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後期ホモ属の系統樹

2019/03/24 17:44
 昨年(2018年3月)、後期ホモ属について系統・交雑関係をまとめました(関連記事)。しかし、上手く図を作成できなかったので、当ブログで取り上げた論文の図を掲載することにします。まずは、現生人類(Homo sapiens)と古代型ホモ属との交雑の論点を整理した論文(Wolf, and Akey., 2018)です(関連記事)。同論文は、おもに現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)など古代型ホモ属との交雑を取り上げており、重要な論点が的確に整理されており、参考文献が多数引用されているので、この問題を調べるのにたいへん役立ちます。以下、同論文の図1です。
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 次は、中期更新世〜青銅器時代までのヨーロッパの人類史を遺伝学的観点から検証した論文(Lazaridis., 2018)です(関連記事)。こちらはヨーロッパを対象としているので、ユーラシア東部やオセアニアやアメリカ大陸について図で詳しく取り上げられているわけではありませんが、古代DNA研究はヨーロッパを中心としてユーラシア西部において他地域よりもずっと進展しているので、現時点での詳細な系統樹はどうしても、ヨーロッパを中心としたユーラシア西部に偏ってしまいます。同論文では、ネアンデルタール人滅亡後のヨーロッパにおける現生人類の各地域集団の関係も簡潔に整理されており、たいへん有益だと思います。以下、同論文の図です。
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参考文献:
Lazaridis I.(2018): The evolutionary history of human populations in Europe. Current Opinion in Genetics & Development, 53, 21-27.
https://doi.org/10.1016/j.gde.2018.06.007

Wolf AB, Akey JM (2018) Outstanding questions in the study of archaic hominin admixture. PLoS Genet 14(5): e1007349.
https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007349
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レヴァントオーリナシアン特有の象徴的な遺物

2019/03/24 09:53
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、レヴァントオーリナシアン(Levantine Aurignacian)の象徴的な遺物に関する研究(Tejero et al., 2018)が公表されました。オーリナシアン(Aurignacian)はユーラシアにおける現生人類(Homo sapiens)の拡散の指標とされる文化であり、高い関心が寄せられてきました。オーリナシアンは、ヨーロッパにおいては、プロトオーリナシアン(Proto-Aurignacian)、早期オーリナシアン(Early Aurignacian)、発展オーリナシアン(Evolved Aurignacian)などと分類されています。

 レヴァントオーリナシアンは、少なくとも部分的には、ヨーロッパの発展オーリナシアンと年代が重なっている、と推測されています。ヨーロッパの複数段階のオーリナシアンとレヴァントオーリナシアンとの関係は議論になっています。それは、中部旧石器時代〜上部旧石器時代への移行期において、ヨーロッパの早期上部旧石器文化はレヴァントなどアジア南西部に起源があると考えられるものの、レヴァントオーリナシアンの年代は、ヨーロッパのプロトオーリナシアンよりも遅いからです。またレヴァントオーリナシアンは、前後の時代のレヴァントの文化よりも、ヨーロッパ西部の古典的オーリナシアンの方と類似している、とも指摘されています。そのため、上部旧石器時代早期において、ヨーロッパのプロトオーリナシアンの担い手の一部がレヴァントに「戻り」、レヴァントオーリナシアンの出現に影響を及ぼした、との見解も提示されています(関連記事)。

 本論文は、イスラエルの低地ガリラヤ地域のハヨニム洞窟(Hayonim Cave)の、レヴァントオーリナシアン期となるD層で発見された刻み目のある骨について報告しています。これはガゼルの肩甲骨8点と舌骨1点で、顕微鏡分析から、単なる解体痕(cut marks)ではなく、むしろ意図的な人為的刻印と推測されています。本論文はこれを、象徴的遺物と解釈しています。線刻のある象徴的遺物は中期石器時代のアフリカやレヴァントも含むユーラシアの上部旧石器時代において発見されていますが、レヴァントでは発見事例が少ない、と本論文は指摘しています。また、線刻のある象徴的遺物の中には、現生人類だけではなくネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)所産のものもあることも、本論文は指摘しています(関連記事)。

 本論文はハヨニム洞窟で発見された刻み目のある骨に関して、集団内および集団間の特定の情報の伝達に用いられた可能性を提示しています。紋章のようなものだったのではないか、というわけです。顕微鏡分析では、個人的装飾品として用いられたような摩耗痕が見られないからです。また、こうした線刻に関しては、月相の記録とする見解もあります。しかし、本論文で分析対象とした骨はおそらく一度に同じ石器で刻まれており、この見解は成立しないだろう、と本論文は指摘しています。

 広く中期石器時代のアフリカや上部旧石器時代のユーラシア(ネアンデルタール人の遺物に関しては中部旧石器時代ですが)に見られる線刻のある遺物ですが、地域的特徴もそれぞれ見られます。ヨーロッパの早期オーリナシアンでは、刻み目のある遺物の素材は、トナカイやアカシカやウシやマンモスの骨・枝角・牙など多様です。一方、レヴァントオーリナシアンの刻み目のある遺物はガゼルのみで、しかも、ほぼ肩甲骨に限定されています。この点で、ヨーロッパの早期オーリナシアンの多様性と、レヴァントオーリナシアンの均一性は対照的です。

 ガゼルはレヴァントのハヨニム洞窟やマノット洞窟(Manot Cave)遺跡で最も広範に狩られていた動物であり、その肩甲骨と舌骨は薄くて脆いので刻みやすいので、ガゼルの肩甲骨と舌骨が線刻の対象として選ばれたことは不思議ではない、と本論文は指摘します。しかし、ハヨニム洞窟のレヴァントオーリナシアン層では、アカシカやキツネやウマなどの歯で作られたペンダントが発見されており、線刻の対象としてガゼルの骨が選ばれたのには意味があり、それは集団内および集団間の特定の情報の伝達に用いられたからではないか、と本論文は推測しています。

 本論文は、ヨーロッパのオーリナシアンと比較して、レヴァントオーリナシアンにおいて線刻対象の素材の対象範囲が狭かったのは、レヴァントオーリナシアンの存続期間がより短く、またその地理的範囲もずっと狭かったからではないか、と推測しています。本論文は、ヨーロッパのオーリナシアンの多様性にたいして、レヴァントオーリナシアンの均質性と共同体間の強い結びつきの可能性を指摘しています。なかなか興味深い見解で、さらに対象となる地域・時代を拡大しての比較研究の進展が期待されます。


参考文献:
Tejero JM. et al.(2018): Symbolic emblems of the Levantine Aurignacians as a regional entity identifier (Hayonim Cave, Lower Galilee, Israel). PNAS, 115, 20, 5145–5150.
https://doi.org/10.1073/pnas.1717145115
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李相僖、尹信榮『人類との遭遇 はじめて知るヒト誕生のドラマ』

2019/03/23 06:43
 イ・サンヒ(Sang-Hee Lee、李相僖)、ユン・シンヨン(Shin-Young Yoon、尹信榮)著、松井信彦訳で、早川書房より2018年12月に刊行されました。原書の刊行は2015年です。本書は人類進化史を時系列に沿って体系的に解説するのではなく、一般層で関心の高そうな話題を各章で扱う、という構成になっています(付録2は簡略な人類進化史概説になっていますが)。本書は韓国の一般向け科学雑誌『科学東亜』での2012〜2013年にかけての連載を加筆修正したとのことで、この構成であることも納得できます。本書の元となっている連載は、今となってはやや古い時期となるので、最新の知見を得ることには適していないかもしれませんが、人類進化について一般層が高い関心を抱いたり誤解しそうだったりする問題を中心に解説されており、有益な一冊になっていると思います。ただ、以下に何度か述べていきますが、著者は現生人類(Homo sapiens)多地域進化説を支持しており、その立場からの偏向が目立つように見えて、この点は一般向け書籍として問題だと思います。

 本書は第1章で、人類史において「食人行為」があったことは「食人種」の存在の証拠とはならない、と注意を喚起しています。本書は、普通の摂食の一環として他人を食べる集団はいない、と指摘します。ただ、儀礼の一環、また極限的な飢餓状況での食人行為の存在は認められています。

 第2章では、霊長類において成体の雄(多くの場合は父親)が子育てに関わるのはほぼ人間だけだ、と主張されています。しかし、山極寿一『家族進化論』(関連記事)が指摘するように、霊長類において成体の雄が子育てに関わることはさほど珍しくありません(P231〜259)。人類社会がアウストラロピテクス属やさらにさかのぼってアルディピテクス属の頃から一夫一婦制だった、との見解に本書は否定的です。また本書は、父性の直接的確認は不可能で、父親という役割は文化的に定まったものだ、と主張します。しかし、『家族進化論』が指摘するように、ゴリラはある程度、交尾と妊娠との関係を理解している可能性が低くありません(P180〜185)。ある程度以上の精度で父性を確認し、それに拘っている霊長類がいる可能性はじゅうぶんあると思います。単純に、父親という役割を文化的なものとは言えないと思います。

 第3章では、最初期の人類候補として、サヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)、オロリン・トゥゲネンシス(Orrorin tugenensis)、アルディピテクス属のカダバ(Ardipithecus kadabba)やラミダス(Ardipithecus ramidus)が挙げられています。本書は、これらが初期人類候補である可能性を認めつつも、人類系統が分岐する前の多様な類人猿系統だった可能性も提示しており、慎重な姿勢を示しています。本書のこの姿勢は妥当だと思います。証拠がたいへん少なく、その状況が大きく改善されることも期待しにくいだけに、最初期の人類をめぐる議論は、今後も長く続いていきそうです。

 第4章では、近代社会において出産の危険性は低下しましたが、それでも危険で困難である、と強調されています。これは、人間が直立二足歩行と脳の大型化を両立させていることに起因します。出産には他者の助けが必要で、それも親族など親しい者が適しており、人間が社会的生物であることも強調されています。こうした特徴が人類進化史において確立したのはホモ・エレクトス(Homo erectus)の頃だろう、と本書は推測しています。

 第5章では、槍が出現してからまだ3万年経っていない、とありますが、翻訳のさいに一桁間違った可能性があります。そうすると、本書ではドイツのシェーニンゲン(Schöningen)遺跡で発見された30万年前頃の槍が最古とされているのでしょうか。ただ、断片的な槍であれば、40万年前頃のものがイングランドのクラクトンオンシー(Clacton-on-Sea)で発見されていますし(関連記事)、更新世の槍は木製で現代まで残りにくいでしょうから、槍が50万年以上前から使われていても不思議ではないと思います。

 第6章では乳糖耐性について解説されています。かつてアメリカ合衆国では、乳糖不耐症は病気とされていたそうですが、現代では世界中で乳糖耐性のある人々の方が少数派だと明らかになっています。また、現代人の一部に見られる乳糖耐性の定着はこの1万年間ほどのことで、現代でも人類が進化を続けている証拠の一つとされています。また本書は、人類の品種改良により牛乳の味が家畜種と野生種とで大きく異なることも指摘しています。

 第7章では肌の色について解説されています。この問題に関しては、原書刊行後にいくつか重要な研究が公表されています。当ブログでは、現代人の肌の色およびその遺伝的基盤は多様で、薄い肌の色の遺伝的基盤の多くはアフリカ起源であり、非アフリカ系現代人の主要な遺伝子源となった現生人類集団の出アフリカの前に、すでにアフリカにおいて肌の色は多様だった、と推測した研究(関連記事)と、アジア東部系とアメリカ大陸先住民系の共通祖先に特有の、肌の色を明るくするような遺伝的多様体が存在することを指摘した研究(関連記事)を取り上げました。

 第8章では人類史における長寿化について解説されています。長寿化はアウストラロピテクス属よりもホモ属で、ホモ属でもエレクトスよりもネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)で進んでいきましたが、上部旧石器時代のヨーロッパの現生人類において画期が確認される、と本書は指摘します。ここで人類史上初めて、若年よりも年配の個体の方がずっと多くなる、というわけです。本書はこれを、上部旧石器時代における芸術の開花と関連づけています。高齢者が多いと知識の伝達に有利で、芸術が開花しやすかったのではないか、というわけです。

 第9章では、農耕開始により人類の個体の健康度が下がった、と指摘されています。最近では一般層にもそれなりに浸透しているように思われますが、農耕の開始により人類はより豊かな生活を送るようになったわけではありません。それとも関連しますが、農耕開始以降、出産間隔が短くなったことにより、人口が増加しました。本書は、農耕開始が個体の豊かさ・健康度を下げた、という負の側面だけではなく、人口増加により遺伝的多様性が増加し、進化が続いていることを指摘しています。

 第10章では、いわゆる北京原人について、寒冷地適応したエレクトの典型ではなく、温暖な時期に北上した異端のエレクトスだった、という仮説が紹介されています。本書は、この仮説が妥当なのか否か、まだ不明としており、この問題の解決には、より多くのエレクトス(的な)化石の発見が必要となります。

 第11章では、初期ホモ属がアフリカからアジアへと拡散し、アジアでエレクトスが進化し、後にアフリカへと「戻った」という仮説が紹介されています。その根拠となるのが、180万年前頃のジョージア(グルジア)のドマニシのホモ属化石群です。この仮説は真剣に検証するに値すると思いますが、エレクトスのアフリカ起源説の方がはるかに可能性は高い、と私は考えています。なお、アフリカの初期エレクトスについては、アジア南東部・東部のエレクトスと区別して、エルガスター(Homo ergaster)という種に分類する研究者もいます。

 第12章では、人類の利他主義は180万年前頃のジョージアのドマニシのホモ属集団までさかのぼりそうだ、と指摘されています。本書は、これが血縁関係に制約されないところに人類の特徴を見出しています。

 第13章ではギガントピテクスが取り上げられ、他の歯と比較して犬歯がたいへん小さいので、雄同士の競争は激しくなかっただろう、と指摘されています。 ただ、人類に関しては、これは当てはまらないのではないか、と私は考えています(関連記事)。ギガントピテクスの身体は巨大と推測されていますが、その理由として、強力な競合者の存在の可能性が指摘されています。本書はその競合者として、アジア東部のエレクトスを挙げています。アジア東部のエレクトスは道具の素材を石よりもむしろ竹の方に依存しており、その結果として竹林が縮小し、ギガントピテクスの生息域を奪っていった、と本書は推測しています。ただ、アジア東部のエレクトスがそれだけ環境に影響を及ぼせたのか、かなり疑問が残ります。

 第14章では、人類の重要な特徴として、脳の大型化よりも直立二足歩行の方が先行し、直立二足歩行により腰椎や骨盤への負荷が増大し、腰痛の原因になったことが指摘されています。また、人類の心臓の位置が比較的低く、大量の血液を必要とする脳にも重力に逆らって血液を送らねばならないことから、人類の心臓への負担は大きく、人類は他の動物よりも心臓関連の死亡率が高い、とも指摘されています。

 第15章では、最初期ホモ属に関する混乱した状況が解説されています。最初期のホモ属とされるハビリス(Homo habilis)については、ホモ属的な初期人類遺骸をまとめて放り込んだ雑多なもので、単一種として分類できるのか、疑問が呈されてきました(関連記事)。じっさい、同時代のホモ属としてハビリスとは異なるルドルフェンシス(Homo rudolfensis)という種区分も提示されています。本書は、ケニアで発見された人類化石(関連記事)を根拠に、初期ホモ属は少なくとも2種存在した可能性が高い、と指摘しています。

 第16章では、ホモ属の脳容量が増加した理由として、道具よりも社会関係の方が重視されています。捕食者への対応から集団規模の大きい方が有利となり、それが脳容量増加の選択圧になった、というわけです。脳の大型化と肉食との関係も解説されていますが、エレクトスが狩猟、ハビリスが腐肉漁りに適応していった、との見解には疑問が残ります。エレクトスは狩猟に特化したわけではなく、腐肉漁りにもかなりの程度依存していたのではないか、と思います。また、大人と子供では脳の発達が異なり、大人は子供と比較して新しいことを覚えるのが苦手になるものの、情報を結びつけて総合的に判断することは大人の方がずっと容易と指摘されています。

 第17章では、1990年代には、ネアンデルタール人と現生人類との間に関連があるとする立場と、直接の関連はないとする立場があり、学界ではネアンデルタール人が現生人類の直接的祖先とする立場が主流だったものの、一般社会では大半が後者を指示していた、と解説されています。しかし、これはかなり問題のある認識だと思います。1990年代前半頃までは、学界では現生人類の起源をめぐってアフリカ単一起源説と多地域進化説との間で激しい議論が展開されていたと思います。著者の李相僖氏はミシガン大学でウォルポフ(Milford H. Wolpoff)氏に師事したそうで、意図的かどうか分かりませんが、多地域進化説に偏った感のある、疑問の残る認識でした。ネアンデルタール人も現生人類と同じFOXP2遺伝子を有しており、同様に右利きが優勢であると明らかになったことから、本書はネアンデルタール人も現代人のように言葉を流暢に操っていた可能性はかなり高い、と指摘しています。ただ、現代人のゲノムにおいて、FOXP2遺伝子を取り囲んでいる膨大なゲノム領域では、現代人のそれにネアンデルタール人由来のそれが見られず、現生人類にはネアンデルタール人とは異なる、FOXP2遺伝子の発現に変化をもたらすような変異を有しているので(関連記事)、ネアンデルタール人のFOXP2遺伝子は現生人類と同程度の言語能力の証拠にはならない、と思います。また本書は、ネアンデルタール人への現代人の視線と人種差別との類似性を指摘しますが、ネアンデルタール人は現生人類とは明確に区別できる分類群なので、共通するところも多分にあるとはいえ、「人種」と同列に扱うことには慎重であるべきだ、と私は考えています。

 第18章では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の分子時計がいかに当てにならないか、ということが力説されています。1980年代後半〜2000年代にかけて、現生人類多地域進化説を攻撃する有力な根拠がmtDNAだっただけに、ウォルポフ氏の弟子である著者の李相僖氏としては、念入りに批判したいのか、と憶測してしまいます。本書は、分子時計が破綻したとか、mtDNAの遺伝は中立的と考えられていたとか主張しますが、分子時計の正確さには問題があるとしても、現在でも有効な方法だと思いますし、mtDNAの多様体が病気の一因にもなることは、20世紀の時点ですでに知られていたと思います。

 第19章では、ネアンデルタール人と近縁なホモ属である種区分未定のデニソワ人(Denisovan)について解説されています。デニソワ人については当ブログで以前まとめました(関連記事)。ネアンデルタール人の石器としてはムステリアン(Mousterian)が有名です(ネアンデルタール人だけが製作していたわけではありませんが)。10万〜3万年前頃のアジア(アジア東部ということでしょうが)ではムステリアンが見つかっていない、と本書は主張しますが、原書刊行後に、47000〜37000年前頃のムステリアン様石器群が中華人民共和国内モンゴル自治区で確認される、と指摘した研究が公表されています(関連記事)。デニソワ人については原書刊行後に大きく研究が進展したので、本書は最新の情報を得ることには向いていませんが、デニソワ人の地理的範囲や現生人類との交雑の場所など、本書が指摘したデニソワ人に関する不明点の多くは今でも未解明で、今後の研究の進展が期待されます。

 第20章では、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡で発見された更新世のホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)が取り上げられています。本書は、フロレシエンシスが出アフリカを果たしたアウストラロピテクス属の子孫である可能性を提示し、第11章で提示したしたホモ属のアジア起源説に再度言及しています。私は、フロレシエンシスはジャワ島のエレクトスの子孫である可能性が高い、と考えていますが。なお、訳注でも言及されているように、原書刊行後、フロレシエンシスの年代は繰り上がっており、この他にも、原書刊行後にフロレシエンシスに関する重要な知見が相次いで発表されています(関連記事)。

 第21章では、人種という概念の問題点が指摘されています。人種は生物学的概念ではなく、歴史的・文化的・社会的概念というわけです。本書は現代人の起源に関して、多地域進化説を採用しています。確かに、現生人類アフリカ単一起源説でも、完全置換説はもう過去のものになったと言うべきでしょうが、だからといって多地域進化説が近年の遺伝学的研究とも矛盾しない、と主張するのも問題だと思います。近年の研究動向からは多地域進化説の「復権」とも言えそうですが(関連記事)、本書は多地域進化説もまた大きく変わったことには言及せず、多地域進化説が1984年に提唱された、と主張しています。著者の李相僖氏はウォルポフ氏に師事したそうですから、このように主張するのも分からなくはありませんが、一般読者にたいして不誠実だと思います。

 第22章では、農耕開始以降、人類は以前よりもずっと(技術なども含む広義の)文化に依存するようになり、進化は「停滞」した、との見解が有力になりました。しかし、農耕が始まってからの1万年間に進化は加速している、と本書は指摘します。その理由として、急激な人口増加による変異の増加、集団間の遺伝的交流、医療の発達により以前は生き延びられなかった人も子孫を残せるようになったことが挙げられています。進化における「有利」や「有益」が状況依存的であることも指摘されており、これは重要だと思います。

 付録1では、エピジェネティクスは将来、獲得形質の遺伝を証明するかもしれない、と指摘されています。しかし、エピジェネティクスは、よく使う器官は発達し、そうでない器官はやがて失われていく、とするラマルク説とはまったく異なると思います。「後天的」な遺伝子発現の変化という点で両者は似ているように見えるかもしれませんが、似て非なるものだと思います。

 付録2では、現生人類の起源に関する仮説として、アフリカ単一起源の完全置換説と多地域進化説とが挙げられています。しかし、これは二分法の罠と言うべきでしょう。アフリカ単一起源説にはネアンデルタール人との低頻度の交雑を認める「交配説」があり、完全置換説が主張されるようになったのは交配説が主張された後のことでした。本書は、完全置換説が主流になった後も交配説は主張され続けていたことと、多地域進化説が当初(1984年)より大きく変容したことを無視しています(関連記事)。率直に言って、この点は一般向け書籍として不誠実だと思います。なお本書は、現代のアジア東部集団(およびアメリカ大陸先住民集団)に高頻度で見られるシャベル状切歯について、中国で発見された初期人類との関連性を示唆していますが、これと関連する遺伝的多様体は3万年前頃にアジア東部集団で出現し、それは乳腺管分岐を増大させる役割を担っていることから定着したのではないか、との見解が原書刊行後に提示されています(関連記事)。この人類進化史概説でもそうですが、本書からは全体的に、異なる分類群間の交雑第一世代に繁殖能力があれば同種と言ってもよいだろう、との認識が窺えるのは気になるところです。たとえそうだとしても、交雑第一世代の適応度が下がるなど、分類群間の生殖を隔離する障壁が作用し続けるのであれば、両方の分類群を異なる種と認識しても大過はない、との見解もじゅうぶん成立すると思います(関連記事)。ネアンデルタール人と現生人類の交雑にしても、適応度を下げるような障壁があった可能性は高いと思います(関連記事)。


参考文献:
Lee SH, and Yoon SY.著(2018)、松井信彦訳『人類との遭遇 はじめて知るヒト誕生のドラマ』(早川書房、原書の刊行は2015年)
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現生人類の出アフリカ直前のアフリカ南部から東部への移動

2019/03/22 18:43
 現生人類(Homo sapiens)の出アフリカ直前のアフリカ南部から東部への移動の可能性を検証した研究(Huypens et al., 2019)が公表されました。現生人類の起源に関しては、現在ではアフリカ単一起源説が通説として認められている、と言えるでしょう。しかし、これは現代人にネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など他のホモ属系統の遺伝的影響が皆無であることを意味するわけではありません。一時期は、現生人類と他のホモ属系統との交雑を認めない完全置換説が主流でしたが、現在では、低頻度ながら現代人に他のホモ属系統の遺伝的影響を認める見解が有力です。その意味で、現在の主流的なアフリカ単一起源説とは、現生人類特有の共通する派生的特徴(およびその遺伝的基盤)はアフリカでのみ進化し、他のホモ属系統からもわずかに遺伝的影響を受けた、という内容だと考えるべきでしょう。

 現生人類アフリカ単一起源説が有力になると、現生人類の起源地がアフリカのどこなのか、という問題も議論されました。その中でも有力なのが南部と東部です。南部説の根拠は、南部のコイサン集団が遺伝的には現代人の各地域集団の中で最初に分岐した、と推定されていることです。東部説の根拠はおもにホモ属遺骸です。中央部説も提唱されており、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の多様性とY染色体DNAハプログループの深い分岐(関連記事)が根拠となっています。また、アフリカ単一起源説を前提としつつも、現生人類の派生的な形態学的特徴がアフリカ各地で異なる年代・場所・集団に出現し、比較的孤立していた複数集団間の交雑も含まれる複雑な移住・交流により現生人類が形成された、との「アフリカ多地域進化説」が提示されています(関連記事)。

 本論文は、おもに現代人のmtDNAのハプログループの地理的系統学を改めて検証するとともに、ゲノム規模の一塩基多型データも分析し、考古学・古気候学の研究成果も参照しつつ、初期現生人類の進化を解明していきます。現代人のmtDNAのハプログループは、まず19万〜15万年前頃にL0系統とその他の系統(L1〜L6)が分岐し、150000〜135000年前頃にL1系統とL2〜6系統が分岐します。L0系統を有する人々アフリカは南部に多く存在し、L0系統の中でも、分岐が最も古いL0d系統とその次に古いL0k系統は、アフリカ南部のコイサン集団において高頻度で見られます(関連記事)。そのため、L0系統がアフリカ南部でまず分岐していった、と推測されます。本論文はこれを、気候条件が厳しかった20万〜13万年前頃の海洋酸素同位体ステージ(MIS)6に、アフリカ南部沿岸が現生人類にとって待避所となったことを示唆するのかもしれない、と解釈しています。しかし、L0系統の中には、L0a・L0b・L0f2・L0f3のように、アフリカ東部の集団に見られる亜系統も存在します。これらL0諸系統の推定分岐年代から、L0系統で東部に存在する亜系統は、7万〜6万年前頃にアフリカ南部からアフリカ東部へと移動したと推測するのが最も節約的になる、と本論文は指摘します。

 本論文はそれを支持する根拠として、考古学の研究成果を挙げています。装飾品の製作といった象徴的行動や、石器の熱処理などの技術的革新は、「現代的行動」と解釈されています。本論文は、こうした「現代的行動」が、アフリカ各地や現生人類に限らずネアンデルタール人にも一部見られることを指摘しつつ、その考古学的指標が7万年前頃まではアフリカ南部において他地域よりも高密度で確認される、と強調します。さらに本論文は、7万年前頃にアフリカ南部と東部でほぼ同時に細石器技術が出現し、この時期には、過去135000年において、サハラ砂漠以南のアフリカ全域が唯一湿潤だった時期だ、と指摘します。アフリカ南部の集団がサハラ砂漠以南のアフリカ全域で拡散の容易な時期に細石器技術を携えて北上し、東部に到達して「現代的行動」を定着させてから間もなく、東部の一部集団がアフリカからユーラシアへと拡散し、非アフリカ系現代人全員の主要な遺伝子源になった、というわけです。アフリカ東部の遺跡では、67000年前頃以降の技術革新が確認されており、本論文の見解と整合的と言えるかもしれません(関連記事)。

 本論文の見解に従えば、7万年前頃のアフリカ南部の現生人類集団の革新的な文化が、出アフリカと世界全域への拡散の基盤になった、と解釈できます。ただ本論文は、7万年前頃のアフリカ南部の集団がその他の地域の現生人類集団の主要な遺伝子源だったわけではない、とも指摘しています。上述したように、アフリカ系現代人の遺伝的分岐はもっと古いからです。また本論文は、mtDNAでは7万〜6万年前頃のアフリカ南部からアフリカ北部への移住の根拠が示されるものの、ゲノム規模の一塩基多型データではその痕跡が検出できなかった、とも指摘しています。

 本論文の見解はたいへん興味深いのですが、やはり現代人の遺伝データ、それもおもにmtDNAに依拠した進化史の復元に限界があることは否定できないでしょう。とはいっても、現生人類の起源と拡散に重要な時期となるMIS6〜4のアフリカで発見されたホモ属遺骸は少なく、今後増加するとしてもDNA解析は難しそうですから、やはり現代人の遺伝データにかなり依拠せざるを得ないでしょう。しかし、完新世の現生人類遺骸ならば、サハラ砂漠以南のアフリカでも8000年前頃の人類のDNA解析に成功しているので(関連記事)、バンツー語族拡大前の人類のDNA解析を蓄積していけば、より正確な現生人類拡散の様相を解明できそうです。

 また本論文は、7万年前頃が過去135000年においてサハラ砂漠以南のアフリカ全域が唯一湿潤だった時期だ、と指摘しますが、これを直ちに確たる見解と認めるのではなく、今後の研究の進展に注目すべきだろう、とは思います。また本論文は、7万年前頃よりも前には、「現代的行動」の痕跡の密度はアフリカ東部よりもアフリカ南部の方が高い、との認識を前提としていますが、アフリカ南部、とくに南アフリカ共和国はサハラ砂漠以南のアフリカでもとくに考古学的調査・研究の進展している地域なので、今後この差が縮まっていく可能性は低くないように思います。


参考文献:
Rito T et al.(2019): A dispersal of Homo sapiens from southern to eastern Africa immediately preceded the out-of-Africa migration. Scientific Reports, 9, 4728.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-41176-3
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カナリア諸島先住民の起源

2019/03/21 10:37
 カナリア諸島先住民の起源に関する研究(Fregel et al., 2019)が報道されました。カナリア諸島先住民は、考古学・人類学・言語学・遺伝学などで研究されてきており、その起源はアフリカ北部のベルベル人と密接に関連した集団である、との見解が最も有力です(関連記事)。しかし、正確な起源やカナリア諸島への人類の移住過程については、合意が確立しているわけではありません。本論文は、カナリア諸島の主要7島の25ヶ所の遺跡の先住民48人の完全なミトコンドリアDNA(mtDNA)配列を決定し、他地域の古代人・現代人と比較することで、この問題の解明に取り組みました。

 カナリア諸島は大陸と接続したことはない、と推測されています。カナリア諸島への人類最初の移住に関しては、紀元前1000年紀説が以前からありましたが、近年では紀元後との見解が有力なようで、紀元後100〜300年頃までさかのぼる可能性が提示されています。本論文でmtDNAが解析された48人の先住民の年代は約1200年にわたっています。これらのハプログループは以前の研究と一致しており、アフリカ北部系(U6)・ユーラシア系(H・J2・T2・X)・サハラ砂漠以南のアフリカ系(L1・L3)が改めて確認され、その多くは地中海系と推測されています。

 カナリア諸島の現代の18人のmtDNAも解析され、50%以上がHに属します。この中には、ヨーロッパ起源と推測される系統(H6a1・H3c2・H43)もあります。15世紀のスペイン(カスティーリャ王国)の征服後、ヨーロッパ系が多数植民してきましたし、砂糖のプランテーション栽培や奴隷貿易などにより、カナリア諸島の人類集団の遺伝的構成は大きく変わりました。しかし、先住民系統が途絶えたわけではなく、カナリア諸島の現代人には先住民系のハプログループ(J2a2d・U6b1・X3a)も見られます。カナリア諸島の現代人のmtDNAのハプログループのうち、27.8%は在来系、61.1%はヨーロッパ系と推定されています。

 カナリア諸島先住民のmtDNAハプログループには、アフリカ北部中央とカナリア諸島にしか存在しないハプログループ(H1cf・J2a2d・T2c1d3)だけではなく、アフリカ北部西方および中央と、ヨーロッパおよび近東(U6a1a1・U6a7a1・U6b・X3a・U6c1)で見られるハプログループが混在しています。カナリア諸島先住民のmtDNAには広く地中海に分布するハプログループが見られるため、ベルベル人と密接な関係にあるカナリア諸島最初の人々は、カナリア諸島への拡散の時点ですでに混合集団だった、と推測されています。

 また、以前の研究では、母系と父系での非対称的な地理的分布が指摘されていましたが、mtDNAを解析した本論文でも、より東方の島々でのみ存在するハプログループ(H1e1a9・H4a1e・L3b1a12・U6c1)が検出されており、母系での地理的分布の偏りが改めて確認されました。こうしたmtDNAハプログループの地理的分布の違いから、カナリア諸島への移住には複数の波があったのではないか、と本論文は推測しています。これらのハプログループの個体群の年代はほぼ10世紀以後で、おおむね13世紀であることも、本論文は補強材料として挙げています。

 また、考古学では、11〜12世紀にいくつかの島で、海洋資源の利用や技術など生産活動に顕著な変化があり、人口が増加した、と指摘されています。こうした変化は居住構造または埋葬の顕著な変化や新たな家畜種導入などを伴わないことから、内在的発展とみなされてきました。しかし本論文は、まだ研究中ではあるものの、グランカナリア(Gran Canaria)島で8〜13世紀の間にいくつかの居住形態に変化が見られることから、新たな移住の結果とも解釈できるだろう、と指摘しています。そうだとすると、新たな移住の波の証拠となるかもしれません。

 このように、カナリア諸島とはいっても、移住とその後の歴史を一律に論じることはできません。本論文は、島の面積や資源も含む環境条件により、各島は異なる歴史を経てきた、と指摘します。大規模な人口を維持する能力のある島々では遺伝的多様性が維持された一方で、ラゴメラ(La Gomera)やエルイエロ(El Hierro)のようなより小さな島では、強制的族外婚のような近親婚を避ける習慣が発達しました。小規模集団が外部との接触を断たれると、長期にわたって存続することは難しいのでしょう。

 上述したように、カナリア諸島最初の人類集団はアフリカ北部のベルベル人と密接に関連していた、という説が最も広く受け入れられています。しかし、カナリア諸島の葬儀や宗教的観念にはフェニキア人の影響の可能性も指摘されています。ただ、フェニキア人とカナリア諸島先住民との間でmtDNAの一致はまだ確認されておらず、確定的とは言えません。あるいは、今後カナリア諸島先住民の高品質なゲノム配列が得られたら、フェニキア人の遺伝的痕跡が確認されるかもしれません。現在まで残っているmtDNAには痕跡が残らないほどの接触があったかもしれない、というわけです。また、カナリア諸島まで到達したフェニキア人は男性主体だったので、mtDNAには痕跡を残していない、という可能性も想定されます。


参考文献:
Fregel R, Ordóñez AC, Santana-Cabrera J, Cabrera VM, Velasco-Vázquez J, Alberto V, et al. (2019) Mitogenomes illuminate the origin and migration patterns of the indigenous people of the Canary Islands. PLoS ONE 14(3): e0209125.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0209125
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在来の狩猟採集民により始まったアナトリア半島の農耕

2019/03/20 20:07
 アナトリア半島を中心とした農耕開始前後の人類集団の遺伝的構成に関する研究(Feldman et al., 2019)が報道されました。農耕はアジア南西部の肥沃な三日月地帯で紀元前10000〜紀元前9000年頃に始まり、その後ユーラシア西部の広範な地域へと拡大し、アナトリア半島中部には紀元前8300年頃に到達しました。農耕はアナトリア半島からヨーロッパへと拡散し、それは初期農耕民の移住によるものでした。アナトリア半島からの初期農耕民と在来の狩猟採集民とは、ヨーロッパで融合していきます(関連記事)。

 一方、肥沃な三日月地帯のレヴァント南部やザグロス地域(現在のイラク東部およびイラン西部)では、新石器時代への移行を通じて集団の遺伝的構造が持続し、在来の狩猟採集民が農耕を始めた、と推測されています(関連記事)。アナトリア半島中部は、肥沃な三日月地帯以外の地域では最も早く農耕の始まった地域なので、農耕拡散の様相を理解するための鍵となります。アナトリア半島の初期農耕民は、レヴァント南部およびザグロス地域の初期農耕民と遺伝的にはっきりと異なるので、アナトリア半島でも在来の狩猟採集民が主体となって農耕を始めた、と推測されます。

 じっさい、考古学的証拠からは、アナトリア半島中部らおける文化的継続性が指摘されていました。しかし、農耕前の人類集団の遺伝的データが欠けていたので、アナトリア半島の初期農耕の発展が移住者によりもたらされたのか、そうだとして在来の狩猟採集民との混合がどの程度だったのかは、明らかではありません。同様に、農耕開始前の近東とヨーロッパの狩猟採集民の遺伝的類似性も、アナトリア半島の狩猟採集民の遺伝的データの欠如のため、明らかではありません。

 これまでの遺伝学的研究は、近東集団がヨーロッパの狩猟採集民およびアジア東部集団と共通の外集団からの系統をかなりの程度有する、と示唆します。この非アフリカ系現代人系統における深い分岐系統はしばしば「基底部ユーラシア人」と呼ばれ、非アフリカ系現代人全員の共通祖先集団とは、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との交雑前に分岐した、と推測されています(関連記事)。現代人集団において、この基底部ユーラシア人の遺伝的影響がユーラシア西部では強いため、アジア東部よりもネアンデルタール人の遺伝的影響が小さくなっている、とも推測されていますが、基底部ユーラシア人による「希釈」効果は大きくなかった、との見解も提示されています(関連記事)。

 14000年前頃以降のヨーロッパの狩猟採集民は、それ以前のヨーロッパの狩猟採集民よりも、現代の近東集団との遺伝的類似性が増加する、と示されていますが、この類似性がどのように形成されたのか、よく理解されていません(関連記事)。後期更新世のヨーロッパにおいて、文化的にはマグダレニアン(Magdalenian)と関連する集団系がイベリア半島も含めて広範に存在しており、ベルギーのゴイエット(Goyet)遺跡で発見された19000年前頃のゴイエットQ2(Goyet Q-2)個体に代表されます。その後、イタリアのヴィラブルナ(Villabruna)遺跡で発見された14000年前頃の個体に代表される系統が、マグダレニアン集団(ゴイエットQ2)系統をほぼ置換した、と推測されています。しかし、イベリア半島においては、ゴイエットQ2系統も存続した、と指摘されています(関連記事)。

 本論文は、末期更新世〜前期完新世にかけてのアナトリア半島とレヴァント南部の人類遺骸の新たなゲノム規模データを報告しています。このうち、直接年代測定された紀元前13642〜紀元前13073年頃のアナトリア半島の狩猟採集民のゲノム規模データは、アナトリア半島の続旧石器時代のものとしては最初となります。この他に、紀元前8300〜紀元前7800年頃となる5人の新石器時代アナトリア半島農耕民、1人の紀元前8269〜紀元前8210年頃のトルコの農耕民、紀元前7700〜紀元前7600年頃および紀元前7027〜紀元前6685年頃の2人のレヴァント南部の農耕民のゲノム規模データが報告されています。本論文はこれらの新たなゲノム規模データを、既知の587人の古代人および254人の現代人と比較しました。

 その結果まず明らかになったのは、アナトリア半島の更新世の続旧石器時代の狩猟採集民の遺伝的構成は、既知の他の後期更新世集団とは異なる、ということです。次に、アナトリア半島の初期農耕民は、遺伝的にはおおむね(90%ほど)続旧石器時代の狩猟採集民の遺伝的構成を継承している、ということです。残りの10%ほどは、新石器時代イラン・コーカサス集団系統に由来する、と推測されています。アナトリア半島における農耕は、考古学的証拠が示唆しているように、レヴァント南部ややザグロス地域と同じく、在来の狩猟採集民が主体になって始められただろう、というわけです。この後、新石器時代(先土器時代)のアナトリア半島では、レヴァント南部からの遺伝的影響を受け、その比率は20%ほどと推定されていますが、末期更新世〜前期完新世にかけての7000年の長期間、アナトリア半島では狩猟採集から農耕へと移行しても、遺伝的継続性はおおむね維持された、と本論文は指摘しています。ただ、アナトリア半島における狩猟採集から農耕への移行に関しては、均一でも必然的でもなかった、とも指摘されています(関連記事)。

 14000年前頃以降のヨーロッパの狩猟採集民における、それ以前と比較しての現代近東集団との遺伝的類似性の増加に関しては、とくに中石器時代のヨーロッパ南東部狩猟採集民において、アナトリア半島狩猟採集民との強い遺伝的類似性が指摘されています。本論文は、ユーラシア基底部系統の比率に関する分析の限界を認めつつ、アナトリア半島狩猟採集民から中石器時代ヨーロッパ南東部狩猟採集民の祖先への近東遺伝子流動だけでは、この類似性の説明には充分ではないかもしれない、と示唆します。本論文は追加の要素として、中石器時代ヨーロッパ南東部狩猟採集民の祖先からアナトリア半島狩猟採集民の祖先への遺伝子流動を想定しています。ただ、この過程を推測するには遺伝的データが欠如しているので、アナトリア半島とヨーロッパ南東部のデータの増加が必要とも指摘されています。

 狩猟採集社会から農耕社会への移行については、人類集団の移動と、それをあまり伴わないような農耕技術・概念の伝播のどちらが重要だったのか、各地で様相が異なっており、世界中を一律に論じられないのではないか、と思います(関連記事)。一般的に、アジア南西部のように近隣地域よりも早期に農耕の始まった地域では、在来の狩猟採集民が主体的に農耕を始め、近隣地域よりも農耕開始の遅れた地域では、ヨーロッパや日本列島のように、農耕集団の移住が大きな役割を果たす傾向にあるように思います。ただ、近隣地域よりも農耕の始まりの早いアジア東部の黄河流域や長江流域では、更新世の狩猟採集民と新石器時代の農耕民との間に置換があった可能性も指摘されています。アジア東部というかユーラシア東部の古代DNA研究はユーラシア西部よりもずっと遅れているので、今後の研究の進展により、現在のユーラシア西部並の信頼性で農耕開始の様相を推定できるようになるのではないか、と期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝学】アナトリア中部での農業の起源を探る

 1万5000年前のアナトリアの狩猟採集民のゲノム規模のデータを初めて示した論文が、今週掲載される。この知見は、「肥沃な三日月地帯」以外では最古の農耕コミュニティーのいくつかが存在していたアナトリア中部での農業の起源を解明する上での手掛かりとなる。

 農業は、紀元前1万〜9000年頃に西南アジアの肥沃な三日月地帯で始まった。その後、農耕技術は西ユーラシア全土に広がり、紀元前8300年頃にアナトリア中部(現在のトルコの一部)に到達した。しかし、その原因が、当時の近隣地域の農耕民が流入したことだったのか、地元の狩猟採集民が農耕技術を取り入れたことだったのかは、これまで明らかになっていなかった。

 今回、Johannes Krauseたちの研究グループは、アナトリアの狩猟採集民1人、新石器時代前期のアナトリアの農耕民5人、新石器時代前期の南レバントの農耕民2人のゲノム規模のデータを解析して、この地域に農業が出現した時期の遺伝的記録を作成した。その結果、新石器時代のアナトリア人の祖先の大部分を占めていたのが狩猟採集民であることが明らかになり、アナトリア中部の最初の農耕民が地元民であったことが裏付けられた。また、原始イラン人/白人、レバント人、南ヨーロッパ人との遺伝的連関も検出され、古代の遺伝子交換と技術交流の複雑な歴史が示された。Krauseたちは、こうした知見に基づいて、アナトリアは肥沃な三日月地帯からヨーロッパへ移動した原始農耕民にとっての経由地であり、地元の狩猟採集民はこの地でアイデアと植物と技術を入手し、農業で生計を立てられるようになったという考えを示している。



参考文献:
Feldman M. et al.(2019): Late Pleistocene human genome suggests a local origin for the first farmers of central Anatolia. Nature Communications, 10, 1218.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-09209-7
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イベリア半島の人類集団の長期にわたる遺伝的歴史(追記有)

2019/03/17 13:12
 イベリア半島の人類集団の長期にわたる遺伝的歴史に関する2本の論文が報道されました。ユーラシア西部の古代DNA研究は盛んで、イベリア半島も例外ではありません。当ブログでも、イベリア半島の人類集団に関連する古代DNA研究を複数取り上げてきましたが、包括的なものとしては、新石器時代〜青銅器時代を対象とした研究があります(関連記事)。末期更新世〜青銅器時代までのイベリア半島の人類史を概観すると、アナトリア半島西部の農耕民がイベリア半島へと東進してきて新石器時代が始まり、在来の狩猟採集民集団と融合していきます。その後、銅器時代〜青銅器時代にかけて、ポントス-カスピ海草原(中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までの草原地帯)起源の集団がヨーロッパに拡散し、イベリア半島も影響を受けました。こうした大雑把な認識を前提に、以下、2本の論文を取り上げます。


 一方の研究(Villalba-Mouco et al., 2019)は、13000〜6000年前頃のイベリア半島の人類集団の遺伝的構成とその変容を検証しており、オンライン版での先行公開となります。最終氷期の後、ヨーロッパ西部・中央部では狩猟採集民集団の置換があった、と推測されています。それまでは、文化的にはマグダレニアン(Magdalenian)と関連する集団系がイベリア半島も含めて広範に存在しており、ベルギーのゴイエット(Goyet)遺跡で発見された19000年前頃のゴイエットQ2(Goyet Q-2)個体に代表されます。その後、イタリアのヴィラブルナ(Villabruna)遺跡で発見された14000年前頃の個体に代表される系統が、マグダレニアン集団(ゴイエットQ2)系統をほぼ置換した、と推測されています。最終氷期極大期(LGM)には、ヨーロッパではイタリアとイベリア半島が待避所的な役割を担い、人類も他の動物とともに南下して寒冷期を生き延びたのではないか、と推測されています。

 本論文は、後期上部旧石器時代2人・中石器時代1人・早期新石器時代4人・中期新石器時代3人のゲノム規模データを新たに得て、既知のデータと比較しました。すると、イベリア半島北東部のエルミロン(El Mirón)遺跡の18700年前頃の個体には、ゴイエットQ2系統とヴィラブルナ系統との混合が確認されました。さらに、アナトリア半島西部からの農耕民がイベリア半島に拡散してきた後の中期新石器時代の住民にも、異なる狩猟採集民2系統の痕跡が確認されました。本論文は、イベリア半島がヨーロッパでは例外的に新石器時代までゴイエットQ2系統の残存した地域で、アナトリア半島西部起源の農耕民とイベリア半島在来の狩猟採集民集団との混合が改めて確認された、と指摘します。

 イベリア半島では、遅くとも19000年前頃までにはゴイエットQ2系統とヴィラブルナ系統が融合しており、本論文は両系統の早期の融合を指摘します。本論文はイベリア半島における両系統の融合に関して、ゴイエットQ2系統がイベリア半島に存在し続け、ヴィラブルナ系統がイベリア半島に拡散してきた可能性を想定しています。また本論文は、両系統ともイベリア半島外起源で、独立してイベリア半島に到達して両系統が交雑したか、すでにイベリア半島外で交雑していた可能性も指摘しています。この問題の解決には、もっと多くの更新世ヨーロッパの現生人類(Homo sapiens)のゲノム解析が必要となるでしょう。


 もう一方の研究(Olalde et al., 2019)は、中石器時代から歴史時代まで、約8000年にわたるイベリア半島の住民のゲノム規模データを報告しています。内訳は中石器時代4人・新石器時代44人・銅器時代47人・青銅器時代53人・鉄器時代24人・歴史時代99人で、既知の古代人1107人および現代人2862人のゲノム規模データとともに分析・比較されました。本論文で分析対象となった個体のうち、中石器時代のイベリア半島で最古の個体は19000年前頃のエルミロン個体と類似していましたが、その後はヨーロッパ中央部の狩猟採集民との強い近縁性が見られるようになります。本論文はこれを、イベリア半島北西部には影響を及ぼしたものの、南東部には影響を及ぼさなかった遺伝子流動を反映している、と解釈しています。

 新石器時代〜銅器時代には、アナトリア半島新石器時代農耕民系統・エルミロン系統・ヨーロッパ中央部狩猟採集民系統の混合が見られます。ただ本論文は、早期新石器時代の標本数は限定的なので、アナトリア半島西部から拡散してきた農耕民と先住の狩猟採集民との相互作用の詳細な解明には、より広範な地域の多くの標本数が必要になる、と指摘しています。中期新石器時代と銅器時代には、6000年前頃以降、狩猟採集民系統の増加が改めて確認されました。農耕民と狩猟採集民との融合が進展したのでしょう。中期新石器時代〜銅器時代の狩猟採集民系統は、上部旧石器時代後期のエルミロン系統よりも、中石器時代のイベリア半島北部系統の方と類似しています。

 青銅器時代早期となる4400〜4000年前頃のイベリア半島中央部のカミノ・デ・ラス・イェセラス(Camino de las Yeseras)遺跡の男性は、後期更新世アフリカ北部系統と早期新石器時代ヨーロッパ系統の混合としてモデル化される、と本論文は指摘します。イベリア半島におけるアフリカ北部系の遺伝的影響はすでに中期新石器時代〜銅器時代にも確認されており(関連記事)、本論文の知見はじゅうらいの見解と整合的と言えるでしょう。ただ本論文は、アフリカ北部からイベリア半島への遺伝子流動は、銅器時代と青銅器時代には限定的で、アフリカ北部系の遺伝的影響がイベリア半島で増加したのは過去2000年のことだった、とも指摘しています。

 4400〜2900年前頃となる青銅器時代には、イベリア半島においてポントス-カスピ海草原地帯系統の遺伝的影響が増加します。4500〜4000年前頃の14人には草原地帯の遺伝的要素が確認されない一方で、4000年前頃以降には、草原地帯系統の遺伝的影響が増加し、ゲノムでは40%ほどになる、と推定されています。銅器時代のイベリア半島で一般的だったY染色体DNAハプログループI2・G2・Hは、ほぼ完全にR1b系統に置換されました。つまり、草原地帯系統集団はイベリア半島において、女性よりも男性の方が強い遺伝的影響を及ぼした、というわけです。これは、X染色体上の非イベリア半島在来系の低い遺伝的影響からも支持されます。青銅器時代のカスティレヨ・デル・ボネテ(Castillejo del Bonete)遺跡の墓でも、草原地帯系統の男性と銅器時代のイベリア半島集団系統の女性が発見されています。本論文は、古代DNA研究は交雑の性差を確認できるものの、その過程を理解するには、考古学および人類学的研究が必要だ、と指摘しています。

 鉄器時代には、ヨーロッパ北部および中央部集団と関連する系統の増加傾向が見られます。この傾向は、後期青銅器時代もしくは早期鉄器時代におけるイベリア半島への遺伝子流動を反映しており、おそらくは骨壺墓地(Urnfield)文化の導入と関連している、と本論文は推測しています。また本論文は、草原地帯系統がインド・ヨーロッパ語族をもたらしたヨーロッパ中央部または北部とは異なり、イベリア半島では、草原地帯系統の遺伝的影響の増加がインド・ヨーロッパ語族への転換を常に伴ったわけではない、と示唆します。これは、現在ヨーロッパ西部で唯一の非インド・ヨーロッパ語族であるバスク人には、かなりの水準の草原地帯系統の影響が見られるからです。本論文は、バスク人は草原地帯系統の遺伝的影響を強く受けたものの、言語はインド・ヨーロッパ語族に置換されなかった、と指摘します。バスク人に関しては以前、新石器時代になってアナトリア半島西部からイベリア半島に進出してきた初期農耕民の子孫ではないか、との見解が提示されていました(関連記事)。本論文の見解はそれと矛盾するわけではありませんが、草原地帯系統の強い遺伝的影響が指摘されています。バスク人に関しては、旧石器時代や中石器時代からイベリア半島で継続してきた集団で、比較的孤立していたのではないか、と長い間考えられてきましたが、そうした見解は現時点では支持しにくいように思います。ただ、草原地帯系統の強い遺伝的影響を受けた後、バスク人系統は比較的孤立していたようです。

 歴史時代では、紀元前5世紀から紀元後6世紀の24人のデータにより、地中海中央部・東部やアフリカ北部からの遺伝的影響があった、と推測されています。これに関しては、ローマの拡大による強い影響が想定されますが、それよりも前のギリシアや、さらにその前のフェニキアの植民活動の影響も指摘されています。系と鉄器時代イベリア半島系に大きく二分され、多民族的な状況の町があった、と指摘されています。フェニキアの影響は、Y染色体DNAハプログループJ2の存在からも支持されます。こうした地中海中央部・東部の遺伝的影響はイベリア半島全域に及びましたが、バスク地方は例外だったようで、上述したようにバスク地方の孤立性が想定されます。また、ユダヤ系を反映しているだろうレヴァント関連系統も確認されました。ローマ帝国衰退期には、古典期とは対照的に、大きな長期的影響は小さかった、と推測されています。ただ、ユーラシア東部系のmtDNAハプログループC4a1aも見られ、東方からのローマ帝国への侵略を反映しているかもしれません。

 アフリカ北部からイベリア半島への遺伝子流動はイスラム期にも継続し、イスラム期前には見られない遺伝的痕跡と、アフリカ北部およびサハラ砂漠以南のアフリカ系統の増加が確認されます。イベリア半島南部の現代人はイベリア半島のイスラム期のムスリムの埋葬者よりもアフリカ北部系要素が少なく、ムスリムの追放とイベリア半島北部からの再移住の結果と推測されます。歴史学では長く通説だったというか、おそらくヨーロッパでは一般常識だろう、イベリア半島におけるイスラム教勢力の支配とその後のイスラム教勢力追放(レコンキスタ)が、古代ゲノム研究でも改めて確認されたのは、予想されたこととはいえ、興味深いものです。


参考文献:
Olalde I. et al.(2019): The genomic history of the Iberian Peninsula over the past 8000 years. Science, 363, 6432, 1230-1234.
https://doi.org/10.1126/science.aav4040

Villalba-Mouco V. et al.(2019): Survival of Late Pleistocene Hunter-Gatherer Ancestry in the Iberian Peninsula. Current Biology.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2019.02.006


追記(2019年3月19日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。
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リアンブア洞窟のネズミの身体サイズの変化とフロレシエンシスの消滅

2019/03/16 10:56
 インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡のネズミの身体サイズの変化に関する研究(Veatch et al., 2019)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも報道されています。リアンブア洞窟では後期更新世の人骨群が発見されており、発見当初は、新種なのか、それとも病変の現生人類(Homo sapiens)なのか、という激論が展開されました。しかし現在では、この人骨群をホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)と区分する見解がおおむね受け入れられているように思われます。フロレシエンシスに関しては2016年に研究の大きな進展がありました(関連記事)。

 本論文は、ネズミの身体サイズの変化から、リアンブア洞窟一帯の環境変動を推定しており、2年前(2017年4月)の2017年度アメリカ自然人類学会総会での報告が元になっています(関連記事)。リアンブア洞窟における動物相の変化に関する研究もありますが(関連記事)、フロレシエンシスの遺骸も含めてリアンブア洞窟の脊椎動物遺骸の約80%はネズミに属します。本論文はネズミの身体サイズの詳細な分析により、過去19万年にわたる経時的変化から古環境を推定しています。

 フローレス島のネズミの各種は、その身体サイズにより5段階に区分されました。100g未満の「Rattus hainaldi」、100〜300gの「Paulamys naso」と「Komodomys rintjanus」、300〜600gの「Hooijeromys nusatenggara」、600〜1600gの「Spelaeomys florensis」と「Papagomys theodorverhoeveni」、1200〜2500gの「Papagomys armandvillei」です。一般的に中型のネズミが森の散在する開けた草原地帯を好むのに対して、小型や大型のネズミはより閉鎖的もしくは半閉鎖的な森林地帯を好みます。そのため、ネズミの身体サイズの相対的比率の経時的変化(以下に本論文の図を引用します)から、リアンブア洞窟一帯の古環境の変遷を推定できる、と期待されます。
画像

 リアンブア洞窟における大きな変化の一つは、3000年前頃に起きました。これは、現生人類集団による農耕と関連した人為的な景観変化と推測されています。もう一つの、より大きな変化は6万年前頃に起きました。中型ネズミの相対的比率が激減し、C4植生の突然の減少を示す他の記録などからも、62000年前頃以降、じゅうらいの開けた草原地帯からより閉鎖的な森林環境への移行が始まり、火山砕屑物による動物記録の空白期間(50000〜47000年前頃)を挟んで、森林環境へと移行した、と推測されます。これは、フロレシエンシスをはじめとして、小型のステゴドン(Stegodon florensis insularis)や巨大なコウノトリ(Leptoptilos robustus)やハゲワシ(Trigonoceps sp.)の考古学的記録がリアンブア洞窟から消滅していく過程と一致しています。

 しかし本論文は、リアンブア洞窟から大型動物の考古学的記録が消滅したからといって、それが絶滅を意味するとは限らない、と指摘します。これら大型動物が、フローレス島のより好ましい地域へと移動した可能性もあるからです。本論文は、これら大型動物の正確な絶滅年代に関しては、リアンブア洞窟またはフローレス島のまだ発掘されていない遺跡の新たな発見を待たねばならない、と指摘しています。注目されるのは、現生人類がフローレス島に46000年前頃までには到達していた可能性が指摘されていることで(関連記事)、フロレシエンシスが5万年前頃以降も存在していたとしたら、現生人類と接触した可能性は高いと思います。

 また本論文の筆頭著者であるヴィーチ(E. GraceVeatch)氏は、フロレシエンシスが小型動物を獲物としていたのか、という問題も提起しています。ホモ属の進化史において獲物としてずっと重要だったのは一定以上の大きさの動物で、小型動物に関しては、ホモ属の初期進化史において獲物として重要だった、という明確な証拠は得られていません。小型のフロレシエンシスがステゴドンのような大型動物とネズミのような小型動物の両方を狩っていたのか、検証するための理想的な機会をリアンブア洞窟は提供している、とヴィーチ氏は指摘します。現在、野外のネズミの捕獲がどの程度困難なのか、検証するための野外実験が行なわれているそうです。


参考文献:
Veatch EG. et al.(2019): Temporal shifts in the distribution of murine rodent body size classes at Liang Bua (Flores, Indonesia) reveal new insights into the paleoecology of Homo floresiensis and associated fauna. Journal of Human Evolution, 130, 45–60.
https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2019.02.002
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ヨーロッパ西部の後期ネアンデルタール人と初期現生人類の食性と移動性

2019/03/15 18:24
 ヨーロッパ西部の後期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と初期現生人類(Homo sapiens)の食性と移動性に関する研究(Wißing et al., 2019)が報道されました。4万年前頃のヨーロッパにおけるネアンデルタール人から現生人類への「交替劇」は、高い関心を集め続けてきた問題です。ネアンデルタール人の絶滅要因に関してはさまざまな仮説が提示されており(関連記事)、ネアンデルタール人の行動が現生人類よりも柔軟ではなかったから、との見解は有力説の一つと言えるでしょう。たとえば、ネアンデルタール人の食性の範囲は現生人類よりも狭く、現生人類はネアンデルタール人とは異なり水産資源を積極的に消費していた、というわけです。しかし、ネアンデルタール人と現生人類との食性の類似性を指摘する見解(関連記事)もあれば、気候変動にたいして現生人類よりもネアンデルタール人の方が食性の変化が大きかった、と指摘する見解(関連記事)もあります。

 本論文は、ネアンデルタール人と現生人類との食性を比較するこれまでの研究において、同じ遺跡の両者の遺骸が対象になっておらず、同位体データに基づく古環境の復元が欠けていることを指摘します。同じ生態系を対象としなければ、両者の食性の比較として適切ではない、というわけです。本論文は、ベルギーのゴイエット(Goyet)の「第三洞窟(Troisième caverne)」遺跡で発見されたネアンデルタール人と初期現生人類の遺骸の同位体を分析しています。上記報道によると、ゴイエットは後期ネアンデルタール人と初期現生人類の両方の遺骸が発見されているヨーロッパで唯一の遺跡です。本論文は、ベルギーのスピ(Spy)の洞窟遺跡のネアンデルタール人の同位体を分析するとともに、ベルギーのスクラディナ(Scladina)遺跡とドイツのオーリナシアン(Aurignacian)期のロメルスム(Lommersum)開地遺跡も対象として、これらの遺跡のヒトではない動物遺骸の同位体も分析しました。放射性炭素年代測定法によるホモ属遺骸の年代(非較正)は、スピ遺跡のネアンデルタール人が36300〜31800年前頃、ゴイエット遺跡では、ネアンデルタール人が41200〜36600年前頃、初期現生人類が30000年前頃と推定されています。

 同位体分析の結果、ゴイエットのネアンデルタール人と初期現生人類は類似しており、どちらも陸生草食動物を選好していた、と推測されています。初期現生人類の方がネアンデルタール人よりも食性の範囲が広いという証拠は得られなかった、というわけです。また、初期ネアンデルタール人が水産資源を食べていた証拠も得られませんでした。ゴイエット遺跡の同位体分析からは、当時のホモ属がマンモスを主要な狩猟対象にしていたことが示唆されます。さらに、マンモスでも若い個体と、おそらくはその母親がとくに狩猟対象とされていたのではないか、と推測されています。他地域の研究に基づくと、ネアンデルタール人であれ現生人類であれ、マンモスは50000〜30000年前頃のフランス南西部からクリミア半島にかけてのホモ属の主要なタンパク源だったようです。スピ遺跡のネアンデルタール人も例外ではないのですが、植物からも一定以上のタンパク質を得ていた、と推測されています。後期ネアンデルタール人の食性は以前の推定よりもかなり幅広いものだったようです。同位体が分析されたベルギーのネアンデルタール人の標本は多いのですが、その食性の範囲がベルギーのゴイエット遺跡の初期現生人類よりも狭い、という証拠は得られませんでした。ただ本論文は、食性の相対的な比率がネアンデルタール人と初期現生人類とで同じだとしても、人口は初期現生人類の方が多かった(最大で10倍)と推測されているので、ヨーロッパのマンモスに対する捕食圧は現生人類の拡散により高まったのではないか、と推測しています。

 移動性に関しては、硫黄同位体データから推測できます。スピ遺跡のネアンデルタール人は、成人も子供スピ遺跡一帯の地域で生活していた、と推測されています。しかし、ゴイエット遺跡のネアンデルタール人は他地域起源と推測されました。その場所がどこなのか、既知のデータでは該当する地域が見当たらず、本論文は突き止められませんでした。ゴイエット遺跡のネアンデルタール人遺骸には、肉を取ったり砕いたりした痕跡が見られ、食人の証拠と解釈されています。一方、スピ遺跡のネアンデルタール人には食人の証拠が見られません。そのため、ゴイエット遺跡のネアンデルタール人は、他のネアンデルタール人もしくは未知のより古い初期現生人類に解体された、と考えられます。本論文は、ゴイエットのネアンデルタール人がどこか他の場所で殺され、遺骸がゴイエット遺跡に持ち込まれた可能性を指摘しています。ゴイエット遺跡のネアンデルタール人と同年代の現生人類遺跡はヨーロッパ西部で発見されていますが、ベルギーでは同じ年代の現生人類(の所産と思われる)遺跡はまだ確認されていない、と本論文は指摘します。現時点では、ゴイエット遺跡のネアンデルタール人は、他集団のネアンデルタール人に殺された可能性が高いように思います。

 初期現生人類の移動性に関しては、Q116-1とQ376-3というゴイエット遺跡の2個体の同位体が分析されました。Q376-3はゴイエット遺跡一帯で生活していたのにたいして、Q116-1は他地域での生活を示唆する同位体分析結果が得られ、それはゴイエット遺跡のネアンデルタール人の範囲内に収まりました。本論文は、確定できないと慎重な姿勢を示しつつも、ゴイエット遺跡の初期現生人類の個体の移動性がネアンデルタール人よりも広範だった可能性を提示しています。その場合、土地や資源の利用だけではなく、アイデアや人々も交換するような、ネアンデルタール人よりも多様で広範な地域間の交流が初期現生人類にはあり、それがヨーロッパの後期ネアンデルタール人にたいする初期現生人類の優位性になったかもしれない、と本論文は指摘します。本論文の用いた方法はたいへん興味深く、同様の方法でヨーロッパ、さらには世界全体の更新世人類の食性や移動性の研究が進展することを期待しています。


参考文献:
Wißing C et al.(2019): Stable isotopes reveal patterns of diet and mobility in the last Neandertals and first modern humans in Europe. Scientific Reports, 9, 4433.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-41033-3
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アイヌ民族が12世紀ごろ樺太から北海道に渡来した

2019/03/11 18:13
 表題の呟きがTwitter上で流れてきました。全文引用すると、

DNA解析により、アイヌ民族が12世紀ごろ樺太から北海道に渡来したのが判明!
北海道の縄文人には、アイヌ民族の特徴であるミトコンドリアDNAのハプログループYがない。
よって、アイヌ民族は北海道先住民族ではない と北海道庁ご認定していた:そよ風


となります。その根拠として、「アイヌ民族は北海道先住民族ではない」と題するブログ記事が挙げられています。では、その根拠が何なのかというと、遺伝学的には、アイヌ民族の特徴であるミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループY(Y1)が北海道の「縄文人」にはない、ということです。上記ブログは、「北海道の縄文人とアイヌは全く関係ないと言える」と断定しています。以下、基本的には近世アイヌ集団のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Adachi et al., 2018)に依拠して述べていきます(関連記事)。

 確かに、現代アイヌ人のmtDNAハプログループに占めるY1の比率は19.6%で、比較的高いと言えそうです。また、北海道の縄文人ではY1は確認されていません。上記ブログは、江戸時代以降の日本人にもmtDNAハプログループY1が見られるので、江戸時代以前に倭人が北海道に多数いた、と推測しています。しかし、Y1が現代の「本土日本人」に占める割合は0.5%程度で、Y1はオホーツク集団由来と推測されています(オホーツク集団では43.2%)。

 また、現代アイヌ人にも近世アイヌ人にもN9bやG1bといった北海道縄文人のmtDNAハプログループは継承されており、現代アイヌ人では25%以上、近世アイヌ人では30%弱となります(M7a2も含めると30.9%)。もちろん、これは基本的には母系遺伝となるmtDNAのハプログループなので、核DNA解析ではまた違った割合になるでしょうが、少なくとも母系において、現代および近世アイヌ人は遺伝的に北海道縄文人と一定以上のつながりがある、と言えるでしょう。

 そもそも、民族は遺伝的に定義できるわけではない、という観点が上記ブログには欠けています。任意の2集団間、もしくは特定の集団と他集団とを比較すると、遺伝的構成が異なるのは当然です。民族に関しても同様で、ある民族を他の民族と比較すると遺伝的構成は異なり、その民族に固有の遺伝的構成が見出されます。しかし、それは民族という区分を前提として見出される遺伝的構成の違いであって、遺伝的構成の違いが民族を定義できるわけではありません。アイヌ人を遺伝的に云々といった見解の多くでは、論理の倒錯が見られるように思います。

 前近代において民族という概念を適用して歴史を語ることには問題が多い、と私は考えていますが、民族が近代の「発明」ではなく、各集団によりその影響度が異なるとはいえ、前近代の歴史的条件を多分に継承していることは否定できないでしょう。その意味で、前近代において多様な民族的集団の存在を認めることには、一定以上の妥当性があると思います。民族の基本は共通の自己認識でしょうが、「客観的に」判断するとなると、文化の共通性となるでしょうから、文字資料のない時代にも、考古学的にある程度以上の水準で「民族的集団」の存在を認定することは可能です。

 そうした前近代の「民族的集団」の中には、民族は遺伝的に定義できる、といった単純素朴な観念が通用しない事例も報告されています。たとえばスキタイ人は遺伝的に、東方系がヤムナヤ(Yamnaya)文化集団と、西方系が中央アジア北東部からシベリア南部のアファナシェヴォ(Afanasievo)およびアンドロノヴォ(Andronovo)文化集団と近縁です(関連記事)。青銅器時代のコーカサス地域のマイコープ(Maykop)文化集団は、山麓地域と草原地域とで遺伝的構成が明確に異なっており、遺伝的に異なる在来集団による共通の文化の形成・受容が想定されます(関連記事)。

 もちろん、スキタイ人のようなユーラシア内陸部の遊牧民集団と、遊牧民が存在しなかったと言っても大過はないだろう日本列島の人類集団とを単純に比較できませんが、民族を遺伝的に定義することは基本的に間違っていると思います。民族はあくまでも文化的に定義された集団であり、任意の2集団間、もしくは特定の集団と他集団とを比較すると、必然的に遺伝的構成が異なる、というだけのことです。これを倒錯させて、遺伝的構成の違いから民族集団を定義することはできません。

 本題に戻すと、上記ブログでは、アイヌ民族が12世紀頃に樺太から北海道に南下してきてオホーツク集団を滅ぼした、と主張されています。その根拠となる、アイヌ民族は北海道縄文人と(遺伝的に)まったく関係ない、との見解が間違いであることは上述したので、それ話は終わりです。しかし、オホーツク文化が北海道から消えた後でも、北海道のアイヌ集団とシベリア先住民集団との間に遺伝的関係が継続していた可能性も指摘されていますので、これを過大評価というか歪めて解釈して、アイヌ人が12世紀頃に北海道に侵略してきた、との与太話が今後拡散されるかもしれません。しかし、オホーツク文化が北海道から消えた後のシベリア先住民集団の北海道集団への遺伝的影響は、母系ではせいぜい6.4%程度で、大きな影響があった可能性はきわめて低そうです。

 なお、上記ブログでは、平取町からは正倉院御物と同じ組成の奈良時代の青銅器が発見されており、奈良時代にすでに天皇の力が北海道にも及んでいた、と主張されています。平取町の青銅器の話についてはよく知りませんが、仮にそうだとして、アイヌが北海道の先住民族だという前提は物的証拠によって完全に覆されている、との評価は的外れでしょう。確かに、正倉院御物と同じ組成の青銅器が北海道にあることを、天皇の「力が及んでいた」と解釈することは、定義次第ではあるものの、できなくもありませんが(かなり無理筋ではありますが)、それを言うなら、弥生時代や古墳時代の「日本」には、もっと強く「中国」の「力が及んでいた」と解釈すべきでしょう。平安時代の日本の知識層の領域観念(関連記事)からも、奈良時代の日本人には、北海道を「日本」に含めるような概念はなかっただろう、と思います。

 それにしても、与太話にすぎない上記の呟きがリツイート1300以上・いいね1600以上とは残念です。もちろん、リツイートやいいねが賛同を意味するとは限りませんが、多くの場合は賛同だと思います。これを呟いた城之内みな氏のフォロワーは約26000アカウントで、フォローは1674アカウントですから、相互フォローでフォロワーを増やしていったのではなく、呟きの内容でフォロワーを獲得したのでしょう。その意味で、かなり影響力の強いアカウントなのでしょうが、こんな与太話にすぎない呟きにも多数のリツイートやいいねが集まるとは、残念というだけではなく、脅威と考えねばならないようです。


参考文献:
Adachi N. et al.(2018): Ethnic derivation of the Ainu inferred from ancient mitochondrial DNA data. American Journal of Physical Anthropology, 165, 1, 139–148.
https://doi.org/10.1002/ajpa.23338
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タイトル 日 時
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 鳥取市の青谷上寺地遺跡の弥生時代後期人骨のDNA解析の中間報告会が報道されました。青谷上寺地遺跡の弥生時代後期人骨に関しては、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析結果が報告されています(関連記事1および関連記事2)。mtDNA解析では、青谷上寺地遺跡の弥生時代後期人類集団は32人中31人が「渡来系」で、1人が「縄文系」と推定されています。この報道では詳細は不明ですが、核DNAが解析されたようで、父系(Y染色体)では多数が「縄文系に近い」と分類されたそうです。Y染色体ハプログループD1bとい... ...続きを見る

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2019/02/25 16:47
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2019/02/23 19:08
山田康弘『縄文時代の歴史』
 講談社現代新書の一冊として、講談社より2019年1月に刊行されました。縄文時代は、草創期(16500〜11500年前頃)→早期(11500〜7000年前頃)→前期(7000〜5470年前頃)→中期(5470〜4420年前頃)→後期(4420〜3220年前頃)→晩期(3220〜2350年前頃)と一般的に区分されています。本書は、草創期を旧石器時代から縄文時代への移行期としてI期、早期を定住生活・縄文文化の確立期としてII期、前期・中期を縄文文化の発展および社会複雑化の開始・進展期としてIII期、... ...続きを見る

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2019/02/23 06:12
熱帯雨林環境におけるスリランカの初期現生人類の狩猟戦略
 熱帯雨林環境におけるスリランカの初期現生人類(Homo sapiens)の狩猟戦略に関する研究(Wedage et al., 2019)が報道されました。他の人類系統と比較しての現生人類の特徴は、砂漠・熱帯雨林・高地・北極圏といった極限環境への拡散です(関連記事)。これらのうち、熱帯雨林の生物多様性は高いのですが、大型哺乳類(44kg以上)が基本的には存在しないこともあり、人類にとって食資源の豊富な暮らしやすい環境とは言えません。そのため、熱帯雨林は人類にとって障壁と考えられてきました。しかし... ...続きを見る

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2019/02/20 18:27
ユーラシア東部の現生人類集団の2層構造
 ユーラシア東部の現生人類(Homo sapiens)集団の起源に関する研究(Matsumura et al., 2019)が公表されました。現生人類(解剖学的現代人)のユーラシア東部への拡散は65000〜50000年前よりもさかのぼる可能性があり、本論文もその見解を基本的には支持していますが、提示されている複数の証拠については、それぞれ疑問も呈されています(関連記事)。本論文は、ユーラシア東部への現生人類拡散の様相を、ユーラシア東部およびオセアニアの合計89集団からの現生人類の頭蓋計測データに... ...続きを見る

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2019/02/17 15:59
ジブラルタルの末期ネアンデルタール人の足跡
 ジブラルタルの末期ネアンデルタール人の足跡に関する研究(Muñiz et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ジブラルタルの沿岸にある砂丘斜面の後期更新世の動物の痕跡を報告しています。第4層や第5層では、アカシカ・アイベックス(野生ヤギ)・オーロックス(家畜ウシの原種である野生ウシ)・ヒョウ・ゾウの足跡が発見されており、これらは後期更新世にジブラルタルで発見された化石と対応しています。何よりも注目されるのは、人類の足跡も発見さ... ...続きを見る

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2019/02/17 09:55
日本の人類学には日本人の優秀性を証明しようという差別的な動機があった
 表題の発言が流れてきましたが、全文を引用すると、 ...続きを見る

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2019/02/16 09:49
先人たちの無能さをあざ笑う
 先行研究を読まずにひたすら史料を読み、論理的に導かれる確固たる答えを得た後で初めて先行研究を読むと、先行研究が気づいていないことや読み間違っていることがたちどころに分かる、との発言にたいして、 ...続きを見る

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2019/02/15 17:18
進化否定論者は「まともな人間」ではないのか
 以前、私のTwitter上での発言を引用して、 ...続きを見る

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2019/02/13 16:14
アジア東部系と共通するラテンアメリカ系の明るい肌の色の遺伝的基盤
 ラテンアメリカ系人類集団の色素沈着の遺伝的盤に関する研究(Adhikari et al., 2019)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。色素沈着に関しては、動物モデルで何百もの遺伝子が同定されています。ヒトに関しても、皮膚・目・髪の色に関する数十の遺伝子が特定されていますが、その多くはヨーロッパ系集団のものです。高緯度になるにつれてヒトの皮膚の色素沈着は減少する傾向にあり、これは紫外線からの保護と紫外線によるビタミンD生産と関連しています(関連記事)。紫外... ...続きを見る

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2019/02/11 11:29
ネアンデルタール人の絶滅に関する議論
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅には高い関心が寄せられてきており、とても的確にまとめるだけの準備は整っていませんが、とりあえず、当ブログの関連記事一覧をまとめ、自分の現時点での見解を短く述べていきます。ネアンデルタール人の絶滅要因を大別すると、気候変動を中心とした環境説と、現生人類(Homo sapiens)との競合説になると思います。もちろん、多くの本・論文は複合的要因を指摘しているとは思います。環境説は、ネアンデルタール人も気候変動に応じて拡大・撤退・... ...続きを見る

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2019/02/11 06:51
近親交配によるイベリア半島北部のネアンデルタール人の形態と絶滅
 近親交配によるイベリア半島北部のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の形態についての研究(Ríos et al., 2019)が公表されました。本論文は、ネアンデルタール人の遺跡として有名なスペイン北部のエルシドロン(El Sidrón)洞窟遺跡のネアンデルタール人遺骸の形態について報告しています。イベリア半島南部は例外かもしれませんが(関連記事)、ネアンデルタール人は4万年前頃までに大半の地域でいなくなったと推測されています(関連記事)。ネアン... ...続きを見る

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2019/02/10 11:51
多地域進化説の復権
 現生人類(Homo sapiens)の起源をめぐって、1980年代には大激論が展開されました。一般的には、これは多地域進化説とアフリカ単一起源説との論争として理解されています。多地域進化説の成立過程については11年近く前(2008年)に整理しましたが(関連記事)、その源流として重要なのは、オーストラリア・アジア・アフリカ・ヨーロッパという4地域それぞれでの、相互の遺伝的交流も想定した長期の進化の結果として現代人が成立した、とのヴァイデンライヒ(Franz Weidenreich)氏の見解と、文... ...続きを見る

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2019/02/09 12:57
コーカサス地域の銅石器時代〜青銅器時代の人類のゲノムデータ
コーカサス地域の銅石器時代〜青銅器時代の人類のゲノムデータ  コーカサス地域の銅石器時代〜青銅器時代の人類のゲノムデータを報告した研究(Wang et al., 2019)が報道されました。1100kmに及ぶコーカサス山脈は黒海とカスピ海の間に位置しており、コーカサス地域には上部旧石器時代以降の豊富な考古学的記録があります。コーカサス地域での新石器時代は8000年前以降に始まりました。鉱石・牧草地・木材といった天然資源が豊富なコーカサス地域は、発展していくメソポタミアの都市文化にとって重要な地域でした。 ...続きを見る

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2019/02/07 19:33
地上波版より分かりやすかったBS版『生命大躍進』第3集「ついに“知性”が生まれた」
 4年前(2015年)にNHKスペシャルとして地上波で放送された『生命大躍進』がBS4Kで放送されたので、録画して視聴しました。BS版は基本的に地上波版と内容は変わらないと思いますが、やや放送時間が長いことと、芸能人の小芝居がないことから、地上波版では省略された解説もあります。このようなドキュメンタリー番組に芸能人が出演して小芝居をすることに私は昔から否定的で、『生命大躍進』第3集では地上波版で省略された重要な情報も解説されたことから、ますます批判的になりました。ただ、『生命大躍進』の出演者はガ... ...続きを見る

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2019/02/04 16:47
ヒヒ属の複雑な進化史
ヒヒ属の複雑な進化史  ヒヒ属の進化史に関する研究(Rogers et al., 2019)が公表されました。ヒヒ属は霊長類の中でも現代人とは比較的近縁です。現生ヒヒ属は、サハラ砂漠以南のアフリカを中心に、アラビア半島西部〜南部沿岸に生息しています。現生ヒヒ属は、マントヒヒ(Papio hamadryas)、アヌビスヒヒ(Papio anubis、オリーブヒヒ)、ギニアヒヒ(Papio papio)、キイロヒヒ(Papio cynocephalus)、チャクマヒヒ(Papio ursinus)、キンダヒヒ(Papio... ...続きを見る

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2019/02/03 09:48
モンゴル東部の更新世人類頭蓋の年代とmtDNA解析
 モンゴル東部の更新世人類頭蓋の年代とミトコンドリアDNA(mtDNA)解析に関する研究(Devièse et al., 2019)が報道されました。近年の考古学的研究の進展により、モンゴルの旧石器時代は広くユーラシアの中に位置づけられつつあります。モンゴルの上部旧石器時代は前期・中期・後期の3段階に区分されます。上部旧石器時代前期は、ムステリアン(Mousterian)の持続とともに、シベリア南部で見られる石刃の出現により定義されます。上部旧石器時代前期はさらに、40000〜3500... ...続きを見る

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2019/02/02 08:53
中期完新世まで現代よりも多様だったパンダの食性
 パンダの食性に関する研究(Han et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生パンダはジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)1種のみで、中国南西部の特定の山岳地帯にしか生息していません。しかし古代には、パンダはユーラシアに広く存在しており、中国に限定しても、複数種が現代よりもはるかに広範に生息していました。パンダの食性は元々肉食もしくは雑食で、鮮新世に草食へと移行し、更新世の200万年前頃に竹に特化した、と推測されて... ...続きを見る

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2019/02/01 18:17
デニソワ洞窟の中部旧石器時代〜上部旧石器時代の年代(追記有)
 デニソワ洞窟(Denisova Cave)の中部旧石器時代〜上部旧石器時代の年代に関する二つの研究が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Dennell., 2019)が掲載されています。デニソワ洞窟は南シベリアのアルタイ山脈の渓谷に位置しており、複数の更新世の人類遺骸のDNAが解析されていることで有名です。デニソワ洞窟では遺伝学的に知られていなかった人類集団が発見されており、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)と分類されています(関連記事)。 ...続きを見る

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2019/01/31 19:19
朝型人間の遺伝的要因
 朝型人間の遺伝的要因に関する研究(Jones et al., 2019)が公表されました。この研究は、2集団(参加者総数69万7828人)における遺伝的変異を解析し、「自分は朝型人間だ」という自己申告との関連を調べました。この解析で同定された351座位(じゅうらいは24座位しか明らかになっていませんでした)のうち、327座位は、これまでクロノタイプ(特定の時間に睡眠を取る生得的傾向)と関連づけられていませんでした。自己申告は不正確であったりバイアスがかかっていたりする場合があるため、この研究は... ...続きを見る

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2019/01/30 03:33
アフリカからイベリア半島への先史時代の遺伝子流動
 アフリカからイベリア半島への先史時代の遺伝子流動に関する研究(González-Fortes et al., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文の年代は基本的に、放射性炭素年代測定法による較正年代で、以下のアフリカとは、明記しない限りサハラ砂漠以南のアフリカを指します。現代ヨーロッパ人のゲノム解析ではアフリカ系集団の遺伝的影響がわずかに確認されており、その割合は南西から北東に向かうにつれて減少します。つまり、ヨーロッパでもイベリア半島にお... ...続きを見る

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2019/01/28 14:39
更新世の投槍の威力とネアンデルタール人の投槍
 更新世の投槍の威力に関する研究(Milks et al., 2019)が報道されました。武器の出現は人類史において重要ではあるものの、その起源はよく分かっていません。初期の武器は近接戦用と考えられており、その意味で、遠距離武器のその後の出現は人類史において重要です。しかし、遠距離武器がいつから使用されるようになったのか、不明です。人類は、弓矢や投槍器のような「真の」遠距離武器の使用の前に、槍を投げていたのではないか、と推測されています。投槍の証拠は、やや間接的ではあるものの、28万年前頃のアフ... ...続きを見る

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2019/01/27 17:33
大型類人猿における変異率と各系統間の分岐年代
 大型類人猿(ヒト科)における変異率を見直し、各系統間の分岐年代を新たに推定した研究(Besenbacher et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人の変異率は、数千組ものトリオ(両親と子供)の配列における新規変異(de novo変異、親の生殖細胞もしくは受精卵や早期の胚で起きた変異)の解析により通じて研究されてきました。1年あたりの変異率は、各集団間や各系統間の分岐年代の推定に用いられます。その変異率に基づくと、ヒト系統との推定分岐年代は... ...続きを見る

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2019/01/27 09:48
近世アイヌ集団のmtDNA解析
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、近世アイヌ集団のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Adachi et al., 2018)が公表されました。現代アイヌ人(と呼ぶと人間人のような意味となって不自然とも言えるかもしれませんが)の形成に関しては、現代日本人起源論との関連で議論されてきました。現代日本人起源論では、二重構造モデルが有力な仮説として認められてきました。更新世の日本列島最初の人類集団は東南アジア起源で、そこから縄文集団が形成され、弥生時代以降の北東アジア... ...続きを見る

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2019/01/24 15:56
ネアンデルタール人と現生人類の交雑第一世代は発見されるのか
 小説『イヴの迷宮』では、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の交雑第一世代化石の発見から話が展開します(関連記事)。非アフリカ系現代人は全員、似たような割合でネアンデルタール人由来と推定されるゲノム領域を有しているので、ネアンデルタール人と現生人類の交雑第一世代は確実に存在したはずですが、それを発見・確認するのはほぼ無理だろうな、と思っていました。しかし、ネアンデルタール人と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)の交雑第一... ...続きを見る

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2019/01/23 16:10
イベリア半島南部における4万年以上前のオーリナシアン
 イベリア半島南部におけるオーリナシアン(Aurignacian)インダストリーの出現時期に関する研究(Cortés-Sánchez et al., 2019)が報道(Douk., 2019)されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。なお、以下の年代は、基本的には放射性炭素年代測定法による較正年代です。ヨーロッパにおけるオーリナシアンの出現は、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)から解剖学的現代人(Homo sapiens、現生人類... ...続きを見る

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2019/01/22 18:14
ネアンデルタール人から現生人類への遺伝子移入と選択の効果
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)から現生人類(Homo sapiens)への遺伝子移入と選択の効果に関する研究(Petr et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。非アフリカ系現代人は全員、似たような割合でネアンデルタール人由来のゲノム領域を有しています。そのため、非アフリカ系現代人の祖先集団が各地域集団に分岐する前に、おそらくは西アジアでネアンデルタール人と交雑した、と考えられます。 ...続きを見る

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2019/01/20 09:51
現代人と似た歯の成長を示す10万年以上前の東アジア北部のホモ属
 10万年以上前の東アジア北部のホモ属遺骸の歯に関する研究(Xing et al., 2019)が報道されました。このホモ属遺骸は許家窯(Xujiayao)遺跡で発見されました。許家窯遺跡は泥河湾盆地(The Nihewan Basin)にあり、行政区分では中華人民共和国河北(Hebei)省張家口(Zhangjiakou)市陽原(Yangyuan)県に位置することになります。本論文は、許家窯遺跡で発見された推定死亡年齢6歳半(2377±47日)の子供の歯を分析し、現代人(Homo sapiens... ...続きを見る

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2019/01/18 17:13
未知のホモ属と現生人類との交雑
 遺伝学的に未知のホモ属と現生人類(Homo sapiens)との交雑に関する研究(Mondal et al., 2019)が報道されました。ゲノム解析では、現代人の最も深い分岐の年代は35万〜26万年前頃と推定されています(関連記事)。出アフリカを果たした非アフリカ系現代人は全員、似たような割合でネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来と推定されるゲノム領域を有しています(関連記事)。そのため、非アフリカ系現代人の共通祖先集団がネアンデルタール人と交雑した、と推測さ... ...続きを見る

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2019/01/17 18:52
DNAの二重螺旋構造解明のワトソン氏が人種差別発言で名誉職剥奪
 DNAの二重螺旋構造を解明したことで有名な、生きる伝説とも言えるワトソン(James Dewey Watson)氏が、人種差別的な発言を繰り返したとして、かつて自身が所長を務めていた、アメリカ合衆国のコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)の名誉職をはく奪された、と報道されました。ワトソン氏は、「白人と黒人の知能検査では、遺伝子に起因する知性の差が出る」と発言したそうです。報道にあるように、ワトソン氏のこうした発言は以前からのもので、とくに驚きませんでした。 ...続きを見る

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2019/01/14 15:06
人類の社会構造と近親婚
 人類の社会構造が元々は父系的だったのか母系的だったのか、という問題について、私は以前より高い関心を抱いていたので、当ブログでも何度か取り上げてきました。この問題については、唯物史観の影響により現在でも、人類の「原始社会」は母系制だった、との観念が一般層でも根強いように思われます(関連記事)。もっとも、より詳しくは、唯物史観が「原始社会」母系制説を採用した、と言うべきでしょうが。私は以前より、更新世の人類社会が母系制だったのか、疑問を抱いてきましたが(関連記事)、最近では、人類社会は元々母系的で... ...続きを見る

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2019/01/14 10:41
John Gribbin「人類という奇跡」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第3部「明日の姿」に掲載された解説です。本論文は、天の川銀河では千億個の星が惑星を有しているものの、生命の誕生する条件はたいへん厳しい、と強調します。まず、重い元素がある程度以上誕生するには、宇宙誕生から数十億年以上経過する必要があります。次に、銀河中心近くでは超新星爆発やガンマ線バーストなどの生命にとって危険な事象が多く起きます。また、適度な温度と液体の水があり、生命に有害な宇宙放射線を(かなりの程度)遮る磁... ...続きを見る

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2019/01/13 10:00
Pedro Domingos「分身AIがつくる社会」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第3部「明日の姿」に掲載された解説です。人工知能(AI)の今後を懸念している人は少なくないと思います。人工知能は人間の仕事を奪い、人間を奴隷とし、ついには殲滅するのではないか、というわけです。しかし本論文は、人工知能は自由意志を持つわけではなく、基本的に人間がプログラムした目標に動かされており、人間の能力の拡張にすぎず、そうした懸念は杞憂だ、と指摘します。本論文が懸念しているのは、人工知能の反逆ではなく、人間に... ...続きを見る

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2019/01/13 09:58
Menno Schilthuizen「都市が変える生物進化」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第3部「明日の姿」に掲載された解説です。本論文は、都市が進化の「圧力鍋」となっており、都市では素早く徹底的な適応が強いられる、と指摘しています。確かに、都市化も環境変化の一種であり、都市化が選択圧となることは、進化学において容易に予想されますが、それを実証することがやはり重要で、たいへん意義深いと思います。 ...続きを見る

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2019/01/13 09:55
Richard Brian Ferguson「戦争は人間の本能か」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第2部「「他者」とのかかわり」に掲載された解説です。戦争の起源をめぐっては議論が続いています。本論文は、この議論は二つの両極的立場を中心に展開している、と把握しています。一方は、戦争はヒトが進化において潜在的競争を排除するために獲得した傾向で、チンパンジーとの共通祖先の時代から常に戦争してきた、と想定する「タカ派」です。もう一方は、武力紛争はここ数千年で登場したにすぎず、社会的条件の変化により集団殺戮の動機と組... ...続きを見る

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2019/01/13 09:51
Michael Tomasello「モラルを生んだ生存競争」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第2部「「他者」とのかかわり」に掲載された解説です。モラルの起源についての古典的な説明は、包括適応度と互恵性です・しかし本論文は、これらの古典的仮説は、人間がお互いに感じている恩義の間隔という人間のモラルの本質を説明できていない、と指摘します。本論文が人間のモラルの進化にさいして重視しているのは協働です。共同の目標を設定して力を合わせる積極的な共同作業たる狩猟採集により食物の大半を得るようになって、相互依存が進... ...続きを見る

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2019/01/12 19:53
Kate Wong「ホモ・サピエンス成功の舞台裏」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第2部「「他者」とのかかわり」に掲載された解説です。本論文は、現生人類(Homo sapiens)が「成功(個体数と生息範囲の観点からはそう言って問題ないでしょう)」した理由について、近年の見解を紹介しています。この問題については当ブログでも以前まとめましたが(関連記事)、現生人類の起源について近年まで有力だった見解は、次の通りです。現生人類はアフリカの一地域(東部もしくは南部)において20万年前頃に出現して、... ...続きを見る

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2019/01/12 19:50
Chet C Sherwood「データで見る脳の違い」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第1部「人間性の起源」に掲載された解説です。本論文は、ヒトの脳が特異的であることを強調します。体重に対する脳重量の比率もその一例で、ヒトの脳は体重から予測される重量よりもかなり重くなっています。脳化指数は、ネコが1、ゾウが1〜2、マカクザルが2、ヒレナガゴンドウ(クジラ)が2~3なのに対して、ヒトは7〜8となります。脳、とくに大脳のニューロン数の多さも人間の特徴です。 ...続きを見る

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2019/01/12 14:32
Christine Kenneally「高度な言語が生まれた理由」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第1部「人間性の起源」に掲載された解説です。言語の起源と進化は一般層にも関心の高い問題でしょうが、言語学では禁忌とされたこともありました。その理由としては、非科学的な推測が横行してしまう危険性や、政治的要請が指摘されています。20世紀後半においても、解明が不可能との理由から、言語の起源や進化に冷ややかな姿勢が言語学において見られましたが、近年では、言語学のみならず、脳科学・遺伝学・動物学など幅広い分野で言語の進... ...続きを見る

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2019/01/12 14:29
Susan Blackmore「意識を持つのは人間だけか」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第1部「人間性の起源」に掲載された解説です。意識についての多様な議論が紹介されています。そもそも、意識とは何か、という定義自体がひじょうに哲学的でもあり、難問であることが、議論が錯綜している要因でもあるのでしょう。そのため、この問題に関しては、ひじょうに異なる多くの説が提示されています。その中で、意識を持つのは人間だけだ、との見解は前近代から見られ、ひじょうに根強いものがあります。しかし、人間の生理・行動の反応... ...続きを見る

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2019/01/12 06:27
Thomas Suddendorf「思考力をもたらした2つの性質」
 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第1部「人間性の起源」に掲載された解説です。人間を現生動物のなかで特別な存在としているのは認知能力であるものの、それが具体的には何か、証明することは難しい、と本論文は指摘します。なぜならば、人間も含まれる霊長類に限らず鳥類まで、動物において広く、人間に匹敵する認知能力を有すると考えられるような事例が相次いで報告されているからです。 ...続きを見る

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2019/01/11 16:00
Kevin Laland「ヒトがヒトを進化させた」
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第1部「人間性の起源」に掲載された解説です。今後、この特集の記事を順次取り上げていく予定です。本論文は、人間が生物界において特別な地位を占めている、と強調します。人間は、同程度の身体サイズの動物の一般的な手段密度をはるかに超えており、居住範囲は広大で、エネルギーや物質の流れを前例のない規模で制御している、というわけです。 ...続きを見る

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2019/01/10 16:51
ヒトにおける父親からのmtDNAの遺伝
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ヒトにおける父親からのミトコンドリアDNA(mtDNA)の遺伝に関する研究(Luo et al., 2018)が報道されました。ミトコンドリアはエネルギーの産生に関わっている細胞内の小器官で、核とは異なる独自のDNAを有しています。そのため、真正細菌が真核生物と共生し、取り込まれたことがミトコンドリアの起源と推定されていますが、それがどの系統かをめぐっては議論が続いています(関連記事)。ヒトのような2倍体の生物では、核DNAは1個の細胞の核内に両親から1セッ... ...続きを見る

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2019/01/06 10:13
唯物論はネアンデルタール人級の発想
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について検索していたら、表題の呟きを発見しました。関連する呟きを時系列に沿ってまとめてみます(呟き1および呟き2および呟き3および呟き4および呟き5)。 ...続きを見る

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2019/01/05 10:33
象徴的思考能力をはじめとしてネアンデルタール人の認知能力に関する記事のまとめ
 以前より、象徴的思考能力をはじめとしネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の認知能力についてまとめた記事を一度執筆しようと考えているのですが、とても準備が整っていないというか、気力がわかないので、とりあえず関連記事をまとめておき、執筆のさいに役立てるつもりです。今後、関連記事を掲載したら、この記事に追記していく予定です。 ...続きを見る

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2019/01/03 12:03
『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』第4刷(後編)
 前編の続きです。 ...続きを見る

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2019/01/02 09:11
『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』第4刷(前編)
 クリストファー・ライアン(Christopher Ryan)、カシルダ・ジェタ(Cacilda Jetha)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、2017年9月に作品社より刊行されました。第1刷の刊行は2014年7月です。原書の刊行は2010年です。字数制限2万文字を超過してしまったので、この前編と後編に分割します。本書は、人類社会が長期にわたって一夫一妻的傾向にあった、と想定する通説を批判し、現代人系統は過去にチンパンジー(Pan troglodytes)やボノボ(Pan paniscus)の... ...続きを見る

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2019/01/02 09:07
古人類学の記事のまとめ(36)2018年9月〜2018年12月
 2018年9月〜2018年12月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2018年9月〜2018年12月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2019/01/01 06:32
2018年の古人類学界
 あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2018年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿って整理すると、以下のようになります。 ...続きを見る

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2018/12/28 15:58
さかのぼるカカオの栽培
 カカオの栽培の開始年代に関する研究(Zarrillo et al., 2018)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも報道されました。先コロンブス期のメソアメリカにおいて、カカオ(Theobroma cacao)は文化的に重要な作物でした。カカオ豆は通貨として使われるとともに、祝祭や儀式で飲むチョコレート飲料を作るのにも用いられていました。考古学的証拠から、こうしたカカオの使用は3900年前にさかのぼり、メソアメリカで栽培化されたという説が定着しています。しかし、遺伝学的証拠からは、... ...続きを見る

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2018/12/27 15:08
Y染色体から推測されるアメリカ大陸への人類最初の拡散
 Y染色体から推測されるアメリカ大陸への人類の拡散した研究(Pinotti et al., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。近年では、人類はアメリカ大陸に進出する前に、28000〜18000年前頃の最終最大氷期を含む寒冷期に、ベーリンジアに孤立した状態で1万年程度留まっていた、とするベーリンジア停止(潜伏)モデルが有力説になっています(関連記事)。本論文は、アメリカ大陸およびユーラシア大陸の現代人と古代人のY染色体DNAの新たな配列および既知の配列を比較... ...続きを見る

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2018/12/25 03:41
更新世〜完新世にかけてのリアンブア洞窟の石材と動物相の変遷
 インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡における、更新世〜完新世にかけての石器の材料と動物相の変遷に関する研究(Sutikna et al., 2018)が公表されました。リアンブア洞窟では、更新世の層で現生人類(Homo sapiens)とは異なるホモ属種であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)が発見されています。フロレシエンシスについては、2016年に研究の大きな進展がありました(関連記事)。フロレシエンシスの遺骸の下限年代は6万年前頃、フロ... ...続きを見る

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2018/12/24 07:45
日本の潜在的鎖国体質(通算5000本目の記事)
 東野治之『遣唐使』は、近年(1980年代以降?)盛んな「開かれた日本」論に疑問を呈しています(関連記事)。「開かれていた日本」という発想は、常識化した鎖国史観への批判として有効であり、傾聴すべきではあるものの、それに偏ると、日本の潜在的鎖国体質を無視してしまうことになる、というわけです。私も一時期、「開かれていた日本」という見解にかなり傾倒していましたが、2007年頃に、海の障壁としての性格を重視すべきではないか、と考えが変わってきたので、同書の提言にはかなり賛同できるところがあります。 ... ...続きを見る

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2018/12/23 15:52
アウストラロピテクス属化石「リトルフット」の頭蓋内組織
 アウストラロピテクス属化石「リトルフット(StW 573)」の頭蓋内組織に関する研究(Beaudet et al., 2018)が報道されました。リトルフットは1994年に南アフリカ共和国のスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟で発見されましたが、固い角礫岩に埋まっていたので、長い時間をかけて慎重に取り出され、復元されました。人類に限らず哺乳類の化石は脆いので、長期間を経て良好な状態で保存されていることはほとんどないのですが、リトルフットは固い角礫岩に埋まっていたため、たいへん良好... ...続きを見る

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2018/12/19 16:57
縄文時代に関する記事のまとめ
 縄文時代に関する当ブログの記事もそれなりの本数になったので、一度まとめておきます。今後、縄文時代に関する記事を掲載したら、追記していきます。 ...続きを見る

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2018/12/16 19:00
小野林太郎「後期更新世〜完新世期のウォーレシアにおける石器・骨器利用」
 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2017年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 11)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDFファイルで読めます(P12-25)。この他にも興味深そうな報告があるので、今後読んでいくつもりです。 ...続きを見る

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2018/12/15 09:15
ネアンデルタール人との交雑から推測される現生人類の頭蓋形状の遺伝的基盤
 現生人類(Homo sapiens)の頭蓋形状の遺伝的基盤に関する研究(Gunz et al., 2019)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人の頭蓋は球状で、前後に長いネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)などの近縁系統や、現代人の祖先系統とは異なります。また、ネアンデルタール人の頭蓋は小脳のある後頭部が膨らんでいるという点でも、現代人とは異なります。ただ、現代人も誕生時にはやや... ...続きを見る

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2018/12/14 18:35
父方祖父の子供期の栄養状態と男孫の死亡リスクの関係
 父方祖父の子供期の栄養状態と男孫の死亡リスクの関係についての研究(Vågerö et al., 2018)が公表されました。この研究は、「ウプサラ多世代出生コホート研究」の対象となった、スウェーデン国内の地域における1874〜1910年の作物の収量データを集めた上で、このデータを用いて、祖父母9039人にとって、思春期前の成長の鈍化する時期に食料を取得するのがどれだけ難しかったのか、推定しました。この研究は、これらの祖父母の孫11561人の1961〜2015年の死亡データを... ...続きを見る

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2018/12/12 03:30
『Newton』2019年1月号「創刊450号 記念大特集サピエンス」
 第一部が「人類の誕生」、第二部が「文明の芽生え」、第三部が「科学の躍進」で、執筆者は全員編集部員です。執筆協力者から期待できそうだと思い、購入しました。全体的に、一般向け雑誌であることを意識して、分かりやすい解説になっていると思います。第二部と第三部についてはよく分かりませんが、少なくとも第一部に関しては、基本的には近年の知見を反映したものになっており、なかなかよいと思います。なお、本文では芸術は現生人類(Homo sapiens)だけの営みとされていますが、年表では、ネアンデルタール人(Ho... ...続きを見る

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2018/12/11 15:55
絶滅したホラアナグマの現生種への遺伝的影響
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、絶滅したホラアナグマの現生種への遺伝的影響に関する研究(Barlow et al., 2018)が報道されました。この研究は、71000〜34000年前頃のホラアナグマ4頭のゲノム塩基配列を調べ、古代および現代のヒグマの他、アメリカグマ・ツキノワグマ・ガネグマ・パンダ・ホッキョクグマと比較しました。これらのうちホッキョクグマは、過去にヒグマとの交雑が確認されています。この研究は、塩基配列を解読した全てのヒグマのゲノムに、0.9〜2.4%の割合でホラアナグマD... ...続きを見る

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2018/12/10 16:11
さかのぼるヨーロッパにおけるペストの起源
 ヨーロッパにおけるペストの起源に関する研究(Rascovan et al., 2019)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヨーロッパにおける農耕は、アナトリア半島からヨーロッパへの農耕民の移住により拡大・定着していった、と考えられています(関連記事)。こうしてヨーロッパでも新石器時代が始まり、新石器時代末期にかけて人口が増大していきました。また、土器や畜力や車輪や金属器の開発・利用といった技術革新も人口増加を促... ...続きを見る

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2018/12/09 18:47
山極寿一『家族進化論』第4刷
 東京大学出版会より2016年4月に刊行されました。第1刷の刊行は2012年6月です。著者は碩学だけに、本書は平易な解説ながらも情報密度が濃く、たいへん奥深い内容になっていると思います。本書は霊長類について、研究史も踏まえてどのような仮説が妥当なのか、何がまだ不明なのか、ということを分かりやすく解説しており、私が霊長類について不勉強ということもあって、一読しただけではとても情報密度の濃い本書の内容を的確に把握できたとは言えないので、今後何度か再読していこうと思います。 ...続きを見る

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2018/12/09 05:57
デニソワ洞窟の新たな装飾品
 更新世の人類遺骸が発見されていることで有名な、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で新たに装飾品が発見された、と報道されました。デニソワ洞窟では、種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)やネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺骸が発見されており、そのDNA解析は大きな注目を集めました。デニソワ人については、以前当ブログでまとめました(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/12/08 20:30
社会正義の活動家たちによるカトリック教会的でポストモダン的な反進化学
 社会正義の活動家たちによる進化学への攻撃を批判した記事が公開されました。執筆者は、昆虫の行動を研究している生物学者のライト(Colin Wright)氏で、検索してみたところ、クモの社会行動に関する論文を発見しました。この記事では、「社会正義の活動家たち(social justice activists)」と表記されていますが、「社会正義の戦士たち(Social Justice Warriors)」とほぼ同じ意味合いなのかな、と思います。まあ、私はこうした議論に詳しいわけではないので、的外れか... ...続きを見る

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2018/12/04 19:10
アザラシの交雑
 アザラシの交雑に関する研究(Savriama et al., 2018)が報道されました。哺乳類においても交雑は珍しくありませんが、古代の交雑に関しては、化石から遺伝的情報を得ることが困難にため、形態的に判断しなければならない場合が多くなります。本論文はアザラシの事例から、哺乳類において交雑個体群、とくに交雑第一世代は形態的に区分できるのか、またそれが可能として、どのような指標を区分に用いるべきなのか、といった問題を検証しています。これまで形態では、とくに歯と頭蓋が重視されていました。 ...続きを見る

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2018/12/03 16:07
240万年前頃までさかのぼるアフリカ北部の石器
 アフリカ北部の石器の年代が以前の見解よりもさかのぼることを報告した研究(Sahnouni et al., 2018)が報道されました。AFPでも報道されています。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。アフリカ北部における人類の痕跡は遅くとも180万年前頃にまでさかのぼり、アルジェリア北東部のアインハネヒ(Ain Hanech)研究地域のエルハーバ(El-Kherba)では、180万年前頃のオルドワン(Oldowan)石器と解体痕(c... ...続きを見る

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2018/12/02 18:50
さかのぼるチベット高原への人類の拡散
 チベット高原への人類の拡散に関する研究(Zhang et al., 2018)が報道されました。チベットへの人類の移住に関しては、以前まとめました(関連記事)。海抜4000m以上となるような高地は、砂漠・熱帯雨林・北極圏とともに人類にとって極限環境で、居住は容易ではないため、進出できた人類は現生人類(Homo sapiens)だけで(関連記事)、チベット高原も、低温・低い生物量(バイオマス)生産性・低酸素のため、人類にとって過酷な環境で、人類の進出した陸上環境の中でも最後の方の一つと考えられて... ...続きを見る

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2018/12/01 10:30
アラビア半島内陸部において19万年前頃以降も続いたアシューリアン
 アラビア半島における終末期に近いアシューリアンの年代に関する研究(Scerri et al., 2018B)が報道されました。アシューリアン(Acheulean)の起源はアフリカ東部において176万年前頃までさかのぼり(関連記事)、150万年以上にわたって用いられてきた文化で、人類の進化と拡大の理解に重要です。しかし、アシューリアンの時系列と地理的範囲、とくに終末期については、未解明なところが多分に残されています。本論文は、アシューリアンの終末期の手がかりとなり得る、アラビア半島内陸部に位置す... ...続きを見る

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2018/11/30 16:34
氷期における北半球から南半球への気候の影響
 氷期における北半球から南半球への気候の影響に関する研究(Buizert et al., 2018)が公表されました。南半球中緯度域の偏西風は、南大洋の湧昇流、深海との間の炭素交換、アガラスリーケージ(インド洋の海水の大西洋への輸送)、場合によっては南極大陸の氷床の安定性を通して、全球の気候システムに重要な役割を担っています。南半球の偏西風の南北方向の移動についてはこれまで、充分な裏づけのあるダンスガード・オシュガー(Dansgaard–Oeschger)イベン)に応答した熱帯収束帯... ...続きを見る

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2018/11/29 16:24
フィンランドとロシア北西部の古代ゲノム
 フィンランドとロシア北西部の古代ゲノムに関する研究(Lamnidis et al., 2018)が報道されました。ヨーロッパの現代人の遺伝的構成はおもに、上部旧石器時代の狩猟採集民、新石器時代初期にアナトリアからヨーロッパへと拡散してきた農耕民、新石器時代末期から青銅器時代初期にユーラシア西部草原地帯からヨーロッパへと拡散してきたヤムナヤ(Yamnaya)集団の混合です。考古学的研究成果より、フィンランドには9000年前より人類が居住していた、と明らかになっていますが、ヨーロッパ北東部の古代D... ...続きを見る

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2018/11/28 16:59
ネアンデルタール人と現生人類の複数回の交雑
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の交雑回数に関する研究(Villanea, and Schraiber., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。非アフリカ系現代人は全員、ネアンデルタール人から遺伝的影響を受けています。当初は、非アフリカ系現代人の各地域集団において、ネアンデルタール人からの遺伝的影響にほとんど違いはないと推定されたことから、非アフリカ系現代人の祖先集団が、ヨーロッパ・東ア... ...続きを見る

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2018/11/27 17:00
文化変容・継続と遺伝的構成の関係
 古代DNA解析が飛躍的に発展していくなか、次第に明らかになってきたのは、文化の変容・継続とその担い手である人類集団の遺伝的構成との関係は一様ではない、ということです。この問題については、以前にも農耕の起源と拡散との関連で述べました(関連記事)。文化変容が、時には置換とも言えるような、その担い手である人類集団の遺伝的構成の大きな変化を反映している場合もあれば、文化変容はおもに文化のみの伝播で、その担い手はさほど変わらない場合もあります。逆に文化的継続は、その担い手の遺伝的構成の継続を反映して... ...続きを見る

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2018/11/25 18:55
日本と韓国におけるイネの遺伝的多様性の減少
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、日本と韓国におけるイネの遺伝的多様性の減少に関する研究(Kumagai et al., 2016)が報道されました。栽培イネ(Oryza sativa)は、コムギやトウモロコシとともに、現代世界における最重要作物です。しかし、イネの品種のうち90%を占めるジャポニカとインディカの起源と栽培化の歴史は、長年の研究にも関わらず、未解明なところが多分にあります。一般的には、ジャポニカ種は日本列島・朝鮮半島・中国北部から構成される東アジア北部で独占的に栽培さ... ...続きを見る

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2018/11/25 12:58
現生人類の初期の拡散
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、現生人類(Homo sapiens)の初期の拡散に関する研究(Rabett., 2018)が公表されました。現生人類の出アフリカに関しては、回数・年代・経路などをめぐって議論が続いています(関連記事)。現時点での遺伝学的証拠からは、非アフリカ系現代人の主要な祖先は比較的小規模な単一の集団で、出アフリカの回数は1回のみで、その年代は6万〜5万年前頃との見解が有力だと思います。非アフリカ系現代人は全員、わずかながらネアンデルタール人(Homo neanderth... ...続きを見る

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2018/11/24 08:12
鮮新世〜更新世におけるアフリカ東部の大型草食動物の絶滅要因
 鮮新世〜更新世におけるアフリカ東部の大型草食動物の絶滅要因に関する研究(Faith et al., 2018)が報道されました。アフリカの多様な草食大型哺乳類(体重1000kg以上)の絶滅に関しては、人類の影響が指摘されてきました。たとえば、世界規模で後期更新世以降の大型動物の絶滅を検証した研究は、5万年前頃以降のアフリカからの現生人類(Homo sapiens)の拡散にともない大型動物が絶滅していった、と推測していますが、アフリカではすでに125000年前の時点で、生態系から予想されるよりも... ...続きを見る

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2018/11/23 10:53
アフリカ南部の初期人類の化石記録の偏り(追記有)
 アフリカ南部の初期人類の化石記録の偏りに関する研究(Pickering et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。南アフリカ共和国ヨハネスブルグ市の北西にある洞窟群「人類のゆりかご」では、豊富な初期人類化石が発見されています。しかし、洞窟内の化石が保存されていた堆積層は崩落しており、層の秩序が乱れているため、これらの化石の正確な年代測定とその進化史の評価は困難です。また、アフリカ南部に関しては、アフリカ東部とは異なり、火山灰層による年代測定ができ... ...続きを見る

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2018/11/22 18:31
中世デンマーク人の歯石の解析
 中世デンマーク人の歯石の解析に関する研究(Jersie-Christensen et al., 2018)が公表されました。歯石にはさまざまな分子が保存されており、ヒト由来の分子の他、細菌や食物などに由来する分子も含まれています。この分子組成は、健康時と疾病時で異なっており、指紋のように一意であると考えられてきました。本論文は、デンマークのジャービー(Tjærby)にある中世の教区墓地の埋葬者21人の歯石のタンパク質を分析しました。埋葬者の年代は、紀元後1100〜1450年です。その... ...続きを見る

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2018/11/21 16:37
乳幼児期の教育的介入と成人後の社会的意思決定の関係
 乳幼児期の教育的介入と成人後の社会的意思決定の関係についての研究(Luo et al., 2018)が公表されました。アベセダリアン・プロジェクト(ABC)は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州で実施された介入研究で、同州内の複数のリスクを抱える低所得家庭において1972〜1977年に誕生した新生児に対して、生後5年間にわたって教育支援が行なわれました。先行研究から、この介入研究の参加者は成人になってからの認知能力・教育・経済・身体的健康の点で良好な結果が得られた、と明らかになっていますが、社会... ...続きを見る

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2018/11/21 16:35
中期更新世後期の東アジア南部のルヴァロワ石器(追記有)
 中期更新世後期の東アジア南部のルヴァロワ(Levallois)石器発見した研究(Hu et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ルヴァロワ技術は調整石核技術のなかでもとくに有名で、伝統的な5段階の石器製作技術区分では様式3(Mode 3)となります(関連記事)。調整石核技術は、事前に調整した石核から剥片を剥離する技法で、予め剥片の形を思い浮かべ、それを剥離するために微妙な石核の調整が必要となることから、高い認知能力と器用な手先を必要とします。その... ...続きを見る

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2018/11/20 19:03
青谷上寺地遺跡の弥生時代後期人骨のmtDNA解析の続報
 鳥取市の青谷上寺地遺跡で出土した、弥生時代後期となる紀元後1〜2世紀の人骨のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析については、以前当ブログで取り上げました(関連記事)。昨日(2018年11月17日)、その中間報告会が鳥取市の青谷町総合支所で開かれた、と報道されました。報道だけでは詳細は不明ですが、とりあえず備忘録として取り上げます。 ...続きを見る

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2018/11/18 18:45
さかのぼるオーストラリア内陸部への人類の拡散
 オーストラリア内陸部の西部乾燥地帯への人類の拡散に関する研究(McDonald et al., 2018)が報道されました。オーストラリアの人類史関連の記事については、今年(2018年)4月にまとめました(関連記事)。更新世の寒冷期には、オーストラリア大陸・ニューギニア島・タスマニア島は陸続きとなってサフルランドを形成していました。サフルランドにおける現生人類(Homo sapiens)の痕跡については、昨年(2017年)、65000年前頃までさかのぼるとする研究が公表されました(関連記事)。... ...続きを見る

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2018/11/18 09:09
オーストラリアへの現生人類の到達年代
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、オーストラリアへの現生人類(Homo sapiens)の到達年代に関する研究(O’Connell et al., 2018)が報道されました。オーストラリアの人類史関連の記事については、今年(2018年)4月にまとめました(関連記事)。本論文は、東アジア南部と東南アジアからニューギニアとオーストラリアにいたる広範な地域を対象に、いつ現生人類が最初に拡散してきたのか、既知の諸研究を検証しています。更新世の寒冷期には、ジャワ島・スマトラ島・ボルネオ島などはユーラ... ...続きを見る

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2018/11/17 12:22
ネアンデルタール人と現生人類の頭蓋外傷受傷率(追記有)
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の頭蓋外傷受傷率を比較した研究(Beier et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ネアンデルタール人は一般的に、現生人類よりも危険な生活を送っていた、と考えられています。その要因として、暴力的社会行動、雪と氷に覆われていた環境における高度に遊動性の狩猟採集生活様式、肉食獣の攻撃、接近戦による大型獣の狩猟などが想定されていました。しかし、その根... ...続きを見る

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2018/11/15 18:51
出穂雅実「北東アジアにおける現生人類の居住年代と行動の特徴に関する研究(2017年度)」
 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2017年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 11)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDFファイルで読めます(P6-11)。この他にも興味深そうな報告があるので、今後読んでいくつもりです。 ...続きを見る

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2018/11/13 17:24
土壌炭素の貯蔵に影響を及ぼしたマヤ低地の森林伐採
 マヤ低地の森林伐採と土壌炭素の貯蔵に関する研究(Douglas et al., 2018)が公表されました。土壌は大量の有機炭素を保持しており、それらを大気から何千年以上にわたり隔離できます。そうした土壌を覆う植生に対する攪乱は全て、炭素貯蔵に影響を及ぼすと考えられていますが、その影響は土壌の種類と干渉の性質によって変化し得ます。この研究は、マヤ低地の土壌中の有機炭素の残存期間の過去3500年にわたる変化を、「ろう(植物の葉が産生し、湖の堆積物に保存されていたもの)」の年代に基づいて調べました... ...続きを見る

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2018/11/12 16:59
更新世ホモ属の発達異常の多さ
 更新世ホモ属の発達「異常」の多さに関する研究(Trinkaus., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、複数の種もしくは分類群から構成される更新世ホモ属遺骸66個体を分析し、発達「異常」や「奇形」が多かった、と報告しています。対象となるのはおもに20万年前移行の若い成人個体ですが、150万年前頃の個体や子供も含んでいます。これらの「異常」は、頭蓋・歯・脊椎・手根骨・腕・脚など多様な部位で見られ... ...続きを見る

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2018/11/11 18:50
アンデス高地住民の古代ゲノム
 アンデス高地住民の古代ゲノムを報告した研究(Lindo et al., 2018B)が報道されました。日本語の報道もあります。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。アンデス高地における恒久的居住に関しては、12000年前頃までさかのぼるとの見解も提示されていますが(関連記事 )、9500〜9000年前頃に始まった、との見解もあります。本論文は、アンデス高地への人類集団の適応を、古代ゲノム解析と現代人との比較により検証しています。 ...続きを見る

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2018/11/11 13:11
アメリカ大陸の大規模な古代DNA研究
 アメリカ大陸への人類の拡散に関する二つの研究が報道されました(報道1および報道2および報道3)。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。これらの研究はいずれもオンライン版での先行公開となります。一方の研究(Moreno-Mayar et al., 2018B)は、アラスカからパタゴニアにまでアメリカ大陸の広範な地域に及ぶ、10700〜500年前までの15人の古代ゲノムを新たに解析し、そのうち6人は1万年以上前で、網羅率は最大で18倍となります。 ...続きを見る

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2018/11/10 03:52
ボルネオ島の4万年以上前の洞窟壁画(追記有)
 ボルネオ島の4万年以上前の洞窟壁画に関する研究(Aubert et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、ボルネオ島でインドネシア領となる東部の東カリマンタン州の洞窟群の壁画の上下の炭酸カルシウム堆積物のウラン系列法による年代測定結果を報告しています。これらの洞窟群では、数千点の壁画が確認されており、おそらくは在来の野生ウシを描いた赤燈色の動物壁画と手形の第一期、それよりも後の、暗赤紫色の手形ステンシルと複雑なモチーフと人間を描いた第二期... ...続きを見る

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2018/11/08 17:05
文化伝播によるユーラシア東方草原地帯の牧畜の始まり
 ユーラシア東方草原地帯における牧畜の起源に関する研究(Jeong et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。銅石器時代〜青銅器時代移行期に、ポントス-カスピ海草原(中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までの草原地帯)からの遊牧民の移住により、ヨーロッパと中央アジアでは人類集団に大きな遺伝的変容が見られました(関連記事)。しかし、銅石器時代〜青銅器時代において、ユーラシア西方草原地帯における大変化と比較して、ユーラシア東方草原地帯については、た... ...続きを見る

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2018/11/07 18:37
ヒトパピローマウイルスの進化とホモ属内の交雑
 ヒトパピローマウイルス(HPV)の進化とホモ属内の交雑に関する研究(Chen et al., 2018)が報道されました。現代人は生涯を通じて多くのパピローマウイルス群(PVs)に感染しますが、そのほとんどは無症状です。しかし、ヒトパピローマウイルス16(HPV16)による持続性感染は、とくに子宮頸部において発癌性が認められています。以前の研究では、HPV16は大きくはA・B・C・Dの4系統に区分され、そのうちA系統に関しては、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や... ...続きを見る

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2018/11/06 17:44
Louise Humphrey、Chris Stringer『サピエンス物語』
 ルイーズ・ハンフリー(Louise Humphrey)、クリス・ストリンガー(Chris Stringer)著、山本大樹訳で、大英自然史博物館シリーズ2として、2018年7月にエクスナレッジより刊行されました。原書の刊行は2018年です。170ページほどですが、B5判よりやや小さい程度の大きさで文字数は少なくありませんし、ほぼ全ページカラーで索引もありますから、税抜き1800円はお買い得だと思います。近年までの知見が豊富に取り込まれており、最新の研究成果に基づく解説になっていますから、人類進化... ...続きを見る

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2018/11/04 05:47
アルタイ地域の中部旧石器時代〜上部旧石器時代
 アルタイ地域の中部旧石器時代〜上部旧石器時代への移行期に関する研究(Krivoshapkin et al., 2018)が公表されました。南シベリアのアルタイ地域は、近年になってホモ属の進化史において注目されるようになりました。それは、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)という以前から知られていたホモ属系統のみならず、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)という新たなホモ属系統も存在していた、と明らかになったからです(関連... ...続きを見る

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2018/11/02 18:53
厳しい環境で育ったネアンデルタール人の子供(追記有)
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の歯を分析した研究(Smith et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。本論文は、ランス南東部のローヌ渓谷のペイール(Payre)遺跡で発見された、251000年前頃のペイール336(Payre 336)と247000年前頃のペイール6(Payre 6)というネアンデルタール人2個体の歯と、ペイール1(Payre 1)という5400年前... ...続きを見る

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2018/11/01 18:14
人工知能AIが抱える道徳的ジレンマ
 人工知能AIが抱える道徳的ジレンマに関する研究(Awad et al., 2018)が公表されました。人工知能の急速な発展にともない、機械がどのようにして道徳的な意思決定を行なうのかに関して懸念が生じており、機械の振る舞いを導くべき倫理原則についての社会的期待を定量化することが大きな課題となっています。この課題に取り組むため、本論文は、自動運転車が直面する道徳的ジレンマを探るためのオンライン実験プラットフォーム「モラル・マシン」を設計し、展開しました。このプラットフォームでは、世界の233の国... ...続きを見る

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2018/11/01 18:12
ネアンデルタール人の胸郭の復元
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の胸郭の復元に関する研究(Gómez-Olivencia et al., 2018B)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。ネアンデルタール人の胸郭のサイズと形状については、現生人類(Homo sapiens)との比較で違いがあるのか否か、という点をめぐって150年以上議論が続いてきました。本論文は、現在のイスラエル領北部にあるカルメル山のケバラ(Kebara)洞窟遺跡で発見されたネアン... ...続きを見る

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2018/10/31 17:06
アラビア半島内陸部における30万年以上前の人類の痕跡
 アラビア半島内陸部における30万年以上前の人類の痕跡に関する研究(Roberts et al., 2018B)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アラビア半島は、アフリカからユーラシアへの人類の拡散の最初の拠点として、たいへん注目されています。アラビア半島内陸部は、現在ではたいへん乾燥した気候となっていますが、更新世の人類の痕跡が確認されています。95000〜86000年前頃と推定されている遺跡では、現生人類(Homo sapiens)と分類されている中節骨が発見さ... ...続きを見る

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2018/10/30 17:54
アフリカ外最古の現生人類に関する議論
 今年(2018年)1月に、イスラエルのカルメル山にあるミスリヤ洞窟(Misliya Cave)で発見された現生人類(Homo sapiens)化石に関する研究(Hershkovitz et al., 2018A)を当ブログで取り上げました(関連記事)。これは現時点ではアフリカ外最古となります。この研究(H論文A)にたいして、年代に疑問を呈する論文(Sharp, and Paces., 2018)と、それに対する反論(Hershkovitz et al., 2018 B)が公開されました。以下、... ...続きを見る

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2018/10/28 10:31
森恒二『創世のタイガ』第4巻(講談社)
 本書は2018年10月に刊行されました。第1巻と第2巻と第3巻がたいへん面白かったので、第4巻も楽しみにしていました。第4巻は、タイガが現生人類(Homo sapiens)の少女ティアリの集落で、戦士であると証明するために、ナクムという屈強そうな男性と対決する場面から始まります。まあ、集落と言うと定住性が強い感じなので、野営地と言うべきでしょうか。ただ、一時的な拠点というよりは、長期的な拠点のようにも見えます。あるいは、季節単位で移動するのではなく、ある程度の年数、通年過ごすための拠点かもしれ... ...続きを見る

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2018/10/28 10:29
大量絶滅関連の記事のまとめ
 自然科学関連の記事も500本に近づいてきたので、少しは整理しておこうと考えています。今回は、恐竜関連の関連記事と一部重なりますが、大量絶滅関連の記事をまとめてみました。今後、大量絶滅に関する記事を掲載した場合、追記していきます。 ...続きを見る

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2018/10/27 08:27
ローマ帝国における近親婚
 不勉強なため、まだまったくと言ってよいほど疑問が解消されていないのですが、興味深い事例なので、備忘録として記事にしておきます。近親交配(近親婚)について当ブログでは、クロアチアのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の高品質なゲノム配列を取り上げたさいに言及しました(関連記事)。おそらく人類系統にも、近親交配を避けるような認知メカニズムが生得的に備わっている可能性は高く、人類社会において定常的な近親婚がほとんど見られないのは、根本的にはその認知メカニズムに起因すると思... ...続きを見る

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2018/10/26 18:37
イランで発見されたネアンデルタール人の子供の歯
 イラン西部のケルマンシャー(Kermanshah)州でネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の子供の乳歯が発見された、と報道されました。短い記事なので詳細は不明ですが、とりあえず備忘録としてまとめておきます。この報道はイラン文化遺産観光研究所の報告に基づいているようです。調査団を率いたヘイダリ=グラン(Saman Heydari-Guran)氏に直接取材したように読めますが、イラン文化遺産観光研究所の報告から引用しているのかもしれません。 ...続きを見る

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2018/10/23 16:54
先コロンブス期アメリカ大陸は大規模に開発されていた
 昨日(2018年10月22日)、人類が一度も居住したことがなさそうだ、と考えられていたエクアドルの雲霧林に、かつて人類が500年以上居住し、作物を栽培していた痕跡が確認された、との研究を取り上げました(関連記事)。以前は、このエクアドルの雲霧林のように、アメリカ大陸における先コロンブス期の人類の痕跡が見逃されていたことは少なくありませんでした。先コロンブス期アメリカ大陸には広大な「手つかず」の自然が広がっており、先住民は自然と「共生」していた、というわけです。しかし、『1491 先コロンブス期... ...続きを見る

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2018/10/23 16:52
エクアドルの森林における先住民集団の痕跡
 エクアドルの森林における先住民集団の痕跡に関する研究(Caley et al., 2018)が報道されました。19世紀の旅行者たちは、エクアドルのキホスバレーの雲霧林について、「人類がこれまで一度も住んだことがない」ようだと述べています。しかし、本論文は、この谷にある湖の土壌コアを分析し、人類の痕跡を明らかにしました。雲霧林のコアから木炭・菌類・花粉が発見され、谷には500年以上にわたって人類が住み、作物を栽培し、土器を作り、火を焚いていたことが明らかになりました。 ...続きを見る

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2018/10/22 16:38
上部旧石器時代〜青銅器時代のヨーロッパと近東のイヌのmtDNA
 上部旧石器時代〜青銅器時代のヨーロッパと近東のイヌのミトコンドリアDNA(mtDNA)に関する研究(Ollivier et al., 2018)が報道されました。ヨーロッパにおいては、9000〜6000年前頃に各地で農耕が始まりました。ヨーロッパの農耕の起源は近東にあり、近東から初期農耕民がヨーロッパへと拡散してきたことで、ヨーロッパでも農耕が定着していきました。その過程は一様ではなく、ヨーロッパ西部および北部では狩猟採集社会が比較的遅くまで続きました。新石器時代以降のヨーロッパにおいて、近東... ...続きを見る

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2018/10/21 18:52
アメリカ人類遺伝学会の人種差別に関する声明
 アメリカ人類遺伝学会(ASHG)の人種差別に関する声明(ASHG., 2018)が報道されました。この声明の内容はおおむね以下の通りです。 ...続きを見る

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2018/10/21 09:59
今、ホモ・サピエンスのアフリカ起源説など人類史の常識が次々と覆されている
 表題の記事がそれなりに話題になっていますが、少なからず問題があると思います。たとえば、現生人類(Homo sapiens)は遺伝学的には「アフリカ系統」と「ユーラシア系統」の2系統に大きく分かれる、とされていますが、これはかなり問題のある認識だと思います。確かに、現代人を「アフリカ人」・「ヨーロッパ人」・「東アジア人」・「オセアニア原住民」・「アメリカ原住民」などと遺伝学的に「グループ分け」することは可能です。しかし、ユーラシア系というか非アフリカ系は多様なアフリカ系のうち一部の系統から派生し... ...続きを見る

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2018/10/20 21:03
ジェンダー差と経済的発展およびジェンダー平等性との関係
 ジェンダー差と経済的発展およびジェンダー平等性との関係についての研究(Falk, and Hermle., 2018)が公表されました。リスクを取ること・忍耐・利他主義・積極的および消極的相互主義・信頼といった基本的な選好は、人間の行動の基礎となります。経済学や心理学の諸研究は、選好における重要なジェンダー差を報告しており、職業選択や投資や教育機会におけるジェンダー差の基盤を説明します。選好におけるジェンダー差の起源と国家・文化間での可変性は多くの研究で扱われており、生物学的・進化的決定論と社... ...続きを見る

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2018/10/20 10:45
鳥取市の弥生時代後期の人骨のmtDNA解析
 鳥取市の弥生時代後期の人骨のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析について報道されました。報道だけでは詳細は不明ですが、備忘録としてとりあえず取り上げます。鳥取市の青谷上寺地遺跡で出土した、弥生時代後期となる紀元後1〜2世紀の大量の人骨のmtDNAが解析され、そのほとんどの「特徴が中国や朝鮮半島の人のものと共通している」と明らかになったそうです。ほとんどが「渡来系」とされているハプログループに分類された、ということでしょうか。 ...続きを見る

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2018/10/19 16:52
志望大学の選択と大学での学業成績に対する遺伝的影響
 志望大学の選択と大学での学業成績に対する遺伝的影響に関する研究(Smith-Woolley et al., 2018)が公表されました。この研究は、3000人の被験者と3000組の双生児から得た遺伝情報を解析して、若年成人の大学教育に関連する指標の個人差を遺伝子によってどの程度説明できるのか、調べました。この研究は、一卵性双生児と二卵性双生児を比較して、Aレベル試験の結果(合格すればイギリスの大学への入学資格が得られます)の個人差の57%、志望大学の選択の個人差の51%、志望大学の質(学業面の... ...続きを見る

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2018/10/19 16:51
ネアンデルタール人の洞窟壁画関連記事のまとめ
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の洞窟壁画関連の記事がそれなりの本数となったので、今では、ネアンデルタール人ではなく現生人類(Homo sapiens)が描いただろう、と考えられているものも含めて、まとめてみます。以下は、フランスのショーヴェ=ポン・ダルク洞窟(Chauvet-Pont d'Arc Cave)を除いて、いずれもスペインの洞窟です。 ...続きを見る

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2018/10/18 16:56
嗅覚と空間記憶の関連
 嗅覚と空間記憶の関連についての研究(Dahmani et al., 2018)が公表されました。動物が嗅覚を持つようになったのは、環境におけるナビゲーションに役立てるためだったと考えられています。現在までに、嗅覚同定(何の匂いか特定すること)と空間記憶(環境中のさまざまな目標物同士の関係を学習し、認知地図を構築することに関与します)が関連している可能性を示すいくつかの証拠は集まっていますが、それらが直接検討されたことはありませんでした。 ...続きを見る

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2018/10/17 17:48
門脇誠二「西アジアにおける新人の拡散・定着期の行動研究:南ヨルダンの遺跡調査(2017年度)」
 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2017年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 11)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDFファイルで読めます(P19-27)。この他にも興味深そうな報告があるので、今後読んでいくつもりです。 ...続きを見る

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2018/10/15 16:35
シャテルペロニアンの担い手の検証
 シャテルペロニアン(Châtelperronian)の担い手を改めて検証した研究(Gravina et al., 2018)が公表されました。西ヨーロッパにおける中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行期は、現生人類(Homo sapiens)によるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の置換とも関連しており、高い関心が寄せられ、激しい議論が続いています。当ブログではこれまで、フランス西部〜スペイン北部で確認されるシャテルペロニアンをヨーロッパの中部旧石器時代〜... ...続きを見る

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2018/10/14 18:51
6万年以上前とされたイベリア半島の洞窟壁画の年代の見直しへの反論
 6万年以上前とされたイベリア半島の洞窟壁画の年代の見直しへの反論(Hoffmann et al., 2018C)が公表されました。今年(2018年)2月に、スペインの洞窟壁画の年代が6万年以上前までさかのぼると公表され(Hoffmann論文)、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産である可能性が高いということで、大きな話題を呼びました(関連記事)。具体的には、北部となるカンタブリア(Cantabria)州のラパシエガ(La Pasiega)洞窟、ポルトガルとの国... ...続きを見る

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2018/10/13 11:36
鳥に食べられていたネアンデルタール人の子供
 鳥に食べられていた痕跡のあるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の子供について報道されました。この研究は今年(2018年)のうちに考古学誌にて公表されるとのことで、現時点では詳細は不明です。ポーランドのキエムナ洞窟で数年前に長さ1cmほどの指の骨2本が発見され、5〜7歳の子供だと推定されているそうです。推定年代は115000年前頃で、ポーランドでは最古の人骨となるそうです(それまでの最古の人骨の推定年代は52000年前頃)。 ...続きを見る

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2018/10/11 16:51
イギリスのバイオバンクの遺伝学的データ
 イギリスのバイオバンクの遺伝学的データに関する二つの研究が公表されました。イギリスのバイオバンクは、登録時に40〜69歳だった約50万人のイギリス人の遺伝的データと臨床データの情報資源で、健康と各種疾患の遺伝的基盤の研究に役立っています。参加者は2006〜2010年に集められ、モニタリングは今後も継続されます。バイオバンクに登録された最大のデータセットは遺伝子型と脳スキャンのデータで、これにより脳の構造と機能に影響を及ぼす遺伝子の研究が可能となります。 ...続きを見る

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2018/10/11 16:49
アフリカ東部の気候変動と現生人類の進化
 アフリカ東部の気候変動と現生人類(Homo sapiens)の進化との関連についての研究(Owen et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。人類進化と気候変動とを関連づける仮説は多くあります。気候変動の証拠となるのは、陸上や湖や海洋のコア、花粉記録などです。しかし本論文は、そうした気候記録の多くは継続性がなく、その根拠となったコアなどが採取された地域と、人類遺骸や石器など人類の痕跡が発見されている地域との間の大きな地理的隔たりがあるので、気候変... ...続きを見る

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2018/10/10 16:29
「朝鮮人・韓国人はホモサピエンスではない」との言説と悪魔の門遺跡
 Twitterにてネアンデルタール人で検索していたら、「朝鮮人・韓国人はホモサピエンスではない ※現代人と約900万個の遺伝子相違」と題する記事を発見しました。もちろん、ガセネタなのですが、ネットではそれなりに引用されています。さすがに本気にしている人はいない、と信じたいところですが、本気にしている人もいるように思えるのは残念なことです。私の判断が間違っていればよいのですが。そもそも、現代人の推定遺伝子数は2万数千個程度なので、「約900万個の遺伝子」と言っている時点で与太話確定なのですが、あ... ...続きを見る

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2018/10/09 16:40
小野林太郎「東南アジア・オセアニア海域に進出した新人の移住戦略と資源利用」
 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2016年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 4)に所収されています。公式サイトにて本論文PDFファイルで読めます(P19-27)。この他にも興味深そうな報告があるので、今後読んでいくつもりです。 ...続きを見る

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2018/10/08 08:39
ウルツィアンの担い手
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ウルツィアン(Uluzzian)の担い手に関する研究(Zilhão et al., 2015)が公表されました。先月(2018年9月)当ブログで取り上げた、イベリア半島北部における中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行年代に関する論文(関連記事)に本論文が引用されており、重要だと思ったので取り上げます。なお、以下の考古学的年代はすべて、放射性炭素年代測定法による較正年代です。 ...続きを見る

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2018/10/07 22:23
青銅器時代〜鉄器時代のユーラシア西部草原地帯の遊牧民集団の変遷
 青銅器時代〜鉄器時代のユーラシア西部草原地帯の遊牧民集団の変遷に関する研究(Krzewińska et al., 2018)が報道されました。本論文は、おもにポントス-カスピ海草原(中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までの草原地帯)の青銅器時代〜鉄器時代の人類集団のゲノムを解析し、ユーラシアの古代および現代の人類集団の既知のゲノムと比較しました。本論文の結論は、鉄器時代のユーラシア西部遊牧民集団の主要な起源はポントス-カスピ海草原東部にある、というものです。 ...続きを見る

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2018/10/07 13:46
アフリカ北部の9万年前頃の骨製道具
 アフリカ北部の9万年前頃の骨製道具に関する研究(Bouzouggar et al., 2018)が報道されました。本論文が取り上げているのは、モロッコ王国の大西洋岸にあるダルエスソルタン1(Dar es-Soltan 1)洞窟遺跡の9万年前頃の大型哺乳類の肋骨製の道具です。文化的な時代区分では中期石器時代となり、アテリアン(Aterian)に分類されています。アテリアンは、「現代的」行動・複雑な認知能力の出現をめぐる議論で重要な文化で、アフリカ北部において145000年前頃に出現します。 ... ...続きを見る

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2018/10/06 21:00
前期更新世のヨーロッパのホモ属の臼歯に見られるネアンデルタール人的特徴
 前期更新世のヨーロッパのホモ属の臼歯に関する研究(Martín-Francés et al., 2018)が報道されました。本論文が分析対象としたのは、スペイン北部のアタプエルカ山地のグランドリナTD6(Gran Dolina-TD6)遺跡で発見された、前期更新世後期となる90万〜80万年前頃のホモ属の臼歯です。このホモ属化石はアンテセッサー(Homo antecessor)と分類されています。アンテセッサーの形態的特徴はモザイク状とされ、ホモ属の進化系統樹において、ネアン... ...続きを見る

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2018/10/06 11:34
ヨーロッパ人に見られるネアンデルタール人由来の適応的遺伝子
 ヨーロッパ人に見られるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来の適応的遺伝子に関する研究(Enard, and Petrov., 2018)が報道されました。ネアンデルタール人と現生人類の交雑は少なくとも2回起きました。最初は10万年以上前で、この交雑が現代人に遺伝的影響を残しているのか、あるいはこの時交雑した現生人類の子孫が現代にいるのか、不明です(関連記事)。2回目は、非アフリカ系現代人全員に遺伝的影響を及ぼした、54000〜49000年前頃の交雑です(関連記事... ...続きを見る

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2018/10/05 21:52
ネアンデルタール人的特徴を有するイタリアの45万年前頃の歯
 イタリアで発見された中期更新世の人類の歯に関する研究(Zanolli et al., 2018)が報道されました。本論文は、ローマの南東50kmに位置するフォンターナ・ラヌッチョ(Fontana Ranuccio)遺跡と、トリエステの北西18kmに位置するヴィソグリアーノ(Visogliano)遺跡で発見されたホモ属の歯を、マイクロCTスキャンと詳細な形態学的分析により他のホモ属と比較しました。両遺跡は相互に約450km離れています。フォンターナ・ラヌッチョ遺跡の年代は45万年前頃と推定されて... ...続きを見る

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2018/10/04 18:31
チンパンジーとボノボについての簡略なまとめ
 現代人(Homo sapiens)にとって最近縁の現生種がチンパンジー属のチンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)であることは、よく知られているように思います。チンパンジー属について、当ブログで取り上げた記事を本格的にまとめるだけの準備はまだ整っていないのですが、とりあえず、系統関係を中心に簡略にまとめて、配偶行動など社会構造については今後の課題としておきます。まず、前提知識となる系統関係についてですが、現代人(ホモ属)・チンパンジー属・ゴリラ属の最終... ...続きを見る

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2018/10/01 17:13
イベリア半島北部における中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行年代
 取り上げるのが遅くなりましたが、イベリア半島北部における中部旧石器時代〜上部旧石器時代の移行年代に関する研究(Marín-Arroyo et al., 2018)が公表されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の洞窟壁画の年代を見直した論文(関連記事)にて本論文が引用されており、重要だと思ったので取り上げます。ユーラシア西部における中部旧石器時代から上部旧石器時代への移行は、現生人類によるネアンデルタール人の置換と関連していると考えられることから関心... ...続きを見る

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2018/09/30 19:06
ネアンデルタール人の精密な手の動作
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の手の動作に関する研究(Karakostis et al., 2018)が報道されました。ネアンデルタール人は現生人類(Homo sapiens)よりもずっと筋肉が発達しており、手の動作に関しても、現生人類でよく見られるような精確なものではなく、強い握力に依存したものだろう、と考えられていました。しかし、ネアンデルタール人が角器やタールのような接着剤を用いた複合的な道具や小型の石器を製作していたと明らかになり、こうした考古学的な研... ...続きを見る

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2018/09/29 11:39
人類進化に関する誤解のまとめ
 ネット上でよく見かける(と私が判断している)人類進化に関する誤解をいくつかまとめてみました。おもに現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)関連となりますが、今後、他にも気づけば、取り上げていく予定です。 ...続きを見る

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2018/09/29 06:37
人類進化における介護と社会構造
 人類進化における介護と社会構造に関する研究(Kessler et al., 2018)が公表されました。現代人(Homo sapiens)は疾患管理戦略として協力的介護を発達させてきた唯一の種です。しかし、人類化石は多数見つかっているものの、介護は化石証拠に残らないので、介護の起源は不明確です。重病もしくは重傷状態から回復した痕跡は少なからぬ人類化石で確認されているものの、介護なしでも病気や負傷から回復することもある、というわけです。化石記録・古代DNA研究・ヒト生態学・疾病伝播モデルからの証... ...続きを見る

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2018/09/28 18:46
STEM科目の成績における性差
 STEM科目(科学・技術・工学・数学)の成績における性差についての研究(O’Dea et al., 2018)が公表されました。学校でのSTEM科目の成績では、女子が男子を常にリードしているにも関わらず、STEMのキャリアを目指すのは、女子学生より男子学生の方が多く、この現象を説明する仮説の一つは、学術研究能力のばらつきが女子よりも男子の方が大きいことを指摘しています。この「ばらつき仮説」によれば、成績の平均では女子学生が男子学生を上回っているものの、STEM科目の成績は男子の方が女子よりも優... ...続きを見る

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2018/09/26 17:02
デニソワ洞窟の新たな人骨
 ロシアの南シベリアのアルタイ地域のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で新たに確認された人類の骨に関する研究(Brown et al., 2018)が報道されました。この研究は今月(2018年9月)13日〜15日にかけてポルトガルのファロで開催された人間進化研究ヨーロッパ協会の第8回総会で報告されており、まだ論文としては刊行されていません。この研究の要約は、PDFファイルで読めます(P31)。 ...続きを見る

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2018/09/25 16:54
ネアンデルタール人とデニソワ人の交雑第一世代に関する補足
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)の交雑第一世代個体に関する研究(Slon et al., 2018)は、この分野としては大きな話題となり、当ブログでも取り上げました(関連記事)。この記事では、補足として、以前のブログ記事で取り上げていなかったことを中心に、この研究をやや詳しく見ていくことにします。 ...続きを見る

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2018/09/24 17:21
ショーヴェ洞窟壁画を描いたのはまず間違いなくネアンデルタール人ではない
 フランス南部のショーヴェ洞窟(Chauvet-Pont d'Arc Cave)の壁画を描いたのはネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)らしい、との発言がそれなりに話題になっています。32000年前頃の壁画なので、年代的にネアンデルタール人が描いたらしい、というわけです。近年の研究では、ショーヴェ洞窟の壁画の年代は、放射性炭素年代測定法による較正年代で、37000〜33500年前頃と31000〜28000年前頃の2期に区分されています(関連記事)。32000年前頃どころ... ...続きを見る

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2018/09/24 07:06
山極寿一「自然と文化の間にあるジェンダー」
 本論文は碩学による分かりやすい解説となっており、たいへん有益だと思います。以下、本論文の見解について備忘録的にまとめます。家族は現代人の社会において普遍的に見られ、社会の基本的な組織ですが、他の霊長類には見られません。それは、家族が単独では存在できず、複数の家族が集まって共同体を作るという性質を持っているからです。「家族的」な集団や、「共同体的」な集団を作る霊長類は存在し、現代人と系統的に近い現生種のうち、ゴリラは前者、チンパンジーは後者の集団で暮らしています。しかし、「家族的」な集団と「共同... ...続きを見る

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2018/09/22 20:07
6万年以上前とされたイベリア半島の洞窟壁画の年代の見直し
 6万年以上前とされたイベリア半島の洞窟壁画の年代を検証した研究(Slimak et al., 2018)が公表されました。今年(2018年)2月に、イベリア半島の洞窟壁画の年代が6万年以上前までさかのぼると公表され、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産である可能性が高いということで、大きな話題を呼びました(関連記事)。もっとも、これが現生人類(Homo sapiens)の所産である可能性も一部で指摘されていましたし(関連記事)、そもそも年代に疑問が呈されている... ...続きを見る

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2018/09/22 10:47
数千年にわたる牧畜が築き上げたアフリカのサバンナ
 牧畜によるアフリカのサバンナへの影響に関する研究(Marshall et al., 2018)が報道されました。草原は世界で最も広範に及ぶ陸上生物群系(バイオーム)の一つで、牧畜民・家畜・大型野生哺乳類の多様な群集の生存に重要です。アフリカでは、熱帯土壌は概して栄養が制限されていますが、草原に樹木が散生するサバンナ生態系に点在する生産力の高いパッチ状の草地は、地質学的要因・土壌要因・大型動物相・火事・シロアリにより生じた肥沃な土壌で成長します。移動性の牧畜民もまた、夜間家畜を囲いに入れることに... ...続きを見る

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2018/09/20 18:50
後期更新世における氷床の後退
 後期更新世における氷床の後退についての研究(Wilson et al., 2018)が公表されました。地質学的な過去の氷床の挙動解明は、気候システムにおける雪氷圏の役割を評価し、将来の温暖化シナリオにおける海水準上昇の速さと規模を予測するのに不可欠です。東南極氷床には、50 mを超える海水準上昇に相当する氷があり、過去の温暖な時期に、主要な区域のどこかが不安定化した可能性があるか否か、という問題が提起されています。地質データと氷床モデルは共に、東南極氷床の海洋を基部とする部分は、鮮新世の温暖期... ...続きを見る

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2018/09/20 18:49
人類の初期の出アフリカ
 人類の出アフリカというと、現生人類(Homo sapiens)への関心が高そうですが、現生人類出現前に人類はアフリカから東南アジアにまで広範に拡散しており、人類の最初の出アフリカも注目されます。じゅうらい、人類の出アフリカは100万年前頃以降との見解が有力でしたが、その頃より、東南・東アジアにおける100万年以上前のホモ属の存在が主張されていました。この問題に関して大きな転機となったのは、ジョージア(グルジア)にあるドマニシ(Dmanisi)遺跡での、185万年前近くまでさかのぼるホモ属の痕跡... ...続きを見る

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2018/09/17 11:22
さかのぼるマダガスカル島における人類の痕跡
 マダガスカル島における人類の痕跡は有力説よりさかのぼるかもしれない、と指摘した研究(Hansford et al., 2018)が報道されました。これまで、マダガスカル島への人類の到達は後期更新世になってからで、遅くとも2500年前までにはさかのぼる、とされていました。2400年以上前のキツネザルの骨には人為的な屠殺の痕跡が見られ、北部で発見された少数の細石器は4000年以上前と推定されています。ただ、アフリカ南部および東部のものと形態が類似したこれらの細石器の年代に関しては、直接的ではないこ... ...続きを見る

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2018/09/15 11:29
73000年前頃の描画(追記有)
 73000年前頃の描画に関する研究(Henshilwood et al., 2018)が報道されました(報道1および報道2)。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。抽象的な描画は、装飾品などと共に「現代的な」認知能力および行動の指標となります。以前は、そうした指標の出現は現生人類が4万年前頃に拡散した後のヨーロッパで始まる、と考えられていました。しかし現在では、5万年以上前のそうした指標が、アフリカを中心にユーラシアでも確認されてお... ...続きを見る

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2018/09/13 17:43
ランゴバルド人のゲノム解析
 ランゴバルド人のゲノム解析に関する研究(Amorim et al., 2018)が報道されました。ヨーロッパ西部は3世紀から10世紀にかけて、西ローマ帝国の崩壊と、その後の諸集団の「大移動」により、大きな社会文化的・経済的変容を経験しました。しかし、「蛮族」と呼ばれる諸集団の「大移動」やその社会的構造などに関しては、主体者の諸集団が基本的には文献を残しておらず、残された文献も、簡潔だったり、偏見に満ちていたり、時には数世紀後に書かれたりしているため、考古学的記録、おもには墓地の副葬品に依拠して... ...続きを見る

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2018/09/12 18:49
人類進化における犬歯の縮小
 現代人(Homo sapiens)も類人猿の一系統です。現代人と他の類人猿との大きな違いとして、脳容量、とくに脳重比もありますが、犬歯の縮小も指摘されます。人類進化史においては、脳容量が他の類人猿とさほど変わらない段階で犬歯の縮小が見られるので、犬歯の縮小は、直立二足歩行への特化とともに、人類系統と他の類人猿系統とを区別する重要な指標とされています。『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』で述べられていたように(関連記事)、人類系統における犬歯の縮小は、一夫一妻制により雄同士の争い(同... ...続きを見る

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2018/09/11 17:10
『人類誕生・未來編』「第1集・第2集・第3集」
 今年(2018年)4・5・7月にNHKスペシャル『人類誕生』が3回にわたって放送されました(第1回および第2回および第3回)。そのリメイク版として『人類誕生・未來編』がBS1で放送されました。このリメイク版を視聴して改めて思ったのは、NHKのCGの質の高さです。詳しく比較したわけではないのですが、人類進化の解説に大きな修正はなかったと思います。大きく変わったのが、番組の案内役として未來を生きる老人「ドク」と謎の少女「eva」という2人が登場したことです。この2人は何者なのか、現代よりどれくらい... ...続きを見る

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2018/09/10 16:46
6世紀後半〜7世紀前半のアレマン人のゲノム解析
 6世紀後半〜7世紀前半のアレマン人のゲノム解析結果を報告した研究(O’Sullivan et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。アレマン人は紀元後3〜8世紀にライン川上流東部盆地およびその周辺地域に居住していたゲルマン人部族連合体で、ゴート族と遠縁とされています。アレマン人はしばしばローマ帝国と衝突し、西ローマ帝国の滅亡後の497年に、メロヴィング朝フランク王国のクローヴィス1世(Clovis I)により征服されました。 ...続きを見る

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2018/09/08 11:53
小児期の生活が思春期を迎える年齢に及ぼす影響
 小児期の生活が思春期を迎える年齢に及ぼす影響についての研究(Magid et al., 2018)が公表されました。エネルギー面で高コストと考えられている男性の生殖投資は、テストステロン値・思春期のタイミング・身長に反映され、地域の環境と相関すると考えられています。しかし、男性の生殖投資が小児期の発達中に決定づけられるのか、成人期にも影響を受けるのか、あるいは民族性によって異なるのか、などといったことはよく分かっていません。 ...続きを見る

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2018/09/04 16:45
中央・南アジアの古代DNA
 中央・南アジアの古代DNAに関する研究(Narasimhan et al., 2018)が報道されました。本論文はまだ査読中なので、あるいは今後かなり修正されるかもしれませんが、興味深い内容なので取り上げます。本論文は、イラン・中央アジア・南アジアの古代人362人の全ゲノムデータを新たに生成し、既知の古代人のゲノムデータと比較しました。年代は紀元前10000年〜紀元後1年頃となります。本論文の対象地域を大きく分けると、イランおよびトゥーラーン(現在のトルクメニスタン・ウズベキスタン・タジキスタ... ...続きを見る

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2018/09/02 19:41
古人類学の記事のまとめ(35)2018年5月〜2018年8月
 2018年5月〜2018年8月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2018年5月〜2018年8月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、当ブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2018/09/01 07:46
読み書き計算と関連する遺伝子
 読み書き計算と関連する遺伝子についての研究(Lee et al., 2018)が公表されました。この研究は、100万人以上の研究対象者の遺伝組成と学歴を調べました。このように大きなサンプルサイズの研究だったので、学校教育の修了年数に関連する遺伝的多様体が1200種以上同定され、座位の数は過去のさまざまな研究で見つかった数の10倍を超えました。また、この研究は、個々の対象者のテスト成績・数学能力の自己申告・最終的に修了した数学のクラスのレベルを調べ、これらの関連形質について数百の遺伝的関連を見つ... ...続きを見る

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2018/08/31 17:36
知能と神経症傾向に関連する遺伝子
 知能と神経症傾向に関連する遺伝子についての二つの研究が公表されました。一方の研究(Savage et al., 2018)は、25万人以上の遺伝的データと知能の測定値を解析しました。その結果、知能に関連する205の座位(そのうち190座位が新規)と、1016の特異的な遺伝子(そのうち939遺伝子が新規)が見つかりました。この研究は、これらの解析結果に基づき、知能が高い場合にはアルツハイマー病とADHD(注意欠陥・多動性障害)にたいする防御効果が認められる、との見解を提示しています。またこの研究... ...続きを見る

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2018/08/30 17:07
ネアンデルタール人の絶滅における気候変動の影響
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅における気候変動の影響に関する研究(Staubwasser et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヨーロッパにおいてネアンデルタール人は4万年前頃までに絶滅した、と推測されていますが(関連記事)、イベリア半島では37000年前頃まで生存していた、との見解も提示されています(関連記事)。ネアンデルタール人の絶滅理由に関してはさまざまな仮説が提示されていますが(関連記事)、気候... ...続きを見る

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2018/08/28 18:58
出穂雅実「北東アジアにおける現生人類の居住年代と行動を復元する際の諸問題」
 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2016年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 4)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDFファイルで読めます(P14-18)。 ...続きを見る

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2018/08/25 07:26
現生人類の心理的傾向の進化
 現生人類(Homo sapiens)の心理的傾向の進化に関する研究(Sato, and Kawata., 2018)が公表されました。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人の5人に1人は、一生の間に何らかの「精神疾患」を発症すると言われており、その原因解明および治療は、精神医学や神経科学における中心的課題の一つです。また、「精神疾患」は遺伝率が高く、しばしば適応度に大きな影響を与える可能性があるにも関わらず、ヒトの集団中に頻繁に見られることから「進化的... ...続きを見る

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2018/08/24 16:53
ネアンデルタール人とデニソワ人の交雑第一世代(追記有)
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)の交雑第一世代個体に関する研究(Slon et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Warren., 2018)が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。デニソワ人については以前まとめたことがありますが(関連記事)、ロシアの南シベリアのアルタイ地域のデニソワ洞窟(Denisova... ...続きを見る

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2018/08/23 05:26
レヴァント南部の後期銅器時代の人類集団のDNA解析
 レヴァント南部の後期銅器時代の人類集団のDNA解析結果を報告した研究(Harney et al., 2018)が報道されました。レヴァント南部の後期銅器時代の物質文化は、質的に前後の時代と異なります。レヴァント南部後期銅器時代の文化の特徴は、定住密度の増加・聖域的な場所の導入・二次埋葬における骨壺の使用・公的儀式の拡大・銅や玄武岩や象牙の人工物の象徴的文様の彫刻や絵画的表現などです。レヴァント南部の銅器時代には、埋葬や儀式慣行の点で大きな変化が見られます。また、レヴァント南部の後期銅器時代には... ...続きを見る

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2018/08/22 17:09
石器製作技術と手の動作
 石器製作技術と手の動作に関する研究(Harris, and Nielsen., 2018)が報道されました。石器製作技術の変化と人類の進化との関係は、これまで多く論じられてきました。石器製作にさいして、とくに手の構造・能力は重要となるのですが、30万年以上前の人類遺骸で手の骨は稀であるため、石器製作技術の変化と手の構造・能力の進化との関係はよく分かっていません。本論文は、実験考古学的手法を用いて、この問題を検証しています。 ...続きを見る

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2018/08/21 17:54
ヨーロッパの人類史
 中期更新世〜青銅器時代までのヨーロッパの人類史を遺伝学的観点から検証した研究(Lazaridis., 2018)が公表されました。近年の遺伝学的諸研究が整理されており、たいへん有益だと思います。とくに、図はよく整理されていて分かりやすいと思います。本論文には当ブログで近年取り上げた研究が多く引用されており、それらを再度参照しつつ、読み進めていきました。また、最近刊行された『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(関連記事)と併せて読むと、さらに理解が深まると思います。私も、近いう... ...続きを見る

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2018/08/18 14:13
交雑する人類
 先月(2018年7月)、『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』を当ブログで取り上げましたが(関連記事)、原題は『Who We Are and How We Got Here』で、邦題は直訳ではありません。しかし、邦題は同書の主旨をよく反映しており、適切だと思います。同書は、現代の各地域集団が太古からずっとその地域に居住し続けたわけではなく、集団間の複雑な移住・交雑により形成されていき、その集団間の関係は、現代のヨーロッパ系と東アジア系よりも遠いことが珍しくなかった、と強調してい... ...続きを見る

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2018/08/16 18:21
アフリカ中央部の人口史
 アフリカ中央部の人口史に関する研究(Patin, and Quintana-Murci., 2018)が公表されました。西のコンゴ盆地から東のヴィクトリア湖まで広がる広大なアフリカ中央部は、大半が密集した熱帯雨林で覆われており、世界でも有数の生物多様性の高い地域です。アフリカ中央部には狩猟採集民とバンツー語族の農耕民がおり、生業だけではなく、生活様式や疾患への感受性も異なります。ほとんどの農耕民共同体は定住で、農村や都市に住んでいますが、熱帯雨林狩猟採集民は伝統的に熱帯雨林の野営地にしばしば小... ...続きを見る

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2018/08/13 16:38
春秋戦国時代における性差の拡大
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、春秋戦国時代における性差の拡大に関する研究(Dong et al., 2017)が公表されました。春秋戦国時代に成立し、その後(とくに後漢以降)20世紀初頭まで東アジアにおいて大きな影響力を有し続けた儒教には、女性蔑視傾向が見られます。こうした男性と比較しての女性の低い社会的地位が春秋戦国時代に成立していたのか、まだよく明らかにはなってません。本論文はこの問題を、空間的には中国でもいわゆる中原を、時間的には新石器時代から春秋戦国時代までを対象として、... ...続きを見る

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2018/08/12 18:56
アラビア半島中央部のアシューリアン
 アラビア半島中央部のアシューリアン(Acheulean)石器群に関する研究(Shipton et al., 2018B)が報道されました。アフリカ・南アジア・ヨーロッパの間に位置するアラビア半島は、下部旧石器時代となるアシューリアンの拡散において重要な位置を占めていると言えそうですが、アラビア半島のアシューリアンに関する情報は少なく、過小評価されています。アシューリアンは緯度55度以下に拡散しましたが、アシューリアンの担い手であるホモ属集団がどのように新たな環境に適応できたのか、詳細は不明です... ...続きを見る

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2018/08/11 13:55
アメリカ大陸への人類最初の移住経路
 アメリカ大陸への人類最初の移住経路に関する研究(Potter et al., 2018)が報道されました。アメリカ大陸への人類最初の移住は、アメリカ合衆国の領土が深く関わっている問題ということもあってか、高い関心が寄せられてきました。この問題に関しては近年、人類はアメリカ大陸最初の広汎な文化であるクローヴィス(Clovis)の数千年前にベーリンジア(ベーリング陸橋)から太平洋沿岸経由でアメリカ大陸へと拡散し、海洋資源に高度に依存しつつ、南下して南アメリカ大陸南端まで急速に到達した、との見解(沿... ...続きを見る

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2018/08/10 17:57
ヤンガードライアス期の氷河深部の融解
 ヤンガードライアス期の氷河深部の融解に関する研究(Rainsley et al., 2018)が公表されました。北極氷河は、2200年までの海水準上昇のうち19〜30ミリメートルに関与すると予測されています。しかし、この予測では、海面下で氷河に影響を及ぼす可能性のある海洋学的変化が考慮されていません。この研究は、堆積物データに基づいたコンピューターモデリングにより、13000〜11500年前頃となるヤンガードライアス期におけるグリーンランド氷床と、メキシコ湾流を含む海流系である大西洋の南北方向... ...続きを見る

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2018/08/10 17:54
配偶者による暴力の進化的起源
 配偶者による暴力の進化的起源に関する研究(Stieglitz et al., 2018)が公表されました。近親者間暴力は、繁殖能力を持つ個々の配偶者に直接的な害を及ぼすにも関わらず、広く見られる現象です。そうした暴力には、教育水準・女性の権利状況・アルコールや薬物の乱用といった、いくつかの行動的・社会経済的要因が関連づけられています。これらの諸要因は、近親者間暴力の重要な引き金ですが、基盤となる進化的な機序が存在するか否かはまだ不明です。 ...続きを見る

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2018/08/07 16:57
ストーンヘンジの埋葬者の出身地
 ストーンヘンジの埋葬者の出身地に関する研究(Snoeck et al., 2018)が公表されました。ストーンヘンジは、イギリスにおける最大級の新石器時代後期の墓地遺跡で、これまでおもにその建設に関する研究が進められてきましたが、ストーンヘンジの周辺で生活していた人々やストーンヘンジに埋葬された人々については、ほとんど明らかになっていません。 ...続きを見る

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2018/08/07 16:55
ショーヴェ洞窟壁画の年代
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、フランス南部のアルデシュ(Ardèche)県ヴァロン=ポン=ダルク(Vallon-Pont d’Arc)にあるショーヴェ=ポン=ダルク洞窟(Chauvet-Pont d'Arc Cave)の壁画の年代に関する研究(Quiles et al., 2016)が報道されました。なお、以下の放射性炭素年代測定法による年代は基本的に較正されたものです。ショーヴェ=ポン=ダルク洞窟(以下、ショーヴェ洞窟と省略)の壁画は1994年に発見され、当初は壁画の... ...続きを見る

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2018/08/06 17:01
マダガスカル島の人口史
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、マダガスカル島の人口史に関する研究(Pierron et al., 2017)が公表されました。マダガスカル島の現代人の起源については、歴史学・言語学・民族誌・考古学・遺伝学的研究から、アフリカ東部と東南アジアの大きな影響を認める点では合意が成立していますが、両者の融合の場所・時期・様相については議論が続いており、国民の起源という敏感になりやすい問題なので、加熱する傾向にあるようです。 ...続きを見る

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2018/08/04 12:55
人類史上少なくとも2回独立して起きた島嶼化(追記有)
 インドネシア領フローレス島の小柄な(平均身長約145cm)人類集団ランパササ(Rampasasa)のDNA解析結果に関する研究(Tucci et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。ランパササ集団は「ピグミー」とも呼ばれます。ピグミーとは、本来はアフリカの熱帯雨林地域の狩猟採集民集団を指しますが、人類も含む小柄な生物集団をピグミーと呼ぶことは珍しくなく、本論文の表題にも用いられています。 ...続きを見る

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2018/08/03 17:25
アフリカ南東部の過去200万年間の気候変動とロブストスの絶滅
 アフリカ南東部の過去200万年間の気候変動に関する研究(Caley et al., 2018)が報道されました。アフリカの初期人類には、おそらくは現代人というかホモ属の祖先だっただろう華奢型と、絶滅しただろう「頑丈型」とが存在していました。アフリカの「頑丈型」初期人類は、一般にはパラントロプス属に分類され(アウストラロピテクス属と分類する見解もあります)、アフリカ東部の系統はエチオピクス(Paranthropus aethiopicus)とボイセイ(Paranthropus boisei)、南... ...続きを見る

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2018/08/02 16:37
現生人類の生態的地位
 現生人類(Homo sapiens)の生態的地位に関する研究(Roberts, and Stewart., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類の起源に関しては、アフリカ単一起源説を前提としつつも、現生人類の派生的な形態学的特徴がアフリカ各地で異なる年代・場所・集団に出現し、比較的孤立していた複数集団間の交雑も含まれる複雑な移住・交流により現生人類が形成された、という「アフリカ多地域進化説」が提示されています(関連記事)。このアフリカ多地域進化説は... ...続きを見る

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2018/07/31 16:56
David Reich『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(追記有)
 デイヴィッド=ライク(David Reich)著、日向やよい訳で、NHK出版から2018年7月に刊行されました。原書の刊行は2018年3月です。著者は古代DNA研究の大御所で、当ブログでも、著者の関わった論文をかなり取り上げてきたはずですが、具体的な数を調べるほどの気力はありません。それはともかく、古代DNA研究の大御所(とはいっても、まだ40代半ばですが)が原書執筆時点(脱稿は2017年後半?)で交雑の観点からの人類史をどのように把握しているのか、たいへん注目して読み始めました。 ...続きを見る

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2018/07/29 09:46
門脇誠二「西アジアにおける新人の拡散・定着期の行動研究:南ヨルダンの遺跡調査」
本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究A02「ホモ・サピエンスのアジア定着期における行動様式の解明」の2016年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 4)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDFファイルで読めます(P8-13)。「パレオアジア文化史学」については以前から知っていたのですが、取り上げるのが遅れてしまいました。この他にも興味深そうな報告があるので、今後当ブログ... ...続きを見る

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2018/07/28 07:00
最終氷期極大期の開始時における氷床形成の詳細
 最終氷期極大期の開始時における氷床形成の詳細に関する研究(Yokoyama et al., 2018)が公表されました。最終氷期の終結前、約1万年間継続した最終氷期極大期は、地球の最近の気候史において最も寒冷な期間でした。最終氷期極大期には、完新世と比較して、大気中の二酸化炭素は約100 ppm、熱帯の海面水温は約3〜5°C低いと推測されています。最終氷期極大期は、約31000年前に全球の平均海水準(GMSL)が突然約40 m低くなったときに始まり、約1万年間の急速な氷床融解によって幕を閉じ、... ...続きを見る

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2018/07/26 17:00
『洋泉社ムック歴史REAL 日本人の起源』
 洋泉社より2018年6月に刊行されました。本書はおもに、弥生時代までの古代DNA研究・縄文時代研究・弥生時代研究の解説で構成されています。それぞれの執筆者は篠田謙一・山田康弘・藤尾慎一郎の各氏で、期待できそうなので購入しましたが、期待通りに最近の研究成果を知ることができました。とくに、弥生時代までの古代DNA研究の解説では、私が不勉強なため、多くの知見を新たに得ることができ、たいへん有益でした。以下、本書で注目した見解について、備忘録的に取り上げていきます。 ...続きを見る

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2018/07/24 16:31
現生人類の起源と拡散をめぐる新展開
 近年、現生人類(Homo sapiens)の起源と拡散をめぐって大きな進展があり、じゅうらいの有力説は大きく見直されつつあります。そうした動向を詳細に取り上げるだけの気力はまだありませんが、とりあえず、思いついたことを短くまとめておきます。じゅうらいの有力説を大まかにまとめると、現生人類はアフリカの一地域(東部もしくは南部)において20万年前頃に出現して、6万〜5万年前頃にアフリカから世界中へと拡散し、この非アフリカ系現代人の祖先集団の出アフリカは1回のみで、ネアンデルタール人(Homo ne... ...続きを見る

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2018/07/23 16:36
ディンゴのオーストラリアへの到来年代
 ディンゴ(Canis lupus dingo)のオーストラリアへの到来年代に関する研究(Balme et al., 2018)が公表されました。ディンゴは完新世中期に東南アジア方面からオーストラリアへと到来した、と推測されています。完新世のオーストラリアは他の島・大陸とは陸続きではないので、人類がディンゴをオーストラリアに導入したと考えられています。ディンゴのオーストラリアへの到来は、フクロオオカミ(Thylacinus cynocephalus)などの動物の絶滅の一因になった、と推測されてい... ...続きを見る

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2018/07/21 06:11
ネアンデルタール人の火起こし
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の火起こしに関する研究(Sorensen et al., 2018)が報道されました。ネアンデルタール人が火を用いていたことは確実で、接着剤としてのタールの生産(関連記事)や木製棒の製作(関連記事)でも火を用いていた可能性が指摘されています。しかし、ネアンデルタール人が道具により火を起こせたのか、それとも自然火を集めて火を維持していたのか、議論が続いています。 ...続きを見る

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2018/07/20 19:05
農耕よりもさかのぼるパン作り
 農耕開始前のパンについて報告した研究(Arranz-Otaegui et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。パンは現代世界では一般的な食品ですが、その起源には不明なところが多く残っています。これまで、パンの生産・消費の始まりを西アジアにおける本格的な農耕の開始と関連づける見解が有力でした。本論文は、ヨルダン北東部のシュベイカ1(Shubayqa 1)遺跡の炭化食料遺物を分析し、パンが農耕開始前に作られていたことを明らかにしました。 ...続きを見る

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2018/07/18 17:02
日本列島における土器利用の変遷
 日本列島における土器利用の変遷に関する研究(Lucquin et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。土器の製作は後期更新世に始まり、完新世の温暖化に伴い、より広範な地域で製作が始まり、製作数も増加していきました。これは、温暖化に伴い食資源の対象となる陸生植物・動物の範囲が広がり、土器での処理が要求されるようになったからだ、と考えられてきました。しかし、この仮説は直接的には検証されていませんでした。 ...続きを見る

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2018/07/17 18:28
人類の器用な手の進化の要因
 人類の器用な手の進化の要因を検証した研究(Williams-Hatala et al., 2018)が報道されました。石器の製作・使用による身体力学的圧力は、人類の手の進化に影響を与えた、と考えられています。この見解は広く受け入れられていますが、人類は石器を製作・使用し始めた頃より、石器をさまざまな目的で用いていたと推測されており、石器関連のすべての行動が、人類の手の進化に等しく影響を及ぼした、というわけではなさそうです。 ...続きを見る

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2018/07/16 07:53
NHKスペシャル『人類誕生』第3集「ホモ・サピエンス ついに日本へ!」
 第1集(関連記事)と第2集(関連記事)は当ブログで取り上げました。今回は第3集で、現生人類(Homo sapiens)の日本列島への到達が解説されました。海路での日本列島への到達に関しては、実験考古学の成果が長く紹介されていました。当時と現代とでは、地形や海流に違いがあったのではないか、との批判もあるでしょうが、興味深い試みだと思います。ただ、南方からの海路とその検証としての実験考古学的試みに時間を割き過ぎたかな、との印象は否めません。北方経路について、もっと取り上げてもらいたかったものです。... ...続きを見る

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2018/07/15 22:26
松田洋一『性の進化史 いまヒトの染色体で何が起きているのか』
 新潮選書の一冊として、新潮社から2018年5月に刊行されました。本書はヒトを中心とした性の進化史を染色体、とくに性染色体の観点から解説しています。一般向けを意識したのか、やや繰り返しが多くてくどいところもありますが、それは丁寧な解説ということでもあり、良書だと思います。本書は一般向けであることを意識してか、おもにヒトを取り上げていますが、ヒト以外の哺乳類だけではなく、爬虫類・鳥類など多様な生物を取り上げており、性の進化史がじつに多様であることを改めて思い知らされます。生物における多様な性の決定... ...続きを見る

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2018/07/15 12:51
現代ペルー人の形成史
 現代ペルー人の形成史に関する研究(Harris et al., 2018)が公表されました。本論文は、ペルーのアンデス地域・アマゾン地域・沿岸地域の13集団計150人の高網羅率(平均35倍)のゲノム配列および追加の130人の遺伝子型配列標本から、現代ペルー人がどのように形成されてきたのか、調べました。この13集団のなかには、ヨーロッパ系やアフリカ系など外来集団の遺伝的影響をあまり受けていないアメリカ大陸先住民集団と、ヨーロッパ系(おもにスペイン系)とアメリカ大陸先住民系との混合により形成された... ...続きを見る

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2018/07/14 12:23
確率論的ゲームにおける協力の進化
 確率論的ゲームにおける協力の進化に関する研究(Hilbe et al., 2018)が公表されました。個人に対する誘因が集団の利益からずれたものである場合、社会的ジレンマが生じます。「共有地の悲劇」則によれば、そのようなずれは公共資源の過剰利用および崩壊につながる場合があります。その結果として生じる行動は、ゲーム理論のツールで分析できます。直接互恵性理論は、反復的な相互作用がそうしたジレンマを緩和できると示唆していますが、過去の研究は、公共資源が長い期間一定であることを前提としていました。 ... ...続きを見る

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2018/07/13 18:01
現生人類アフリカ多地域進化説
 現生人類(Homo sapiens)の進化に関する新たな見解を提示した研究(Scerri et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類アフリカ単一起源説は、今では定説と言えるでしょう。じゅうらいの単一起源説では、現生人類は単一の地域・(比較的小規模な)集団で進化し、アフリカ各地、さらには世界中へと拡散した、との想定が有力でした。アフリカにおける現生人類の起源地としては、人類化石証拠などから、東部と南部が有力視されていました。 ...続きを見る

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2018/07/12 19:53
中国北部の212万年前頃の石器(追記有)
 中国北部の212万年前頃までさかのぼる石器についての研究(Zhu et al., 2018)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Kappelman., 2018)が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。人類の出アフリカの最古の証拠の年代は、これまで185万年前頃とされていました。これは、ジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)遺跡で発見された人類遺骸・石器群に基づいています(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/07/12 05:28
中世ヨーロッパにおけるハンセン病の遺伝的リスク
 中世ヨーロッパにおけるハンセン病の遺伝的リスクに関する研究(Krause-Kyora et al., 2018)が公表されました。この研究は、中世ヨーロッパで地域的に流行したハンセン病の原因となった基礎的な遺伝的因子の解明を進めるため、デンマークのセントヨルゲン(St. Jørgen)ハンセン病病院に保存されている12〜14世紀の69人のハンセン病患者の骨病変から採取された古いDNAを解析しました。その結果、こうした中世のハンセン病症例では、現代と中世のヨーロッパ人対照群よりも、リス... ...続きを見る

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2018/07/10 16:38
アメリカ大陸在来イヌの起源と現代のイヌへの影響(追記有)
 アメリカ大陸在来イヌの起源と現代のイヌへの影響に関する研究(Leathlobhair et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。アメリカ大陸には古くからイヌがおり、アメリカ大陸最初のイヌは暦年代で10190〜9630年前と推定されているので、アメリカ大陸への人類最初の拡散よりも数千年遅れたようです。19世紀にアメリカ大陸在来イヌを見たヨーロッパ系アメリカ人は、ヨーロッパ系のイヌとは異なりオオカミに似ていることに驚きました。しかし、アメリカ... ...続きを見る

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2018/07/08 18:11
ヤギの家畜化
 ヤギの家畜化に関する研究(Daly et al., 2018)が報道されました。ヤギは現在約10憶頭存在し、代表的な家畜の一種です。ヤギが最初に家畜化された地域はいわゆる肥沃な三日月地帯で、10500年前頃と推測されています。しかし、ヤギがどのように家畜化されたのか、不明でした。本論文は、旧石器時代から中世までの、野生種と家畜種を含む83頭の古代ヤギのミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析しました。また、そのうち51頭に関しては全ゲノム配列も得られました。 ...続きを見る

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2018/07/07 11:55
現代東南アジア人の形成過程
 現代東南アジア人の形成過程に関する研究(McColl et al., 2018)が公表されました。この研究は、最近取り上げた東南アジアの古代ゲノム解析の研究(関連記事)と一対になっている、と言えるでしょう。現生人類(Homo sapiens)は73000〜63000年前頃には東南アジアに到達していたと指摘されていますが、この初期現生人類集団が現代人にどの程度の遺伝的影響を及ぼしているのか、まだ不明と言うべきでしょう(関連記事)。東南アジアにおいては、44000年前頃までには狩猟採集のホアビン文... ...続きを見る

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2018/07/06 20:22
アファレンシスの幼児の足(追記有)
 エチオピアのディキカ(Dikika)で2002年に発見されたアウストラロピテクス属の幼児化石の足に関する研究(DeSilva et al., 2018)が報道されました。この幼児化石(DIK-1-1)はアファレンシス(Australopithecus afarensis)に分類されており、エチオピアの公用語であるアムハラ語で「平和」を意味するセラム(Selam)と呼ばれています。DIK-1-1の年代は332万年前頃、年齢は2歳半、性別は女性と推定されています。DIK-1-1に関しては、二足歩行... ...続きを見る

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2018/07/05 16:50
社会的相互作用の遺伝的決定因子
 社会的相互作用の遺伝的決定因子に関する研究(Day et al., 2018)が公表されました。本論文は、孤独感・他者との相互作用の頻度・およびこの相互作用の質の高さ(秘密を打ち明けることのできる者の存在)に関する質問票に回答した、イギリスのバイオバンク研究参加者487647人の遺伝的多様性を解析しました。本論文は、複数形質のゲノム規模関連解析の手法を用いて、個人の遺伝的構成が孤独に対する感受性をどのように決定するのか調べて、ゲノム上の15ヶ所の座位における遺伝的変異が、この被験者集団における... ...続きを見る

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2018/07/04 17:12
テストステロンと商品選択の関係
 テストステロンと商品選択の関係についての研究(Nave et al., 2018)が公表されました。本論文は、繁殖期に数多くの動物種の雄のテストステロン濃度が上昇するという事実から着想を得ました。テストステロン存在下では、雄によるステータス(地位)の誇示(鳥類の求愛のさえずりや、雄ジカの枝角の成長など)が顕著になると考えられています。本論文は、ヒトの場合でもテストステロンがステータスの誇示を促進する可能性があると推論して、243人の男性被験者(18〜55歳)にたいして、そのほぼ半数にはゲル状の... ...続きを見る

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2018/07/04 17:10
多地域進化説の成立過程補足(人種問題との関連)
 現生人類(Homo sapiens)多地域進化説の成立過程について一度短くまとめてみようと思い立ったのですが、もう10年以上ほとんど勉強が進んでおらず、10年以上前の記事よりもましなことを書けそうにないので、当時述べ忘れたことを追加して述べておきます。現生人類の起源をめぐっては、多地域進化説とアフリカ単一起源説との間で1980年代〜1990年代にかけて激論となりましたが、現在ではアフリカ単一起源説が通説となっています。ただ、アフリカ単一起源説でも完全置換説ではなく、ブロイアー(Gün... ...続きを見る

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2018/07/02 16:18
仲間が危険を冒すと自分も危険を冒しやすい
 危険性を伴う選択における他者への影響に関する研究(Tomova, and Pessoa., 2018)が公表されました。この研究は、18〜25歳の学生52人に、危険を冒す行動の測定を目的とした実験室内での課題を行なわせました。この課題は、被験者が空気入れを使って風船をふくらませて金銭を得るというもので、空気入れのレバーを押す回数が増えると風船が爆発して、被験者は金銭を得られなくなる。1回目の試験終了時に、被験者はレバーを押す回数を決めた後で、他の被験者が何回レバーを押すことにしたのか、聞かされ... ...続きを見る

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2018/06/30 06:13
新石器時代におけるイベリア半島からアフリカ北西部への移住
 新石器時代におけるイベリア半島からアフリカ北西部への移住に関する研究(Fregel et al., 2018)が公表されました。新石器時代には農耕が始まり、人類史における一大転機とされています。農耕の始まりに関して議論になってきたのは、農耕技術など関連文化の定着にさいして、交易などを通じた交流による伝播と、人々の移住のどちらが主流だったのか、ということです。現時点での証拠からは、文化伝播と集団移住のどちらもあり得て、地域・時代により状況は多様だった、と考えられます(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/06/27 16:31
ネアンデルタール人による近距離狩猟
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による狩猟方法に関する研究(Gaudzinski-Windheuser et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。イギリスやドイツでの証拠から、ヨーロッパの30万年前頃の人類は槍を用いていた、と明らかになっています。槍を用いていた人類とは具体的には、ネアンデルタール人やその前からヨーロッパに存在していたハイデルベルク人(Homo heidelbergensis)が想定されます。しかし... ...続きを見る

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2018/06/26 17:16
アフリカ南部の初期人類の頭蓋
 アフリカ南部の初期人類の頭蓋に関する研究(Beaudet et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、多数の初期人類化石が発見されていることで有名な、南アフリカ共和国ヨハネスブルク市の北西40kmにある、スタークフォンテン洞窟(Sterkfontein Caves)遺跡の400万年前頃の初期人類頭蓋StW 578を、南アフリカ共和国の他の初期人類化石や、現代人10人および現生チンパンジー10頭の頭蓋と、高解像度の顕微鏡断層撮影法により比較... ...続きを見る

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2018/06/26 05:21
mtDNAハプログループL3系統の起源
 現代人のミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループL3系統の起源に関する研究(Cabrera et al., 2018)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の起源がアフリカにあることは、今では通説となっています。非アフリカ系現代人では、mtDNAのハプログループのうち、L3系統から派生したMおよびN系統のみが見られます。一方、アフリカ系現代人においては、L3系統のみならず、L0・L1など多様な系統が見られます。mtDNAハプログループにおいて、まずL0系統とその他の系統... ...続きを見る

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2018/06/25 04:31
『コズミック フロント☆NEXT』「ネアンデルタール人はなぜ絶滅したのか?」
 BSプレミアムでの放送を視聴しました。時間的制約があるなかで、近年の諸研究成果がよく取り込まれた構成になっていましたし、諸遺跡の映像やドラマ仕立ての再現映像には迫力がありました。最近、NHKスペシャルでもネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)が取り上げられ、なかなかよかったと思いますが、本番組はそれ以上の出来だったと思います(関連記事)。時間的制約があるので、ある見解を取り上げ、その都度異論・反論も紹介することは難しく、ある程度偏ってしまうのは仕方のないところだと思い... ...続きを見る

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2018/06/24 18:53
森恒二『創世のタイガ』第3巻(講談社)
 本書は2018年6月に刊行されました。第1巻と第2巻がたいへん面白かったので、第3巻も楽しみにしていました。第3巻は、タイガと現生人類(Homo sapiens)の少女ティアリとの出会いから始まります。タイガは、仲間の女性がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)に襲われていると勘違いして助けに行ったのですが、襲われていたのはティアリだった、というわけです。タイガは、言葉が通じないながらも、自分の根拠地に案内してくれいないか、とティアリに頼み、タイガに恩を受けたティアリ... ...続きを見る

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2018/06/24 07:33
ネアンデルタール人の雌とホモサピエンスの雄は生殖することがほとんどないか、全くない?
 「人が動物とセックスすると何が起きるのか?」と題した記事がそこそこ話題になっており、以下のように述べられています。 ...続きを見る

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2018/06/23 07:29
現生人類はどのように進化したのか
 現生人類(Homo sapiens)の起源に関する研究史を整理した論文(Galway-Witham, and Stringer., 2018)が公表されました。本論文の一方の著者である、現生人類アフリカ単一起源説の大御所であるストリンガー(Chris Stringer)氏の近年の見解(関連記事)を改定するものとも言えそうで、現生人類の起源に関する研究史と現状が簡潔に解説されており、図も分かりやすく、たいへん有益だと思います。本論文の見解はおおむね妥当だと思いますが、ネアンデルタール人(Homo... ...続きを見る

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2018/06/22 18:02
クローヴィス文化の埋葬遺骸の年代の見直し
 クローヴィス(Clovis)文化の埋葬遺骸の年代を見直した研究(Becerra-Valdivia et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。以下の年代はすべて、放射性炭素年代測定法による較正年代です。本論文は、クローヴィス文化としては現時点で唯一の埋葬遺骸となる、アメリカ合衆国モンタナ州西部のアンジック(Anzick)遺跡の男児(Anzick-1)の年代を測定し直しました。クローヴィス文化集団は最初のアメリカ大陸の住民ではありませんが、13000... ...続きを見る

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2018/06/20 16:30
22000年前頃のパンダのmtDNA解析(追記有)
 22000年前頃のジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(Ko et al., 2018)が報道されました。本論文は、現在では野生のパンダの存在しない、中華人民共和国広西チワン族自治区百色市楽業県(Leye County)の慈竹坨洞(Cizhutuo)で発見されたジャイアントパンダ(以下、パンダと省略)の頭蓋のmtDNAを解析し、他の現生パンダ・138頭の現生熊・32頭の古代熊と比較しました。慈... ...続きを見る

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2018/06/19 17:17
人類史における移住・配偶の性的非対称
 人類史において、移住・配偶で性的非対称が生じることは珍しくありません。そもそも、有性生殖の生物種において、雄と雌とで繁殖の負担が著しく異なることは一般的で、大半の場合、雄よりも雌の方がずっと負担は重くなります。もちろん人類もその例外ではなく、人類史における移住・配偶の性的非対称の重要な基盤になっているのでしょう。とはいっても、それらが繁殖負担の性的非対称だけで説明できるわけではないのでしょうが。当ブログでも、人類史における移住・配偶の性的非対称についてそれなりに取り上げてきましたので、一度短く... ...続きを見る

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2018/06/17 18:51
現生人類の起源と進化
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、現生人類(Homo sapiens)の起源と進化に関する研究(Stringer., 2016)が公表されました。以前からいつか読もうと思っていたのですが、怠惰なので先延ばしにし続けていました。2年前の論文ですが、進展の速い分野なので、今となってはやや古いとさえ言えるかもしれません。しかし、現生人類アフリカ単一起源説の大御所であるストリンガー(Chris Stringer)氏による、おもに形態学てき観点からの現生人類の起源と進化に関する総説なので、現在... ...続きを見る

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2018/06/16 13:53
子供は外国語を話す相手でも声の調子から感情を認識できる
 子供が外国語を話す相手の感情を認識できるのか、検証した研究(Chronaki et al., 2018)が公表されました。この研究は、外国語の経験のない子供57人と若年成人22人に感情音声認識課題を実施しました。この課題では、声優が、怒り・幸福・悲しみ・恐怖・中間状態のいずれかを表現した声で疑似文を読み、被験者はそれを聞いて読み手の感情を判断します。課題は、被験者の母国語(英語)とスペイン語・中国語・アラビア語の3外国語で実施されました。 ...続きを見る

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2018/06/15 16:28
「縄文人」の起源
 日本人の起源に関しては、「南方系」の「縄文人」と「北方系」の弥生時代以降の渡来民との混合により形成されたとする、「二重構造モデル」が一般層にもそれなりに浸透しているように思います。この仮説では縄文人は南方系と想定されているのですが、形態学でも遺伝学でも、縄文人は南方系との合意が形成されているわけではありません。頭蓋形態の変異量の地域差からは、縄文人が北方系との見解が提示されています(関連記事)。6750〜5530年前頃の文時代前期となる富山県富山市呉羽地区の小竹貝塚の人骨群のミトコンドリアDN... ...続きを見る

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2018/06/13 16:10
協力行動と不確実性の許容との関係
 協力行動と不確実性の許容との関係についての研究(Vives, and FeldmanHall., 2018)が公表されました。心理学と経済学においてこれまで、リスク(将来的な結果のそれぞれの発生確率が分かっている場合)と多義性(将来的な結果のそれぞれの発生確率が分かっていない場合)という2種類の不確実性が明らかになっています。この2種類の不確実性に対する耐性には、個人差のあることが知られています。 ...続きを見る

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2018/06/13 16:07
完新世最初期の急激な気候変動に対応した人類
 完新世最初期の急激な気候変動への人類の対応に関する研究(Blockley et al., 2018)が公表されました。この研究は、イギリスのノースヨークシャー州にある中石器時代のスターカー(Star Carr)遺跡に隣接する湖の堆積物を調べました。スターカー遺跡は、湿地の狩猟採集民の営みがきわめて良好に保存されていることで知られています。この研究は、化石化した動植物および安定同位体比の調査結果と、放射性炭素年代測定法および遠く離れた火山の噴火による火山灰から割り出した年代に基づき、過去の環境の... ...続きを見る

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2018/06/12 16:36
ネアンデルタール人の食人行為
 食人行為は、その背徳性もあってか、関心が高いように思われます。当ブログでも食人について何度か取り上げてきましたが、おもにネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)に関するものだったので、ネアンデルタール人とは言えないかもしれない事例も含めて、一度短くまとめてみます。 ...続きを見る

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2018/06/10 18:55
原田隆之『サイコパスの真実』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2018年4月に刊行されました。サイコパス関連の一般向け書籍は少なくないでしょうし、中には大きな話題になったものもあります。しかし、どうも胡散臭そうだったこともあり、これまでサイコパス関連の一般向け書籍を読んだことはありませんでした。しかし本書は、少し読んでみてなかなか面白そうだったので、購入して読みました。期待通り本書は当たりで、長くサイコパス関連の入門書として読まれていくのではないか、と思います。まあ、私はこの問題の門外漢なので、専門家の評価はまた違うの... ...続きを見る

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2018/06/10 08:37
「朝鮮人は世界でも類を見ないほど均一なDNA塩基配列の持ち主」との言説に関する備忘録
 今でもわりとよく、表題のような言説というかコピペをネットで見かけます。そのたびに、どんな関連記事があったのか、検索するのは面倒なので、一度短く集約しておくことにします。コピペなので、ブログ・掲示板などでよく見かけますが、たとえばあるブログ記事では、以下のように引用されています。 ...続きを見る

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2018/06/09 18:09
繰り返されていたグレートバリアリーフの移動
 過去3万年のグレートバリアリーフの移動に関する研究(Webster et al., 2018)が公表されました。海水面は過去3万年にわたり、大陸氷床の拡大・縮小とともに劇的に変化してきました。21000年前頃の最終氷期極大期には、海水面は現在よりも約120メートル低く、その分、現在よりも陸地が広がっていました。少なからぬ当時の人類の痕跡は現在では海面下にあり、発見は容易ではなさそうですが、それだけに、調査が進めば多くの知見が得られそうで、今後の研究の進展が期待されます。この研究は、現在のグレー... ...続きを見る

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2018/06/09 09:44
類人猿の新たな高解像度ゲノム
 類人猿の新たな高解像度ゲノムを報告した研究(Kronenberg et al., 2018)が報道されました。本論文は、これまでの非ヒト霊長類ゲノムについて、その多くがヒトゲノム参照配列に依存してきたため、「ヒト化」されていることが問題だ、と指摘しています。そこで本論文は、ヒトゲノム参照配列に依存せず、ヒト2人・チンパンジーとオランウータン1頭ずつの高品質なゲノム配列を新たに決定し、既知のゴリラのゲノム配列と比較しました。これにより、じゅうらいは見落とされてきたヒトと(非ヒト)類人猿との相違も... ...続きを見る

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2018/06/08 20:35
縄文時代から弥生時代への移行
 縄文時代から弥生時代への移行に関する本・論文を当ブログでそれなりに取り上げてきたので、一度短くまとめてみます。じゅうらい通俗的に言われていたのは、弥生文化をもたらしたのはユーラシア東部(直接的にはおそらく朝鮮半島)から日本列島へと渡来してきた集団で、先住の縄文文化集団(以下、「縄文人」と省略)を駆逐した、というような認識です。しかし近年では、弥生時代への移行にさいして、「縄文人」の強い主体性を認める見解が有力のように思われます。 ...続きを見る

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2018/06/06 17:07
現生人類と古代型ホモ属との交雑の論点整理
 現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)など古代型ホモ属との交雑に関する論点を整理した研究(Wolf, and Akey., 2018)が公表されました。近年の諸研究がまとめられており、たいへん有益だと思います。この問題に関しては、当ブログでも以前まとめてみました(関連記事)。古代型ホモ属および現生人類のゲノム解析は、人類進化史の研究に革命をもたらしました。これにより、現生人類と古代型ホ... ...続きを見る

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2018/06/03 18:55
清家章『埋葬からみた古墳時代 女性・親族・王権』
 歴史文化ライブラリーの一冊として、吉川弘文館より2018年5月に刊行されました。本書は古墳時代の埋葬形態から社会構造を推測し、「王朝交替論」も検証しています。複数の人物が葬られている古墳は珍しくなく、本書はおもに歯冠の比較から被葬者間の関係を推測しています。その結果、首長層よりも下位(とはいっても、一定以上の階層でしょうが)においては、古墳時代前期〜後期まで親子・キョウダイを基本とする血縁者のみがともに埋葬されていました。夫婦で埋葬されている事例も一部であるものの、基本的には血縁者がともに埋葬... ...続きを見る

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2018/06/03 06:11
日本列島にはいつから人類が存在したのか
 2000年11月に発覚した旧石器捏造事件(関連記事)の影響もあり、現在では、日本列島における人類の痕跡は4万年以上前までさかのぼる、と想定する見解はとても主流とは言えないようです。日本列島において遺跡が急増するのは4万年前頃で(関連記事)、その担い手として現生人類(Homo sapiens)のみを想定するのが一般的な見解だと思います。しかし、石器技術の比較から、15000年前頃まで日本列島には現生人類ではない系統の人類が存在した、との見解も提示されています(関連記事)。その可能性はきわめて低い... ...続きを見る

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2018/06/02 18:56
アメリカ大陸先住民集団の形成史の見直し
 アメリカ大陸先住民集団の形成史を見直した研究(Scheib et al., 2018)が報道されました。アメリカ大陸先住民集団の形成については、近年までアメリカ大陸最古の人類の痕跡とされてきたクローヴィス(Clovis)文化集団の男児のゲノム解析結果が重視されてきました(関連記事)。暦年代では12707〜12556年前頃となる、アメリカ合衆国モンタナ州西部のアンジック(Anzick)遺跡の男児(Anzick-1)のゲノム解析の結果、この男児は現代のアメリカ大陸先住民でも北部よりも中部・南部の集... ...続きを見る

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2018/06/01 17:13
アイスランドにおける人類集団の遺伝的浮動
 アイスランドにおける人類集団の遺伝的浮動についての研究(Ebenesersdóttir et al., 2018)が報道されました。アイスランドへの人類の移住は紀元後870〜紀元後930年に始まり、その担い手はヴァイキングやその奴隷とされた人々だと推測されています。アイスランドの人類集団は、初期の移住後1000年間は人口が1万〜5万人と比較的小規模で、孤立していました。現在では、アイスランドには約33万人が居住しています。 ...続きを見る

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2018/06/01 17:12
新石器時代における人類のY染色体の多様性激減の要因
 新石器時代における人類のY染色体の多様性激減の要因に関する研究(Zeng et al., 2018)が報道されました。アフリカとユーラシアにおいて7000〜5000年前に人類のY染色体の劇的なボトルネック(瓶首効果)が生じ、有効人口サイズでは1/20にまで激減した、と推定されています。Y染色体は父系で継承されますが、母系で継承されるミトコンドリアDNA(mtDNA)では、この間にそうした劇的なボトルネックは起きておらず、人口は増加していった、と推定されています。 ...続きを見る

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2018/05/30 17:20
古墳時代の東北地方の豪族の形態・DNA・食性
 古墳時代の東北地方の豪族の形態・DNA・食性に関する研究が報道されました。この研究は、福島県喜多方市の灰塚山古墳の石棺に葬られていた男性の人骨を分析しました。灰塚山古墳は全長約61mの前方後円墳で、年代は古墳古墳時代中期とされています。石棺内外からは、東北地方では類がないほど多量の鉄製品が発見されました。古墳時代中期の会津地方は、古墳時代前期と比較して「大和王権との関わりが薄い」と考えられていましたが、多彩な副葬品の存在により再考が必要になりそうとのことです。 ...続きを見る

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2018/05/29 17:12
ジャワ島のエレクトスをめぐる研究動向(2)
 ジャワ島は、更新世の寒冷期にはスマトラ島やボルネオ島などと共にユーラシア大陸南東部と陸続きで、スンダランドを形成していました。ジャワ島では、現生人類(Homo sapiens)ではない、前期〜中期更新世のホモ属化石が発見されており、エレクトス(Homo erectus)と分類されています。4年近く前(2014年7月)に、ジャワ島のエレクトスをめぐる研究動向についてまとめましたが(関連記事)、それから4年近く経過したので、その後に当ブログで取り上げたジャワ島のエレクトス関連の記事をまとめます。な... ...続きを見る

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2018/05/28 17:11
縄文時代における九州と朝鮮半島との交流
 以前、当ブログで山田康弘『つくられた縄文時代 日本文化の原像を探る』を取り上げ、縄文時代における九州と朝鮮半島との交流についても少し言及しましたが(関連記事)、もう少し詳しく同書の見解を取り上げることにします(同書P129〜133)。じゅうらい、縄文時代の日本列島は他地域との交流がほとんどなかった、と考えられてきました。それは、「縄文人」のような形態の人類集団が他地域で確認されず、細かな地域差・時代差があるとはいえ、地理的範囲は北海道から九州まで、時間的範囲は早期から晩期前半まで、「縄文人」の... ...続きを見る

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2018/05/27 18:55
社会的相互作用により協調する2匹のサルの脳
 社会的相互作用とサルの脳の関係についての研究(Tseng et al., 2018)が公表されました。この研究は、2匹のサルの脳活動を同時に記録し、社会的相互作用課題において、2匹の脳活動が同期したことを明らかにしまた。この課題では、第1のサルが「乗客」となり、コンピューター操作による車椅子ロボットで食料供給装置まで運ばれ、第2のサルが「見守り役」として、その一部始終を観察しました。「乗客」は、食料供給装置に到達すると報酬としてブドウを受け取り、「見守り役」は、報酬としてジュースを受け取りまし... ...続きを見る

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2018/05/25 17:07
ホモ属における脳容量増大の要因
 ホモ属における脳容量増大の要因に関する研究(González-Forero, and Gardner., 2018)が報道(McElreath., 2018)されました。現代人の脳は、その身体サイズのわりに脳がひじょうに大きい、と明らかになっています。現代人の脳容量は、他の有胎盤哺乳類と比較すると、その身体サイズからの推定値の6倍近くあります。人類進化史において、ホモ属系統で顕著に脳容量が増大し、ホモ属の前に存在した(そして、おそらくはその一部がホモ属の祖先となった)アウストラロピテ... ...続きを見る

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2018/05/24 17:21
遺伝子発現に影響を及ぼす局所環境
 局所環境が遺伝子発現に影響を及ぼす可能性に関する研究(Favé et al., 2018)が公表されました。世界の多くの地域では、工業化と化石燃料エネルギーの使用量増加が、大気汚染と大気の有害化をもたらしています。こうした環境要因に対する応答は、1人1人の遺伝的背景に応じて異なっており、特定の疾患の遺伝性と発症リスクに個人差が生じていると考えられています。しかし、環境要因への曝露を原因とする疾患リスク、および環境要因への曝露とゲノムの相互作用を原因とする疾患リスクについては、解明が進... ...続きを見る

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2018/05/23 17:18
人類の眉弓の機能
 人類の眉弓の機能に関する研究(Godinho et al., 2018)が報道されました。現生人類(Homo sapiens)は、平滑で垂直な前頭部と、意思伝達に用いる眉を有しています。一方、他系統の人類の眉弓は顕著に太く、骨張っています。以前の研究では、眉弓は咬合や咀嚼の応力を防いでいるのではないか、あるいは眼窩と脳頭蓋という頭蓋の二つの異なる要素が合わさって生じたのではないか、と示唆されていました。本論文は、ザンビアで発見された300000〜125000年前頃のホモ属頭蓋カブウェ1(Kab... ...続きを見る

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2018/05/22 04:03
太田博樹『遺伝人類学入門 チンギス・ハンのDNAは何を語るか』
 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2018年5月に刊行されました。「入門」と題するように、遺伝の仕組み、さらには集団遺伝学の基礎について解説されています。「あとがき」にあるように、必ずしも「最新の知識」・「科学の最前線」を伝えているわけではありませんが、系統樹作成の方法など、「最新の知識」・「科学の最前線」を理解するのに必要な基礎的知識が解説されており、たいへん有益だと思います。今後、再読するだけの価値の高い一冊になっています。 ...続きを見る

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2018/05/20 11:59
東南アジアの古代ゲノム解析
 東南アジアの古代ゲノム解析に関する研究(Lipson et al., 2018B)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。東南アジアの現代人は遺伝的・言語的に多様ですが、どのように形成されたのか、詳細はよく分かっていません。東南アジアは一般的に高温多湿なので、より寒冷なヨーロッパと比較すると、DNAの保存には適していないため古代DNA研究も遅れています。本論文は、貴重な事例となる東南アジアの古代ゲノム解析結果を報告し、東南アジアにおける人口構造の形成史を検証しました。 ... ...続きを見る

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2018/05/18 05:21
ユーラシア草原地帯の人類集団史とB型肝炎ウイルス感染の痕跡
 ユーラシア草原地帯における人類集団史に関する二つの研究が報道されました。一方の研究(Damgaard et al., 2018B)は、約8000 kmに及ぶハンガリーから中国北東部までの広大なユーラシア草原地帯における、青銅器時代以降の約4000年間に及ぶ137人の古代人のDNA解析結果(平均網羅率は約1倍)を報告しています。さらにこの研究は、502人の現代人に自分の祖先の出身地(中央アジア・アルタイ・シベリア・コーカサス)を自己申告させ、そのゲノムデータを解析しました。こうして得られた知見か... ...続きを見る

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2018/05/17 17:01
レヴァントの早期上部旧石器時代の年代
 取り上げるのが遅れましたが、レヴァントの早期上部旧石器時代の年代についての研究(Alex et al., 2018)が公表されました。本論文は、55000年前頃の現生人類(Homo sapiens)化石が発見されたことで注目されている(関連記事)、イスラエルのマノット洞窟(Manot Cave)遺跡の早期上部旧石器時代の信頼性の高い年代を新たに報告し、既知のレヴァントやヨーロッパの各遺跡の早期上部旧石器時代の年代を参照・検証することで、レヴァントとヨーロッパの早期上部旧石器時代の各インダストリ... ...続きを見る

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2018/05/16 18:48
ナレディの頭蓋形態
 アフリカ南部で発見されたホモ属の新種ナレディ(Homo naledi)の頭蓋形態に関する研究(Holloway et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。南アフリカ共和国のライジングスター洞窟(Rising Star Cave)にあるディナレディ空洞(Dinaledi Chamber)で発見された人類化石群は、ホモ属の新種ナレディと分類されました(関連記事)。その後、ライジングスター洞窟のレセディ空洞(Lesedi Chamber)においてナレデ... ...続きを見る

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2018/05/15 18:51
NHKスペシャル『人類誕生』第2集「最強ライバルとの出会い そして別れ」
 第1集は当ブログで取り上げました(関連記事)。今回は第2集で、現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との関係が取り上げられました。50分弱の一般向け番組でネアンデルタール人と現生人類との関係を扱うということで、単純化・簡略化されたところがあったのは仕方のないところでしょうが、時間的制約があるなかで、近年の知見が多く盛り込まれており、なかなかよかったと思います。著名な研究者や遺跡の取材もあり、映像の点でも見どころがありました。とくに... ...続きを見る

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2018/05/14 17:27
初期人類の多様性と気候の関係
 初期人類の多様性と気候の関係についての研究(Maxwell et al., 2018)が公表されました。気候が種分化・種の多様性といった人類進化の要因だった、との見解は一般的と言えるでしょう。たとえば、ホモ属出現の背景として、不安定な気候が指摘されています(関連記事)。また、290万〜240万年前頃と、190万〜160万年前頃に気候が大きく変動し、人類の進化にも大きな動きが見られた、との見解も提示されています(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/05/12 07:22
インド・ヨーロッパ語族の拡散の見直し
 おもに5500〜3500年前頃となる、内陸アジアとアナトリア半島の74人の古代ゲノムの解析結果と比較を報告した研究(Damgaard et al., 2018A)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。インド・ヨーロッパ語族の拡散については複数の仮説が提示されていますが、有力なのは、ポントス-カスピ海草原(中央ユーラシア西北部から東ヨーロッパ南部までの草原地帯)の遊牧民集団の拡散にともない、インド・ヨーロッパ語族祖語... ...続きを見る

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2018/05/11 18:38
アフリカ東部における中期石器時代〜後期石器時代への移行
 アフリカ東部における中期石器時代〜後期石器時代への移行に関する研究(Shipton et al., 2018A)が報道されました。アフリカにおける中期石器時代から後期石器時代への移行は、人間の技術的・文化的・認知的進化における重要な変化との観点から激しく議論されてきました。6万〜5万年前頃にアフリカ(の一部地域)で始まる中期石器時代から後期石器時代への移行は、現生人類における認知能力の進化を伴う革命だった、との見解は根強くありますが、21世紀以降に批判が強くなり(関連記事)、近年ではあまり支持... ...続きを見る

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2018/05/10 19:06
日焼けと関連する遺伝的要因
 日焼けと関連する遺伝的要因についての研究(Visconti et al., 2018)が公表されました。日に焼けると、皮膚が黒くなる(皮膚の色が濃くなる)のか(サンタン)、炎症を起こして赤くなるのか(サンバーン)、個人により異なります。この研究は、日光曝露に対する各人の反応が、その遺伝的構成によってどのように決まるのかという疑問を解明するため、多数の被験者における遺伝的多様性を解析しました。これらの被験者に日焼けに関して自己申告させたところ、いつもサンバーンが起こり、サンタンが起こったことはな... ...続きを見る

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2018/05/09 17:03
他者の笑顔への反応
 他者の笑顔への反応に関する研究(Martin et al., 2018)が公表されました。スピーチをする場面など、他者の評価を受ける状況において、「よかった/よくなかった」といった言語的なフィードバックのきっかけが、視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸、人体のきわめて重要なストレス応答系)を活性化させることが知られています。しかし、HPA軸が非言語的なフィードバックのきっかけに応答するかどうかを調べた研究は多くありません。本論文は、ストレスのかかる社会的状況に置かれた人が、笑顔を評価的なフィード... ...続きを見る

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2018/05/08 18:02
最終氷期極大期から完新世までの温度変動
 最終氷期極大期から完新世までの温度変動に関する研究(Rehfeld et al., 2018)が公表されました。気候変動の変化は、社会が取り組む上で、平均的な気候の変化と同じくらい重要です。最終氷期極大期と完新世の温度変動の対比からは、気候の平均的な状態とその変動の関係に関する知見が得られます。しかし、氷期〜間氷期の変動の変化は、グリーンランドについては定量化されていますが、全球的な描像はまだ得られていません。この研究は、海洋と陸上の温度の代理指標のネットワークを用いて、最終氷期極大期(210... ...続きを見る

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2018/05/05 00:00
ネアンデルタール人による石の意図的な線刻
 中部旧石器時代の層の石に刻まれた線を検証した研究(Majkić et al., 2018)が報道されました。本論文が検証対象としたのは、クリミアのキークコバ(Kiik-Koba)遺跡の中部旧石器時代の層で発見された、表面に線の刻まれた石です。キークコバは1924〜1926年にかけて調査された洞窟遺跡です。キークコバ遺跡の中部旧石器時代の石器群は上層と下層とで大きく異なり、本論文が検証対象とした石は4層で発見されました。4層は、石器インダストリーではミコッキアン(Micoquian)と... ...続きを見る

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2018/05/04 10:41
毛髪の色に関連する遺伝子
 毛髪の色に関連する遺伝子に関する研究(Hysi et al., 2018)が公表されました。ヒトにおける自然な色素沈着(たとえば、皮膚や毛髪の着色)は、2つのタイプのメラニンによって起きます。双生児の研究では、毛髪に関して、メラニンの産生と分布の大部分が遺伝的性質を有し、色の多様性の約97%が遺伝要因によることが明らかになっています。この研究は、約30万人のヨーロッパ人(黒髪・金髪・焦げ茶色の髪・薄茶色の髪・赤毛の人々)から得た遺伝的データを解析しました。 ...続きを見る

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2018/05/04 00:00
ルソン島における70万年前頃の人類の痕跡(追記有)
 フィリピンのルソン島における70万年前頃の人類の痕跡に関する研究(Ingicco et al., 2018)が報道されました。解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。これまで、フィリピンにおける最古の人類の痕跡は、ルソン島のカヤオ洞窟(Callao Cave)で発見された人類の足の骨で、年代は67000年前頃と推定されています。このホモ属の足の骨は、現生人類(Homo sapiens)との類似性も指摘されているものの、種区分は確定していません。また、この足の骨に関して... ...続きを見る

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2018/05/03 11:53
北アメリカ大陸北西部の先住民集団のゲノム解析
 北アメリカ大陸北西部の先住民集団のゲノム解析結果を報告した研究(Lindo et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、カナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカ合衆国のアラスカ州南部の海岸に居住する先住民集団であるチムシアン(Tsimshian)人25人と、同地域の6000〜500年前頃の住民25人の核DNAを解析しました。本論文は、ヒトゲノム中の全エクソンの集合体配列の分析から、人口史と遺伝的多様性を検証しました。上記報道では、研究... ...続きを見る

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2018/05/02 17:40
DHC会長独占手記「アジアの中でも唯一日本人だけがヨーロッパ人に近い民族だった」
 𠮷田嘉明DHC会長の手記が「iRONNA」に掲載されました。『ニュース女子』という情報バラエティー番組の沖縄についての報道にたいする放送倫理・番組向上機構(BPO)の審議結果、およびマスコミ・法曹界・官界など現在の日本社会への不満が述べ立てられています。今回は、𠮷田会長の手記のなかでも、当ブログで頻繁に取り上げている人類進化史についての記述を取り上げます。該当箇所を以下に引用します。 ...続きを見る

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2018/05/01 18:57
古人類学の記事のまとめ(34)2018年1月〜2018年4月
 これは5月1日分の記事として掲載しておきます。2018年1月〜2018年4月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2018年1月〜2018年4月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2018/05/01 00:00
2018年度アメリカ自然人類学会総会(歯の分析によるネアンデルタール人と現生人類の食性・文化の多様性
 取り上げるのが遅れましたが、今年(2018年)4月11日〜4月14日にかけて、アメリカ合衆国テキサス州オースティン市で第87回アメリカ自然人類学会総会が開催されました。アメリカ自然人類学会総会では、最新の研究成果が多数報告されるだけに、古人類学に関心のある私は大いに注目しています。総会での各報告の要約はPDFファイルで公表されているのですが、まだいくつかの報告を読んだだけです。とりあえず今回は、とくに興味深いと思った報告(Fiorenza et al., 2018)を取り上げます(P86)。今... ...続きを見る

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2018/04/30 06:46
ネアンデルタール人による地中海航海
 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による地中海航海の可能性について報道されました。航海が可能だったのは現生人類(Homo sapiens)のみ、と長い間考えられてきましたが、それは今でも有力説と言えるでしょう。また、食料を積み込んでの遠洋航海は農耕・牧畜の開始以降と考えられてきました。海洋を横断した直接的証拠は、4000年前頃のインドからアラビア半島の航海まで確認されていません。現生人類ではない系統の人類による渡海の事例はインドネシア領フローレス島で確認されており... ...続きを見る

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2018/04/28 10:40
現生人類とネアンデルタール人の脳構造の違いに起因する認知能力の差(追記有)
 現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の脳構造の違いに関する研究(Kochiyama et al., 2018)が報道されました。ネアンデルタール人の絶滅要因への関心は高く、さまざまな見解が提示されてきましたが(関連記事)、大きく分けると、寒冷化などといった環境説と、現生人類(Homo sapiens)との直接的・間接的競合を想定する人為説とがあります。おそらく実際には、ネアンデルタール人の各集団の絶滅理由はさまざまで、複合的だっ... ...続きを見る

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2018/04/27 18:03
北アメリカ大陸の末期更新世の人類とナマケモノの足跡の解釈
 北アメリカ大陸の末期更新世の人類とナマケモノの足跡に関する研究(Bustos et al., 2018)が報道されました。本論文は、アメリカ合衆国ニューメキシコ州のホワイトサンズ国定記念物(White Sands National Monument)で発見された末期更新世の人類と大型地上性ナマケモノの足跡を検証しています。この足跡の年代には曖昧なところがありますが、堆積物の放射性炭素年代測定法から、非較正で15560〜10000年前頃と推定されています。アメリカ大陸に存在した人類は現生人類(H... ...続きを見る

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2018/04/27 18:01
人類進化史における直立二足歩行と木登りの能力との関係
 これは4月27日分の記事として掲載しておきます。人類進化史における直立二足歩行と木登りの能力との関係についての研究(Kozma et al., 2018)が公表されました。人類は直立二足歩行に特化し、その代償として木登りの能力は低下した(トレードオフ)、との見解は有力です。また、ホモ属出現前の人類の直立二足歩行は現代人よりも効率的ではなく、現代人よりも樹上生活に適応していた、との見解も有力です。しかし、ホモ属出現前に、アウストラロピテクス属でもおそらくはアファレンシス(Australopith... ...続きを見る

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2018/04/27 00:00
アメリカ大陸と東アジアにおいてシャベル状切歯が高頻度で見られる理由
 これは4月26日分の記事として掲載しておきます。アメリカ大陸と東アジアにおいてシャベル状切歯が高頻度で見られる理由についての研究(Hlusko et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アメリカ大陸先住民集団と東アジア地域集団においては、他地域ではほとんど見られないシャベル状切歯が高頻度で見られます。これは、東アジアにおける数十万年(もしくは百万年)以上の継続的な人類進化の根拠だとして、現生人類(Homo sapiens)多地域進化説的な立場から... ...続きを見る

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2018/04/26 00:00
ホモ属出現前に現代人のように歩いていた人類
 366万年前頃の人類の歩行様式についての研究が報道されました。アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ市で今月(2018年4月)21日〜25日にかけて開催中の実験生物学2018年度年次総会で公表されました。この研究は、タンザニアのラエトリ(Laetoli)で発見された366万年前頃の足跡を詳細に分析しました。ラエトリの足跡はアウストラロピテクス属のものと推測されており、アファレンシス(Australopithecus afarensis)に分類されています。ラエトリの足跡の分析からは、アファ... ...続きを見る

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2018/04/24 17:22
アフリカ低緯度地帯の東西の狩猟採集民と農耕民の人口史
 これは4月24日分の記事として掲載しておきます。アフリカ低緯度地帯の東西の狩猟採集民と農耕民の人口史に関する研究(Lopez et al., 2018)が報道されました。人間の健康に有害な変異の多様性に関する研究は、感染症や自己免疫疾患のような「複雑な」疾患の危険性を高める変異の識別において重要です。こうした有害な変異の多様性は人口史の影響を受けていると予測され、人口史は生存戦略に影響を受けると考えられます。 ...続きを見る

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2018/04/24 00:00
新石器時代のウシの頭蓋手術?
 新石器時代のウシの頭蓋に開けられた穴についての研究(Rozzi, and Froment., 2018)が公表されました。人類史において頭蓋手術の最古の証拠は中石器時代のもので、穿頭術(頭蓋骨の層に穿孔、切断、または削り取りによって穴を開ける手術)の証拠の残る最古のヒト頭蓋骨は、過去に用いられた技術に類似した技術が使用されたことを示唆しています。この研究は、フランスのシャンデュラン(Champ-Durand)の新石器時代となる紀元前3400〜紀元前3000年頃の遺跡で発見されたウシの頭蓋骨を分... ...続きを見る

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2018/04/23 18:34
人類の影響による後期更新世以降の哺乳類の身体サイズの低下
 これは4月23日分の記事として掲載しておきます。人類の影響による後期更新世以降の哺乳類の身体サイズの低下に関する研究(Smith et al., 2018)が報道されました。日本語の解説記事もあります。ロイターでも報道されました。現在、人類の活動により大型動物が絶滅危険に陥っていることはよく知られています。本論文は、この傾向が近代以降の新しい現象なのか、それともさらに古い時代からの傾向なのか、後期更新世以降を対象に世界規模で検証しました。 ...続きを見る

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2018/04/23 00:00
フロレシエンシスとさまざまな人類との頭蓋形態の比較
 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡で発見された後期更新世の人類遺骸と、さまざまな系統の人類との頭蓋形態を比較した研究(Baab et al., 2013)が公表されました。リアンブア洞窟で発見された後期更新世の人類遺骸は、ホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)と分類されました。フロレシエンシスがどのホモ属から進化したのか、本論文の刊行から5年近く経過した2018年4月時点でも議論が続いてい... ...続きを見る

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2018/04/22 18:57
ヨーロッパ南部の初期現生人類の環境変動への適応
 これは4月21日分の記事として掲載しておきます。ヨーロッパ南部の初期現生人類(Homo sapiens)の環境変動への適応に関する研究(Riel‐Salvatore, and Negrino., 2018)が報道されました。イタリアのフレグレイ平野(Phlegrean Fields)はナポリ近郊のカルデラで、4万年前頃の大噴火によりヨーロッパの環境に大きな打撃を与えた、と推測されています。この大噴火がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)絶滅の要因になった、との見解も... ...続きを見る

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2018/04/21 00:00
オーストラリアの人類史関連のまとめ
 これは4月19日分の記事として掲載しておきます。オーストラリアへの人類の拡散など、オーストラリアの人類史関連の記事をまとめます。オーストラリア大陸は更新世の寒冷期にはニューギニア島やタスマニア島とも陸続きで、サフルランドを形成していました。オーストラリアへにおける人類の痕跡は、現時点では65000年前頃までさかのぼります(関連記事)。人類遺骸は発見されていないので、どの人類系統なのか、確定していないのですが、現生人類(Homo sapiens)である可能性が高そうです。 ...続きを見る

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2018/04/19 00:00
先コロンブス期におけるポリネシアとアメリカ大陸との人的交流
 これは4月14日分の記事として掲載しておきます。サツマイモ(Ipomoea batatas)のDNA解析についての研究(Muñoz-Rodríguez et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、サツマイモとその近縁種199標本から、葉緑体全領域と核の605個の単一領域のDNA解析結果を報告しています。その結果、サツマイモは近縁野生種の中でも、メキシコアサガオ(Ipomoea trifida)にのみ起源がある、と明らか... ...続きを見る

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2018/04/14 00:00
アラビア半島における8万年以上前の現生人類遺骸(追記有)
 これは4月11日分の記事として掲載しておきます。アラビア半島で発見された8万年以上前の現生人類(Homo sapiens)の指骨に関する研究(Groucut et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。現生人類の出アフリカに関しては、回数・年代・経路などをめぐって議論が続いています(関連記事)。長く有力とされてきた見解では、現生人類は10万年以上前にレヴァントにまで拡散したものの、絶滅するかアフリカに撤退して「失敗」に終わり、6万〜5万年前... ...続きを見る

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2018/04/11 00:00
NHKスペシャル『人類誕生』第1集「こうしてヒトが生まれた」
 これは4月10日分の記事として掲載しておきます。2018年4月18日放送分の感想です。『人類誕生』は3回構成とのことで、今回は直立二足歩行の始まりから現生人類(Homo sapiens)の出現までが取り上げられました。今回は全体的に、人類が逆境下でいかに生き残ってきたのか、という観点からの解説になっていました。50分弱の一般向け番組で最初期の人類から現生人類の出現までを扱うということで、かなり単純化・簡略化されたのは仕方のないところだと思います。NHKらしい迫力のあるCGはなかなかよかったと思... ...続きを見る

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2018/04/10 00:00
人類の拡散などチベット関連記事のまとめ
 これは4月7日分の記事として掲載しておきます。チベット関連の記事をまとめてみます。チベット高原高地帯における人類の痕跡は15000年以上前までさかのぼるものの、人類が生活していたのか、それとも短期間の野営場として利用したのか、定かではありません(関連記事)。チベット高原高地帯における農耕は3600年前頃までさかのぼり、海抜3400mにまで達しましたが、それ以前のチベット高原における農耕は海抜2500m以下に限定されていました(関連記事)。そのため、チベット高原高地帯における人類の永続的な定住年... ...続きを見る

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2018/04/07 00:00
人類到達以前に多様性が低下していたフクロオオカミのゲノム
 これは4月6日分の記事として掲載しておきます。フクロオオカミミ(Thylacinus cynocephalus)のゲノムに関する研究(Feigin et al., 2018)が報道されました。フクロオオカミ(タスマニアタイガー)は、3000年前頃までオーストラリア全域に広く分布していた大型有袋類肉食動物です。タスマニアの隔離個体群はヨーロッパ系入植者により養羊業界の脅威とみなされ、政府による駆除の対象となりました。既知の最後のフクロオオカミは、1936年にホバート動物園で死にました。進化的に離... ...続きを見る

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2018/04/06 00:00
ネアンデルタール人から現生人類への文化的影響
 これは4月5日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との関係についてはさまざまなことが言われていますが、非アフリカ系現代人の共通祖先がネアンデルタール人と交雑したことは今ではほぼ定説になっている、と言ってよいでしょう。もっと確実なのは、現生人類は今でも存続し、まず間違いなく、人類史上最も広範に拡散し、最大の人口を有する系統であるのにたいして、ネアンデルタール人は4万年前頃にはおおむね絶滅した系統であ... ...続きを見る

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2018/04/05 00:00
新石器時代〜青銅器時代のヨーロッパにおける大規模な移住の性差
 これは4月4日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れてしまいましたが、新石器時代〜青銅器時代のヨーロッパにおける人類の大規模な移住の性差に関する研究(Goldberg et al., 2017)が報道されました。人類史においてはたびたび大規模な移住が見られますが、性別の偏りが伴っている場合もあります。たとえば、ヨーロッパ勢力がアメリカ大陸へと侵出していったさいには、さまざまな証拠から、単身男性に偏っていたと考えられています(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/04/04 00:00
未発達な青年期における脳領域の接続
 青年期における脳領域の接続に関する研究(Insel et al., 2017)が公表されました。これまで、成人を対象とした研究から、報酬が優れた動機付けとなる場合があり、本人にとって重要性の高い目標が設定されれば、一層の努力をなされることが明らかになっています。しかし、同じことが青年期の男女にも当てはまるのか、不明でした。この研究は、13〜20歳の被験者に対して「惑星タスク(Planets Task)」という認知機能検査を実施しました。このタスクでは、被験者には提示された惑星の画像を正しく分類... ...続きを見る

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2018/03/31 00:00
先コロンブス期のアマゾン川流域の人類の居住(追記有)
 これは3月30日分の記事として掲載しておきます。先コロンブス期のアマゾン川流域の人類の居住に関する研究(Souza et al., 2018)が報道されました。この研究は、人工衛星画像を用いて、アマゾン川の支流となる、ブラジルのタパジョース(Tapajós)川上流域を調査し、81ヶ所の考古遺跡と合計104ヶ所の土工事の遺構を新たに発見しました。この研究は、そのうちの24ヶ所の遺跡で地盤調査を行ない、陶磁器・研磨された石斧・人為起源の黒色土(先コロンブス期のタイプの施肥土壌)・貝塚(家... ...続きを見る

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2018/03/30 00:00
既知のネアンデルタール人化石での新たな発見
 これは3月29日分の記事として掲載しておきます。既知のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)化石の新たな分析結果を報告した研究(Gómez-Olivencia et al., 2018)が報道されました。本論文が分析したのは、1902年にフランスのドルドーニュ県(Dordogne)のラフェラシー(La Ferrassie)遺跡で発見された、54000〜40000年前頃と推定されているラフェラシー1(La Ferrassie 1)です。ラフェラシー1はおそらく... ...続きを見る

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2018/03/29 00:00
農耕の起源と拡散
 これは3月28日分の記事として掲載しておきます。農耕の起源と拡散については当ブログでも度々取り上げてきましたが、一度それらを短くまとめてみます。本当は、当ブログで取り上げた記事を網羅し、整理したうえで、新たに本・論文を読まなければならないところですが、今はそこまでの気力はないので、まずはさほど時間を要さずにできることからやっていき、気力を高めていこう、と考えています。 ...続きを見る

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2018/03/28 00:00
生物学的侵略者としてのネアンデルタール人とデニソワ人
 これは3月27日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、現生人類(Homo sapiens)だけではなく、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とデニソワ人(Denisovan)も生物学的侵略者として把握し、概観した研究(Hawks., 2017B)が公表されました。デニソワ人は、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)でのみ確認されている、ネアンデルタール人と近縁な後期ホモ属の分類群です(関連記事)。 ...続きを見る

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2018/03/27 00:00
じゅうらいの想定よりもはるかに東方で確認されたムステリアン様石器群
 これは3月26日分の記事として掲載しておきます。中華人民共和国内モンゴル自治区の金斯太(Jinsitai)洞窟遺跡の石器群に関する研究(Li et al., 2018)が公表されました。以前より、中国では下部・中部・上部というヨーロッパを基準とした旧石器時代の3区分法の適用は妥当ではなく、前期と後期という2区分が適切ではないか、との見解が提示されていました(関連記事)。本論文は、現時点では中国の大半において旧石器時代の2区分法が妥当ではあるものの、金斯太洞窟遺跡石器群は中部旧石器となるムステリ... ...続きを見る

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2018/03/26 00:00
後期ネアンデルタール人の新たなゲノム配列(追記有)
 これは3月23日分の記事として掲載しておきます。後期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の新たなゲノム配列についての研究(Hajdinjak et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。古代DNA研究を制約しているのは、時間経過と、微生物および現代人のDNAによる試料汚染です。時間経過に関しては、環境が大きな要因となっており、同じくらい古い年代でも、高温多湿環境よりも寒冷乾燥環境の方がDNAは多く保存されています。 ... ...続きを見る

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2018/03/23 00:00
中央アナトリア高原における初期農耕の伝播
 これは3月22日分の記事として掲載しておきます。中央アナトリア高原における初期農耕の伝播に関する研究(Baird et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。南西アジアの「肥沃な三日月地帯」は、紀元前10世紀〜紀元前9世紀という、世界でも最初期に農耕の始まった地域です。ここから周辺地域にどのように農耕が伝播したのか、本論文は検証しています。かつては、狩猟採集から農耕・牧畜への移行は移住民を伴い短期間だった、と考えられていましたが、本論文の提示する見... ...続きを見る

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2018/03/22 00:03
儒教と近代化
 これは3月22日分の記事として掲載しておきます。先月(2018年2月)、井沢元彦氏について述べた記事で、儒教と近代化の関係を少しだけ述べました。儒教は近代化を阻む要因として指弾されることが多いものの、日本の近代化で朱子学をはじめとして儒教が果たした役割を重視する見解も提示されている、と述べたわけですが、過去に当ブログで取り上げておきながら、その記事で言及し忘れたことがあるので、この記事を追記とします。 ...続きを見る

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2018/03/22 00:01
ネアンデルタール人の航海
 これは3月22日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅くなってしまいましたが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)による航海の可能性を指摘した研究(Ferentinos et al., 2012)が公表されました。以前から読もうと思っていた研究なのですが、怠惰な性分なので後回しにしてしまい、先にホモ属の言語能力と航海能力についての報道を取り上げることになってしまいました(関連記事)。時機を逸した感はありますが、重要と思われる研究なので、取り上げるこ... ...続きを見る

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2018/03/22 00:00
現生人類とデニソワ人との複数回の交雑
 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)との交雑に関する研究(Browning et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。デニソワ人については、昨年(2017年)、情報を一度整理してみました(関連記事)。現生人類とデニソワ人との交雑は今では広く認められており、現代人におけるデニソワ人の遺伝的影響は、オセアニア系、とくにパプア人でとくに高く、東アジ... ...続きを見る

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2018/03/20 00:04
アフリカ北部の15000年前頃の現生人類のDNA解析
 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。アフリカ北部の15000年前頃の現生人類のDNA解析に関する研究(Loosdrecht et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は、モロッコのタフォラルト(Taforalt)の近くにあるピジョン洞窟(Grotte des Pigeons)で、ビーズや動物の骨が供えられて埋葬されていた現生人類(Homo sapi... ...続きを見る

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2018/03/20 00:03
中世初期のバイエルンに見られる移住の性差
 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。中世初期のバイエルンに見られる移住の性差に関する研究(Veeramah et al., 2018)が報道されました。ローマ帝国西方の衰退・崩壊の頃から始まる、いわゆる民族大移動の期間の6世紀中頃には、現在のバイエルンにバヨヴァリー(Baiuvarii)族と呼ばれる集団が存在していた、と文献記録に見えます。バヨヴァリー族はローマ帝国辺境の住民とドナウ川北部の住民との混合により形成された、と考えられています。 ...続きを見る

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2018/03/20 00:02
渡邉美樹参院議員には「人として大切なものが欠落している」のか
 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。表題は最近私のネット環境ではよく見かける人の発言で、「正直言って渡辺美樹氏は議員として以前に、人として大切なものが欠落しているとしか思えないのです。そして彼を公聴会で質疑させた自民党に対しても、同じようにしか思えないのです」とのことです。これまでのさまざまな報道からは、渡邉美樹氏が他者への共感を欠いているように思われますが、実のところ私も、強く確信しているとまでは言わないとしても、そうしたところが多分にあるのは多分間違いないだろう、と考えています... ...続きを見る

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2018/03/20 00:01
アフリカ東部における中期石器時代の始まりと「現代的行動」
 これは3月20日分の記事として掲載しておきます。アフリカ東部における中期石器時代の始まりに関する3本の論文が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。これら、中期石器時代の始まりと環境変動の関係についての研究(Potts et al., 2018)と、前期石器時代となるアシューリアン(Acheulean)から中期石器時代への移行年代に関する研究(Deino et al., 2018)と、中期石器時代最初期における「現代的行動」に関する研究(Brooks et al.... ...続きを見る

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2018/03/20 00:00
新石器時代〜青銅器時代のイベリア半島の人類史
 これは3月19日分の記事として掲載しておきます。新石器時代〜青銅器時代のイベリア半島の人類のゲノム解析結果を報告した研究(Valdiosera et al., 2018)が報道されました。完新世の先史時代ヨーロッパにおいては、大きな移住の波が二つありました。一つは西アジア起源の農耕民集団で、アナトリア半島を経由してヨーロッパに拡散し、ヨーロッパに初めて農耕をもたらしました。大まかな傾向としては、更新世からのヨーロッパ在来の狩猟採集民集団は東方からの初期農耕民集団にゆっくりと同化されていったもの... ...続きを見る

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2018/03/19 00:00
ネアンデルタール人社会における負傷からの回復についての解釈
 これは3月17日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)社会における負傷からの回復を再評価した研究(Spikins et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ネアンデルタール人負傷者の回復事例は、これまでに少なからず報告されてきました。そのためネアンデルタール人は、現生人類(Homo sapiens)とも共通する、他者を世話するような感情機構を有していたのではないか、と解釈されてきました。 ... ...続きを見る

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2018/03/17 00:00
アフリカ南部におけるトバ噴火の影響(追記有)
 これは3月16日分の記事として掲載しておきます。アフリカ南部におけるトバ噴火の影響を検証した研究(Smith et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。74000年前頃となるスマトラ島のトバ噴火は、火山灰のような微小物質の大量噴出と効果による冷却効果などにより生態系に大きな影響を与え、現生人類(Homo sapiens)も含めて人類は激減した、とのトバ大惨事仮説(トバ・カタストロフ理論)が提示... ...続きを見る

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2018/03/16 00:00
「白人」のご都合主義によるネアンデルタール人の評価の好転?
 これは3月15日分の記事として掲載しておきます。今ではネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との間で交雑があった、との見解が有力となっていますが、たとえば、2007年11月刊行の河合信和『ホモ・サピエンスの誕生』からも窺えるように(関連記事)、かつては交雑否定説が有力でした。とくに、現生人類アフリカ単一起源説でも完全置換説が優勢だった1997〜2010年頃には、交雑否定説がほぼ確定的に扱われていることが多かったように記憶しています... ...続きを見る

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2018/03/15 00:00
後期ホモ属の進化史における系統樹と交雑
 これは3月12日分の記事として掲載しておきます。近年の古代DNA研究の大きな進展により、後期ホモ属の進化に関する理解はたいへん深まったように思います(関連記事)。そこで、古代DNAが解析されている後期ホモ属について、一度系統・交雑関係をまとめてみます。おもに対象となるのは、現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のデニソワ人(Denisovan)とスペイン北部の通称「骨の穴(Sima de los Huesos)洞窟」遺... ...続きを見る

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2018/03/12 00:00
人間の協力の進化
 これは3月9日分の記事として掲載しておきます。人間の協力の進化に関する研究(Santos et al., 2018)が公表されました。弱肉強食の世界で利他主義がどのように進化したのか、解明する探求で生まれた全てのスキームの中で、間接互恵性は最も複雑なものとされています。間接互恵性とは、行為者が、後に第三者から報酬が与えられることを期待して、離反者を罰して自らがコストを背負う場合があるというもので、これには道徳的な選択が必要であり、第三者の応答は行為者および離反者の評判によって左右されます。その... ...続きを見る

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2018/03/09 00:00
ヒツジとヤギの家畜化過程の違い
 これは3月8日分の記事として掲載しておきます。ヒツジとヤギの家畜化過程の違いに関する研究(Alberto et al., 2018)が公表されました。これまでにさまざまな家畜が、従順さ・成長の速さ・スタミナといった特定の形質を定着させるために選択的に交配されてきました。ヒツジの野生原種であるアジアムフロン(Ovis orientalis)とヤギの野生原種であるパサン(Capra aegagrus)は、それぞれ10500年前頃に中東(具体的にはアナトリア南東部とイランのザグロス山脈)で家畜化され... ...続きを見る

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2018/03/08 00:00
縄文時代と現代日本
 これは3月7日分の記事として掲載しておきます。一つ前の記事で取り上げた、バヌアツにおける人類集団の形成史に関する研究は、日本列島における人類集団の遺伝的構成の変遷と言語の形成過程に関する議論にも参考になりそうだという点でも、大いに注目されます(関連記事)。日本列島の人類史における縄文時代の位置づけについては、まだ不明なところが多分にある、と言わざるを得ないでしょう。現代日本社会の「愛国的な見解」においては、縄文時代から現代まで継続する一貫した「日本」が措定され、現代日本社会の「確たる基盤・源流... ...続きを見る

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2018/03/07 00:00
バヌアツの人類集団の形成史
 これは3月6日分の記事として掲載しておきます。バヌアツの人類集団の形成に関する二つの研究が公表され、報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。これらの研究はオンライン版での先行公開となります。これら二つの研究は、バヌアツやその周辺地域の人類の古代および現代のDNAを解析し、ゲノム規模のデータを得て、バヌアツの人類集団の変遷を検証しています。両方の新研究の間で共通認識もあるものの、相違も見られます。 ...続きを見る

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2018/03/06 00:00
アフリカ南部の人類の足跡
 これは3月3日分の記事として掲載しておきます。アフリカ南部の人類の足跡に関する研究(Helm k et al., 2018)が公表されました。本論文が分析したのは、南アフリカ共和国西ケープ州南岸のケープ・サウス・コースト地域で発見された人類の足跡です。足跡は、当時の人類の移動様式や社会構造を解明するうえで重要な手がかりとなります。アフリカ南部は、現生人類(Homo sapiens)の起源をめぐる議論において重要な地域の一つです。この遺跡では、最大40個の人類の足跡が確認されました。その多くは、... ...続きを見る

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2018/03/03 00:00
性回路を形成する社会行動
 これは3月2日分の記事として掲載しておきます。性的行動にたいする社会経験の影響を検証した研究(Remedios et al., 2017)が公表されました。研究室での動物の実験的学習行動のほとんどでは、成績向上に訓練を必要とし、動物が課題を習得するにつれて神経回路と神経集団が変化します。一方、全ての動物には一連の生得的行動が備わっており、こうした行動は訓練なしに実行可能ですが、その回路が経験に影響されるか否かは、明らかになっていませんでした。 ...続きを見る

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2018/03/02 00:00
完新世の気候の変化傾向
 完新世の気候の変化傾向に関する研究(Marsicek et al., 2018)が公表されました。過去11700年間の完新世における気候の変化傾向については、まだ議論が続いています。過去2000年の大半の期間における寒冷化は広く認識されており、これは完新世における全球気温の支配的な変化傾向であると推測されています。しかし、長期的な寒冷化と全球の強制力を一致させることは難しく、気候モデルでは、一貫して長期的な温暖化がシミュレートされています。たとえば、日射の既知の変化を強制力として与えた気候モデ... ...続きを見る

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2018/02/28 17:47
最終氷期〜間氷期の移行期における全球平均海水温
 最終氷期〜間氷期の移行期における全球平均海水温についての研究(Bereiter et al., 2018)が公表されました。過去の海水温を再構築する手法は多くありますが、こうした手法の大半は、特定の深さや季節の研究にしか使用できないか、複雑であまり解明されていない生物学的過程に基づいています。この研究は、氷床コア中の希ガスを用いて、最終氷期極大期から初期完新世(2万〜1万年前頃)の平均海水温を高分解能で再構築しました。その結果、この期間に全球平均海水温が2.57 ± 0.24°C上昇し、南極の... ...続きを見る

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2018/02/28 17:46
氷床と火山活動の関係
 氷床と火山活動の簡潔についての研究(Muschitiello et al., 2017)が公表されました。火山の噴火と大気中への火山灰の放出は、一般に気候に対する冷却効果がありますが、火山活動が古い氷床にどのような影響を及ぼすのかについては、ほとんど分かっていません。こうした強制力に対する氷床の応答を解明することは、海水準上昇に対する氷床の融解の寄与可能性をよく理解する上で重要となります。 ...続きを見る

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2018/02/28 17:46
ネアンデルタール人の洞窟壁画との見解に懐疑的な報道
 これは2月27日分の記事として掲載しておきます。6万年以上前となる、イベリア半島のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)が描いたと考えられる洞窟壁画を報告した研究(関連記事)は、日本でも大きな話題を呼んでいるようです。この研究と同じ頃に公表された、イベリア半島における貝殻と顔料の使用(関連記事)からも、ネアンデルタール人の象徴的行動は確実になった、と主張されています。しかし、ネアンデルタール人について検索していて見つけたブログ記事では、独特なネアンデルタール人論(関連... ...続きを見る

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2018/02/27 00:00
野生の馬はもう存在していなかった
 これは2月26日分の記事として掲載しておきます。馬の古代ゲノムを解析・比較した研究(Gaunitz et al., 2018)が報道されました。AFPでも報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。馬の家畜化については議論が続いていますが、5700〜5100年前頃となる、カザフスタン北部のボタイ(Botai)文化が、馬の家畜化の確実な証拠としては最古になる、との見解が提示されています(関連記事)。ボタイ遺跡の動物の骨の95%以上は馬で、馬の利用に特化した生活様式だったようです... ...続きを見る

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2018/02/26 00:03
11万年以上前になるネアンデルタール人による貝殻と顔料の象徴的使用
 これは2月26日分の記事として掲載しておきます。イベリア半島の中部旧石器時代の遺跡における貝殻と顔料の年代に関する研究(Hoffmann et al., 2018B)が公表されました。本論文は、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の洞窟壁画に関する論文(関連記事)と一対になって、ネアンデルタール人の認知能力が現生人類と同等だったと主張している、と言えるでしょう。本論文は、以前にも中部旧石器時代の遺跡として取り上げられた(関連記事)、スペイン南東部の「航空機洞窟(Cu... ...続きを見る

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2018/02/26 00:01
ネアンデルタール人の洞窟壁画(追記有)
 これは2月26日分の記事として掲載しておきます。現時点では世界最古となる洞窟壁画についての研究(Hoffmann et al., 2018A)が報道されました。『サイエンス』の サイトには解説記事が掲載されています。朝日新聞でも報道されています。洞窟壁画の年代測定は、そのほとんどにおいて残留有機物が欠けており放射性炭素年代測定法が適用できないため、たいへん困難でした。しかし、21世紀になって、炭酸塩をウラン-トリウム法で測定することにより、飛躍的に発展しました。地下水が洞窟の壁に浸み込むさいに... ...続きを見る

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2018/02/26 00:00
紀元前12000〜紀元前500年頃のヨーロッパにおける人間と文化の拡散(追記有)
 これは2月23日分の記事として掲載しておきます。紀元前12000〜紀元前500年頃のヨーロッパにおける人間と文化の拡散に関する二つの研究が報道(報道1および報道2および報道3)されました。これらの研究はオンライン版での先行公開となります。一方の研究(Olalde et al., 2018)は、鐘状ビーカー複合(Bell Beaker Complex)の拡散が地域により異なる様相だったことを明らかにしています。鐘状ビーカー複合は、定型化した鐘状ポット・銅製短剣・矢尻・石製のリストガード・独特な穴... ...続きを見る

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2018/02/23 00:02
カリブ海地域の人類集団における遺伝的連続性
 これは2月23日分の記事として掲載しておきます。カリブ海地域の人類集団における遺伝的連続性についての研究(Schroeder et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。カリブ海地域は、アメリカ大陸のなかでも人類の拡散が遅かった地域の一つです。カリブ海地域の先住民であるタイノ人(Taino)は、先コロンブス期末期には大アンティル諸島および北部小アンティル諸島に居住しており、バハマではルーカヤン人... ...続きを見る

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2018/02/23 00:01
エレクトスの航海と言語能力
 これは2月23日分の記事として掲載しておきます。ホモ属の言語能力に関する見解が報道されました。これは、『言語はいかに始まったのか(未邦訳)』という昨年(2017年)11月に刊行された本(Amazon)の著者である、エヴェレット(Daniel Everett)氏の見解です。言語の起源という難問に挑んだ意欲作ということで、いつかは読まねばならない本なのでしょうが、素養は皆無に近い言語学の本を原書で読むのは私の能力からして厳しそうなので、邦訳を待つことにします。 ...続きを見る

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2018/02/23 00:00
異なる石器伝統と共存していたスペイン北西部の中期更新世のアシューリアン
 これは2月20日分の記事として掲載しておきます。スペイン北西部の中期更新世のアシューリアン(Acheulean)石器群に関する研究(Méndez-Quintas et al., 2018)が報道されました。ヨーロッパにおけるアシューリアンの起源に関しては、スペイン南東部の90万年前頃の事例(関連記事)など、前期更新世までさかのぼる、との見解も提示されています。しかし本論文は、中期更新世となる海洋酸素同位体ステージ(MIS)12以前のヨーロッパにおけるアシューリアンと主張されている事例... ...続きを見る

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2018/02/20 00:00
現生人類の自己家畜化
 これは2月17日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)の自己家畜化に関する研究(Theofanopoulou et al., 2017)が報道されました。現生人類は自己家畜化した種だ、との見解はそれなりに浸透しているように思います。この研究は、ゲノム比較により、現生人類自己家畜化仮説を検証しています。対象となったのは、イヌ(Canis familiaris)やネコ(Felis catus)やウマ(Equus caballus)やウシ(Bos taurus)といった... ...続きを見る

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2018/02/17 00:00
70万年前頃の人類の足跡と生活
 これは2月16日分の記事として掲載しておきます。70万年前頃の人類の足跡に関する研究(Altamura et al., 2018)が報道されました。この研究は、エチオピアのアワッシュ川上流のメルカクンチュレ(Melka Kunture)層のゴンボレII-2(Gombore II-2)遺跡で発見された足跡を分析しています。ゴンボレII-2遺跡では、この足跡の層よりも下層でホモ属遺骸が発見されており、アフリカにおけるエルガスター(Homo ergaster)からハイデルベルゲンシス(Homo he... ...続きを見る

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2018/02/16 00:00
10万年以上前のアメリカ大陸における人類の痕跡との見解への批判
 これは2月15日分の記事として掲載しておきます。昨年(2017年)、北アメリカ大陸南西部で10万年以上前の人類の痕跡が確認された、との見解が提示されましたが(関連記事)、それにたいするさまざまな批判について報道されました。10万年以上前の人類の痕跡との見解は、アメリカ合衆国カリフォルニア州南部のサンディエゴ市近郊のセルティマストドン(Cerutti Mastodon)遺跡で発見された、単一のマストドン(Mammut americanum)の断片的な遺骸に基づいています。 ...続きを見る

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2018/02/15 00:00
狩猟の違いがもたらしたかもしれない現生人類とネアンデルタール人の芸術活動の違い
 これは2月12日分の記事として掲載しておきます。狩猟の違いが、現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の視覚表現の違いに影響した可能性を論じた研究(Coss., 2018)が報道されました。現生人類は投槍を用いて狩猟を行ない、じゅうらいより安全に大型動物を狩ることができるようになりましたが、サハラ砂漠以南のアフリカにおける投槍の起源は279000年以上前までさかのぼる可能性があります(関連記事)。投槍は投槍器を用いることでさらなに威... ...続きを見る

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2018/02/12 00:00
濃い肌の色と青い目の1万年前頃のブリテン島の人類
 これは2月10日分の記事として掲載しておきます。1万年前頃のブリテン島の人類の復元像について報道され、日本でも話題になっているようです。これは、1903年にイギリス南西部のサマーセット州チェダー渓谷(Cheddar Gorge)のゴフ洞窟(Gough's Cave)で発見された、1万年前頃の人類(男性)の男性の復元像です。1万年前頃の「イギリス(ヨーロッパ)人」が、濃い肌の色と青い目だったということで、日本では、白人至上主義者の反応に関心を示すなど、人種差別主義的な観点からこの報道に興味を抱い... ...続きを見る

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2018/02/10 00:00
トバ大噴火のアフリカ東部における影響は限定的
 これは2月9日分の記事として掲載しておきます。74000年前頃のスマトラ島のトバ大噴火のアフリカ東部における影響を検証した研究(Yost et al., 2018)が報道されました。トバ大噴火による6年もの冷却効果(火山の冬)の影響は広範囲に及び甚大で、現生人類(Homo sapiens)の有効な集団規模は10000人以下にまで減少し、その後に急速に人口が増加するという、ボトルネック(瓶首効果)が生じたのではないか、とのトバ大惨事仮説(トバ・カタストロフ理論)が提示されており、一般層にも広く浸... ...続きを見る

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2018/02/09 00:00
イタリアで発見された中期更新世後期の木製道具
 これは2月8日分の記事として掲載しておきます。中央イタリアのトスカーナ州グロッセート市のポゲッチヴェッチ(Poggetti Vecchi)で発見された木製道具に関する研究(Aranguren et al., 2018)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ポゲッチヴェッチでは、温水プールの建設工事中の2012年に、58本の木製棒・約200点の石器・おもに絶滅した象(Palaeoloxodon antiquus)から... ...続きを見る

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2018/02/08 00:00
チンパンジーとゴリラのナックル歩行は収斂進化
 これは2月6日分の記事として掲載しておきます。現代人も含めた霊長類の大腿骨を比較した研究(Morimoto et al., 2018)が報道されました。日本語の解説記事もあります。現代人と最も近縁な現存生物は大型類人猿です(現代人も大型類人猿の1種と言えますが)。現生大型類人猿で現代人と近縁なのはチンパンジー属(Pan)で、その次がゴリラ属(Gorilla)、その次はオランウータン属(Pongo)です。つまり、現代人・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの最終共通祖先からまずオランウータン系統... ...続きを見る

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2018/02/06 00:00
南アジアにおける中部旧石器文化的石器(追記有)
 これは2月5日分の記事として掲載しておきます。南アジアにおける中部旧石器文化的石器についての研究(Akhilesh et al., 2018)が報道されました。これまで、南アジアにおける下部旧石器時代のアシューリアン(Acheulian)から中部旧石器時代への移行は14万〜9万年前頃に起きたと考えられており、アフリカ起源の現生人類(Homo sapiens)のユーラシアへの早期拡散と関連づけられていました。この研究は、インド南東部のチェンナイ市から60km離れたアッティラムパッカム(Attir... ...続きを見る

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2018/02/05 00:00
中石器時代〜青銅器時代の北ヨーロッパの人類の古代DNA解析
 これは2月3日分の記事として掲載しておきます。中石器時代〜青銅器時代の北ヨーロッパの人類のDNA解析に関する研究(Mittnik et al., 2018)が報道されました。この研究は、北ヨーロッパにおける中石器時代〜青銅器時代の人類遺骸のDNAを解析し、バルト海地域における人類集団の移住と継続性について検証しています。対象となるのは、較正年代では紀元前7500〜紀元前500年前頃の106人の人類遺骸です。このうち、41標本のDNAの保存状態は良好で、38標本でゲノム規模の一塩基多型解析データ... ...続きを見る

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2018/02/03 00:00
現生人類の脳の形状の進化
 これは1月31日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)の脳の形状の進化に関する研究(Neubauer et al., 2018)が報道されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など絶滅した古代型ホモ属と現代人の脳の形状の重要な違いは、現代人の脳の球状性です。現代人の脳は球状というか、高さがあり額が目立つようになっている一方で、古代型ホモ属の脳は前後に長く、平坦というか低い形状になっています。このような違いは胎児期および誕生後初期に... ...続きを見る

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2018/01/31 00:00
古代DNA解析に基づく更新世ユーラシアの現生人類史
 これは1月30日分の記事として掲載しておきます。古代DNA解析に基づき、おもに更新世ユーラシアの現生人類史を検証した研究(Yang, and Fu., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。近年では古代DNAの解析数は着実に増加しており、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など更新世に絶滅した古代型ホモ属とは異なり、完新世も対象になることから、現生人類の古代DNAの解析数は激増していると言えるでしょう(関連記事)。この研究は、おも... ...続きを見る

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2018/01/30 00:00
森恒二『創世のタイガ』第2巻(講談社)
 これは1月28日分の記事として掲載しておきます。本書は2018年1月に刊行されました。第1巻がたいへん面白かったので、第2巻も楽しみにしていました。第2巻後半では、主人公のタイガとネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)との格闘が描かれました。その分、タイガの仲間たちの出番は減り、青春群像劇的な性格は第1巻よりも弱くなっていたのですが、タイガとネアンデルタール人との格闘およびタイガのサバイバルドラマとしての性格が強くなっており、マンモスなどの大型動物はとくにそうですが、... ...続きを見る

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2018/01/28 00:00
アフリカ外最古の現生人類化石(追記有)
 これは1月27日分の記事として掲載しておきます。レヴァントの早期現生人類(Homo sapiens)化石に関する研究(Hershkovitz et al., 2018)が報道されました。読売新聞でも報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。現生人類アフリカ単一起源説は、今では通説として認められていますが、現生人類の出アフリカの回数・年代・経路などをめぐっては議論が続いています(関連記事)。これまで、現生人類の出アフリカは12万年前頃までさかのぼる、との見解が有力でし... ...続きを見る

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2018/01/27 00:00
物語を巧みに話せることの効用
 これは1月26日分の記事として掲載しておきます。物語を巧みに話せることの効用に関する研究(Smith et al., 2017)が公表されました。物語を語るという行為は人間社会のどこにでも存在し、貴重な知識の発信方法だと考えられています。しかし、物語を語ることの具体的な効用を明らかにするのは難しい場合があります。この研究は、フィリピンの先住民族であるアイタ(Agta)の社会において物語を語ることが、個人と集団にどのような利益をもたらしているのか、調べました。その結果、昔から語られている物語のテ... ...続きを見る

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2018/01/26 00:00
反社会的個体にたいする懲罰感情の起源
 これは1月25日分の記事として掲載しておきます。チンパンジーとヒトの懲罰感情に関する研究(Mendes et al., 2018)が公表されました。過去の研究では、ヒトも一部の動物も、害を被る他者を見ると共感的な苦痛を感じて心配することが報告されています。しかし成人については、罰を受けるに値する者や、反社会的な行動を取った者が害を受けるさいには、喜びの感情を覚えることも分かっています。この研究は新たな実験を考案し、懲罰が行われる状況を子供が見たいという動機を発達させる時期と、同様の動機がヒトに... ...続きを見る

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2018/01/25 00:00
人類史における弔意の起源(橋本琴絵氏公認アカウントのネアンデルタール人論)
 これは1月24日分の記事として掲載しておきます。昨年(2017年)の衆院選で広島県第5区に希望の党から立候補した橋本琴絵氏(得票率21.7%、惜敗率32.4%で落選)の公認らしいTwitterアカウント(以下、橋本氏と省略します)が、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について色々と呟き(関連記事)、それなりに話題になりました。遺伝子とさまざまな認知能力との関連は、もちろん環境も大きく影響してくるのでたいへん複雑であり、現時点では不透明なところが多分にある、と言わざ... ...続きを見る

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2018/01/24 20:00
更科功『絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか』
 これは1月21日分の記事として掲載しておきます。NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2018年1月に刊行されました。本書は、ヒト(現代人)の変わった特徴はなぜ進化したのか、人類のなかでなぜヒトだけが生き残ったのか、という観点から人類進化史を検証しています。本書は、初心者向けの人類進化史の概説というよりは、ある程度人類進化について知った一般層が、さらに詳しく知るために読むべき手がかりという位置づけのように思われます。本書は近年までの研究成果を踏まえつつ、興味深い論点を検証しており、人類進化... ...続きを見る

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2018/01/21 00:00
レッテル貼りの作用
 これは1月20日分の記事として掲載しておきます。レッテル貼りの作用に関する研究(Mace et al., 2018)が公表されました。「魔女である」と名指しするといった、個人を仲間外れにするような否定的なレッテルには、人間社会において長く広範囲に及ぶ歴史があるものの、その社会的な機能はよく分かっていません。魔女のレッテルは、レッテルを貼られた者が信用できない人、あるいは協力的でない人であるという印をつけるために使われていると示唆する研究もあれば、そうしたレッテルは、競争相手の意志をくじくように... ...続きを見る

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2018/01/20 00:00
ネアンデルタール人的特徴と祖先的特徴を有する中期更新世のフランスの下顎
 これは1月19日分の記事として掲載しておきます。フランスのオート=ガロンヌ県(Haute Garonne)のモンモラン(Montmaurin)のラニッチェ(La Niche)洞窟(以下、MLNと省略)で1949年に発見された、中期更新世のホモ属下顎についての研究(Vialet et al., 2018)が報道されました。当初、MLNの年代は「ミンデル-リス(Mindel-Riss)」間氷期と推定されました。「ミンデル-リス」間氷期は、海洋酸素同位体ステージ(MIS)11〜9(42万〜30万年前... ...続きを見る

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2018/01/19 00:00
強力な侵略種としての現生人類
 これは1月18日分の記事として掲載しておきます。「史上最強の侵略種ホモ・サピエンス」と題する記事がかつて『日経サイエンス』に掲載されましたが(関連記事)、確かに、現生人類(Homo sapiens)が強力な侵略種であることは否定できないでしょう。その記事では、現生人類の拡散に伴い、(直ちにというわけではないとしても)ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)といった現生人類と同じくホモ属の種(もしくは分類群)が絶滅し、現生人類... ...続きを見る

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2018/01/18 00:00
初期人類の進化とチンパンジー・ゴリラ
 これは1月15日分の記事として掲載しておきます。現生種で現代人と最近縁なのはチンパンジー属(Pan)で、チンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)の2種に区分されています。次に現代人と近縁な現生種はゴリラ属(Gorilla)の各種で、その次に近縁なのはオランウータン属(Pongo)の各種です。現代人・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの最終共通祖先からまずオランウータン系統が、次に現代人・チンパンジーの共通祖先系統とゴリラの祖先系統が、その次に現代人の... ...続きを見る

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2018/01/15 00:00
後藤明『世界神話学入門』
 これは1月14日分の記事として掲載しておきます。講談社現代新書の一冊として、講談社から2017年12月に刊行されました。遺伝学を中心に考古学・言語学などの諸研究成果から、現生人類(Homo sapiens)がアフリカから世界中にどのように拡散したのか、次第に明らかになりつつあります。世界神話学とは、世界の遠く離れた地域同士の神話の類似性(たとえば、日本神話とゲルマン神話)を、現生人類拡散の様相から説明する仮説です。この仮説自体は以前に報道で知りましたが、具体的な内容をほとんど知らなかったので、... ...続きを見る

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2018/01/14 00:00
フェニキア人のmtDNA解析
 これは1月13日分の記事として掲載しておきます。フェニキア人のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析についての研究(Matisoo-Smith et al., 2018)が報道されました。フェニキア人は紀元前1800年頃に北部レヴァントに出現し、紀元前9世紀までには地中海全域に拡散していました。しかし、フェニキア人の情報はおもにギリシアとエジプトの記録に依拠しており、そこには偏りが生じているかもしれません。本論文は、サルデーニャ島とレバノンのフェニキア人およびフェニキア人出現前の住民の古代mt... ...続きを見る

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2018/01/13 00:00
スカンジナビア半島の初期人類集団の遺伝的構成
 これは1月12日分の記事として掲載しておきます。スカンジナビア半島の初期人類集団の遺伝的構成に関する研究(Günther et al., 2018)が報道されました。スカンジナビア半島は、ヨーロッパで最後に人類が進出した地域です。27000〜19000年前頃となる最終最大氷期(LGM)の期間で、スカンジナビア半島においては23000年前頃に氷床が後退し始め、植物や動物が再度拡散してきました。スカンジナビア半島では、北部でも南部でも、11700年前頃より人類の居住の痕跡が継続的に確認さ... ...続きを見る

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2018/01/12 00:00
「原始社会」母系制論と唯物史観
 これは1月11日分の記事として掲載しておきます。以前にも述べましたが(関連記事)、人類の「原始社会」は母系制だった、という見解は根強いように思います。この見解の根源はモルガンやバッハオーフェンにあるとしても、広範に浸透した直接的契機は、唯物史観というか、エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』にあるのではないか、と思います。もっとも、私はこの問題に関する学説史をほとんど把握していないので、あるいは的外れなことを言っているかもしれませんが、とりあえず、私の認識が大外れではないと仮定して、以下に述... ...続きを見る

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2018/01/11 00:00
アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化についてのまとめ
 これは1月10日分の記事として掲載しておきます。今年(2018年)は、このブログで取り上げてきた古人類学関連の記事を整理していこう、と考えています。人類進化について私見をまとめてからもう10年近く経過しましたから(関連記事)、そろそろ情報を整理し、理解しやすくしよう、というわけです。これまでにも、対象を限定して、そうした目的でいくつかまとめ記事を掲載してきました。いきなり人類進化史全体を見通した情報整理は難しいので、これまでのように対象を限定したまとめ記事を掲載していくつもりです。何とか今年中... ...続きを見る

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2018/01/10 00:00
Adam Rutherford『ゲノムが語る人類全史』
 これは1月7日分の記事として掲載しておきます。アダム=ラザフォード(Adam Rutherford)著、渡会圭子訳、垂水雄二解説で、文藝春秋社より2017年12月に刊行されました。原書の刊行は2016年です。本書は人類進化史をゲノムの観点から概観しています。本書がおもに対象とするのは、現生人類(Homo sapiens)がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と交雑した後期更新世〜現代までとなり、文字記録の残る歴史時代にもかなりの分量を割いているのが特徴です。解説でも... ...続きを見る

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2018/01/07 00:00
更新世末期のアラスカの幼児のゲノム解析
 これは1月5日分の記事として掲載しておきます。更新世末期のアラスカの幼児のゲノム解析に関する研究(Moreno-Mayar et al., 2018)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アメリカ大陸への人類最初の移住はベーリンジア(ベーリング陸橋)経由だった、と現在では広く認められています。しかし、その時期と具体的な過程については、議論が続いています。この研究は、アラスカのアップウォードサン川(Upward Sun River)で発見された、放射性炭素年代測定法によ... ...続きを見る

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2018/01/05 00:00
古人類学の記事のまとめ(33)2017年9月〜2017年12月
 これは1月2日分の記事として掲載しておきます。2017年9月〜2017年12月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2017年9月〜2017年12月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2018/01/02 00:00
2017年の古人類学界
 これは12月29日分の記事として掲載しておきます。あくまでも私の関心に基づいたものですが、年末になったので、今年(2017年)も古人類学界について振り返っていくことにします。今年の動向を私の関心に沿って整理すると、以下のようになります。 ...続きを見る

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2017/12/29 00:00
川端裕人『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』
 これは12月24日分の記事として掲載しておきます。川端裕人著、海部陽介監修で、講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2017年12月に刊行されました。本書はおもに著者の監修者へのインタビューで構成されています。そのため、本書の見解は基本的に監修者の見解となります。監修者の見解すべてが有力説になっているわけではないので、異論も少なからずあるかもしれませんが、全体的に読みやすく、著者が発掘現場・研究室を訪れて描写しているため臨場感があり、興味深い一般向け書籍になっている、と思います。 ...続きを見る

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2017/12/24 00:00
頭蓋冠によるフロレシエンシスの系統解析
 これは12月21日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れましたが、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟で発見された、6万年以上前の人類遺骸の系統解析に関する研究(Zeitoun et al., 2016)が公表されました。リアンブア洞窟で発見された6万年以上前の人類遺骸に関しては、病変の現生人類(Homo sapiens)との主張も一部で依然として根強いのですが、ホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)との分類が今では広... ...続きを見る

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2017/12/21 00:00
絶滅人類の歩行の効率性
 これは12月18日分の記事として掲載しておきます。絶滅人類の歩行の効率性に関する研究(Vidal-Cordas et al., 2017)が報道されました。この研究は、現代人の男女46人を被験者として、骨格・体重・歩行運動のエネルギーコストのデータを得て、絶滅したアウストラロピテクス属やホモ属各種の歩行運動のエネルギーコストを推定し、その効率性を評価しました。この研究が計測対象とした骨格は、骨盤の幅と大腿骨の長さ(下肢の長さ)です。これがどのように歩行運動のエネルギーコストに影響を及ぼすのか、... ...続きを見る

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2017/12/18 00:00
子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす親の年齢
 これは12月15日分の記事として掲載しておきます。子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす親の年齢に関する研究(Jónsson et al., 2017)が公表されました。この研究は、親の年齢や性別がヒトのde novo変異(DNM、ある家系に最初に現れる遺伝子変化で、両親のいずれかの卵あるいは精子に生じた1変異が原因)の変化を引き起こす仕組みを理解するために、1万4688人のアイスランド人(両親と子の3人組から構成される1548組で、そのうちの225組については少なくとも1人の孫を含み... ...続きを見る

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2017/12/15 00:00
現生人類到達前のアジアの人類史とデニソワ人の見直し
 これは12月13日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)到達前のアジアの人類史に関する研究(Kaifu., 2017)が公表されました。本論文が対象とする地域は、おもに東および東南アジアで、南アジア・オセアニア・アルタイ地域も含まれます。これらの地域では明確にホモ属ではない人類化石は発見されていないので、基本的にはホモ属の進化史として考えられます。現生人類出現前の東・東南アジアのホモ属(古代型ホモ属)進化史は、エレクトス(Homo erectus)が東アジア北部か... ...続きを見る

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2017/12/13 00:00
尾本恵市、山極寿一『日本の人類学』
 これは12月10日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2017年11月に刊行されました。碩学二人の対談だけに、教えられること、汲み取るべきことは多いと思います。もちろん、二人の見解すべてに同意するわけではありませんが、今後の勉強・思索・行動の指針になるような示唆に富む対談になっていると思います。ただ、対談形式で、体系的な解説にはなっていないので、人類学の教科書として読もうとすると、期待外れになってしまいそうです。 ...続きを見る

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2017/12/10 00:00
見直しが進む現生人類の拡散
 これは12月9日分の記事として掲載しておきます。アジアの学際的な諸記録から、現生人類(Homo sapiens)の拡散の見直しを提言した研究(Bae et al., 2017)が報道されました。現生人類の拡散に関する古典的な仮説では、現生人類はアフリカで出現し、非アフリカ系現代人は6万〜5万年前頃のアフリカからユーラシアへの1回の移住集団にのみ起源があり、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)などユーラシア各地の先住人類と交雑することなく置換していった、とされます。 ... ...続きを見る

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2017/12/09 00:00
アウストラロピテクス属化石「リトルフット」の公開
 これは12月8日分の記事として掲載しておきます。南アフリカ共和国のスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟で発見されたアウストラロピテクス(Australopithecus)属化石「リトルフット(StW 573)」が復元され、国内外のメディアに公開された、と報道されました。リトルフットは1994年に発見されましたが、固い角礫岩に埋まっていたので、長い時間をかけて慎重に取り出され、復元されました。人類に限らず哺乳類の化石は脆いので、長期間を経て良好な状態で保存されていることはほとんどな... ...続きを見る

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2017/12/08 00:00
ネアンデルタール人と現生人類の交雑パターンおよび生殖隔離
 これは12月6日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れましたが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との交雑パターンおよび生殖隔離の影響に関する研究(Overmann, and Coolidge., 2013)が公表されました。ネアンデルタール人と現生人類との交雑は、今では広く認められています。しかし、それがどのようなパターンだったのか、詳細は不明です。本論文は、チンパンジー(Pan troglodytes)... ...続きを見る

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2017/12/06 00:00
斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』
 これは12月3日分の記事として掲載しておきます。河出書房新社から2017年11月に刊行されました。本書はまず人類進化史と現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散を、最新の研究成果に基づいて簡潔に概観した後、日本列島の現代人がどのように形成されてきたのか、おもに核DNAの解析結果に基づいて検証しています。もっとも、本書は、核DNAよりは得られる情報が少なくなるものの、ミトコンドリアDNA(mtDNA)とY染色体DNAについてのこれまでの研究も取り上げています。本書で言及されている... ...続きを見る

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2017/12/03 00:00
アフリカにおける後期ホモ属の進化
 これは11月29日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、アフリカにおける後期ホモ属の進化についての研究(Profico et al., 2016)が公表されました。ここでの後期ホモ属とは、脳容量の増大した、中期更新世以降に存在したホモ属を想定しています。この研究は、分類について議論があることも取り上げつつ、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)の共通祖先としてハイデルベルゲンシス(Homo heidelb... ...続きを見る

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2017/11/29 00:00
初期人類による屠殺の証拠の見直し
 これは11月24日分の記事として掲載しておきます。初期人類による屠殺の証拠を再検証した研究(Sahlea et al., 2017)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。初期人類がいつから動物を解体して肉や骨髄を食べるようになったのか、という問題は大きな関心を集めてきました。中には、ホモ属と人類の初期石器文化であるオルドワン(Oldowan)の出現以前の340万年前頃に、人類は石器を用いて動物を解体していた、との見解も提示されています(関連記事)。そこまで古くなくとも... ...続きを見る

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2017/11/24 00:00
イベリア半島で他地域よりも遅くまで生存していたネアンデルタール人
 これは11月21日分の記事として掲載しておきます。イベリア半島における後期〜末期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の年代に関する研究(Zilhão et al., 2017)が報道されました。イベリア半島はネアンデルタール人終焉の有力候補地で、24000年前頃まで生存していた、との見解(後期絶滅説)も提示されています(関連記事)。イベリア半島は末期ネアンデルタール人にとって待避所になっていたのではないか、というわけです。もっとも、ネアンデルタール人の絶滅... ...続きを見る

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2017/11/21 00:00
小林武彦『DNAの98%は謎 生命の鍵を握る「非コードDNA」とは何か』
 これは11月19日分の記事として掲載しておきます。講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2017年10月に刊行されました。本書は、ヒトのDNAのうち98%を占めると推定されているタンパク質をコードしていない領域(非コードDNA領域)について解説しています。本文は200ページにも満たない新書サイズですが、遺伝の基礎から非コードDNA領域の役割まで丁寧に解説されており、遺伝に関する一般向けの良書になっていると思います。ただ、たいへん充実した内容なので、私の見識・能力では一度読んだだけでおおむ... ...続きを見る

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2017/11/19 00:00
地域により異なる新石器時代以降の不平等化の進展(追記有)
 これは11月17日分の記事として掲載しておきます。新石器時代以降の地域間の不平等化の進展に関する研究(Kohler et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、北アメリカ・メソアメリカ・ユーラシアを対象として、考古学的遺跡からジニ係数を推定して富の不平等化の進展の指標とし、新石器時代以降の地域間の不平等化の進展の違いと、その要因を検証しています。 ...続きを見る

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2017/11/17 00:00
クロアチアのネアンデルタール人の高品質なゲノム配列と古代の近親交配
 これは11月16日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)では2例目となる高品質のゲノム配列を報告した論文(Prüfer et al., 2017)を、先月(2017年10月)このブログで取り上げました(関連記事)。その後、この論文が『サイエンス』本誌に掲載されたので、以前の記事で触れていなかったことを中心に、より詳しく見ていくことにします。追記で対応しようかとも考えたのですが、人類進化史における近親交配の問題にも触れることにし... ...続きを見る

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2017/11/16 00:00
ヨーロッパの初期農耕民と狩猟採集民との関係
 これは11月14日分の記事として掲載しておきます。ヨーロッパの初期農耕民と狩猟採集民との関係についての研究(Lipson et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。古代DNA研究から、ヨーロッパの初期農耕民はアナトリア半島からヨーロッパへと移住してきた、と明らかになっています。しかし、ヨーロッパ新石器時代の農耕民と狩猟採集民との関係については、交雑の程度や時空的な違いなど、明らかになっていないことも少なくありません。 ...続きを見る

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2017/11/14 00:00
長期にわたる人類の身長と体重の進化
 これは11月13日分の記事として掲載しておきます。長期にわたる人類の身長と体重の進化を包括的に検証した研究(Will et al., 2017)が報道されました。この研究は、440万年前から完新世までの311個の人類標本から、254個体の体重と204個体の身長の推移を分析しています。もちろん、440万年にわたる人類の体格の進化を包括的に検証するといっても、現在の標本数は明らかに不足しているわけですが、この問題は半永久的に解決できないでしょうし、ともかくその時点で最善を尽くすしかないわけですから... ...続きを見る

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2017/11/13 00:00
アフリカ南部における初期の顔料使用
 これは11月11日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れましたが、アフリカ南部における初期の顔料使用に関する研究(Watts et al., 2016)が公表されました。「現代的行動」は現生人類(Homo sapiens)にのみ見られ、現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など他の人類とを区別する重要な指標とされてきました。「現代的行動」とはいっても曖昧であり、今でも簡潔にして的確な定義はなされていない、と言えるかもしれませんが、最大公約... ...続きを見る

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2017/11/11 00:00
初期の石器は文化的伝達の産物なのか
 これは11月9日分の記事として掲載しておきます。初期の石器が文化的伝達の産物なのか、検証した研究(Tennie et al., 2017)が報道されました。人類の初期石器として広く認められているのは、260万年前頃までさかのぼるオルドワン(Oldowan)です。それよりもずっとさかのぼる330万年前頃の石器群をロメクウィアン(Lomekwian)と分類する見解も提示されていますが(関連記事)、まだ定説になっているとは言えないように思います。この研究は、初期の石器としておもにオルドワンを対象とし... ...続きを見る

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2017/11/09 00:00
スマトラ島の新種オランウータン
 これは11月7日分の記事として掲載しておきます。スマトラ島の新種オランウータンについての研究(Nater et al., 2017)が報道されました。朝日新聞でも報道されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヒトを除く現生大型類人猿(ヒト科)としては、オランウータン属(Pongo)・ゴリラ属(Gorilla)・パン属(Pan)が知られています。このうち、オランウータンはスマトラ島とボルネオ島、ゴリラは東部と西部、パン属はチンパンジーとボノボに種区分されています。オランウータン... ...続きを見る

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2017/11/07 00:00
カナリア諸島先住民のDNA解析
 これは11月3日分の記事として掲載しておきます。カナリア諸島の先住民であるグアンチェ人のDNA解析結果を報告した研究 (Rodríguez-Varela et al., 2017)が 報道されました。木炭・種子・家畜の骨などの放射性炭素年代測定により、人類がカナリア諸島に最初に居住したのは紀元前5世紀と推定されています。その後、グアンチェ人は船と航海の技術を喪失したようで、紀元後15世紀にヨーロッパ人がカナリア諸島に到達して征服した時には、グアンチェ人は新石器時代のような生活を送って... ...続きを見る

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2017/11/03 00:00
現生人類の優位性に起因しないかもしれないネアンデルタール人の絶滅
 これは11月2日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅要因に関する研究(Kolodny, and Feldman., 2017)が公表されました。もっとも、ネアンデルタール人の絶滅とはいっても、ネアンデルタール人のDNAは(非アフリカ系)現代人にわずかながら継承されているわけで、より正確には、ネアンデルタール人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は現在では存在しない、と言うべきかもしれません。 ...続きを見る

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2017/11/02 00:00
現代西アジア人におけるネアンデルタール人の遺伝的影響
 これは10月30日分の記事として掲載しておきます。現代西アジア人におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺伝的影響に関する研究(Taskent et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。ネアンデルタール人と現生人類(Homo sapiens)との交雑は、今ではほぼ定説になっている、と言えるでしょう。しかし、ネアンデルタール人の遺伝的影響は、サハラ砂漠以南の現代アフリカ人ではほとんどなく、それ以外の地域の現代人では... ...続きを見る

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2017/10/30 00:00
難聴のネアンデルタール人
 これは10月28日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の難聴についての研究(Trinkaus, and Villotte., 2017)が報道されました。更新世人類の障害と社会的支援はこれまでにも注目されてきましたが、障害のなかでも感覚の損失についてはあまり検証されていませんでした。しかし、感覚損失は更新世の環境での生存に重大な脅威になったと考えられます。この研究は、イラクのクルディスタン地域にある有名なシャニダール洞窟(Shanid... ...続きを見る

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2017/10/28 00:00
古代ゲノム解析による人類の適応の研究
 これは10月26日分の記事として掲載しておきます。近年における古代ゲノム解析による人類の適応の研究の進展を概観した総説(Marciniak, and Perry., 2017)が公表されました。この総説は、近年の古代人のゲノム解析結果について、参考文献が多数挙げられているとともに、年代・地域ごとにもまとめられており、たいへん有益だと思います。図表を見ると明らかなのですが、古代人のゲノム研究の密度が最も高いのはやはりヨーロッパで、他地域を圧倒しています。気温・湿度などの点で、人類遺骸が残りやすく... ...続きを見る

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2017/10/26 00:00
カナダのニューファンドランド島の複数系統の先住民集団
 これは10月23日分の記事として掲載しておきます。カナダの北東端に位置するニューファンドランド島の先住民集団のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析に関する研究(Duggan et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。カナダ東部のニューファンドランド・ラブラドール州は、豊富な天然資源と低い人口密度で知られています。ニューファンドランド・ラブラドール州の陸地は、18000年前の最終最大氷期(LGM)にはローレンタイド(Laurentide)氷床に覆... ...続きを見る

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2017/10/23 00:00
先コロンブス期のイースター島住民と南アメリカ大陸先住民との交雑の検証
 これは10月21日分の記事として掲載しておきます。先コロンブス期のイースター島(Rapa Nui)住民と南アメリカ大陸先住民との交雑の可能性を検証した研究(Fehren-Schmitz et al., 2017)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。先コロンブス期におけるポリネシア人と南アメリカ人との接触は、考古学的証拠により支持されてきました。ペルーでは8000年前頃に南アメリカ大陸原産のサツマイモが栽培化され、... ...続きを見る

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2017/10/21 00:00
現代人の肌の色の遺伝的基盤
 これは10月20日分の記事として掲載しておきます。現代人の肌の色の遺伝的基盤に関する研究(Crawford et al., 2017)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代人の肌の色は多様ですが、かつて肌の色は「人種」を区分する最重要な指標とされており、かつて大きな注目を集めた「人種」概念が廃れてしまった感のある現在でも、肌の色は適応と関連していると考えられるだけに、関心は高いように思います。 ...続きを見る

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2017/10/20 00:00
絶滅人類種を経由してのチンパンジーの祖先から現代人の祖先へのウイルス感染
 これは10月17日分の記事として掲載しておきます。チンパンジーの祖先から現代人の祖先へのウイルス感染に関する研究(Underdown et al., 2017)が報道されました。この研究は、世界中の現代人で見られる単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)がどのように現代人系統に感染したのか、検証しています。多くの霊長類で確認されているアルファヘルペスウイルス亜科のうち、現代人ではHSV2やHSV1などが確認されています。HSV 1はおもに口唇、HSV 2はおもに生殖器で発症します。HSV2は当初、... ...続きを見る

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2017/10/17 00:00
4万年前頃の東アジアの現生人類のゲノム解析
 これは10月16日分の記事として掲載しておきます。4万年前頃の東アジアの現生人類のゲノム解析結果を報告した研究(Yang et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、北京の南西56kmにある田园洞窟(Tianyuan Cave)の男性遺骸のゲノム規模のデータ(平均網羅率は2.98倍)を報告しています。以前の田园男性のゲノム解析では、まず間違いなく現生人類(Homo sapiens)であることと、現代の東アジア... ...続きを見る

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2017/10/16 00:00
中山一大・市石博明編集『つい誰かに教えたくなる人類学63の大疑問』
 これは10月15日分の記事として掲載しておきます。日本人類学会教育普及委員会監修で講談社より2015年11月に刊行されました。本書は、人類学に関する63の話題を解説するという構成になっています。各解説は、高校教師が各分野の専門家に取材して執筆しており、おおむね最新の研究成果も踏まえた堅実な内容になっています。未解明な点を安易に断定しないよう心がけている編集方針が窺え、良心的な内容になっていると思います。ある程度予備知識が必要かもしれませんが、分かりやすい解説になっていますし、病気・食事・心理・... ...続きを見る

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2017/10/15 00:00
遺伝子発現における多様な人体組織間の差異と個人差
 これは10月14日分の記事として掲載しておきます。遺伝子発現における多様な人体組織間の差異と個人差に関する一連の研究が公表されました。ヒトゲノムには遺伝子発現調節の指令がコードされていますが、遺伝子発現調節は細胞の種類によって異なっており、その結果、それぞれ独自の機能を持つ多様な組織が生じているものの、遺伝子発現調節には個人差もあります。こうした差異を生じさせる遺伝的多様体は、ゲノムの非コード領域内に位置している傾向があり、この非コード領域が遺伝子の発現状態と発現時期を決めている、と考えられて... ...続きを見る

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2017/10/14 00:00
不公平にたいする感受性と鬱病の関係
 これは10月13日分の記事として掲載しておきます。不公平にたいする感受性と鬱病の関係についての研究(Tanaka et al., 2017)が公表されました。過去の研究では、富の不平等な分配(経済的不平等)が、うつ病をはじめとする精神疾患の増加に寄与することが示唆されていましたが、その背後にある神経機構は不明でした。この研究は、仮想的なパートナーからバーチャル・マネーを受け取るコンピューターゲーム(最終提案ゲーム)をプレイ中の健常者の脳活動を測定しました。ゲームにおいてパートナーとプレイヤーは... ...続きを見る

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2017/10/13 00:00
上部旧石器時代の配偶システム
 これは10月10日分の記事として掲載しておきます。上部旧石器時代の配偶システムに関する研究(Sikora et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現代の狩猟採集民は25人程度の小集団で暮らし、より広範な社会的ネットワークとつながって配偶相手を求め、近親婚は回避される傾向にあります。このような社会行動が狩猟採集民集団でいつ進化したのか、まだ不明です。この研究は、装飾品など豪華な副葬品で知られるロシアのスンギール(Sunghir)遺跡で発見された、... ...続きを見る

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2017/10/10 00:00
ネアンデルタール人の高品質なゲノム配列(追記有)
 これは10月9日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の高品質なゲノム配列を報告した研究(Prüfer et al., 2017)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ネアンデルタール人の高品質なゲノム配列としては、南西シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された女性個体のものが知られています(関連記事)。 ...続きを見る

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2017/10/09 00:00
現代人の表現型へのネアンデルタール人の影響(追記有)
 これは10月7日分の記事として掲載しておきます。現代人の表現型へのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の影響に関する研究(Dannemann, and Kelso., 2017)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。この研究は、イギリスのバイオバンクで収集された112000人以上のデータを用いて、ネアンデルタール人の遺伝子が現代人の表現型の多様性に与えた影響を検証しています。 ...続きを見る

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2017/10/07 00:00
乾燥化による現生人類の出アフリカ
 これは10月6日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)の出アフリカ時の気候に関する研究(Tierney et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類の出アフリカに関しては、回数・年代・経路などをめぐって議論が続いています(関連記事)。現在のソマリア全域とエチオピアの一部となる「アフリカの角」は、考古学的にも遺伝学的にも、現生人類の出アフリカの起点の有力候補とされています(南方経路)。アフリカの角からアラビア半島... ...続きを見る

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2017/10/06 00:00
クロアチアのネアンデルタール人の年代
 これは10月5日分の記事として掲載しておきます。クロアチアのヴィンディヤ洞窟(Vindija Cave)遺跡のネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の年代に関する研究(Devièse et al., 2017)が公表されました。ヴィンディヤ洞窟はネアンデルタール人の遺跡として有名で、ネアンデルタール人のDNAが解析されています(関連記事)。ヴィンディヤ遺跡のネアンデルタール人に関しては、年代が28000年前頃と推定されたこともあり、24000年前頃のイベリア... ...続きを見る

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2017/10/05 00:00
左巻健男『暮らしのなかのニセ科学』
 これは10月1日分の記事として掲載しておきます。平凡社新書の一冊として平凡社より2017年6月に刊行されました。現代日本社会(もちろん、日本に限らないのでしょうが)において、ニセ科学と呼ばれるものは多くあり、中にはかなり浸透しているものもありますが、本書は「暮らしのなか」と題しているように、生活、とくに健康と強く直接的に関連したニセ科学を取り上げて検証しています。生活との直接的関わりがさほど強くないニセ科学としては、たとえば相対性理論への「懐疑」や進化学を否定する創造説やその亜流的な説などがあ... ...続きを見る

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2017/10/01 00:00
アフリカ南部の2300〜300年前頃の人類のゲノム解析
 これは9月30日分の記事として掲載しておきます。アフリカ南部の2300〜300年前頃の人類のゲノム解析に関する研究(Schlebusch et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究に関しては、アフリカ北部の30万年以上前の現生人類(Homo sapiens)的な化石についての研究を取り上げた記事でも少しだけ言及しました(関連記事)。この研究は、南アフリカ共和国のクワズール-ナタール(KwaZulu-Natal)州で発見された7人の人類のゲ... ...続きを見る

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2017/09/30 00:00
デニソワ人についてのまとめ
 これは9月28日分の記事として掲載しておきます。種区分未定のデニソワ人(Denisovan)については、以前このブログの関連記事をまとめたことがあります(関連記事)。その時は関連記事のリンクを貼っただけでしたが、デニソワ人に関するこのブログの記事がそれなりの本数になったので、一度自分なりにデニソワ人の情報を整理することにしました。デニソワ人は、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で発見された、現生人類(Homo sapiens)ともネアンデルタール人(Homo ... ...続きを見る

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2017/09/28 00:00
アフリカ人の古代DNA
 これは9月25日分の記事として掲載しておきます。アフリカ人の古代DNAに関する研究(Skoglund et al., 2017)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。アフリカは、その気候条件のため、ヨーロッパなどと比較して古代DNAの解析が難しく、この分野の研究の遅れている地域と言えるでしょう。この研究は、新たにアフリカの15人の古代DNAを解析し、以前に報告されているエチオピアで発見された4500年前頃の男性の古代DNA(関連記事)を併せて、59集団の584... ...続きを見る

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2017/09/25 00:00
現生人類とさほど変わらないネアンデルタール人の成長速度
 これは9月23日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の成長速度に関する研究(Rosas et al., 2017)が報道されました。AFPやナショナルジオグラフィックでも報道されています。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。ネアンデルタール人の成長速度に関しては、おもに歯を対象に分析が進められてきました。現生人類(Homo sapiens)との比較では、ネアンデルタール人と現生人類とで成長速度に違いはない、との見解も... ...続きを見る

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2017/09/23 00:00
アメリカ大陸への人類最初の移住に関する近年の研究のまとめ
 これは9月21日分の記事として掲載しておきます。アメリカ大陸への人類最初の移住に関しては、現代世界の政治・経済・文化(学術も含めて)の中心と言ってよいだろうアメリカ合衆国においても直接的問題であり、時には激しい政治的論争に発展するためか、アメリカ大陸のみならず他地域でも関心が寄せられているように思われます。このブログでは、2012年(関連記事)と2014年(関連記事)に、この問題に関する研究動向を簡単にまとめた記事を掲載しました。この記事では、その後にこのブログで取り上げた関連研究をざっとまと... ...続きを見る

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2017/09/21 00:00
『カラー図解 進化の教科書 第3巻 系統樹や生態から見た進化』
 これは9月17日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Carl Zimmer)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2017年8月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。第1巻(関連記事)と第2巻(関連記事)については、すでにこのブログで取り上げています。第3巻は系統樹・遺伝子・種間関係・生態の進化を重点的に解説しており、第9章「系統樹」・第10章「遺伝子の歴史」・第11章「遺伝... ...続きを見る

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2017/09/17 00:00
遺伝的に多様なパプアニューギニア人
 これは9月16日分の記事として掲載しておきます。ニューギニア島の住民の遺伝的多様性に関する研究(Bergström et al., 2017)が報道されました。ニューギニア島の住民は、言語でも遺伝子でも多様性が高いことで知られています。この研究は、パプアニューギニアの85の言語集団の385人からゲノム規模の一塩基多型データを得て、パプアニューギニア人の地理的な遺伝的構造を解明しました。その結果、ニューギニア島では高地集団と低地集団とが2万〜1万年前頃に分岐し、高地集団には非ニューギニ... ...続きを見る

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2017/09/16 00:00
ドイツ南西部のネアンデルタール人化石のmtDNAについての解説
 これは9月15日分の記事として掲載しておきます。ドイツ南西部のホーレンシュタイン-シュターデル(Hohlenstein–Stadel)洞窟(以下HST洞窟と省略)で発見されたネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)化石のミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析した研究については、2ヶ月前(2017年7月)にこのブログで取り上げました(関連記事)。取り上げるのが遅れてしまいましたが、その研究についての解説記事の内容に疑問が残るので、自分の知識をまとめるという意... ...続きを見る

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2017/09/15 00:00
メソアメリカ最古級の人骨
 これは9月12日分の記事として掲載しておきます。メソアメリカ最古級の人骨に関する研究(Stinnesbeck et al., 2017)が報道されました。この人骨については、7年前にこのブログで取り上げました(関連記事)。この研究が年代を測定したのは、メキシコ合衆国キンタナロー(Quintana Roo)州のトゥルム(Tulum)遺跡近くのチャンホル(Chan Hol)海中洞窟で発見された人骨です。人骨の年代は、骨盤の上の石筍を試料とするウラン-トリウム法では11311±370年前までさかのぼ... ...続きを見る

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2017/09/12 00:00
後期新石器時代〜初期青銅器時代の中央ヨーロッパにおける配偶形態
 これは9月8日分の記事として掲載しておきます。後期新石器時代〜初期青銅器時代の中央ヨーロッパにおける配偶形態についての研究(Knipper et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、ドイツの南バイエルンのレヒ川(Lech River)渓谷にある後期新石器時代〜初期青銅器時代にかけての7ヶ所の遺跡を調査しました。7ヶ所の遺跡の84点の人類遺骸は放射性炭素年代測定法により年代が推定され、さらには、ミトコンドリアDNA(mtDNA)・酸素安... ...続きを見る

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2017/09/08 00:00
マウスの妊娠と子宮年齢
 これは9月7日分の記事として掲載しておきます。マウスの妊娠と子宮年齢に関する研究(Woods et al., 2017)が公表されました。母体の年齢は繁殖の成功に対するリスク因子であると知られており、加齢に伴う卵子の異常は、胎仔の染色体異常を引き起こし、妊娠初期の流産につながることもあります。この研究はマウスを使い、流産や周産期死亡など妊娠中期以降の妊娠合併症の原因となり得るものを明らかにしました。 ...続きを見る

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2017/09/07 00:00
クレタ島の570万年前頃の人類の足跡?
 これは9月4日分の記事として掲載しておきます。クレタ島で発見された人類のものと思われる足跡についての研究(Gierliński et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、クレタ島西部のトラチロス(Trachilos)地域で発見された足跡を分析し、現代人・ホモ属やアウストラロピテクス属の化石人類・チンパンジーやゴリラなどの現生霊長類・クマなどの哺乳類の足跡と比較しています。その結果、この足跡は初期人類系統が残したものだ、という... ...続きを見る

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2017/09/04 00:00
ネアンデルタール人の接着技術
 これは9月2日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の接着技術に関する研究(Kozowyk et al., 2017)が報道されました。骨や石に柄をつけて武器や道具を作り出す着柄技術は、ネアンデルタール人と初期現生人類(Homo sapiens)の認知能力と技術力に関する論争の焦点になっています。着柄技術は30万〜20万年前頃より確認されており、50万年前頃までさかのぼる可能性もあります。 ...続きを見る

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2017/09/02 00:00
古人類学の記事のまとめ(32)2017年5月〜2017年8月
 2017年5月〜2017年8月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2017年5月〜2017年8月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2017/09/01 00:00
当初の想定より新しいネルハ洞窟の壁画の年代
 これは8月30日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、スペイン南部の海岸に近いネルハ洞窟(Nerja cave)で発見された壁画の年代に関する研究(Sanchidrián et al., 2017)が報道されました。ネルハ洞窟(これまでこのブログではネルジャ洞窟と表記してきましたが、この機会にネルハと訂正します)の壁画については、当初の推定年代が43500〜42300年前頃だったことから、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産の可... ...続きを見る

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2017/08/30 00:00
森恒二『創世のタイガ』第1巻(講談社)
 これは8月27日分の記事として掲載しておきます。本書は2017年8月に刊行されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について検索していたら、本作にネアンデルタール人も登場すると知ったので、購入してみました。本作は『イブニング』にて連載中ですが、とりあえず単行本で今後追いかけていこう、と考えています。『天智と天武〜新説・日本書紀〜』昨年(2016年)7月に完結(関連記事)してからは、新作漫画では『ヒストリエ』を単行本で読んだくらいだったのですが(関連記事)、本作... ...続きを見る

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2017/08/27 00:00
更新世末期のヨーロッパの現生人類の人口史
 これは8月25日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、更新世末期のヨーロッパの現生人類(Homo sapiens)の人口史に関する研究(Tallavaar et al., 2015)が公表されました。この研究は、古気候および民族誌のデータと、現在の気温・降水量などの気候パラメータおよび現在の種分布から現生種の分布面積を推定するモデル(climate envelope modeling approach)を用いて人口較正モデルを構築し、考古学的データと照合し... ...続きを見る

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2017/08/25 00:00
東ティモールの後期更新世の石器とリアンブア洞窟の更新世の石器の類似性
 これは8月22日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、東ティモールのジェリマライ(Jerimalai)遺跡の後期更新世の石器群に関する研究(Marwick et al., 2016)が公表されました。ジェリマライ遺跡では、1万個近い石器・骨製の尖頭器・貝製釣針・貝製ビーズなどが発見されています。ジェリマライ遺跡の年代は、放射性炭素年代測定法により、較正年代で42000年前頃〜完新世となる5000年前頃まで確認されています。 ...続きを見る

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2017/08/22 00:00
他人に与えると気分が良くなる脳内機構
 他人に与えると気分が良くなる脳内機構についての研究(Park et al., 2017)が公表されました。気前の良い行動は、さまざまな社会と文化で高く評価されていますが、この行動は本人の資源を他人の利益のために投資することが関係する傾向があるため、標準的な経済理論で説明することは難しいとされています。この点について、気前の良さに伴って増進される幸福感が気前の良さの動機だとする研究報告がすでに存在します。 ...続きを見る

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2017/08/19 00:00
リアンブア洞窟におけるラットの身体サイズの変化
 これは8月16日分の記事として掲載しておきます。2017年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)において、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡のラットの身体サイズの変化について(Veatch et al., 2017)報告されました。PDFファイルのP393に掲載されています。フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡では後期更新世の人骨群が発見されており、発見当初は、新種なのか、それとも病変の現生人類(Homo sapiens)なのか、という激論が... ...続きを見る

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2017/08/16 00:00
海岸沿いだったアメリカ大陸最初の人類の移住経路
 これは8月14日分の記事として掲載しておきます。アメリカ大陸への人類最初の移住経路に関する解説(Wade., 2017)が公表されました。この問題に関する近年の研究成果がまとめられており、有益な解説になっていると思います。アメリカ大陸への人類最初の移住について、20世紀後半には、クローヴィス(Clovis)文化の担い手が最初の移住者だとするクローヴィス最古説が主流でした。しかし20世紀末以降、アメリカ大陸におけるクローヴィス文化以前の人類の痕跡が相次いで報告されていることから、クローヴィス最古... ...続きを見る

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2017/08/14 00:00
スマトラ島における73000〜63000年前の現生人類の存在(追記有)
 これは8月12日分の記事として掲載しておきます。スマトラ島の現生人類(Homo sapiens)化石の年代に関する研究(Westaway et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類の出アフリカの年代・回数・経路についてはさまざまな見解が提示されており、現生人類は東南アジア島嶼部へ遅くとも7万〜6万年前頃までに進出していた、とする早期拡散説も提唱されていますが、後期拡散説も無視することはとてもできません(関連記事)。早期拡散説の弱点は、確実... ...続きを見る

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2017/08/12 00:00
ケニアで発見された中期中新世の類人猿化石(追記有)
 これは8月11日分の記事として掲載しておきます。ケニアで発見された中期中新世の類人猿化石に関する研究(Nengo et al., 2017)が報道されました。2017年8月10日付の読売新聞朝刊でも報道されています。2300万〜530万年前頃となる中新世には30属以上の40種以上の類人猿が存在していました。しかし、完全な頭蓋の証拠から得られた知見はきわめて少なく、顔および口蓋以外の頭蓋要素から知られている種はわずかで、人類および現生類人猿の直接的な近縁種の頭蓋の状態に関する情報は限られています... ...続きを見る

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2017/08/11 00:00
ネアンデルタール人の人口史
 これは8月10日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の人口史に関する研究(Rogers et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、これまでのホモ属の古代DNA解析を再検証することにより、ネアンデルタール人の人口史を推定してます。後期ホモ属の進化に関する現在の有力説では、まず現生人類(Homo sapiens)系統とネアンデルタール人および種区分未定のデニソワ人(Denisov... ...続きを見る

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2017/08/10 00:00
クリミア半島の初期現生人類の食性
 これは8月7日分の記事として掲載しておきます。東ヨーロッパでは最古級となる現生人類(Homo sapiens)の食性に関する研究(Drucker et al., 2017)が報道されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅要因には高い関心が寄せられてきており、さまざまな仮説が提示されています(関連記事)。そうしたさまざまな仮説においては、食性など行動面において現生人類がネアンデルタール人よりも柔軟だった、と強調される傾向にあります。 ...続きを見る

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2017/08/07 00:00
乳幼児の社会的視覚関与の遺伝性
 乳幼児の社会的視覚関与の遺伝性に関する研究(Constantino et al., 2017)が公表されました。赤ん坊が手を伸ばしたり、ハイハイしたり、歩行したりする前の段階において情報収集の手段として用いるのが社会的視覚関与という能力です。この研究は、社会的場面を見ることの個人差を評価するために一連の視標追跡実験を実施し、顔と顔に似た視覚刺激に対する注意力や個々の眼球運動のタイミング・方向性と目標設定を調べました。この実験の対象となったのは338人の乳幼児で、そのうち166人が一卵性双生児と... ...続きを見る

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2017/08/05 00:07
青銅器時代のミノア人とミケーネ人のDNA解析(追記有)
 これは8月4日分の記事として掲載しておきます。青銅器時代のミノア人とミケーネ人のDNA解析に関する研究(Lazaridis et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。これまでの古代DNA研究で、初期ヨーロッパ農耕民の主要な祖先は、紀元前7千年紀からギリシアと西部アナトリア半島に居住していた、複数のきわめて類似した新石器時代の集団とされています。それ以降、青銅器時代までのこれらの地域の歴史についてはさほど明確になっておらず、ギリシア本土とクレタ島の... ...続きを見る

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2017/08/04 00:00
音楽にたいする2種類の強烈な情動反応
 これは8月2日分の記事として掲載しておきます。音楽にたいする2種類の強烈な情動反応に関する研究(Mori, and Iwanaga., 2017)が公表されました。人間は時として、芸術作品に対して強烈な情動反応を経験します。これまでの研究から、音楽を聴いたときに喚起される「鳥肌感(chill;鳥肌が立ったり背筋がぞくぞくしたりする感覚)」という強烈な情動反応には、精神生理学的な覚醒や、ある種の報酬効果が関わっていることが明らかになっています。しかし、強烈な情動の多くの側面はまだ解明されていませ... ...続きを見る

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2017/08/02 00:00
ネアンデルタール人の遺伝的影響を受けている現代人の脳と頭蓋
 これは7月28日分の記事として掲載しておきます。現代人の脳と頭蓋におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の遺伝的影響に関する研究(Gregory et al., 2017)が報道されました。ネアンデルタール人の化石記録は4万年前頃までに消滅したとされていますが(関連記事)、ネアンデルタール人と現生人類(Homo sapiens)との交雑は、今では広く認められています。この研究は、健康なヨーロッパ系221人の磁気共鳴画像(MRI)検査のデータと、ネアンデルタール人... ...続きを見る

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2017/07/28 00:00
アフリカにおける現生人類と未知の人類との交雑
 これは7月24日分の記事として掲載しておきます。アフリカにおける現生人類(Homo sapiens)と未知の人類との交雑の可能性を指摘した研究(Xu et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、人間の唾液豊富に含まれるタンパク質の一つであるムチン7をコードしている、繰り返し配列のコピー数の違い(5しくは6)が見られるMUC7遺伝子の変異を調べました。MUC7遺伝子は、以前には喘息への抵抗性との関連が指摘されていましたが、この研究ではそれ... ...続きを見る

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2017/07/24 00:00
地上生活の始まりと体温調節
 これは7月22日分の記事として掲載しておきます。人類の地上生活の始まりの要因に関する研究(Takemoto., 2017)が報道されました。解説記事もあります。この研究は、チンパンジーとボノボの観察を通して、森林内気温変化とその季節変化が、地上で過ごす時間を増やす要因であるこ、と明らかにしました。チンパンジーとボノボは、気温の低い雨季にはほとんど樹上で生活しているのにたいして、暑い乾季には地上で過ごす時間が大きく増える、というわけです。とくに雨期と乾期がはっきりしているギニアのチンパンジーは、... ...続きを見る

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2017/07/22 00:00
さかのぼるオーストラリアへの人類の移住
 これは7月21日分の記事として掲載しておきます。オーストラリアへの人類最初の移住年代に関する研究(Clarkson et al., 2017)が報道されました。オーストラリア大陸(更新世の寒冷期には、ニューギニア島やタスマニア島とも陸続きとなり、サフルランドを形成していました)への人類最初の移住年代は、現生人類(Homo sapiens)の出アフリカの回数・時期・経路(関連記事)や、現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)・種区分未定のデニソワ人(Deniso... ...続きを見る

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2017/07/21 00:00
現代のイヌの地理的起源
 これは7月20日分の記事として掲載しておきます。現代のイヌの地理的起源に関する研究(Botigué et al., 2017)が公表されました。イヌの起源に関しては多くの見解が提示されており、最近の研究動向をほとんど追えていないのですが、昨年(2016年)、イヌはユーラシアの東西で農耕開始前に独立して家畜化され、後に東アジアから西ユーラシアへとイヌが人々に連れられて移動し、ヨーロッパでは東アジア系のイヌによる旧石器時代以来の在来イヌの大規模な置換が起きたのではないか、と推測する研究が... ...続きを見る

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2017/07/20 00:00
新たに確認されたデニソワ人
 これは7月19日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で1984年に発見された、右側下顎第二乳臼歯(Denisova 2)のDNA解析に関する研究(Slon et al., 2017B)が公表されました。デニソワ洞窟では、現生人類(Homo sapiens)ともネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とも違うホモ属である、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)が確認されていま... ...続きを見る

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2017/07/19 00:00
長谷川眞理子「ヒトの進化と現代社会」
 これは7月18日分の記事として掲載しておきます。『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。本論文は、ヒトが生物である以上、進化史を知らずに社会の制度設計を企図しても上手くいかないかもしれない、と指摘しています。人間は(教育も含む)社会によっていかようにも変わり得る、との観念は今でも根強いというか、とくに意識されることもなく(もちろん私も含めて)多くの人々を束縛しているようにも思われるので、本論文の指摘はたいへん重要だと思います。 ...続きを見る

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2017/07/18 00:00
序列を維持する心
 序列を維持する心に関する研究(Xie et al., 2017)が公表されました。これまでの研究では、経済ゲームにおいて人は不平等な支払いを拒否することが報告されており、平等を強く望む心は、文化の違いを越えた社会規範であると示唆されていました。しかし、そうした証拠にもかかわらず、所得の不均衡は依然として解消されておらず、他の要因の関与の可能性が疑われていました。この研究は、さまざまな文化を対象に一連の経済ゲームを実施し、序列が2人の人間への支払いを等しくしたいという人々の意欲にどれほど影響を及... ...続きを見る

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2017/07/15 00:00
高畑尚之「進化と人間 その普遍性と個別性」
 『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。本論文は、生物進化史のなかに人類の進化を位置づけています。当然のことと言えるかもしれませんが、私のような非専門家は、どうしても人間中心主義に陥りやすく、人間の進化を特別なものとして考えがちでしょうから、生物の一種としての人間を強調することは必要だと思います。本論文はこのような観点から、生命の歴史は成功物語というよりは絶滅史だと指摘しており、人類の繁栄と存続が必然とはとても言えないことがよく了解されます。 ...続きを見る

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2017/07/14 00:00
定説よりも早いヒトの免疫系の形成
 これは7月12日分の記事として掲載しておきます。胎児の免疫系の形成に関する研究(McGovern et al., 2017)が公表されました。発生中のヒト胎児は、微生物や食物粒子など、免疫系を活性化させる可能性のある多様な分子にさらされます。この研究は、妊娠中絶が臨床的に必要となった妊娠中期(妊娠14〜22週)の胎児96例の組織を採取して調べ、最も早くて妊娠中期の胎児に免疫学的に活性な細胞が存在していることを明らかにしました。この胎児の樹状細胞は、病原体を感知するとともにT細胞を刺激でき、免疫... ...続きを見る

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2017/07/12 00:00
ジェームズ=ロリンズ『イヴの迷宮』上・下
 これは7月9日分の記事として掲載しておきます。ジェームズ=ロリンズ(James Rollins)著、桑田健訳で、シグマフォースシリーズの一冊として竹書房より2017年7月に刊行されました。シグマフォースシリーズは本書で邦訳が11冊目となる小説で、外伝も邦訳が刊行されており、日本でも根強い人気があるようです。シグマフォースシリーズをこのブログで取り上げるのは初めてですが、外伝も含めてシリーズの邦訳は全巻読んできましたし、何よりも、本書は人類の知能の進化とネアンデルタール人(Homo neande... ...続きを見る

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2017/07/09 00:00
カナダにおける人口増加の要因
 カナダにおける人口増加の要因に関する研究(Pelletier et al., 2017)が公表されました。これまで、進化は時間のかかる過程だと考えられてきました。しかし最近では、進化には生物種の生態学的動態に測定可能な違いを生み出すだけの速さがあり、たとえば人口増加率を高めたり、地理的分布の拡大を加速したりする、という認識が浸透しつつあります。ただ、そうした「急速な進化」の人間集団にとっての重要性はさほど大きなものではない、と考えられていました。 ...続きを見る

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2017/07/07 00:00
ドイツ南西部のネアンデルタール人化石のmtDNA
 これは7月6日分の記事として掲載しておきます。ドイツ南西部の人類の大腿骨化石のミトコンドリアDNA(mtDNA)の解析に関する研究(Posth et al., 2017)が公表されました。この研究が解析したのは、ドイツ南西部のホーレンシュタイン-シュターデル(Hohlenstein–Stadel)洞窟(以下HST洞窟と省略)で発見された人類の大腿骨化石のmtDNAで、現生人類(Homo sapiens)とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定の... ...続きを見る

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2017/07/06 00:00
松本直子「人類史における戦争の位置づけ 考古学からの考察」
 『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。戦争は人間の本性なのか、それとも社会的な要因で発生した人類史上で比較的新しい(農耕開始・国家形成移行)現象なのか、という問題は広く関心を持たれているように思います。もちろん、研究者の間ではここまで単純化された議論が展開されているわけではないでしょうが、とりあえずこの記事では、「本性説」と「後天説」と分類しておきます。本論文は、明確に後天説を支持しています。 ...続きを見る

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2017/07/05 00:00
篠田謙一『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』
 これは7月2日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2017年6月に刊行されました。本書からは、一般向けであることを強く意識し、分かりやすい解説・構成にしようという意図が窺えます。じっさい、本書は目新しい情報を多く掲載しているわけではないものの、最新の研究成果に基づいて人類史を分かりやすく解説しており、なかなか読みやすく理解しやすいと思います。基礎的な解説もあるので、人類進化史に関心を持ち始めた人が読むのに適していると言えるでしょう。著者の専攻が反映され、DNA解析につ... ...続きを見る

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2017/07/02 00:00
松本晶子「ヒヒとヒト サバンナの隣人から見える社会性の起源」
 『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。本論文は、ヒトの社会性の進化に関して、長期間サバンナ環境に適応してきたという共通性から、ヒヒを参照モデルとしています。ヒヒは、ある程度(20kg)以上の体重の霊長類という点でも、ヒトとの比較対象として相応しい、と言えそうです。 ...続きを見る

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2017/06/30 00:00
アリの拡散と人間の行動
 これは6月28日分の記事として掲載しておきます。アリの拡散と人間の行動に関する研究(Bertelsmeier et al., 2017)が公表されました。人間の交易と移動は生物地理学的な垣根を下げ、生物の地理的分布に変化を引き起こします。その結果、外来種の拡散は世界の生物多様性および生態系サービスへの大きな脅威となり、新参種が定着するペースは上昇し続ける、と予測されています。生物の侵略に関する研究の多くは個々の種の侵略の全過程を通じた経過に注目していますが、外来種全般が類似の定着パターンに従う... ...続きを見る

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2017/06/28 00:00
ネコの起源
 これは6月22日分の記事として掲載しておきます。ネコの起源に関する研究(Ottoni et al., 2017)が公表されました。ネコは、イヌと比較すると飼養化された時期が遅く、おそらくは農業上有害な動物を捕食することによる互恵的な関係の中で、飼養化が開始される以前の数千年にわたって人間のそばに生息していた、と考えられています。この研究は、エジプトネコのミイラや現生のアフリカヤマネコの標本を含め、過去9000年にわたる200匹以上のネコのDNAを解析しました。 ...続きを見る

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2017/06/22 00:00
蔦谷匠「ヒトの授乳・離乳から見据える生物と文化の齟齬」
 これは6月21日分の記事として掲載しておきます。『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。本論文は、現代人の授乳と離乳に見られるミスマッチ(関連記事)について解説しています。大半は狩猟採集社会における進化を通じて獲得されてきたヒトの行動や性質が、近現代の急激な生活環境の変化にあって齟齬をきたす事例が多数見られ、授乳と離乳もその一例になる、というわけです。 ...続きを見る

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2017/06/21 00:00
中央ヨーロッパにおける中部旧石器時代〜上部旧石器時代移行期の行動変化
 これは6月16日分の記事として掲載しておきます。中央ヨーロッパにおける中部旧石器時代〜上部旧石器時代移行期の人間の行動変化に関する研究(Nejman et al., 2017)が報道されました。この研究が調査対象としたのは、チェコ共和国東部のモラヴィア(Moravia)地方のポドフラデム洞窟(Pod Hradem Cave)遺跡です。ポドフラデム洞窟遺跡では1956〜1958年に発掘調査が行なわれ、石器や骨製ビーズや2万個以上の動物の骨などが発見されており、セレティアン(Szeletian)や... ...続きを見る

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2017/06/16 00:00
ヒトノックアウトプロジェクトの第一歩
 ヒトノックアウトプロジェクトに関する研究(Saleheen et al., 2017)が公表されました。遺伝子の機能を解明するための研究はこれまで、モデル動物の重要な遺伝子をノックアウトし、その後の変化を調べるという方法で行なわれていましたが、この研究は逆の手法を採用しました。それは、パキスタン在住の10503人のゲノムの遺伝子コード領域を解読し、1317個の遺伝子の機能喪失を引き起こすと予想される49138ヶ所の変異をそれぞれ1人以上の被験者で同定し、これらの変異が血液試料で測定される201... ...続きを見る

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2017/06/15 00:00
イギリスのヨーロッパ大陸からの最初の分離
 イギリスのヨーロッパ大陸からの最初の分離に関する研究(Gupta et al., 2017)が公表されました。イギリスは、イギリス南東部からフランス北西部まで広がった白亜層の尾根を介して、かつてはヨーロッパ大陸とつながっていました。これまでの理論は、氷河湖からの溢出がドーバー海峡の開いた原因だと示唆していますが、この仮説を検証するには、推測される分裂地点の高分解能データが不足していました。この研究は、海峡が開いたことには少なくとも2つの主要な浸食事象が関わっていることを示す、新しい証拠を提示し... ...続きを見る

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2017/06/13 00:00
アフリカ北部の30万年以上前の現生人類的な化石(追記有)
 これは6月9日分の記事として掲載しておきます。モロッコのジェベルイルード(Jebel Irhoud)遺跡で新たに発見された人類化石に関する二つの研究が報道されました。日経新聞や朝日新聞やAFPや読売新聞でも報道されており、大きな注目を集めているようですが、確かに、大いに注目すべき研究だと思います。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。一方の研究(Hublin et al., 2017)は、ジェベルイルード遺跡における2004年以降の調査で新たに発見された、少なくとも5個体分とな... ...続きを見る

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2017/06/09 00:00
テロリストの道徳的判断
 これは6月8日分の記事として掲載しておきます。テロリストの道徳的判断に関する研究(Baez et al., 2017)が公表されました。テロは、一般社会から容認されない行為とみなされるのが普通ですが、テロリストは自らの行為を、「目的は手段を正当化する」という論理により正当化します。しかし、テロリストがこのトレードオフをどのようにとらえて道徳的判断を下しているのか、よく分かっていません。典型的な成人の道徳的判断は、人が行為の意図および結果についての情報を表現して統合する能力に基づいています。多く... ...続きを見る

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2017/06/08 00:00
攻撃者から被害者を守る第三者の介入を肯定する乳児
 これは6月7日分の記事として掲載しておきます。ヒトに見られる、有害な相互作用に対する第三者による保護的介入が始まる時期についての研究(Kanakogi et al., 2017)が公表されました。有害な相互作用に対する第三者による保護的介入は、一般には称賛される行為であり、道徳・正義・英雄的資質といった概念と結びつけられています。じっさい、そうした第三者の介入が絡む物語は、神話・書物・映画などの形で、有史以来の大衆文化のなかに数多く見られます。現代の発達科学では、ヒトはこうした介入を就学前から... ...続きを見る

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2017/06/07 00:00
鈴木紀之『すごい進化 「一見すると不合理」の謎を解く』
 これは6月4日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2017年5月に刊行されました。本書は、一見すると「不合理」な進化を適応主義的な観点から検証していきます。擬態が不完全だったり、「求愛エラー(繁殖能力のある子孫を残せない近縁種との生殖行動)」を起こしたりするのは、遺伝子など何らかの制約に起因する、といった制約を重視する説にたいして、本書はあくまでも、一見すると「不合理」な進化のなかに、適応主義的な理由があるのではないか、と追及していきます。 ...続きを見る

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2017/06/04 00:00
古代エジプト人のDNA解析
 これは6月2日分の記事として掲載しておきます。古代エジプト人のDNA解析結果を報告した研究(Schuenemann et al., 2017)が報道されました。この研究は、古代エジプト人のDNAを解析し、古代の西アジアやヨーロッパの住民およびエジプトも含む現代の各地域の住民のDNAと比較しています。この研究が解析したのは、カイロよりもナイル川上流に位置するアブシールエルメレク(Abusir-el Meleq)遺跡で発見されたミイラのDNAです。アブシールエルメレク遺跡では、少なくとも紀元前32... ...続きを見る

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2017/06/02 00:00
湧水と人類の進化
 これは6月1日分の記事として掲載しておきます。湧水と人類の進化に関する研究(Cuthbert et al., 2017)が報道されました。水は人類にとってきわめて重要な資源です。気候変動が人類の進化において重要な役割を果たした、との見解は一般的でしょうが、そのさいに注目されている生態系の変化を規定する根本的要因の一つが水(利用可能水量)です。しかし、これまで、湧水のような地下水の利用可能量については、あまり注目されてきませんでした。この研究は、アフリカ東部における湧水の分布を同定し、気候変動に... ...続きを見る

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2017/06/01 00:00
アファレンシスの脊椎骨
 これは5月28日分の記事として掲載しておきます。330万年前頃の人類の脊椎骨に関する研究(Ward et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。エチオピアのディキカ(Dikika)では330万年前頃の人類の幼児の部分的骨格が発見されており(関連記事)、アウストラロピテクス属のアファレンシス(Australopithecus afarensis)に分類されています。この幼児化石(DIK-1-1)は、エチオピアの公用語であるアムハラ語で「平和」を意味す... ...続きを見る

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2017/05/28 00:00
最古の人類系統かもしれないヨーロッパのヒト科化石
 これは5月27日分の記事として掲載しておきます。中新世のヨーロッパのヒト科化石と人類系統との類似性、および当時の環境についての研究が報道されました。AFPでも報道されています。一方の研究(Fuss et al., 2017)は、ギリシア(Pyrgos Vassilissis Amalia)とブルガリア(Azmaka)で発見された既知のグラエコピテクス属化石の歯根を改めて分析し、アウストラロピテクス属・アルディピテクス属など絶滅した人類系統や現代人と比較した結果、グラエコピテクス属はチンパンジー... ...続きを見る

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2017/05/27 00:00
白保竿根田原洞穴遺跡についての新たな発表
 これは5月22日分の記事として掲載しておきます。沖縄県石垣市の白保竿根田原洞穴遺跡についての新たな発表が報道されました。読売新聞でも報道されています。白保竿根田原洞穴遺跡では日本列島でも有数の古い人骨が複数発見されており、このブログでも何度か取り上げてきました。 http://sicambre.at.webry.info/201002/article_6.html http://sicambre.at.webry.info/201003/article_13.html http://si... ...続きを見る

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2017/05/22 00:00
現代人の形成に大きな役割を果たした移民
 これは5月20日分の記事として掲載しておきます。現代人の形成に移民が大きな役割を果たした、と指摘する概説(Gibbons., 2017)が公表されました。この概説は、現在、移民が大きな問題となっていることを強く意識した内容になっています。移民排斥の流れは現代世界の大きな動向として注目されており、それがイギリスの国民投票におけるEU離脱や、アメリカ合衆国でのトランプ政権の誕生など、「識者」や既存報道機関にとって意外な、大きな政治的出来事をもたらした、とよく論じられています。また、「識者」や既存報... ...続きを見る

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2017/05/20 00:00
環境変化とホモ属の出現
 これは5月17日分の記事として掲載しておきます。環境変化とホモ属の出現に関する研究(Robinson et al., 2017)が報道されました。アフリカ東部におけるアウストラロピテクス属からホモ属への移行は、鮮新世〜更新世にかけての、湿潤な森林の多い環境から乾燥した草原環境への移行と関連づけられてきました。しかし、鮮新世末期の環境に関するデータは不足しています。この研究は、アワシュ川下流域とトゥルカナ盆地において、350万〜100万年前頃の動物相の土壌炭酸塩安定同位体を分析し、環境変化と食性... ...続きを見る

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2017/05/17 00:00
Alex Mesoudi『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』
 これは5月14日分の記事として掲載しておきます。アレックス=メスーディ(Alex Mesoudi)著、野中香方子訳、竹澤正哲解説で、文藝春秋社より2016年2月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。本書は、文化の変遷を生物進化の概念・数理モデルで把握しようとする文化進化論の立場を解説しています。歴史学や文化人類学など文化を扱う社会科学分野は多数ありますが、その多くが定量的な手法を用いておらず、科学的厳密さに欠けている、と本書は指摘します(心理学や経済学の手法には科学的厳密さがあるものの... ...続きを見る

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2017/05/14 00:00
2017年度アメリカ自然人類学会総会(クロアチアの後期更新世〜完新世の遺跡について)
 これは5月13日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、今年(2017年)4月19日〜4月22日にかけて、アメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズ市で第86回アメリカ自然人類学会総会が開催されました。アメリカ自然人類学会総会では、最新の研究成果が多数報告されるだけに、古人類学に関心のある私は大いに注目しています。総会での各報告の要約はPDFファイルで公表されているのですが、まだいくつかの報告を読んだだけです。とりあえず今回は、とくに興味深いと思った報告(Jankovi&#... ...続きを見る

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2017/05/13 00:00
ナレディの新たな化石と年代(追記有)
 これは5月11日分の記事として掲載しておきます。新種のホモ属とされているナレディ(Homo naledi)に関する新たな論文3本が報道されました(報道1および報道2および報道3)。ナレディは南アフリカ共和国のライジングスター洞窟(Rising Star Cave)にあるディナレディ空洞(Dinaledi Chamber)で発見された年代不明の人骨群(関連記事)で、一般誌でも大きく取り上げられる(関連記事)など話題になりました。ナレディの足と手には現代人的(派生的)特徴と祖先的特徴との混在が指摘... ...続きを見る

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2017/05/11 00:00
アシューリアン石器製作の基礎となる脳機能
 これは5月10日分の記事として掲載しておきます。アシューリアン(Acheulian)石器製作の基礎となる脳機能に関する研究(Putt et al., 2017)が報道されました。伝統的な石器製作技術の区分(関連記事)では、小さな礫から2〜3片の剥片をはがす簡単な石器製作技術であるオルドワン(Oldowan)に代表される様式1(Mode 1)から、様式1より周到な計画と調整が必要とされる両面加工握斧(Handaxe)などを製作する様式2(Mode 2)への変化は、画期の一つとされています。現時点... ...続きを見る

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2017/05/10 00:00
Yuval Noah Harari『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』上・下
 これは5月7日分の記事として掲載しておきます。ユヴァル=ノア=ハラリ(Yuval Noah Harari)著、野中香方子訳で、河出書房新社から2016年9月に刊行されました。原書の刊行は2011年です。地上波でも取り上げられ、大型書店でも大きく扱われているなど、本書は評判の一冊になっているようです。私は刊行後間もない時期に購入したのですが、書評を少し読んだ限りでは、あまり新鮮さはなさそうだということで、読むのを先延ばしにしていました。しかし、このまま読まないのはもったいないと思い、読んでみた次... ...続きを見る

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2017/05/07 00:00
アフリカ南部の岩絵の年代
 これは5月5日分の記事として掲載しておきます。アフリカ南部の岩絵の年代に関する研究(Bonneau et al., 2017)が報道(Wild., 2017)されました。この研究で調査対象となったのは、アフリカ南部における初期狩猟採集民の直系子孫とされるサン人の所産と考えられている、南アフリカ共和国・ボツワナ共和国・レソト王国の後期石器時代のものと思われる岩絵です。岩絵は民族誌としても利用でき、農耕集団や牧畜集団との交流の様子が窺えると指摘されていますが、他の人工物が共伴していないので、正確な... ...続きを見る

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2017/05/05 00:00
究極の利他的行為の動機
 これは5月4日分の記事として掲載しておきます。究極の利他的行為の動機に関する研究(Vekaria et al., 2017)が公表されました。腎臓を見知らぬ人に提供する行為は、痛みを伴い、犠牲が大きく、標準的ではなくて極めてまれであり、利他主義の典型例とみなすことができます。ヒトの利他主義傾向を高める要因は何なのか、また、その寛大さは他者への純粋な共感から生まれるのか、それとも利己的な動機に由来するのか、といった疑問に対する答えはいまだ得られていません。 ...続きを見る

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2017/05/04 00:00
古人類学の記事のまとめ(31)2017年1月〜2017年4月
 これは5月1日分の記事として掲載しておきます。2017年1月〜2017年4月のこのブログの古人類学関連の記事を以下に整理しておきます。なお、過去のまとめについては、2017年1月〜2017年4月の古人類学関連の記事の後に一括して記載します。私以外の人には役立たないまとめでしょうが、このブログは不特定多数の読者がいるという前提のもとに執筆しているとはいえ、基本的には備忘録的なものですので、今後もこのような自分だけのための記事が増えていくと思います。 ...続きを見る

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2017/05/01 00:00
堆積物で確認された更新世人類のDNA
 これは4月29日分の記事として掲載しておきます。堆積物から更新世人類のDNAを解析した研究(Slon et al., 2017)が報道されました。『ネイチャー』のサイト には解説記事が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、ベルギー・クロアチア・フランス・ロシア・スペインというユーラシアの広範な地域の55万〜14000年前頃の9ヶ所の遺跡を対象とした堆積物の調査の結果、5ヶ所の遺跡において現生人類(Homo sapiens)ではない更新世人類のミトコンドリア... ...続きを見る

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2017/04/29 00:00
アメリカ大陸における13万年前頃の人類の痕跡?
 これは4月28日分の記事として掲載しておきます。アメリカ大陸における人類の痕跡が大きくさかのぼるかもしれないことを報告した研究(Holen et al., 2017)が報道されました。『ネイチャー』のサイト には解説記事が掲載されています。この研究が取り上げたのは、アメリカ合衆国カリフォルニア州南部のサンディエゴ市近郊のセルティマストドン(Cerutti Mastodon)遺跡です。セルティマストドン遺跡では、単一のマストドン(Mammut americanum)の断片的な遺骸が発見されていま... ...続きを見る

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2017/04/28 00:00
デニソワ洞窟で確認された新たなネアンデルタール人の骨
 これは4月26日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、南西シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で確認された新たなネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の骨に関する研究(Brown et al., 2016)が報道されました。デニソワ洞窟では、出土人骨のDNA解析から、ネアンデルタール人や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)の存在が確認されており、高い網羅率の更新世人類のゲノム配列も得られていま... ...続きを見る

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2017/04/26 00:00
フロレシエンシスの祖先はエレクトスではない
 これは4月24日分の記事として掲載しておきます。インドネシア領フローレス島で発見された5万年以上前の更新世人類の起源に関する研究(Argue et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この人類の分類については発見当初、ホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)なのか、それとも病変の現生人類(Homo sapiens)なのか、激論が展開されました。今でも病変現生人類説は一部で根強く主張されていますが、この研究でも病変現生人類... ...続きを見る

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2017/04/24 00:00
長谷川眞理子、 山岸俊男『きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」』
 これは4月23日分の記事として掲載しておきます。集英社インターナショナルより2016年12月に刊行されました。本書は著者二人の対談で、一般読者層にもたいへん読みやすくなっていると思います。あとがきにあるように、編集者の力量が優れている、ということなのでしょう。さすがに第一人者同士の対談だけあって、じゅうぶん読みごたえがありましたし、教えられるところが多々ありました。 ...続きを見る

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2017/04/23 00:00
現生人類の起源と拡散
 これは4月20日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、現生人類(Homo sapiens)の起源と拡散についての研究(Nielsen et al., 2017)が公表されました。本論文は、現代と古代の人類のゲノム解析から、現生人類の起源と拡散を概観しています。現時点でこの問題を把握するうえで、本論文はたいへん有益だと思います。この問題に関心のある人にはお勧めの論文です。 ...続きを見る

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2017/04/20 00:00
亀田達也『モラルの起源 実験社会科学からの問い』
 これは4月16日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2017年3月に刊行されました。本書は、人間社会のモラルの基盤を、さまざまな分野の研究成果から検証しています。本書はこれを「実験社会科学」と呼んでいます。実験社会科学とは、経済学・心理学・政治学・生物学など複数の分野の研究者たちが集まり、「実験」という共通の手法を用いて、人間の行動や社会における振る舞いを検討しようとする、新たな学問領域です。 ...続きを見る

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2017/04/16 00:00
更新世において間氷期をもたらす要因
 これは4月14日分の記事として掲載しておきます。更新世において間氷期をもたらす要因についての研究(Tzedakis et al., 2017)が公表されました。全般的に気候が寒冷だった更新世の温暖な期間である間氷期の存在は、さまざまな証拠からよく知られています。日射量の変化のタイミングは、地球と太陽の幾何学的配置の小さな変動によって調節されていますが、間氷期のタイミングや、間氷期の契機となるのに必要な軌道配置の明らかな変化について、明確な説明はまだ困難です。この研究は、夏季の日射量の閾値に基づ... ...続きを見る

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2017/04/14 00:00
アフリカヌスの踵骨の分析
 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アウストラロピテクス属化石の踵骨に関する研究(Zeininger et al., 2017)が報道されました。この研究が分析対象としたのは、南アフリカ共和国のスタークフォンテン(Sterkfontein)洞窟で発見されたアウストラロピテクス属化石である踵骨「StW 352」です。StW 352はアフリカヌス(Australopithecus africanus)に分類されています。StW 352は、現代人・チンパンジー・ゴリラ・ヒヒと比較されました。 ...続きを見る

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2017/04/11 00:00
Jonathan Marks『元サルの物語 科学は人類の進化をいかに考えてきたのか』
 これは4月9日分の記事として掲載しておきます。ジョナサン=マークス(Jonathan Marks)著、長野敬・長野郁訳で、2016年11月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2015年です。本書は一般向けながら、たいへん深い内容になっていると思います。だからといって、難解とか、晦渋さを誇示しているとかいうわけではなく、文章自体は比較的平易だと思います(正確には、翻訳文がそうだと言うべきなのでしょうが、おそらく原文も同様なのでしょう)。 ...続きを見る

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2017/04/09 00:00
更新世の食人行為の評価(追記有)
 これは4月8日分の記事として掲載しておきます。更新世の食人行為の評価に関する研究(Cole., 2017)が報道されました。食人行為は、その背徳性もあって、一般層の関心もなかなか高く、学界でも食人行為にはずっと一定以上の関心が寄せられているように思います。食人行為の目的に関しては、議論が続けられてきました。大まかには、儀式・(飢餓などによる)栄養摂取・攻撃性の発露(復讐)・薬用などに分類されます。 ...続きを見る

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2017/04/08 00:00
ヒトの身長に関連する遺伝子群
 これは4月7日分の記事として掲載しておきます。ヒトの身長に関連する遺伝子群についての研究(Marouli et al., 2017)が公表されました。ヒトの身長には複数の遺伝子が関与しており、複雑な形質の遺伝的解析のモデルとされてきました。ゲノム規模の関連研究によって、これまでに約700のありふれた多様体が身長と関連づけられていますが、低頻度の多様体や希少な多様体が果たす役割については、系統的な評価が行なわれていませんでした。この研究は、71万1418人のゲノムのコード領域を解析し、身長に関連... ...続きを見る

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2017/04/07 00:00
マリタ遺跡の少年のDNA解析について
 これは4月5日分の記事として掲載しておきます。南中央シベリアのマリタ(Mal’ta)遺跡の少年(MA-1)のDNA解析結果について、以前このブログで取り上げました(関連記事)。その後、私も最近投稿したある掲示板で、その記事について、「アンタが出したあのブログが君のかどうかすら、さっぱりわからん!」とか、「私が日本語訳を引用したものをコピペして検索し、あのブログにたどりつき、アンタが勝手に自分のブログにしたのかもしれん」と言い出す人がいたので、その掲示板で「sicambre」として投稿しているの... ...続きを見る

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2017/04/05 00:00
クリミアのネアンデルタール人の象徴的行動の証拠
 これは4月1日分の記事として掲載しておきます。クリミアのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の象徴的行動に関する研究(Majkić et al., 2017)が報道されました。この研究が分析対象としたのは、クリミアのザスカルナヤ6(Zaskalnaya VI)岩陰遺跡の中部旧石器時代の層で発見された、ワタリガラス(Corvus corax)の橈骨の断片です。ザスカルナヤ6遺跡は1969年に発見され、1969〜1975年・1977〜1978年・1981〜19... ...続きを見る

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2017/04/01 00:00
霊長類の脳サイズと食性の関係
 これは3月29日分の記事として掲載しておきます。霊長類の脳サイズと食性の関係についての研究(DeCasien et al., 2017)が公表されました。霊長類の脳サイズの進化に関するこれまでの研究では、種の典型的な集団の平均的な構成個体数と体の大きさに対する脳サイズとの間に相関が見出されています。しかし、種が一夫一妻制かどうかなど、社会的複雑性に関する別の尺度を考えると、結果には一貫性がなく、環境中の他の潜在的推進要因が探られていません。この研究は、非ヒト霊長類の脳サイズに関して、これまでに... ...続きを見る

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2017/03/29 00:00
『最古の文字なのか? 氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く』
 これは3月26日分の記事として掲載しておきます。ジェネビーブ=ボン=ペッツィンガー(Genevieve von Petzinger)著、櫻井祐子訳で、文藝春秋社より2016年11月に刊行されました。原書の刊行は2016年です。著者の見解は地上波の番組でも取り上げられたことがあり、すでにある程度知られているのではないか、と思います。このブログでも、著者の見解を取り上げたことがあります(関連記事)。 ...続きを見る

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2017/03/26 00:00
高地に順応する方法を「記憶」している血液細胞
 これは3月23日分の記事として掲載しておきます。赤血球が高地へ順応する仕組みについての研究(Song et al., 2017)が公表されました。ヒトの体は、低酸素状態を生き延びるために適応応答を起こして、体内組織への酸素供給を促進します。そうした適応応答の一つがアデノシンという化学物質の放出で、これにより血管漏出が防止され、炎症が軽減されて、血管が拡張して組織の損傷が減ります。これまでの研究では、高地に繰り返して行くことで低酸素環境への適応が加速されることが明らかになっていましたが、このよう... ...続きを見る

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2017/03/23 00:00
『カラー図解 進化の教科書 第2巻 進化の理論』
 これは3月19日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Carl Zimmer)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2017年1月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。第1巻については、すでにこのブログで取り上げています(関連記事)。第2巻はとくに淘汰を重点的に解説しており、第5章「進化のメカニズム─遺伝的浮動と自然淘汰」・第6章「量的遺伝学と表現型の進化」・第7章「自然淘汰」... ...続きを見る

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2017/03/19 00:00
40万年前頃のポルトガルの人類頭蓋
 これは3月16日分の記事として掲載しておきます。40万年前頃のポルトガルの人類頭蓋に関する研究(Daura et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究が分析したのは、ポルトガルのアロエイラ洞窟(Gruta da Aroeira)で発見された中期更新世のホモ属頭蓋(アロエイラ3)です。アロエイラ洞窟の中期更新世の層では、人類化石とともに、豊富な(人類ではない)動物化石や、石器群が発見されています。この石器群はアシューリアン(Acheulia... ...続きを見る

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2017/03/16 00:00
新生児は成人と同様に視覚処理ができる
 これは3月14日分の記事として掲載しておきます。新生児の視覚処理に関する研究(Deen et al., 2017)が公表されました。成人の大脳皮質の視覚野は、顔・物体・風景など目に見えるもの全てをそれぞれ処理する領域に分かれています。ただ、こうした領域が周辺環境にさらされたために形成されたのか、それとも若い頃から存在していたのかは、まだ明らかになっていません。この研究は、9人の乳児(生後4〜6か月)を機能的磁気共鳴画像装置の中に寝かせたままで、さまざまな画像を見せて画像データを取得しました。こ... ...続きを見る

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2017/03/14 00:00
急速に拡散した最初期のオーストラリア人(追記有)
 これは3月11日分の記事として掲載しておきます。オーストラリア先住民のミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析した研究(Tobler et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、1928年から1970年代にかけてオーストラリア先住民から集められた111点の髪からmtDNAを解析しました。注目されるのは、オーストラリア先住民社会から合意・協力を得て研究が進められ、オーストラリアにおける先住民政策にも活かされていることです。今では、こうした... ...続きを見る

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2017/03/11 00:00
歯石から推測されるネアンデルタール人の行動・食性・病気(追記有)
 これは3月10日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の歯石のDNAを分析した研究(Weyrich et al., 2017)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Callaway., 2017)が掲載されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヒトの歯石には、体内の多数の微生物や食事などで歯に付着した生物のDNAが多数保存されています。この研究は、DNA解析技術の発展により、化石人類の歯石のDNA解析に... ...続きを見る

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2017/03/10 00:00
肥満と糖尿病の関係
 肥満と糖尿病の関係についての研究(Wahl et al., 2017)が公表されました。肥満は2型糖尿病や関連する代謝疾患の主要なリスク因子です。遺伝子関連研究により肥満に関連するゲノムの座位が明らかにされており、最近の研究でもDNAメチル化との関連が示唆されています。この研究では、ボディーマス指数(BMI)に関してエピゲノム全体にわたる検証が行なわれ、血液および脂肪組織では187の座位でDNAメチル化との関連が明らかになりました。また、これらのメチル化の変化は肥満の結果として生じ、従来のリス... ...続きを見る

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2017/03/08 00:16
『カラー図解 進化の教科書 第1巻 進化の歴史』
 これは3月5日分の記事として掲載しておきます。カール=ジンマー(Carl Zimmer)、ダグラス=エムレン(Douglas J. Emlen)著、更科功・石川牧子・国友良樹訳で、講談社ブルーバックスの一冊として、2016年11月に講談社より刊行されました。原書の刊行は2013年です。本書は、進化の具体的な過程とともに、進化の基本的な仕組みについての解説にもなっており、進化の入門書としてたいへん優れていると思います。豊富な具体的な事例が本書の特徴で、一般層にも面白く読める構成にしよう、との意図... ...続きを見る

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2017/03/05 00:00
12万〜10万年前頃の「許昌人」の頭蓋
 これは3月4日分の記事として掲載しておきます。中国で発見された上部更新世前期のホモ属頭蓋に関する研究(Li et al., 2017)が報道されました。この研究が分析したのは、中華人民共和国河南省許昌市(Xuchang)霊井(Lingjing)遺跡で発見された、125000〜105000年前頃の頭蓋です。この頭蓋に関しては、9年前(2008年)にこのブログで取り上げ(関連記事)、その後に補足となる追加記事を掲載したことがあります。 ...続きを見る

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2017/03/04 00:00
ヨーロッパの初期人類の食性
 これは3月2日分の記事として掲載しておきます。ヨーロッパの初期人類の食性に関する研究(Pérez-Pérez et al., 2017)が報道されました。この研究が分析対象としたのは、スペイン北部のアタプエルカで発見されたホモ属の人骨群(120万〜80万年前頃)です。アタプエルカでは、「象の穴(Sima del Elefante)」遺跡で120万年前頃のホモ属化石(種区分未定)が、グランドリナ(Gran Dolina)遺跡で96万〜80万年前頃のホモ属化石が発見されています... ...続きを見る

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2017/03/02 00:00
現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人由来の遺伝子の影響
 これは2月28日分の記事として掲載しておきます。現代人の遺伝子発現におけるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来の遺伝子の影響に関する研究(McCoy et al., 2017)が報道されました。ネアンデルタール人と出アフリカ現生人類(Homo sapiens)集団とが交雑し、非アフリカ系現代人のゲノムにわずかながらネアンデルタール人由来の領域が存在することは、今では広く認められている、と言ってよいでしょう。そうした領域のなかには、たとえば脂質代謝に関わる遺伝子(... ...続きを見る

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2017/02/28 00:00
加齢によるリスク選好の変化は脳構造の変化に起因する
 これは2月25日分の記事として掲載しておきます。加齢によるリスク選好の変化に関する研究(Grubb et al., 2016)が公表されました。ヒトがリスク(予測できない結果)を伴う意思決定を行うさいには、右後部頭頂皮質という脳領域が活動しています。これまでの研究では、この領域の灰白質の量が若年成人のリスク選好と相関していることが明らかになっています。ヒトでは、昔から知っていて見慣れたものを選ぶ傾向は、年齢を重ねるにつれて顕著になります。ヒトは年をとるとリスクのある決定をあまりしなくなるわけで... ...続きを見る

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2017/02/25 00:00
9世紀〜12世紀にかけての北アメリカ大陸における母系継承の支配層(追記有)
 これは2月24日分の記事として掲載しておきます。9世紀〜12世紀の北アメリカ大陸の支配層と思われる人骨群のDNA解析に関する研究(Kennett et al., 2017)が報道されました。この研究が分析対象としたのは、アメリカ合衆国ニューメキシコ州にある有名なプエブロボニート(Pueblo Bonito)遺跡の人骨群です。放射性炭素年代測定法により、プエブロボニート遺跡の年代は800〜1130年頃と推定されています。アメリカ合衆国南西部のチャコ渓谷(Chaco Canyon)には、2階以上の... ...続きを見る

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2017/02/24 00:00
「男脳」「女脳」のウソはなぜ、どのように拡散するのか
 これは2月20日分の記事として掲載しておきます。表題の記事がナショナルジオグラフィックに掲載されました。正直なところ、表題を読んだ時には、男女には本質的な違いはないとか、性別を重視すること自体が社会的に構築されたものだとか、性別自体が生物学的に否定されているとかいった言説が展開されるのではないか、とかなり警戒したのですが、以前からの私の見解にひじょうに近いところがあり、かなり同意できる内容でした。もっとも、表題の記事で男女差の事例とされた課題実験も、社会的に構築された性差の構造に起因するものに... ...続きを見る

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2017/02/20 00:00
ハインリッヒイベントの要因
 ハインリッヒイベントの要因に関する研究(Bassis et al., 2017)が公表されました。ハインリッヒイベントは、ローレンタイド氷床などの氷床から北大西洋へ多数の氷山が流出する大規模な事象です。しかし、数十年にわたる研究で多数の見解が提示されているにも関わらず、ハインリッヒイベントを起こす機構に関してはまだ激しい議論が続いています。この研究は、新しいモデルによる証拠を提示し、ハインリッヒイベントが驚くほど単純な機構によって起こることを示しています。それは、暖かい海水の流入が氷床の分離面... ...続きを見る

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2017/02/18 00:00
不正を続けると不正への脳の感受性が低下する
 不正直な行動と脳の感受性に関する研究(Garrett et al., 2016)が公表されました。この研究は、18〜65歳の80人に参加してもらい、第1被験者に1ペンス銅貨入りのガラス瓶の画像を見せて銅貨の数を見積もらせ、その数を第2被験者に伝えさせる、という実験を行ないました。この研究は、(1)第2被験者が不利益を受けて第1被験者が利益を得る、(2)第1被験者も第2被験者も利益を得る、(3)第1被験者が不利益を受けて第2被験者が利益を得る、(4)第1被験者だけが利益を得て、第2被験者は影響を... ...続きを見る

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2017/02/16 00:00
アイリッシュ・トラヴェラー集団の起源
 アイルランドの移動型民族集団であるアイリッシュ・トラヴェラー集団の起源に関する研究(Gilbert et al., 2017)が公表されました。アイルランド国内のトラヴェラー集団の人口は29000〜40000人と推定されており、アイルランドの総人口の約0.6%に相当します。アイリッシュ・トラヴェラー集団の起源に関しては、1845〜1852年にかけてのアイルランドの大飢饉の時期に起源がある、との説も提示されていますが、文書証拠がないために論争が続いています。 ...続きを見る

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2017/02/14 00:00
現代アメリカ合衆国の人口構造
 これは2月11日分の記事として掲載しておきます。現代アメリカ合衆国の人口構造に関する研究(Han et al., 2017)が公表されました。植民地時代以前の北アメリカ大陸の人々については、かなり詳細な研究が行われていますが、それ以降の時代の人口構造の評価は難航しています。この研究は、アメリカ合衆国生まれの約77万人のDNA解析を行ない、ユーザーが作成した家系データも利用して、それらの人々の血縁ネットワークを再構築しました。 ...続きを見る

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2017/02/11 00:00
女性性器切除の文化的進化
 これは2月10日分の記事として掲載しておきます。アフリカの特定の民族集団における女性性器切除(FGC)の文化的進化に関する研究(Howard, and Gibson., 2017)が公表されました。女性性器切除の風習は、とくにアフリカおよび中東各地の多くの民族集団において確認されており、場合によっては、非医学的な理由から女性の性器に各種の有害な改変を加え、産科的・性的・心理的に重大な影響を生じることがあります。したがって、その撲滅は国際社会の優先課題とされています。しかし、この風習に対する組織... ...続きを見る

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2017/02/10 00:00
脳が相互に関連し合った対象を意識的に結びつける機構
 これは2月9日分の記事として掲載しておきます。脳が相互に関連し合った対象を意識的に結びつける機構についての研究(Falco et al., 2016)が公表されました。この研究は、2つの対象物や2人の関連性の強さについて、1対の画像にたいするヒトの神経活動を測定することで、この関連性の程度を予測できることを明らかにしました。この研究は、癲癇治療のため電極を埋め込まれた49人の被験者のニューロンの発火パターンを測定する実験を行ないました。この実験では、被験者に一定数の画像が見せられ、個々のニュー... ...続きを見る

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2017/02/09 00:00
社会規範の違反の程度と応答
 これは2月8日分の記事として掲載しておきます。社会規範の違反の程度と応答に関する研究(Balafoutas et al., 2016)が公表されました。この研究は、ドイツの駅で軽微な違反行為(コーヒー用の紙コップのポイ捨て)と重大な違反行為(コーヒー用の紙コップと何かが入っている紙袋のポイ捨て)を演出し、800回以上の試行によって旅行者の反応を記録しました。これらの試行で、違反の大小はポイ捨てをした者が叱責される可能性や叱責の程度に影響を及ぼしませんでした。 ...続きを見る

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2017/02/08 00:00

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