ドマニシ遺跡の新たな頭蓋と初期ホモ属の進化

 グルジアのドマニシ遺跡で発見された新たな頭蓋についての研究(Lordkipanidze et al., 2013)が報道されました。『サイエンス』の今週号は、新たに報告されたドマニシ遺跡出土の頭蓋骨を表紙で取り上げています。今回新たに報告された頭蓋(D4500)は、2005年に発見されました。その5年前の2000年に、すでに下顎部(D2600)が発見されており、早期更新世の成人のほぼ完全に保存された頭蓋骨としては、世界初となります。これで、ドマニシ遺跡で発見された頭蓋骨は合計5人分となります。

 今回新たに報告された頭蓋骨は、大きな顎前突の顔や小さな脳容量(546㎤)や大きな歯が特徴となっており、(便宜的に)ハビリスと分類されているアフリカの最初期のホモ属と解剖学的に類似しています。一方で、この頭蓋骨にはホモ=エレクトスと類似した特徴も見られます。これまでの早期更新世ドマニシ人骨と同じく、原始的な特徴およびエレクトスと共通する派生的特徴とが混在している、という特徴を示しています。

 この研究では、ドマニシ遺跡で発見された頭蓋骨合計5人分が比較され、これらは同一種に属するとされています。このドマニシ人骨群をあらたな種(ホモ=ゲオルギクス)と分類する見解もありますが、種区分と人類進化系統樹上の位置づけに関してはまだ共通見解がないというのが現状だろう、と思います。この研究では、ドマニシ人はエレクトスと同系統に属しており、ハビリスやルドルフェンシスなど最初期のホモ属とされる種も同系統に属する、と示唆されています。

 しかし、この見解に否定的な研究者は多いようです。この研究は頭蓋骨の形状ばかりに注目しており、血管を通す孔の大きさなどといった特徴が見落とされている、というわけです。また、首から下の解剖学的特徴が無視されている、との批判もあります。たとえば、ハビリスには上肢が長いという原始的特徴が見られ、エレクトスとは異なっています。このことから、ハビリスは地上生活に完全に適応していたのではなく、まだ樹上生活にも適応していたのではないか、と推測されています。なお、ハビリスは少なくとも、エレクトスの出現からおそらくは40万年以上経過していたであろう144万年前頃まで生存していました。

 現時点では、早期更新世のドマニシ人には「起こりつつある進化」が記録されている、というフレッド=スポア氏の見解が魅力的に思えます。おそらくは200万年以上前に、ハビリス的な人類の一部からエレクトスの直系祖先が分岐し、じょじょにエレクトス固有の派生的特徴を強めていったのでしょう。その後、この系統においてエレクトスと原始的な特徴も有するドマニシ人的な集団とが分岐したか、アフリカでドマニシ人的な人類とエレクトスの系統が分岐する前に、ドマニシ人の直系祖先が他のホモ属に先駆けてユーラシア大陸に進出したのではないか、と思います。


参考文献:
Lordkipanidze D. et al.(2013): A Complete Skull from Dmanisi, Georgia, and the Evolutionary Biology of Early Homo. Science, 342, 6156, 326-331.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1238484

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