前期更新世のインド南部におけるアシューリアン石器

 石器前期更新世のインド南部におけるアシューリアン(アシュール文化)石器についての研究(Pappu et al., 2011)の要約を読みました。この研究では、インド南部のタミルナードゥ州アティラムパッカムにある遺跡で発見された石器についての分析が報告されています。インド南部にはアシューリアン遺跡が多いのですが、年代が特定されているものは少なく、それらに基づいて中期更新世とされています。しかし、いくつかの遺跡についてはより古い年代が提示されており、議論となっています

 この研究で取り上げられた、アティラムパッカムにある遺跡で発見された石器は、握斧などアシューリアン石器を含みます。これらの石器の年代が古地磁気測定とアルゴン・ベリリウム法により測定され、最初期のアシューリアン層は少なくとも107万年前よりも古く、平均年代は151±7万年前となります。人類はすでに更新世前期のインド南部に存在していた可能性が高いということになりますが、ジャワ島での人類の痕跡が180万年前までさかのぼるとすると、この年代は不思議ではなく、インド南部における人類の痕跡が200万年前近くまでさかのぼる可能性もあるでしょう。

 またこの研究では、この年代が妥当だとすると、アシューリアンの両面加工技術は、じゅうらい考えられていたよりも早く、広大な地域に普及していたことになる、とも指摘されています。モヴィウス線仮説は、中国でもアシューリアンが発見されていますから、現在では見直しが必要でしょうが、現時点では、ユーラシア大陸東部でアシューリアンがほとんど見られず、モヴィウス線仮説はまだかなりの程度有効だと言えるでしょう。アシューリアンが早期にインド南部まで普及していたとすると、その東方へのアシューリアンの普及がほとんど進まなかった理由について、改めて検証が必要になるでしょう。


参考文献:
Pappu S. et al.(2011): Early Pleistocene Presence of Acheulian Hominins in South India. Science, 331, 6024, 1596-1599.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1200183

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