, 1105–1107.
https://doi.org/10.1126/science.aaz3549