サハラ砂漠以南のアフリカにおける現生人類(Homo sapiens)と未知の人類との交雑に関する研究(Wall et al., 2019)が公表されました。現生人類はアフリカの1ヶ所もしくは複数の場所で10万年以上前に進化した、と考えられています。その後、現生人類はアフリカからユーラシア、さらにはオーストラリア大陸・アメリカ大陸・ポリ…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、スコットランド人の遺伝的構造に関する研究(Gilbert et al., 2019)が報道されました。ブリテン島とアイルランド島およびその周辺の島々では、移住と侵略により現代人集団が形成されてきました。ブリテン島に人類が移住してきたのは更新世で、完新世になると、紀元前4000~紀元前3000年頃に農…
人間の歌の普遍的パターンに関する研究(Mehr et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。音楽は人類共通の言語だと昔から言われてきましたが、音楽に意味のある普遍性が存在するかどうかは不明で、多くの音楽学者はこの見解にはたいへん懐疑的です。本論文は、人間の歌(ボーカル・ミュージック)の普遍性と多様性を明らか…
ヨーロッパの中期中新世類人猿の二足歩行に関する研究(Böhme et al., 2019)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事(Kivell., 2019)が掲載されています。常習的な二足歩行は、人類系統を定義する最重要とも言える特徴です。この常習的な二足歩行の進化については、その要因・過程・時期をめぐって長く議論が続…
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、家畜ウマの父系起源に関する研究(Wallner et al., 2017)が公表されました。Y染色体の雄特有領域(MSY)は、父親から息子へと組み換えなしに継承されるので、雄の移住および人口史を反映しています。母系継承となるミトコンドリアDNA(mtDNA)と組み合わせると、単一種の雌雄の人…
取り上げるのが遅れてしまいましたが、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)L0系統の詳細な分析を報告した研究(Chan et al., 2019)が報道されました。ナショナルジオグラフィックでも報道されています。現生人類(Homo sapiens)の起源がアフリカにあることは広く認められています(現生人類アフリカ…
社会的な父親と生物学的な父親の不一致率と人口密度および階級との相関についての研究(Larmuseau et al., 2019)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。行動生態学では、長期のペア結合を有する種のペア外交尾(extra-pair copulation、EPC)の発生と適応的意義が激しく議論されてき…
本論文は、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究)2016-2020年度「パレオアジア文化史学」(領域番号1802)計画研究B01「人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の文化人類学的モデル構築」の2018年度研究報告書(PaleoAsia Project Series 21)に所収されています。公式サイトにて本論文をPDF…
長期にわたるローマ住民の遺伝的構成の変遷に関する研究(Antonio et al., 2019)が報道されました。日本語の解説記事もあります。紀元前8世紀、ローマはイタリア半島の多くの都市国家の一つでした。1000年も経たないうちに、ローマは地中海全域を中心とする古代世界最大の帝国の首都となる大都市に成長しました。イタリア半島の一部と…
ちくま新書の一冊として、筑摩書房より2019年6月に刊行されました。第1刷の刊行は2019年5月です。以下、本書で提示された興味深い見解について備忘録的に述べていきます。なお、以下の西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です。
I 旧石器・縄文時代
第1講●杉原敏之「列島旧石器文化からみた現生人類の交流」P…
ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の所産と考えられる猛禽類の爪の装飾品を報告した研究(Rodríguez-Hidalgo et al., 2019)が報道されました。ビーズやペンダントのような考古学的装飾品は、伝統的に象徴的行動の直接的証拠として認識されてきました。これは、「行動的現代性」の出現と関連して…
南極の氷から推測される気候周期に関する研究(Yan et al., 2019)が公表されました。過去80万年にわたって、氷期–間氷期サイクルの振動周期は10万年でした(10万年周期の世界)。氷床コアと海洋堆積物のデータは、10万年周期の世界では、大気中の二酸化炭素濃度・南極の気温・深海の水温・全球の氷体積が互いに強く相関していた、と示…