大河ドラマ『青天を衝け』第30回「渋沢栄一の父」

 今回で栄一の父である市郎右衛門が退場となります。市郎右衛門は無鉄砲な息子を時として厳しくも暖かく見守りつつ栄一を導き、栄一のような野心の強い個性的な人物にとって理想的な父親として造形されていたように思います。市郎右衛門の実像と本作の人物造形との間にどれだけの違いがあるのか知りませんので、渋沢家に詳しい視聴者にとっては不満があるかもしれませんが、私は市郎右衛門の描写には満足しています。大河ドラマで時として登場する主人公にとって理想的な父親だった、と言うべきでしょうか。

 初期明治政府の混乱しつつも活気ある改革も描かれましたが、栄一をはじめとして三条実美や大隈重信や井上馨や伊藤博文など江藤新平などはまだ20代後半から30代で、岩倉具視や西郷隆盛や大久保利通でも40代と、初期明治政府の若さを改めて思い知らされます。まあ、当時は平均寿命が短く、今よりもずっと若く隠居することも多かったでしょうが。今回は廃藩置県へと至る流れが描かれ、政策面の具体的過程に重点を置いた明治維新を扱った大河ドラマとして、本作はなかなかよいと思います。やや気になるのは、大久保利通が単純な小物悪役として描かれているように見えることですが、今後大久保の真意が描かれることもあるのではないか、と期待しています。