テーマ:古人類学

ホモ属の出現過程

 現在では、ホモ属が280万年前頃に出現した、との見解が次第に浸透しつつあるように思います。その根拠は、エチオピアのアファール州のレディゲラル(Ledi-Geraru)調査区域で発見された、5個の歯の残っている左側の下顎(LD 350-1)です(関連記事)。この下顎化石には、華奢な大臼歯・対称的な小臼歯・均等な顎のように、ホモ属に見られ…
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全現生種は同じ時間を進化してきた

 最近、皇位男系継承の根拠としてY染色体を提示する竹内久美子氏の見解を取り上げましたが(関連記事)、その補足です。その記事で、「未開社会」も「文明社会」と同じ時間を過ごしてきたのであり、過去の社会構造を維持しているとは限らない、という視点を忘れるべきではない、と述べました。これは、生物種の進化についても同様だと思います。人間が最も進化し…
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アナメンシスとアファレンシスの年代の統計的推定

 アウストラロピテクス・アナメンシス(Australopithecus anamensis)とアウストラロピテクス・アファレンシス(Australopithecus afarensis)の起源および絶滅年代の統計的推定に関する研究(Du et al., 2020)が公表されました。人類起源の研究において、分類群がいつ出現して絶滅したかに…
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サハラ砂漠以南のアフリカにおける現生人類と未知の人類との交雑

 サハラ砂漠以南のアフリカにおける現生人類(Homo sapiens)と未知の人類との交雑に関する研究(Wall et al., 2019)が公表されました。現生人類はアフリカの1ヶ所もしくは複数の場所で10万年以上前に進化した、と考えられています。その後、現生人類はアフリカからユーラシア、さらにはオーストラリア大陸・アメリカ大陸・ポリ…
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皇位男系継承を「日本の存亡に関わる問題」とする竹内久美子氏の認識はある意味で正しい

 「皇統の男系男子継承の深い意味」と題する竹内久美子氏の記事が公開され、それなりに話題になっているというか、嘲笑されているようです。とくに嘲笑の対象になっているのは、皇位継承を「日本の存亡に関わる問題」としているところのようですが、竹内氏の認識はある意味で正しいと思います。似たような認識として、「女系(他系)継承を認めたら、日本は、終わ…
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アジア人のゲノム

 アジア人のゲノムに関する研究(GenomeAsia100K Consortium., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ヒトの遺伝学的研究ではこれまでのところ、非ヨーロッパ人のデータ不足によってゲノムデータセットにおける個体間多様性が制限されており、そのために全球的なヒト集団の大部分におけるその医学的意義も限定的…
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『性の進化論 女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?』第4刷

 クリストファー・ライアン(Christopher Ryan)、カシルダ・ジェタ(Cacilda Jetha)著、山本規雄訳で、2017年9月に作品社より刊行されました。第1刷の刊行は2014年7月です。原書の刊行は2010年です。今年(2019年)1月に掲載したさいには、当時の字数制限2万文字を超えたので前編と後編に分割したのですが、…
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母系制で平和的なボノボ社会

 検索していたら、表題の発言を見つけました。リンク箇所を除いて全文を引用すると、 母系制で平和的なボノボ社会と、男性優位で争いの絶えないチンパンジー社会。生まれ変わるならどっちがいい? となります。さらに検索してみると、ボノボ(Pan paniscus)が母系社会だという認識はそれなりに浸透しているようです。たとえば、 ボ…
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アジア東部集団の形成過程

 アジア東部も含めてユーラシア東部集団の形成過程の解明は、ユーラシア西部集団と比較して大きく遅れています。これは、ユーラシアにおいては東部よりも西部、とくにヨーロッパの古代DNA研究がはるかに進展しているためです。これは、近代以降にヨーロッパおよびその派生的文化圏である北アメリカから構成される西洋が覇権を掌握していたことに起因します。近…
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梅津和夫『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』

 講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2019年9月に刊行されました。本書はDNA鑑定の原理をその問題点・限界点とともに分かりやすく解説しており、DNA鑑定の具体例も示されていますから、入門書としてなかなか工夫されており、楽しめると思います。また、環境DNAなど最新の研究動向も抑えられており、この点もよいと思います。著者はDNA…
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スコットランド人の遺伝的構造

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、スコットランド人の遺伝的構造に関する研究(Gilbert et al., 2019)が報道されました。ブリテン島とアイルランド島およびその周辺の島々では、移住と侵略により現代人集団が形成されてきました。ブリテン島に人類が移住してきたのは更新世で、完新世になると、紀元前4000~紀元前3000年頃に農…
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山本秀樹「現生人類単一起源説と言語の系統について」

 言語系統やその起源については明らかに勉強不足なので、比較的近年の知見を得るために本論文を読みました。本論文はPDFファイルで読めます。本論文は、現生人類(Homo sapiens)アフリカ単一起源説を大前提として、言語系統について考察しています。言語学において現生人類アフリカ単一起源説の影響はまださほどないものの、その意味は小さくなく…
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松本克己「日本語の系統とその遺伝子的背景」

 日本語の系統やその起源については以前当ブログで取り上げましたが(関連記事)、明らかに勉強不足なので、比較的近年の知見を得るために本論文を読みました。本論文はPDFファイルで読めます。日本語は系統的孤立言語の一つとされていますが、ユーラシア大陸圏における10近い系統的孤立言語の半数近くが日本列島とその周辺に集中している、と本論文は指摘し…
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人間の歌の普遍的パターン

 人間の歌の普遍的パターンに関する研究(Mehr et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。音楽は人類共通の言語だと昔から言われてきましたが、音楽に意味のある普遍性が存在するかどうかは不明で、多くの音楽学者はこの見解にはたいへん懐疑的です。本論文は、人間の歌(ボーカル・ミュージック)の普遍性と多様性を明らか…
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森恒二『創世のタイガ』第6巻(講談社)

 本書は2019年11月に刊行されました。第6巻は、タイガたちがマンモス狩りに出かけて苦戦している場面から始まります。苦戦するタイガたちに、アラタがリクの作った槍を届け、タイガは崖からマンモスに飛び掛かり、残りの男たちがマンモスの腹を槍で突き、何とかマンモス1頭を仕留め、タイガは戦士としての名声をますます高めます。マンモスを倒した後の宴…
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ヨーロッパの中期中新世類人猿の二足歩行

 ヨーロッパの中期中新世類人猿の二足歩行に関する研究(Böhme et al., 2019)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Kivell., 2019)が掲載されています。常習的な二足歩行は、人類系統を定義する最重要とも言える特徴です。この常習的な二足歩行の進化については、その要因・過程・時期をめぐって長く議論が続…
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家畜ウマの父系起源

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、家畜ウマの父系起源に関する研究(Wallner et al., 2017)が公表されました。Y染色体の雄特有領域(MSY)は、父親から息子へと組み換えなしに継承されるので、雄の移住および人口史を反映しています。母系継承となるミトコンドリアDNA(mtDNA)と組み合わせると、単一種の雌雄の人…
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現代人アフリカ南部起源説

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)L0系統の詳細な分析を報告した研究(Chan et al., 2019)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも報道されています。現生人類(Homo sapiens)の起源がアフリカにあることは広く認められています(現生人類アフリカ…
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社会的な父親と生物学的な父親の不一致率と人口密度および階級との相関

 社会的な父親と生物学的な父親の不一致率と人口密度および階級との相関についての研究(Larmuseau et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。行動生態学では、長期のペア結合を有する種のペア外交尾(extra-pair copulation、EPC)の発生と適応的意義が激しく議論されてき…
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考古資料から人類集団の遺伝的継続・変容の程度を判断することは難しい

 文化の変容・継続とその担い手である人類集団の遺伝的構成との関係については、1年近く前(2018年11月25日)にも述べました(関連記事)。その時からこの問題に関していくつか新たな知見を得ることができましたが、私の見解はほとんど変わっておらず、両者の関係は実に多様なので、考古学的研究成果から担い手の人類集団の変容と継続の程度を一概には判…
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更科功『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか』

 NHK出版新書の一冊として、NHK出版から2019年10月に刊行されました。本書は、第1部が「ヒトは進化の頂点ではない」とあるように、進化に関する一般的な誤解を強く意識した構成になっています。進化に完成型が存在するとか、ヒトが最も進化していて高性能であるとかいった観念は、今でも根強くあるかもしれません。進化否定論でよく言われているよう…
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大西秀之「アイヌ民族・文化形成における異系統集団の混淆―二重波モデルを理解するための民族史事例の検討」

 本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究B01「人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の文化人類学的モデル構築」の2018年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 21)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDF…
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中世カトリック教会による西洋工業化社会への心理的影響

 中世カトリック教会による西洋工業化社会への心理的影響に関する研究(Schulz et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。世界の人々の間には、心理的な信念や行動に大きなばらつきがあります。特に、西洋の工業国における個人主義は独特です。これまでの研究により、最近では「Western, Educated, I…
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長期にわたるローマ住民の遺伝的構成の変遷

 長期にわたるローマ住民の遺伝的構成の変遷に関する研究(Antonio et al., 2019)が報道されました。日本語の解説記事もあります。紀元前8世紀、ローマはイタリア半島の多くの都市国家の一つでした。1000年も経たないうちに、ローマは地中海全域を中心とする古代世界最大の帝国の首都となる大都市に成長しました。イタリア半島の一部と…
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北條芳隆編『考古学講義』第2刷

 ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2019年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2019年5月です。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。なお、以下の西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です。 I 旧石器・縄文時代 第1講●杉原敏之「列島旧石器文化からみた現生人類の交流」P…
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何故欧州の科学者はネアンデルタール人やデニソワ人のY-DNAを公表しないのだろう?

 Twitterで検索していたら、表題の発言を発見しました。これは引用で、元の発言は 最近は「ネアンデルタール人は最も古いグループの現生人類であり、現代人と同じ民族である」と考えられる様になり、となると「デニソワ人やクロマニヨン人も当然、現生人類である」となる。何故欧州の科学者はネアンデルタール人やデニソワ人のY-DNAを公表しな…
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注目が高まるY染色体(追記有)

 皇位継承をめぐる議論でY染色体への関心が高まっているように思いますが、それ以前より、皇位継承とは関係なく、現代日本人の遺伝的構成の特異性を強調する観点から、Y染色体は注目されていたように思います。そうした言説では、現代日本人男性において3~4割を占めるY染色体ハプログループ(YHg)Dが韓国人や漢人ではほとんど見られないことから、日本…
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ネアンデルタール人が制作した猛禽類の爪の装飾品

 ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産と考えられる猛禽類の爪の装飾品を報告した研究(Rodríguez-Hidalgo et al., 2019)が報道されました。ビーズやペンダントのような考古学的装飾品は、伝統的に象徴的行動の直接的証拠として認識されてきました。これは、「行動的現代性」の出現と関連して…
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皇位継承の根拠をY染色体とする言説について、竹内久美子氏より有本香氏の見解の方がずっとまとも

 現行法では、悠仁親王に息子がいなければ将来皇位継承者が不在になるため、皇位継承への関心が以前よりも高まっているように思います。そうした中で、皇位継承の根拠をY染色体とする言説が支持を拡大しているように見えます。そうした言説の古株とも言える竹内久美子氏は、 神武天皇のY染色体です。男しか持たない性染色体Yは、父から息子へ純粋に受け…
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南極の氷から推測される気候周期

 南極の氷から推測される気候周期に関する研究(Yan et al., 2019)が公表されました。過去80万年にわたって、氷期–間氷期サイクルの振動周期は10万年でした(10万年周期の世界)。氷床コアと海洋堆積物のデータは、10万年周期の世界では、大気中の二酸化炭素濃度・南極の気温・深海の水温・全球の氷体積が互いに強く相関していた、と示…
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