『卑弥呼』第30話「人柱」

 『ビッグコミックオリジナル』2019年12月20日号掲載分の感想です。前回は、那のホスセリ校尉と兵士たちが、トメ将軍への支持を表明したところで終了しました。今回は、五瀬の邑の老翁(ヲジ)がヤノハに生贄をどのように送り出しているのか、説明する場面から始まります。五瀬から玄武の方角、つまり北方へ石の柱の道が始まるところより、鬼八荒神(キハチコウジン)の支配地となります。石柱の手前の広場まで8人の生贄は輿で運ばれ、邑の男たちは毎年、輿を広場に置くと、生贄と「送り人」を残して立ち去ります。「送り人」は、生贄である8人の娘を奥の祭祀の場に導き、柱にくくりつけます。代々の「送り人」は鬼八を見たことがないのか、とヤノハに問われた邑長と老翁は、見てはいるだろうが、その途端に黄泉の国へ送られる、つまり殺されるだろう、と答えます。「送り人」は腰布以外身に着けない決まりなので、どんなに屈強な男でも鬼八に襲われたら殺されるだろう、というわけです。

 ヤノハに策を問われたミマト将軍とテヅチ将軍は、生贄を捧げず怒った鬼八の襲撃を待つか、こちらから討って出るのかどちらかだ、と答えます。今晩、人柱になる娘たちに会いたい、とヤノハに言われた邑長は、もったいないことだ、と断ろうとしますが、気高い女性たちを勇気づけずに何が日見子(ヒミコ)だ、と言います。ヤノハは生贄とされる女性たちに、戦いを学んだことがあるか、と尋ねます。すると、5人が挙手します。さらにヤノハが、鬼と戦う覚悟があるのか尋ねたところ、4人が挙手します。ヤノハは、ミマト将軍・テヅチ将軍・ミマアキ・イクメ・邑長と対策を練ります。ヤノハは、人柱の中に兵を潜ませてはどうか、と提案します。ミマアキは化粧をせずとも美しい女性に擬装できる、というわけです。クラトもいけるだろう、と言うミマアキに、化粧で黥を隠すようクラトに伝えよ、とヤノハは命じます。自分も参戦したいと言うイクメを、父のミマト将軍は制止しようとしますが、自分は幼い頃より父に言われて武芸に励んでおり、暈(クマ)の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)でも戦女(イクサメ)希望で、そこらの男性よりずっと戦える、と言います。それでも娘の参戦に反対するミマト将軍ですが、女子も武人たれという自身の言葉を持ち出されてしぶしぶ娘の参戦を認め、ただし死ぬな、と言います。イクメは気丈に、天照大御神は自分を見捨てない、と言います。テヅチ将軍は、兵士200人が千穂を囲み、50人の精兵を人柱付近に潜ませるよう、提案します。ミマト将軍は、「送り人」には副官のオオヒコを任せます。オオヒコならば、たとえ素手でも敵の10人や20人は造作ない、というわけです。

 邑長は日見子たるヤノハに、自分たちの勝利と鬼八の滅亡の祈願を願い出て、ヤノハは楼観に籠ります。しかし、ヤノハは天照大御神の正式な祈り方も知らず、よくばれないものだと自嘲し、戦の間は祈るふりをして楼観で高みの見物も悪くないか、と呟きます。するとヤノハは、モモソの幻覚?を見ます。モモソはヤノハに、イクメとミマアキを人柱に潜ませて終わりなのか、と問いかけます。焦った様子で、よい作戦だと思わないか、と答えるヤノハに、二人が心配ではないのか、とモモソは尋ねます。もちろん心配だが、自分は総大将なので心を鬼にした、と答えるヤノハを、嘘だ、とモモソは一喝します。戦に勝ちたいが、自分だけは誰を犠牲にしても生き残りたいのだ、とモモソに指摘されたヤノハは返答に窮し、何をしろと言うのか、とモモソに問いかけます。するとモモソはヤノハに、本当は何をすべきか分かっているだろう、そなたは歴代の日見子の中で最も血塗られた女王だ、と告げます。

 夜中に生贄8人は石柱の前の広場に連れていかれ、オオヒコはイクメやミマアキなどたち生贄を柱に縛りつけていきます。オオヒコはミマアキに、お前が女なら惚れるところだ、と声をかけます。8人全員が縛りつけられると、いつ敵が来るか分からないので、すぐに紐を切れるよう、刀を準備せよ、とイクメは呼びかけます。恋仲のミマアキとクラトは、互いの美貌を誉めあいます。生贄に選ばれた五瀬邑の娘の一人が沈んでいる様子を見て、この世に鬼は存在しない、正体は人に決まっている、とクラトとミマアキは励まします。しかし、五瀬の邑の娘たちは悪臭に精神的打撃を受けていました。夜が明けると、串刺しにされた腐りかけの複数の死体と、多数の頭蓋骨が見えてきて、五瀬の邑の娘たちは錯乱します。オオヒコはイクメに、紐を切ってこちらから討って出よう、と提案しますが、ヤノハが反対します。ヤノハも生贄の一人として紛れ込んでいたのでした。イクメは総大将のヤノハが現場にいることに反対しますが、だから来たのだ、とヤノハは落ち着いた様子で答え、合図は自分が出す、まずは化け物の数と正体を見極めよう、と言います。ヤノハたちに「何か」が迫ってくるところで、今回は終了です。


 今回は、鬼八荒神との接触との直前までが描かれました。多数の人々を殺害し、その遺骸を積み上げる鬼八荒神の正体と意図は、鬼八荒神が鬼道に通じているとされ、『三国志』によると卑弥呼(日見子)は鬼道により人々を掌握した、とありますから、かなり重要になってくると思います。おそらく、ヤノハは鬼八荒神も配下に組み入れることになるのでしょう。千穂(高千穂)の謎は、序盤の山場になるかもしれません。ヤノハがどのような策で鬼八荒神を迎え撃つのか、楽しみです。また、今回は描かれず、次回も描かれないかもしれませんが、那国情勢も気になるところで、トメ将軍がどのように事態を解決させようとするのか、楽しみです。

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