テーマ:古人類学

河辺俊雄『人類進化概論 地球環境の変化とエコ人類学』

 東京大学出版会より2019年3月に刊行されました。本書は大学初年次クラスの自然人類学の教科書として執筆されたとのことで、人類の誕生から農耕の始まりの頃までを概観しています。表題にあるように、環境変化を重視しているのが本書の特徴で、最初に1章を割いて地球環境の変化を解説しています。本書は700万年にわたる人類の身体および行動面での進化を…
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天皇のY染色体ハプログループ

 天皇というか皇族のY染色体ハプログループ(YHg)について、D1bとの情報がネットで出回っており、確定したかのように喧伝されているので、以前から一度調べてみるつもりだったのですが、さほど優先順位が高いわけでもないので、後回しにしていました。今回、少し調べてみたのですが、査読誌に掲載された論文や、信頼できる研究機関の報告では見つけること…
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平等と協力の関係

 平等と協力の関係に関する研究(Hauser et al., 2019)が公表されました。直接互恵性は、反復的な相互作用に基づく協力の進化における効果的な機構です。直接互恵性には、相互作用する個人同士が十分に平等で、協力または裏切りによって各人が同等の結果に直面することが必要とされます。公共財ゲームのような互恵性モデルの大多数ではこれま…
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ヒマラヤ山脈の人類遺骸のゲノム解析

 ヒマラヤ山脈のインド側の人類遺骸のゲノム解析結果を報告した研究(Harney et al., 2019)が報道されました。この記事の年代はすべて紀元後です。直径40mほどのループクンド湖(Roopkund)はヒマラヤ山脈のインド側に位置し、海抜は5029mです。ループクンド湖は、湖岸に数百もの人類遺骸が散乱しているため、「スケルトン・…
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近年における過去100万年の人類進化史研究の進展

 近年における過去100万年の人類進化史研究の進展を概観した研究(Galway‐Witham et al., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。本論文は最近15年ほどの研究の進展を対象としており、広範な分野の研究の進展を簡潔に紹介するとともに、現時点での問題点を整理し、今後の展望も示しており、たい…
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ネアンデルタール人と現生人類との交雑をめぐる認識の変遷

 現在では、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と現生人類(Homo sapiens)との交雑はほぼ定説として確立した、と言ってよいでしょう。しかし、10年ほど前までは、ネアンデルタール人と現生人類との交雑に否定的な見解が主流でした。たとえば、原書が2009年に刊行された『そして最後にヒトが残った ネアンデル…
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アジア中央部および北東部における現生人類の早期の拡散

 アジア中央部および北東部における現生人類(Homo sapiens)の早期の拡散に関する研究(Zwyns et al., 2019)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)の出アフリカに関しては、回数・年代・経路などをめぐって議論が続いています(関連記事)。近年では、現代のアジア南東部集団とオーストラリア先住民集団とが、…
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遺伝学および考古学と「極右」

 遺伝学および考古学と「極右」に関する研究(Hakenbeck., 2019)が公表されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。遺伝学は人類集団の形成史の解明に大きな役割を果たしてきました。とくに近年では、古代DNA研究が飛躍的に発展したことにより、じゅうらいよりもずっと詳しく人類集団の形成史が明らかになってきました。古代…
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ヨーロッパのホラアナグマの絶滅における現生人類の影響

 ヨーロッパのホラアナグマ(Ursus spelaeus)の絶滅における現生人類(Homo sapiens)の影響に関する研究(Gretzinger et al., 2019)が公表されました。この研究は、スイス・ポーランド・フランス・スペイン・ドイツ・イタリア・セルビアと、ヨーロッパの東部・中央部・西部の14地点で採取した骨試料からホ…
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フィンランド人のエキソーム塩基配列解読

 フィンランド人のエキソーム塩基配列解読に関する研究(Locke et al., 2019)が公表されました。エキソーム(ヒトゲノムのタンパク質コーティング領域)塩基配列解読研究は通常、複雑な形質に大きな影響を及ぼす有害なアレル(対立遺伝子)の特定に関しては、そうした遺伝子の大半がまれであるために、検出力が不充分とされています。フィンラ…
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地域的な偏りのある人類進化研究

 人類進化研究に地域的な偏りがあることは否定できません。手薄な地域よりも密度の濃い地域を挙げていった方が早そうで、アフリカ東部および南部、ヨーロッパ、アジア南西部、アメリカ大陸、オーストラリア、アジア東部では日本列島といったところでしょうか。こうした地域的格差が生じた理由は複合的ですが、最大の要因は(アメリカ合衆国やオーストラリアなども…
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遺伝的近縁性と親近感

 遺伝的近縁性と親近感に関して考えさせられる発言をTwitterで見かけました。以下に引用します。 日本人のDNAのゲノムを調べれば、誰もが半島にゆかりがあることがわかる。それなのにヒステリックに嫌韓に走る人の気が知れない。屈折した自己嫌悪だ。  現代日本人は遺伝的には、北海道のアイヌ、本州・四国・九州を中心とする「本土」、…
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アフリカ東部における4万年以上前までさかのぼる人類の高地への進出

 中期石器時代のアフリカ東部における人類の高地(海抜2500m以上)への進出を報告した研究(Ossendorf et al., 2019)が公表されました。『サイエンス』のサイトには解説記事(Aldenderfer., 2019)が掲載されています。高地は、酸素濃度が低く、低温で乾燥しており、紫外線量が多く、食資源に乏しいので、人類には…
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アジア東部で最古となる線刻

 アジア東部で最古となる線刻を報告した研究(Li et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。線刻は、現生人類(Homo sapiens)に特有の象徴的思考の考古学的指標とされてきました。たとえば南アフリカ共和国では、6万年前頃の線刻のある大量のダチョウの卵殻が発見されており、現生人類の所産…
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日本列島最古の石器を遺したのはデニソワ人などの旧人である

 種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)についてTwitterで検索していたら、Wikipediaの「日本列島の旧石器時代」の項目で、「現生人類(ホモ・サピエンス)は7〜6万年前に出アフリカを果たし、それ以前にはアフリカ外には分布していなかった。従って、日本列島最古の石器(砂原遺跡の12万年前)を遺したのはデニソワ人な…
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人種差別的な「科学的研究」の批判

 人種差別的な「科学的研究」を批判したサイニ(Angela Saini)氏の書評(Saini., 2019)が公表されました。サイニ氏が取り上げたのは、エヴァンス(Gavin Evans)氏の著書『Skin Deep: Journeys in the Divisive Science of Race』です。エヴァンス氏は南アフリカ共和国…
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ハンガリーとウラル地域の父系のつながり

 ハンガリーとウラル地域の父系のつながりに関する研究(Post et al., 2019)が公表されました。ウラル語族集団は現在、シベリア西部からヨーロッパ北東部までユーラシア北部の広範な地域に存在します。約1300万人の話者がいるハンガリー語もウラル語族の一派ですが、現在、その話者であるハンガリー人(マジャール人)は他のウラル語族集団…
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過去2000年間における最近の気候変動の位置づけ

 過去2000年間における最近の気候変動の位置づけに関する3本の論文が公表されました。過去2000年間の気候変動性については議論が繰り広げられてきました。とくに注目すべき時期としては、中世の気候異常、小氷期、気候に対する人間の影響に対応した過去150年間の急速な温暖化などがあります。これらの時期の範囲を決定することは、過去に気候変動性を…
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近代日本において成果をあげた反進化論

 やや古く、地域的に偏りがありますが、2006年に公表された調査(Miller et al., 2006)では、現代日本社会において進化を肯定する割合は78%で、世界でもかなり肯定的な割合の高い国とされています。キリスト教の弱い日本社会では、当初より進化の概念に対する否定的な反応は少なく、順調に受け入れられていった、との認識は現代日本社…
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コーカサスにおける旧石器時代の黒曜石の輸送

 コーカサスにおける旧石器時代の黒曜石の輸送に関する研究(Doronicheva et al., 2019)が公表されました。黒曜石は旧石器時代から人類により広く石材として用いられてきており、その化学組成から産地を特定できるので、人類の活動を推定するのに役立ちます。黒曜石の産地は限定されているので、下部旧石器時代最初のインダストリーであ…
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石浦章一『王家の遺伝子 DNAが解き明かした世界史の謎』

 川端裕人著、海部陽介監修で、講談社ブルーバックスの一冊として、講談社から2019年6月に刊行されました。本書はおもに王族を対象として、DNA解析により解明された世界史上の著名人の「謎」を取り上げています。具体的には、リチャード3世、ツタンカーメン、ジョージ3世、ラムセス3世、トーマス・ジェファーソンです。本書の主題からして、醜聞めいた…
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アジア南部~南東部における後期ホモ属の複雑な交雑

 アジア南部~南東部における後期ホモ属の複雑な交雑に関する研究(Teixeira, and Cooper., 2019B)が報道されました。本論文はすでに、査読終了前に公開されていましたが(関連記事)、今回改めて、査読終了前との違いに注目しつつ、取り上げます。非アフリカ系現代人の主要な祖先集団は、アフリカからユーラシアへと拡散した後、5…
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ジブラルタルのネアンデルタール人のDNA解析

 ジブラルタルで発見されたネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)のDNA解析結果を報告した研究(Bokelmann et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。早期ネアンデルタール人もしくはその近縁系統である、43万年前頃のイベリア半島北部の通称「骨の穴(Sima …
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歯から示されるアフリカヌスの食性と食料不足への対応

 アウストラロピテクス・アフリカヌス(Australopithecus africanus)の歯を分析した研究(Joannes-Boyau et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。アフリカヌスは303万~261万年前頃から230万~210万年前頃の間にアフリカ南部に存在した人類種です。ア…
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ボノボの食性と人類の進化

 ボノボ(Pan paniscus)の食性と人類の進化に関する研究(Hohmann et al., 2019)が報道されました。脳容量の増大と高度な認知能力は、人類進化の主要な特徴です。脳の発達に不可欠な栄養素として、長鎖多価不飽和脂肪酸やアラキドン酸やエイコサペンタエン酸やヨウ素のような特定の微量元素などがあります。ヨウ素の摂取量が不…
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アジア南部の現生人類の人口史

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、アジア南部の現生人類(Homo sapiens)の人口史に関する研究(Metspalu et al., 2018)が公表されました。アジア南部の人口史に関しては、以前にも短く整理しましたが(関連記事)、本論文は近年の研究成果を簡潔にまとめており、私が知らなかったことも多く、たいへん有益だと思います。…
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性善説と性悪説

 性善説と性悪説は、一般的には二項対立的に把握されていると思います。性善説と性悪説のどちらが正しいのか、といった問いかけは、そう頻繁にあるものではないとしても、きょくたんに珍しいものでもないでしょう。ネット上はとくにそうですが、「現実主義者」を自認している人の声は大きいので、「性善説は間違っており、性悪説が正しい」という見解は間違ってい…
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フロレシエンシスの脳および身体サイズの進化

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)の脳および身体サイズの進化に関する研究(Diniz-Filho, and Raia., 2017)が公表されました。フロレシエンシスは、インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟で発見された小柄なホモ属集団で(…
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「縄文人」とアイヌ・琉球・「本土」集団との関係

 日本列島の人類集団は、大別すると、北海道のアイヌ、本州・四国・九州を中心とする「本土」、南方諸島の琉球に三区分されます。日本列島も含めてユーラシア東部圏の古代DNA研究は、ユーラシア西部、とくにヨーロッパと比較すると大きく遅れているのですが、進展しつつあるのは間違いないでしょう。日本列島に関しても、縄文時代の人類のDNA解析結果が蓄積…
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気候変動により分解の進むヴァイキング時代の遺物

 気候変動により分解の進むヴァイキング時代の遺物に関する研究(Hollesen et al., 2019)が公表されました。この研究は、北極域内の7ヶ所の遺跡で22点の土壌試料を採取しました。この試料には、グリーンランドの3つの主要な文化である紀元前2500~紀元前800年頃のサッカック(Saqqaq)文化、紀元前300年~紀元後600…
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